次回は今回と同じ位長くなります。
早朝、皇国と皇都を囲う城壁でまだ太陽は見えないが・・・そろそろ夜明けだろう。
曙色の空は幻想的で美しく、夏上旬にしては涼しい風を世界へ流していた。
農家はともかく皇都たるこの都で起きてる人間は少ない。
職人が手仕事で作る灯を灯すだけの簡易的な魔法道具が道を照らす以上暗くは感じなかった。
そんな中、ジーク達一行は城壁の前に立っていた。
マントを羽織り武装と食料、道具を携えた彼らは道具の点検を行っていた。
それらが終わり。ジークは最後に全員の顔を見ながら言った。
「もうじき城壁が開く。開くと同時に我らは依頼場所近くの街まで行く。」
「皇都に比べれば小さいがそれなりに大きな街だ。そこで一泊する」
「魔物の遭遇は控える。遭遇時は己かレイフォーが判断。お前達が戦うか己らが戦うか決める」
異論は認めんと言う。だが全員が頷いた。
「ノエル、最前列。クリス左斜め後ろに。アッシュはクリスの右斜め後ろだ。」
弓なりになる様に歩けとジークは指示を出す。冒険者が良く使う旅の中の陣形である。
「全員異変があればすぐに言うように。」
「良いか。通常山賊、盗賊の初撃は基本背後か横からだ。正面から来る事は少ない」
「正面から来るって事は初心者か腕自慢かだ。」
「ノエルは正面を警戒。アッシュ、クリスは左右互いに一方を警戒。10分毎に方向を交代」
「己は真ん中。フォーレイは最後尾」
そこまで話、お互いに顔色や休憩時間などを話していると・・・
「 開 も ぉ ぉ ん! ! ! 」
ビリビリと響く程の大声が響く・・・。叫び声だが確かに聞こえるその声は指揮官級の者だろう。
戦場で良く響く声とは才能の一つだからだ。
同時にギギギギギギギと城門がゆっくり開いていく。朝焼けの空に光が差し込んでいく
「さぁ・・・・・・冒険の始まりだ」
商人が急げ急げと馬車を急かし、旅人が別れ惜しげに皇城を振り返り
旅路を巡回する兵士が規則正しく歩き出す。
そんな中を、冒険者一行は歩き出した。
※ ※ ※
「疲れる前に休め。自分の体力は自分でしか分からん」
ジーク達一行は、ちょくちょく旅の中で忠告を挟みながら進む。
「目が疲れたら果物を食べろ。」
「どれだけ熱くてもマントは脱ぐな。背後からの弓矢の狙いを外す事が出来る。」
「休憩するときは、交代でやれ。一人は絶対に立ち周囲を見張れ。」
ある時は、平原の中。草むらから出てきたであろう野生動物の足跡を指差し全員に話した。
子供達は輪になるように足跡を囲みジークからの説明を受けながら首を傾げたり納得している。
「獣の足跡は見ろ。地面が乾いてるか乾いていないか。何時頃付けられた足跡か気づけ」
「草食動物の足跡だから大丈夫・・・等と思うな。大型の魔物に追われて逃げているのかもしれん」
「方位磁石と地図の確認を忘れるな。感覚を信じるべき時と信じるべきでない時を見極めろ」
他にも、旅路の中見つけた人間の足跡でも同じ事をした。
本格的な教えは森の中に入ってだが旅路の中で教えられる事は教えるつもりだが
旅路の中でも冒険者の腕は磨ける以上、磨く方法は教えていた。
「全員、この人間の足跡を見ろ。どう思う?・・・・・・よし、己の考えを話そう。」
「後ろ脚が深く沈むのは背中に重い荷物を背負う証だ。そして足跡の崩れていない。金属靴だろう」
「恐らく兵士か騎士のモノに見えるが・・・一つしか足跡が無い。冒険者か傭兵だと思われる」
「追跡術とは、過去に何があったかを考える事だ。想定しろ。知識を蓄えろ」
「何時、誰が、何を、何故、何処に向かうか。考えろ。それが追跡術だ・・・経験で覚えていく。」
「旅の中で磨け。見つけた足跡の持ち主が居たら答え合わせになる。」
