冒険英雄譚“ヒロイック・テイル”   作:犬2

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第三話投稿。
第一章の登場人物であり、基本的にジークと、この子視点で見ていく形になります。




第一章「始めての冒険」 三話目

青空の下、物語の舞台となる大陸には大国と呼ばれる3つの国と小さな国が無数に存在した。

そんな中、とある国があった。嘗て愚かな先王に対しクーデーターを成功させ

腐りきった国を改革し繁栄させた、人界きっての傑物。覇王率いる国

 

通称・・・・・・皇国である

 

 

  

       ※     ※     ※

 

 

 

皇国と呼ばれる大国の王都。その片隅の道をコツ、コツコツ・・・と

リズム良く歩く一人の凛々しい少年が居た。

太陽の光を反射する髪は金糸の様に滑らかで

キリリと締まった顔立ちと、柔らかい汚れのない肌を持つ少年である。

 

背は160cmに届かない程度、細身ではあるがバランスの整った体型をしている。

歩いて行くと、通り過ぎる者の何名かは思わず振り返る程の美しさを持っていた。

名前はノエル。今年14歳の若き冒険者である。

 

彼は、上半身を金属で覆うタイプの鎧を纏い

背中には子供にとっては、大剣と言って良い剣を背負っていた。

そして懐には、僅かな銀貨の入った巾着一つ。

 

鎧の下に着込んだ服は古着であり、身に纏うモノは汚れきっていた。

貴公子然とした彼と貧弱な装備。そんなアンバランスな姿には理由があった・・・

 

 

 

ノエルは、貴族の家系の生まれであった。

父も母も優しく、気高く。ノエルは貴族とはこうなのだと思っては居たが・・・

人には善もあれば悪もある。ノエルの家族は善の人間であっただけで

悪の人間も世の中には居るのだ。

 

父は常に清廉潔白であろうとし、腐敗を許さなかった。

だからこそ腐敗した者達に嵌められ、父は謂れの無い罪で獄中に入れられてしまった。

母は父の無罪を訴えたが、何の甲斐も無くある日体を弱め去年の冬に静かに息を引き取った。

 

家は断絶となり、貴族位は返上する事となった。

毎年の国に治める貴族位への税金を納められないからだ。

 

手元に残った僅かな銀貨を手にノエルは家も家族も何もかも無くした中で・・・旅に出た。

父の知り合い達はノエルを助けようとしてくれたが・・・

自分のせいで父の友人に面倒事を背負わせたくは無かった。

 

ノエルには、青い考えがあった。皇国では、冒険者は厚遇されているという政策である。

帝王が皇子であった際に、暗愚王と揶揄されていた先王に対するクーデターを仕掛けた際

雇われた冒険者が大いに活躍したからだと言われている。

 

噂では、騎士位を与えようとしたとまで言われる厚遇振りであったらしいが・・・あくまで噂だ。

だが、火の無い所に煙は立たないと言う。騎士位とまでは言わなくても素晴らしい報酬は得たのだろう。

ノエルは、そこに賭けるつもりだった。

 

従騎士として、どこかの貴族の家に転がりこんでも、出世できるのは10年、20年先・・・

下手したら出世なんて起きないかもしれない。

だが冒険者ならば、名声と実力さえあればすぐにでも、下手な貴族より権威ある存在となれる。

若きノエルは情熱に溢れ、夢を見るまだ子供であった。だからこんな甘い考えがあった。

 

自分は元貴族、高等教育を受けている。

知識は一般人より断然あるし、何より剣を納めている、同年代の者の中でも上位に入るだろう。

背中に背負った剣は、実家にあった中でも壁に飾られ大切にされていた一品。

そこらの武器屋の剣よりよっぽど良い剣という事だ。

 

だから自分は何の教育も無く、武器を振るうだけの冒険者等よりよっぽど役に立てる存在だ

そう自負していたし、冒険者ギルドに張り出されていた王都周辺に近づく害獣討伐でも上手くやっていた。

 

それが評価されたのだろう。ある日、ノエルが普段通っている冒険者ギルドから話があったのだ。

 

 

 

 ガヤガヤと騒がしい薄汚れた酒場。飲みすぎて誰か吐いたのだろう。

酒場特有のアルコールの混ざった異臭に、汚臭が溶け込んでいる。

ノエルは酒場の雰囲気が嫌いだった。下衆な目でジロジロ見られるからだ。

床に敷かれた木端屑も気に入らない・・・例え客が床に嘔吐した際に清掃しやすい為であったとしてもだ。

 

 清潔感から程遠い世界。ノエルは冒険者等ではないと言いたげな空間が嫌いだった。

だが、ノエルが通う冒険者ギルド「剣徒の寝座」と呼ばれる場所は店員が一番マシだから好んで行く。

国に幾つかある冒険者ギルドの中で一番丁寧で、自分を評価してくれるからだ。

 

