冒険英雄譚“ヒロイック・テイル”   作:犬2

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第一章「始めての冒険」 四話目

ジークが店主と酒を軽く飲み交わしている。

ツマミを何皿か食い酔いが回る前に、飲み方をセーブし始めた頃だった。

 

入口の扉が空く。そこに居たのは・・・・・・子供であった。

街人よりは少々上等な衣服を纏い、腰に巾着を付け背中に一振りの剣を持っていた。

俗に言うバスタードソード・・・片手振りと両手振り、双方共に出来る大剣と片手剣の合いの子だ

だが、子供が身につけている姿では、大剣にしか見えない。

 

 気品ある顔立ち、黄金の艶やかな髪・・・間違いなく、貴種の血を引く者であろう。

体格も細身だが引き締り、申し分ない。幼少より栄養あるモノを食べた者は体付きが違う。

そして、その姿に宿る確かな礼節と教育が見て取れた以上、それ以外に考えられない。

 

ジークに観察されている少年はキョロキョロと周囲を見渡し首を捻っている・・・隙だらけだ。

そんな幼く美しい顔立ちである少年に下卑た視線が酒場中から向けられた。

それを気味悪く思ったのか顔を顰め、コツコツと酒場を歩き始めた。

・・・下水を煮込んだ様な環境である冒険者ギルドを快く思っていないようだ。

 

そこまで推論し、まず間違いないとジークは疑って居なかった。

何故なら長い冒険生活の中で人を超える知覚を有するが・・・中でも第六感が鋭かったからだ。

ジークは人の視線、他者の言葉の真偽をある程度予測する事も出来る。

擬態した魔物を狩り続けた結果得た経験則と注意深さをジークは頼りにしていた。

 

「おぉ~い、ノエルくぅーん。こっちこっちー」

 

呑気で、僅かに赤らめた顔の店主がノエルと呼ばれた子供に手を振る。

子供は、店主に気づき近寄ろうとし・・・ジークの顔を見てビクゥッと飛び上がりかけた。

カチコチと顔を顰めて、前へ進んでいた足が止まる・・・がゆっくり歩き出す。

 

「どうも、店主さん。お世話になってます」

 

 ジークはノエルの瞳を見つめた。そこには、瞳を見つめるジークの姿が映る。

だが同時にノエルの瞳に強い恐怖と期待が篭っている事も見て取れた。

はて・・・この様な冒険野郎を見て、怖がりはすれど期待される事は・・・・・・

 

 そこまで思考して己の技術を学べると期待しているのか。そんな事が脳裏に浮かんだ。

密偵技術等、奇跡的な運か悪夢的な悪運が必要である。

なのに冒険には必須と言える技術なのだ・・・ノエルの瞳に映る期待の色をジークはそう解釈した。

 

「あの・・・それで此方の方がもしかして?」

 

「うん、そうだよ。君たちの教官さんさ!!」

 

「え・・・や、やっぱりそうなんですか?!」

 

ジークが考えている間にノエルと店主は話し続けていた。

脳裏にその声を入れながら何の意味も無い言葉は自然と記憶のそこへ沈んでいった。

 

「・・・・・・あ、あの。私、ノエルと言います・・・えっと・・・ジークさんですよね?」

 

思考の海から己への質問を向けられた事に気づき、ジークはノエルの目を見返した。

常に他者の目を見る癖が付いているからだが・・・人間、目を見つめられると驚き目を逸らす者だ。

ノエルも一瞬目を逸らすも、ゆっくりジークの目へと視線を戻した。

 

「そうだ。この度依頼に同行する事になる。依頼内容は他の同行者が揃ってからになるだろう」

「は、はいィ」

 

ジークが静かに淡々と話すとノエルは上ずった声で返事を返した。

思わず、出してしまった締まらない自分の声にみるみる内に顔を赤くするノエル。

それを見て、クスクスと笑う店主の姿にジークは困った。

 

自分自身、無遠慮で不器用な性格である自覚はある。

これが気安い性格ならば目の前の子供の緊張をジークは解せただろうが・・・

そんな事を出来る性格でも、見た目でも無い事をジーク自身が一番良く知っていた。

 