子供達は、メモをしたり。あたふたと言われた行動をしながらお互いに相談しながら歩く。
自分じゃ出来そうに無い、変わって欲しい。その言葉は大事だとジークもレイフォーも言った。
出来ない事は出来ない。出来る奴にやらせる方が良い。出来ない事は後で覚えれば良い、と。
何度かの休憩を挟み、今も休憩の最中で木陰で休んでいる。
現在はレイフォーが見張りを行っている所だった。
時刻は太陽が一行の真上へと登る頃合である。
上を見上げれば空は青空だ。筋を引く真っ白な雲が青空に映えて美しさを際立たせる。
そうしてさらさらと穏やかな風がジークの頬を優しく撫でマントがはためいた。
ジークは腰に着いた保存食の袋から干し苺の蜂蜜漬けを取り出し、飴の様に舐める。
甘い物より塩っぱい物が好きなジークだが、旅の中では両方取る。
「・・・・・・」
見れば、レイフォーも空を見上げている。
美しい天気が広がる中で、地図上では遠くにある山が不思議と近くに見えた。
「・・・」
子供達はワイワイと話し、普段より冒険らしい冒険が出来てると喜んでいる。
お互いにメモを見せ合い。装備の点検を行う姿は微笑ましい。
道中で合った獣の糞は何の獣だったのか、等。良く話題が尽きないモノだとジークは感心した。
そうした時間の中、レイフォーがジークに近づき、小声で相談を持ちかけた。
「なぁ・・・ジークさ・・・「一度痛い目見たほうが早い」・・・そうかもしれんな」
だがジークは首を横に振った。
今、二人だけが気づいている異変に子供達が気づくのか。気づかないのか。
自分が全て教えては危機感が薄れる。人から教わるより自分で気づき学んだ事の方が身につく。
そう思っていた。
だが、此処で熟練冒険者達の思惑は外れた・・・否。良い方向に進む。
「にしても良い天気だな。見てくれよ。カエルが川岸で鳴き声が良く響いてる・・・良い音だ。」
ノエルがそう呟くと、アッシュは流れる風を浴びて気持ちよさそうに目を瞑って居る。
「本当・・・こんな良い天気に冒険出れてよかったニャぁ」
天気は良い。雲を子供達は指さしたり、風の心地よさを話し合う。
そして・・・話し合う度にクリスは眉を潜めていく。
「・・・クリス?」
アッシュとノエルはそんなクリスが気分を悪くしたのかと思った様で水や食べ物を提案する
・・・が、クリスは首を横に振った。
「ノエル、アッシュ。朝からずっと絹雲だったっけ?」
クリスの真剣な顔にノエルとアッシュは顔を見合わせる。
「ん・・・?そういえばそうだったっけ。あんまり見てなかったな」
ノエルはそういうと首を傾げる・・・がアッシュは頷いた。
「ニャぁぁ・・・多分そうだと思うニャ。」
アッシュがそう言うと、クリスは幾つかの質問を始めた。
「二人はこの当たりを歩いた事はある?」
アッシュは無いにゃぁと言うが、ノエルは有る。と応えた。
過去に害獣駆除の依頼で近くに来た事があるらしい。
「その時もこの近くの木陰で休んだっけ」
そう言ったノエルにクリスは、良く思い出してね?と前置きを置いて
クリスはここら一体で一番大きい山を指差した。
「あの大きい山、その時はどう見えた?今より遠くに見えなかったかい?」
色々聴き込むクリスの様子にノエルもただ事では無いと思ったのか真剣に考える。
「ん?んー・・・・・・そうだったかも。何だか今日は大きい・・・ってか近くに見えるね」
次にクリスは立ち上がり。二人に言った。
「さっき鳴いてたカエルの種類を確認したいから、ちょっと捕まえてくる。」
そう言って立ち上がったクリスに、アッシュとノエルも立ち上がった。
「どうかしたのかニャ?クリス。話して欲しいニャ」
アッシュの言葉にクリスは困った様な顔をして・・・暫く考えて言った。