 そんな場所で、いつもの害獣駆除の仕事を終えたある日・・・受付嬢から一つの提案を受けた。

何度か害獣駆除の依頼を受ける際にお世話になっている若い女性だ。

 

「ベテラン冒険者が同行する調査兼討伐依頼に同行しない?」

 

 荷物持ちか?と最初は思ったがそうではない。

初心者・・・未熟な冒険者をメインに僅かなベテランが後ろでサポートするので

ベテランから技術や長旅の仕方を習いながら推定ゴブリンの巣を潰してこい。という依頼だ。

 

 最初、それを聞いた時ノエルは眉を顰めた。上手い話過ぎる。

自分達が狩った手柄をベテランに奪われるのではないかと思うが・・・

ギルドの店員達が返した言葉は、自信に満ちていた。「ギルドが厳選した自立冒険者だから大丈夫だ」・・・と

その理由を聞いて驚いた

 

 【自立冒険者】 依頼を受け、秘境等に向かうのではなく自費で秘境等に赴き冒険する真の意味での冒険者

鎧も、剣も、薬草も何もかもを自費で揃え命を危険に晒す発狂者達

 

立入禁止区域や、貴重な生き物が生息する場所に入っても問題無い権力・実力・実績を持ち

一度毎の依頼の報酬が多額だという・・・ノエルの目指している存在だ。

 

「自立冒険者は、冒険を愛する者達なのだろう?こんな依頼を受けてくれるのか?」

 

ノエルは、当然の疑問を口にした。

 

「お金以外を求める人達だからこそ、彼ら自身の価値観に合えばロハでだって冒険するのよ」

 

そう言われ、口を閉じた。それ程の存在が詰まらない駄賃仕事に来る理由が思い浮かばない。

だが、同時に良く中堅冒険者の中で言われる事がある

 

自立冒険者(アイツラ)イカれてやがる」

 

自立冒険者は、彼ら自身のルールに則って行動する。報酬金額より自分の興味こそが一番なのだ。

何に興味を引かれ、木端依頼を受けるのかは知らないが・・・

イカれてると言えば、剣一本で権威を得ようとする自分も、同じ穴の狢だ。人の事は言えない。

むしろこの幸運を逃すのは余りに惜しいのではないか?とすら思えてくる。

 

そうして悩むノエルを前に、受付嬢はペラペラと説明する。

 

安いが前金はある。装備等は其方で揃えてもらう。移動方法は自由。

教官役の冒険者は極力手を出さない。新人達が死にかけたら命位は助けてくれる。

但し!一番大事な事として、教官達は長旅のやり方や工夫。冒険の知識を教えてくれる

 

教官達・・・教官は二人居るが、その二人が依頼の合否を決める。

失敗してもデメリットは無いから教官とソリが合わないなら途中で抜けて構わない

・・・逃すつもりは無く詳細を聞いてその場で依頼を受けた。

 

そんな事も過去を思い出しながら、晴天の空の下を歩く。

今日、受けた依頼の詳細と、パーティを組む相手との顔見せ

及び、自立冒険者と出会えるらしい・・・。

 

「自立冒険者と出会えるだけでお釣りが来るぞ・・・一つでも技術を覚えられればもっとだ」

 

ノエルは賢く、自分が冒険者ギルドのお気に入りになっている事は知っていた。

丁重な仕事を心がけてきた芽が出たのだ。そう内心喜んでいたし

正しい事をすれば報われるのだと、顔を緩めて微笑んだモノであった。

 

街の中を歩いていけば焼き立てのパンの香ばしい小麦の匂い。

楽しげに笑い合う少年少女。威勢の良い食物屋の掛け声が耳に飛び込んでくる

熱い日差しは確かに苦しいが、街の中は爽やかな風が吹いているかの様であった。

 

そうして歩いていく先にある冒険者ギルドに入るのだが・・・一瞬、違う場所に入ったのかとノエルは勘違いした。

余りにも静かすぎた。普段は叫び声に殴り合う音がそこら中で聞こえる酒場で

お行儀よく・・・は無いが普段の3割程の静けさで飲む冒険者達。

 

「(何だ?何があったんだ?)」

 

初めて見る酒場の雰囲気にドギマギしながら受付へと進んでいこうとするノエルに声が掛かる

 

「おぉ~い、ノエルくぅーん。こっちこっちー」

 

のんきな飄々とした声。ギルドマスターである店長の声だ。

今回の依頼を企画してくれた人でありノエルはこの人が不思議と好んだ。

男性とは思えない丁寧な態度や、暖かな目が父と母を思い起こすからだ。

 

「店長さん・・・!」

 

ぱたぱたと其方に向かおうとしたノエルは店長の隣に見慣れない存在が居るのに気づき・・・・・・

 

 

 

 

               心臓が止まった

 

 

 




今物書きでは極力地名は簡易な名前にしたいと思います

皇国・王国・共和国の3つの予定です。
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