「ほら、座って座って、ミルクで良いかな?おつまみもあるよ」

 

店主は、ウェイトレスにミルクを2つ、そしてハーブ茶を一つ頼んだ。

子供と店主がミルク。己がハーブ茶なのだろう。

ジークはこの店の茶の香りと色合いの美しさを好んでいる事を店主は知っていた。

 

暫くの間店主とノエルは話していた。ジークは黙り込んで時折来る質問を答える。

暫くして子供がもう一人来、その後すぐに最後の子供がやってきた。

誰もが10歳から12歳程度の幼い子供であった。

 

一瞬で酒とツマミが置かれていた酒場の席はお子様に占拠され、苦味ある物酸味ある物は撤去された。

ジークの席にあるのはお茶が一杯だけである。

 

子供達はお互いに初対面なのだろう、余り話さずそれぞれが店主と話し込んでいた。

そう時間は掛からず一人のギルド職員が近づき、店主にゴニョゴニョと耳元で話した。

僅かに顔を曇らせた店主であったが、不思議そうな顔をする子供達にニパッと笑いかけこう言った

 

「本当はもう一人、付き添いの人が来る予定だったんだけど・・・」

「依頼帰りの馬車が遅れてて今日にはつかないみたいだ、今居るメンバーで話そうか。」

 

 この世界には魔物が、魔法が存在する。

それはつまり街から街への移動も命懸けであり・・・馬車が魔物等のせいで遅れる事も日常茶飯事だった。

故に全員が余り気にせず一旦体勢を整える。店主から一人一人自己紹介を頼まれている。

 

最初に声を出したのは、一番最初に来た気品ある少年だった。

 

「私の名前はノエル。先日冒険者になった。でも何度か害獣駆除の依頼を受けている」

「勿論、失敗した事は無い!」

 

 落ち着いた声で周りの人間を見ながら堂々とそう言ってのけたが・・・自分を大きく見させようとしてるのか

僅かに体を張って言う姿は威厳より滑稽さ・・・失礼な話、可愛らしさが先に来ていた。

紅潮した頬を見るにノエルにとっては会心の自己紹介だったのだろう。

 

「剣が得意だし、学も納めているからそっちでも頼って貰って良い。」

 

 チラリと目線をジークに向けフンスと鼻息を荒く言った。

自分は役にたつし、他の二人とは違うと言いたい様だ。

 

「はいはい、皆~此処に居るノエル君は君たち3人の中で唯一の接近主体の戦士だ」

「冒険者になりたい。って若い子の中でも礼儀正しいし思慮深い。何かあったら相談してね」

 

 店主が補足する様に呑気に言った。

ノエルは無表情を装っているが口元が吊り上がって得意げにしている。

礼儀正しいと言われた時にピクピクとしていたので、そこが嬉しかったのだろう。

 

 大抵、冒険者とは荒くれ者だ。泥にまみれ危険に飛び込む男等大抵ロクデナシだから仕方ない。

だから大抵礼儀正しさとは評価されない。実力が第一だからだ。

となると・・・必然的に態度を大きくする乱暴者が注目されやすい・・・この酒場では逆だが。

 

 何度かジークの力量を掴めなかったチンピラが自立冒険者として成功したジークに突っ掛り

酒場の真ん中で酷い目に合わされたからだ。

態度の大きい者は居る。乱暴者も居る。酒場で喧嘩も起きる・・・がジークの顔色を伺う程度だ。

 

 二人目の子供・・・・・・赤髪で、ゆったりしたマントを来た、肩程まで髪のある少年が次に言葉を発した。

肌が白く、ノエルの様な引き締まった細身ではなく純粋に脆弱なのが見て取れる。

 

「ボクの名前は、クリス。元は狩人だったので、石弓(クロスボウ)を少し撃てるよ。」

「罠とか・・・後は薬草の知識とかも一応・・・。唯、本業は創成魔法だね」

 

その言葉に、僅かにジークは目を見開いた。

 




という訳で四話目。余り進んでいませんがキリが良いので
次回はこの世界の魔法の設定を話そうと思います。
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