「まだ、予測に過ぎないけど・・・」
その言葉は、ジークとレイフォーが気づき、黙っている事にした事実であった。
「多分、夕方位に雨になる。確認した方が良い」
ジークは、その様子を遠目に見て。驚いていた。
天気が崩れて、それから悪天候がどれだけ危険か。どう対処するか教えようと考えていたからだ。
良く気づいたモノだ。旅路に慣れたジーク達はともかく子供達が気付くとは思わなかった。
今のままの歩行速度では間に合わず、今日泊まる予定の街に着く前に雨が降り始める。
そして身を以て天気の確認の重要性を教えようと思っていた訳だが・・・
そうジークが考えていると子供達がやってきた。
「ジークさん、レイフォーさん。今後の事なんですが・・・雨が降ると思います」
クリスの言葉に、ジークは頷いた。レイフォーがジークに話しても良いか?と問うた。
それに対してもジークは頷いた。
「良く気づいたなお前ら。言う通り、5時間後から7時間後位に雨が降るだろう。」
「そこらへんは狩人の知識だ。な・・・」
「雲の形とかで判断しやすいモンだが・・・生き物の中には雨を感知する奴も居る。覚えておけ」
クリスは頷いた。ノエルは成程と呟きアッシュは急ぎせっせと羊皮紙へと書いていく。
「それは狩人さんに聞けば教えてくれるニャ?」
書き込んでいるアッシュが問いかける。それに対しジークが応えた。
「それでも良いが主観毎に違うからな・・・海辺や森、場合によっては国毎に天気の特徴は違う」
「街の冒険者ギルド毎に近隣の天気の特徴や前触れを乗っけた本が有料で借りられる」
「それを借りた方が確実だ」
とは言うも、ソレは狩人や土地着きの農民に聞けば分かる事だからだ。
魔物の知識や、冒険の中での工夫等と言った直接命に関わる事はギルドは本にしない。
万が一、例外が起こり冒険者ギルドのせいにされては困るからである。
「寝てる最中に雨が降るなら木陰にテントを設置し、上に大きな布を斜めに張れば雨は防げる。」
「己の予想ではそこまで長引く雨ではない。明日の旅路に影響は無いだろう」
「・・・今回は急ぎ街に向かう事にする。」
そう言うと、そろそろ行くぞとジークは立ち上がった。
木陰から、道へと歩く。その中でクリス達3人のの頭をグリグリと乱暴に撫でた。
「良く気づき、良く相談した。」
「良い冒険者になれ。ノエル。クリス。アッシュ」
その言葉に、嬉しそうな顔で頷く3人の瞳は・・・強く輝いていた。
※ ※ ※
夕暮れ前、遠目に街の城壁が見えてきた。
皇城に比べれば低く頼り無い城壁だが、それでも魔物程度の攻撃ではビクともしないモノだ。
近づく度に人が増えていき・・・門へ入る為の列が見えてきた。
商人に依頼を終えた冒険者。旅人に巡回を終えた兵士・・・etcだ。
ジーク達も同じ様に並ぶ。誰も疲れた様子はなかった。
「今までは半分も進んだら疲れてたのに今回は疲れニャかったニャ」
そう言いながらアッシュはジークのマントをパンパンと払っている。
5人とも旅の中の汚れが目立つ。街の中に入る前にパンパンと手でお互いに叩き合うのだ。
ジークは力が強く、叩かれたノエルは少し痛そうにしていた。
「一度疲れると、頭が覚える。疲れる前に休んだ方が長く、早く歩けるモノだ」
ジークは冒険生活の中、一度も歩くだけで疲れた事が無い。それが密かな自慢である。
今回も上手く進めた事に内心喜んでいた。
そして列は程なくして進みジーク達の番になった。
「む・・・冒険者か。一人一人右腕を見せろ・・・良し」
「犯罪歴は無いな?街での市民登録は?・・・無いか。一人大銅貨5枚だ」
犯罪者は右腕に深く刺青を押される。皮が剥がれてるなら入れては貰えない。
ちなみに大銅貨とは銀貨の十分の一の価値であり・・・以外と安い値段である。
これが荷馬車等あれば更に跳ね上がるが身軽な冒険者には関係ない話だ。
にしても、見事な衛兵である。流石規律と秩序の国と言われる皇国の、皇都近くの衛兵だ。
もっと田舎だと露骨に賄賂を要求されるがそう言った事は無いし
卑しい目もせず、装備に綻びは無い。
子供達が支払いフォーレイも銅貨を支払う。ジークは一つの勲章を見せた。
兵士がギョッ!?と勲章を見た。目が大きく開き固まる。だが体は自然とジークを門へ通した。
「・・・?」
「後ろが詰まってる、止まるな。行くぞ」
子供達は戸惑った顔をしているが、レイフォーは気にせずに子供達を急かした
ジークも又気にせず門をくぐり抜け様として・・・ガシっと何かに掴まれかけた。
背後から伸ばされた手が掴む瞬間にジークがするりと抜け出たせいで
掴もうとした誰かは、つんのめって派手に転んだ。
その人物は転びながらジークに叫ぶ。
「ッ・・・!待て!アンタ!大銅貨5枚だ。」
ジークは不愉快そうに眉を顰め、自分を掴もうとし、転んだ存在を見る。
見れば先程の衛兵では無いもっと若い・・・15歳か16歳位の若い衛兵であった。
「証を立てた。衛兵は通した。何が問題だ」
衛兵は転んだ事が恥ずかしいのか、何の感慨も無く話すジークに苛立ったのか
顔が赤くなっていく。次に叫んだ言葉は明らかに言いがかりであった。
「・・・ッ!!隊長に見せた薄汚い勲章を見せろ!」
「魔道具の疑いがある、検査させて貰おう!」
顔を真っ赤にして立ち上がった、若い衛兵は見習いを示す腕章がされている。
そしてもう一度ジークににじり寄り・・・握った勲章を強引に奪おうと手を伸ばした。
余りに乱暴な手つきは、少なくとも職務上必要なモノには見えない。
突然衛兵に声をかけられ叫ばれた事に子供達は、驚き口をポカンと開けた。
レイフォーは、急ぎ言葉を発しようとした。
ジークは・・・一言だけ呟いた。
「殺すぞ」
ス パ ァ ン ! !
剣閃が輝き、次の瞬間・・・ストンと若い衛兵の首が落ちた。
そんな光景を周囲に居る全員が幻視した。
何も起きては居ない。唯全員の動きが止まっていた。
ジークの声は決して大きく無い。むしろ呟きと言える。
だが、衛兵達にも、列に並ぶ者にも、仲間達の耳にも全員の耳に響いた。
若い衛兵だけがコテンと尻餅を着いた。そしてジワリ・・・と股の間にシミが広がっていく。
次第にプルプルと若い衛兵は恐怖で震え出す。
そこへ、先程勲章を見せた衛兵がハッとして飛び込んできた
「失礼しましたッ!!!教育の程が足りず申し訳ありません!」
そう言って、ドカッ!と若い衛兵の頭を小突きく。
何事か!と怒鳴ると門にある衛兵駐屯所に放り込んだ。彼が若い衛兵が言っていた隊長だろう。
扉を閉めた、衛兵隊長はジークへ振り返り剣に手を置き、僅かに腰を落としていた
「・・・」
ジークは喋らない。此処で適当に暴言の謝罪を行えば、それで終わりだと知っていても。
誤魔化せば。器用に生きれば良い。知っては居ても
心の奥から溢れる怒りを誤魔化すつもりは無かった。
それ程までにジークにとってこの勲章はかげがえの無いモノで有り、
何よりジークは不器用だった。
衛兵隊長とジークはお互いの瞳を見た。
そして・・・衛兵隊長は目を逸らし、深々と頭を下げた。
衛兵という、立場ある者がする事ではない。だが此処でしなければ行けないと
彼は強く思い、即座に実行した。
ジークは、ソレを望んでいなかった。望みは先程の若き衛兵に対してだ。
だが・・・・・・ふと思う。
後ろに居る子供達を教える立場に居る自分が、同じ事になったならどうしただろうか。
仕事を忠実に果たそうとし、問題を起こした子供を、怒る冒険者の前に引き渡すだろうか。
否。自らの頭を下げ、それでも相手が子供の命か傷を欲するなら自分が引き受けるだろう。
許せぬ事は許せぬ。だが頭を下げてまで誠意を見せた上役の姿に、怒りは引いていった。
「怒りはある。だが、最も許せぬ事は未然に防げた」
「門前で騒ぎを起こした。許していただきたい。お互い非があるならお互い様としたい。如何か」
ジークは、衛兵の頭を上げさせると、次に自分の起こした騒ぎに関して軽く頭を下げた。
衛兵もその姿に一度頷く。ジークは頷かれた姿を見つめ、改めて門へと背中を向けた
「行くぞ」
パクパクと口を開けては閉じる子供達の背中を小突く。
そしてレイフォーに目線を送り街の中へと改めて入った。
周りで見ていた街人達がジーク達に道を開ける中を進んでいった。
※ ※ ※
「ビックリしたニャァ!!!」
半泣きになり迫るアッシュに、纏わりつくなと頭を抑え遠ざけるジーク。
場所はこの街の宿付きの冒険者ギルドである。
何度かこの街に来た事のあるジークは迷わず進み、ギルド員に宿を頼み夕食とした。
そこまですれば緊張の糸も解れ子供達はピーピーと騒ぎ出した。
「衛兵と喧嘩しちゃダメだニャぁ!」
うぐぐぐと正論を言うアッシュ。ポリポリとジークは頬をかいた。
嘘をつくつもりが無い以上。素直に本心を言った。
「己一人ならともかく、お前達に迷惑を掛けるつもりは無かった。」
「しないかはともかく留意はしよう」
冒険者等、ちっぽけなプライドの為に戦うロクでなしである。
だからと言って、仲間を一瞬忘れた事は自分が悪かった。ジークは反省した。
だが衛兵に対しての行為には一切反省が無いのが本心である。
「・・・・・・あれ、何だったの?」
クリスはジークに問うた。あの時見せた勲章である。
本来、街に市民登録し日々の税金を支払う事を義務とする事で門の通過料は無税となる。
だがジークが皇都を拠点にしているのは有名な話である。
これが領地貴族の土地であれば貴族のコネかと思うが、皇帝の直轄領にそんなモノは無い。
教えられるなら・・・とクリスは上目遣いでジークを見た。
ジークは暫く考え、迷惑を掛けた者に言わないのは不義理か。と机の上に置いた。
置かれた勲章は皇国の国旗たる龍を背部に、剣と翼が交差された代物であり
剣の柄部分には赤い宝石が嵌められ、それら全ては精巧なる銀細工で出来ていた。
「・・・・・・綺麗」
机に座る全員が机に置かれた勲章を囲み、見た。
思わずボソっと呟いたのは誰か。高い声である以上子供の誰かだろう。
魂を無くした様に見惚れる程、美しい勲章であった。
「・・・唯の銀では無いな」
ジッと見つめていたレイフォーは呟き、ジークは頷いた。
「
ミスリル。偉大なる神々が生み出した真なる銀。
宝石と同じ価値があると言われる偉大なる魔法鉱石である。
とは言っても・・・一流の冒険者ならミスリルの装備位は持っている・・・が
「あの硬度の鉱物を・・・?」
そう、武器ならともかく・・・
宝物庫に入っていても違和感無い程美しい装飾品に出来る程柔らかな代物では無い。
「・・・」
そしてノエルはその勲章をジっと見つめた。
ノエルは元貴族である。貴族の教育の一環として紋章の暗記等もある。
分からなければ顔の知らない貴族と出会った際にどう対応すればよいかわからなくなるからだ。
ノエルは幼いにしては大変賢く紋章に関しても詳しかった。
そして所持すれば特別扱いを受ける程の勲章を知っては居るが・・・目の前の勲章では無い。
気になるが、後で調べれば良い。そう思い何も言わずに居た。
「謝られたんだ。これ以上は気にしないさ。ジークさん、明日はどうする?」
レイフォーは切り替えたのか食事の机にバサバサと地図を広げた。
雨が降るならルートの変更が無いか確認はした方が良いと言いながら話し出す。
子供達もその話し合いに混ざろうとするが・・・・・・ジークはこう言った。
「お前達は、情報収集の練習だ。ノエル、クリス、アッシュ」
「冒険者ギルドで情報収集してみろ。早めに戻ってこい。己が裏を取る」
その言葉にニャ?とアッシュが首を傾げた。
「他の冒険者に話を聞けば良いのかニャ?」
頷きながらもジークは幾つかを提示した。
ギルド員に聞いても良い。冒険者に聞いても良い。
此処一帯の出没する魔物や、周辺で起きた事件について聞き込みや調査をしてみろ。と
「魔物はともかく・・・事件?」
「事件とは言っても、本物の殺人、強盗事件では無い。面倒事が無いか・・・だ」
「依頼書を見ても良い。既に己らの依頼の調査は始まってる」
3人で相談しながら調査してみろ。その言葉に子供達は頷いた。
今までジークやレイフォーが着いていたが今回は自分達だけでやるのだ。
失敗無く、やり遂げて・・・・・・先輩たる二人に褒められる様な情報を見つけてみたいと思った様だ。
子供達は食事を終え、調査を始めた様だ。
イカつい顔の冒険者にたじたじになったり、冒険者ギルド員に聞いてみたり
依頼書を確認しに行く姿を横目に見ながら、ジークとレイフォーは明日の打ち合わせをする。
3人だけで、とは言っても冒険者という荒くれ者が紳士的に接するとは思っていなかったからだ。
暫くして3人が帰ってきた。面倒事は特に無かった様だ。
馬鹿にされたりもしていた様だが、上手くスルーしたり端金を支払い、情報を手に戻ってきた。
3人が見つけた情報はジークが道具屋の老婆から聞いた話とほぼ同じである。
だが病気が流行ってる事に関し詳しくは分からなかった様だ。
そして・・・ジークが知りたかった情報が分かった。
「最近、行方不明者が増えてるって話ですが・・・どうやら盗賊団が居るみたいです」
クリスは小さな地図を広げた。そこには冒険者ギルド員から聞いた、行方不明の予想地点が書かれていた。
「どれも、此処ら一帯で起きてますが・・・何人かが盗賊に襲われたって証言してるみたいです」
「近々騎士達の討伐隊が出るみたいですが、今の時点で倒せば報奨金が出るみたいです」
そこまで言うと補足としてアッシュが付け足した。
「他の冒険者が言うには、子鬼狩りは定期的にやるからこの辺じゃあんまり見かけニャいって。」
「レイフォーさんがいうようニャ複数匹居るニャら、森の奥に拠点あるかもー・・・て?」
冒険書の依頼には、確かに定期的なゴブリン退治のお知らせがあったらしい。
過去の依頼書を見せてもらったが結構な人数が参加している様だ。
「ふむ・・・良く調べてある。疑問があるなら追求している。不足は無いだろう」
ジークは、3人が聞いてきた情報を紙に書くと、3人を褒める。
褒められた3人の目が嬉しげに輝いた。
仕事をやり遂げこう言った反応を返す姿にまだ子供なのだとジークは思い返した。
調べてきた情報は確かである以上、それを指摘する事は無かった。
情報の中に強力な魔物を見た。というモノもあったが・・・
「でも、私はソレは嘘だと思う。此処一帯、その魔物が生きられる環境じゃない」
ノエルがそう言って魔物の生態の根拠を話した。
それに対しジークも同意見である。
話を聞くに端金を要求されたらしい。恐らくソレ目当ての木端冒険者だろう。
「良く調べ上げた。後は己が裏を取る。少し待ってろ」
ジークは頷き、酒屋のメニューを子供達に押し付けると立ち上がり調査を始める。
とは言っても、やる事は子供達がやったことと大して変わらない。
違う点は、情報通だろう冒険者への目利きが適切な点、
そしてギルド員の態度がジークに対してはまるで違う事だ。
子供達の半分程の時間で裏取りは終わる。
間違いは無い様だ。となれば打つ手もまた変わってくる。
「問題無い、一度部屋へ行く。3人はついて来い。レイフォー、どうする?」
鍵と練習用の罠をやらせようと思いそう言うと・・・レイフォーはボーっとして答えなかった。
金属鎧の兜のせいで分からないが、恐らく焦点ははっきりしていないだろう。
「レイフォー」
もう一度ジークが言うとレイフォーはハッとして振り返った
「・・・スマン、少し酒気がキツい様だ・・・休ませてくれ」
子供達は大丈夫ですか?支えますか?と心配しているが、レイフォーは軽く手を振り
自室へと上がっていった。
その姿を見ていたジークは・・・腰に差した軍刀がカタカタと鳴った気がした。
改めて、子供達の自室に行ったジークはピッキングツールを子供達に渡す。
中に派針金各種、ペンチ、ワイヤーカッター、鑢等が入っている。
中を見た子供達はドン引きである・・・明らかに後ろ暗い輩が持つ代物だからだ。
「
ポイポイと老婆から買った練習用の罠の箱を投げ渡すジーク。
一応昨日の内にジークは箱を確認した。何か聞かれた時に答えられる様にだ。
「その箱の奥に薬草が一枚入っている。それを取り出す事が目的だ」
「失敗すると箱の隙間から墨が・・・・・・」
アッシュという能天気な子供はブシャッと説明が終わる前に両手を指で汚した。
話を聞く間に好奇心が抑えきれず、無遠慮に開けようとしたらしい。
「墨が出てくる。出た場合はお前らは死んだモノとする」
「ふぎゃっ!?」
ゴツン!と拳骨を叩き込んだ。
ふにゃぁと涙目になったのを見るに結構力を入れたらしい。
アッシュは頭をさすりながら真面目に聞く事にした様だ
「回数は3回まで。お互いのやり方は見るな。」
「仕掛けが違うから解除出来たら交代する・・・道具の使い方が分からないなら、己に聞け。」
「まずは箱をどう開けるか・・・どう仕掛けがあるのか見て、その後解除を試みろ」
アッシュが発動させた仕掛け箱には、箱底から蓋にワイヤーが伸びており引っ張られると
水鉄砲の要領で墨が出る・・・という代物である。
勿論、ワイヤーを切れば良い。というだけの代物では無い。
ワイヤーを切ると墨壺の内部圧が変動し、それはそれで墨が飛び出すのだ。
ジークが昨日解除した際は以下の手法で行った。
ワイヤーの中程に横に引くワイヤーを付け足す。トの形になる様にだ。
そして引っ張りを固定した上で付け足したワイヤーの上を切る。すると【「】の形になる
横に引っ張られ固定された仕掛けが動かないのを確認した後・・・
今切った部分に、ワイヤーを付け足し伸ばす
蓋を開いた上で固定出来るまでワイヤーを長くしたら改めて横に付け足したワイヤーを切る。
それで始めて箱をしっかり開ける事が出来る。
更に鍵が掛かっている為、針金で解除する必要がある訳だが・・・・・・
「フ―ッ!フ―ッ!!!」
「えぇ・・・いやらしすぎない?」
「ぅぅ・・・ぅぅぅ」
獣の様に威嚇しながら悪戦苦闘するアッシュ。
一つ目の仕掛けを解除するも二つ目の仕掛けに気づかず失敗するノエル。
小さな、小さな針一本を通る作業に手間取り手をプルプルさせるクリス。
「・・・・・・」
ジークは、長くなりそうだ・・・。内心そう思いながら子供達の罠解除を見守り続ける事にした
夜は更けていく・・・・・・
面倒事を起こすジーク。
普通なら勲章を渡し、それで終わり・・・ですが
絶対に許したく無い事は許さないからこそ自立冒険者“イカレ野郎”
と呼ばれるまで成功できたのだと思います。
賛否両論あるとは思いますが、これからもこう言った性格のまま進みます。
癖のある主人公ですがよろしくお願いします
少し訂正しました。