鋼の鳥は約束の場所へ   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。死亡者もいる模様。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・先日投稿した『父への手紙:今日も世界は愉快に回る』を加筆し再投稿し直した。前話は削除済み。

上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。


旅立ちの季節
今日も世界は愉快に回る


 地球を旅立ち、ELSの母星へ向かったお父さんへ

 

 その後、いかがお過ごしでしょうか? 旅路は順調ですか? お父さんが元気でいてくれるなら、僕は嬉しいです。

 究極の混成部隊アルティメット・クロスが活躍した戦乱が終わってから早1年。地球は相変らず愉快なことになっています。

 

 僕は今、民間技術支援を中心とした派遣企業・悪の組織に所属する技術者兼MSパイロットとして、JUDA≒加藤機関に出向しています。JUDAは石神さんが社長を辞め、森次さんがトップに立って新体制へと移行しました。石神さんは元々経営は得意ではなく、そっち方面は以前から森次さんに任せていたそうです。

 これで森次さんは、キリヤマ重工とJUDAの社長という二足の草鞋を履いていることになります。ファクターじゃなかったら過労死していたことでしょう。でも、森次さんはヴァーダントの扱いも結構雑なので、本人も無自覚のまま酷使し続けた挙句、電脳が壊れて、ある日突然死んでしまうのではないかと心配です。

 当然のことながら、そんな極限状態に対して鬱憤が溜まっていない訳ではないようです。悪戯ばかり繰り返す石神さんに対して「撃っていいかい?」と質問してきたリボンズさんに対して、笑顔でゴーサインを出すことも増えました。森次スマイルと本物の暴力は今日も健在です。カステラの差し入れも美味しいですよ。閑話休題。

 森次さんの愚痴を聞くと、メディカルチェックと称して石神さんの実験体にされたことや、冷蔵庫のフルーツ牛乳を勝手に飲まれたことや、慰安旅行に置いてけぼりにされたこともあったようです。幾つかパワハラやコンプライアンス違反の事例が多数挙げられたので、正直、出向先を間違ったのではないかと不安になりました。

 浩一先輩の三角関係も微妙なバランスを保ったまま。むしろ矢島さんが良いところを掻っ攫っていくので、絵美さんと美海さんはギリギリしています。最近は美海さんが行った“きわどいナース服で早瀬先輩に迫る”事件がありました。浩一先輩は「ナースな変態だぜ!?」と謎の言葉を言い残し、鼻血を吹いて卒倒しました。

 絵美さんが対抗意識を燃やしているので、多分、暫くすれば2回戦目が発生することでしょう。この前、絵美さんがPCでずっと“ナース服 過激”という画像を検索していたためです。目が座っていました。しかもファクターアイ。正直、カリ・ユガやカイザーのお2人とは別ベクトルで怖かったです。

 

 あと、色々な事情があってイズナさんたちと竜宮島へ行きました。あちらも愉快なことになっていました。聖戦士となった翔子さんとUX屈指のスナイパーと化した真矢さんが、一騎さんを巡って熾烈な戦いを繰り広げていました。僕らは「必殺の、ハイパー同化切りだぁぁぁ!」あたりで喫茶店から逃げ出したため顛末はよく知りません。弱虫な息子でごめんなさい。

 渦中のど真ん中にいた一騎さんは総司さんと一緒にカレー作りに勤しんでいたため、眼前で繰り広げられる地獄絵図に気づいていなかったようです。シズナさんが「超弩級のニブチン」と憤慨していらっしゃいましたが、イズナさんに言わせてもらうと「姉さんだって意地っ張りだよね。いい加減、素直になればいいのに」とのことです。

 イズナさんは疲れ切った顔で、シズナさんと道明寺さんを見ていました。本人たちは気づいていないのかもしれませんが、2人はとってもいい関係にあります。名実ともにパートナーになる日も近いでしょう。イデアさんあたりに伝えてみると楽しいことになるかもしれません。きっとテンションを上げてくれるでしょう。

 それと、美羽ちゃんが「大きくなったら操くんと結婚する」と言い出したので、道生さんが頭を抱えて「う゛わ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」と絶叫していました。お父さんが以前「美羽ちゃんの成長速度を鑑みると、あと数年後にはウエディングドレスを着れる年齢になる」と零したときと、まったく同じ反応です。

 操くんが帰還した暁には、血涙を流した道生さんが愛機を駆って襲い掛かりそうで心配です。今のところ、フェストゥムは恋愛関連の知識を持っている様子はありませんが、いずれはそのような個体が現れる日も近いでしょう。もしかしたら、操くんがその個体第1号になるかもしれませんね。ELSと共生する新人類としては見過ごせません。

 

 それと、広登さんが本土にある音楽学校へ進学しました。芹さんも本土の学校へ進学したようです。僕らが来たとき、お2人とも長期休みで竜宮島に帰省していました。丁度芹さんが「島の爬虫類とカブトムシ・クワガタが軒並み食い荒らされているので、島の生態系を滅茶苦茶にした犯人を捕まえる」と息巻いていました。

 爬虫類を食い荒らしていた下手人は翔子さんで、「焼き肉が食べれなくてやった。バイストン・ウェルでは爬虫類はお肉に次ぐご馳走だった」と語っていました。乙姫さん並みの危険思想だと総司さんが戦慄していました。「人間関係が滅茶苦茶(要約)なので、みんな同化してしまえば早い」並の発言扱いされたようです。

 カブトムシとクワガタを食い荒らしていたのは増田照夫と名乗る観光客でした。外見・声・口調――どこからどう見てもマスターテリオンでしたが、芹さんの頭突き数発でノックアウトされていたので別人でしょう。連れの女性の名前がエゼルドレータだったというのも、観光客がマスターテリオンに見えた理由だったのかもしれません。

 

 仕事の途中で、アーカムシティにも立ち寄りました。九郎さんは覇道財閥お抱えの探偵になっていましたが、探偵としての腕は微妙のまま。それ故か、未だに収入とは縁遠いようです。ジョーイくんは九郎さんの弟子的な立場になっており、最近はリナさん主導で女装に挑戦させられている模様。危うく僕も巻き込まれそうになりました。

 東西博士も相変わらずしょうもない悪事を起こすので、デモンベインとヒーローマンが街の平和を守っています。この前は大きな事件に巻き込まれたらしいですが、旧アルティメット・クロスの面々が協力することで事件は解決。色々ありましたが、この手紙に書くには長すぎるので、また別な機会に語ることにします。手紙も漫画もネタが大事ですからね。

 

 アニエスさんはサヤさんやハレルヤさんたちと一緒に、世界中の施設を巡って慈善事業を行っているようです。施設を作ったと言う話も耳にします。仕事現場の関係や兼ね合いのため、すれ違うことの方が多いです。直接顔を見てはいませんが、多方面から聞く噂から分析する限り、4人とも元気なのだと思います。

 

 悪の組織もバタバタしていましたが、リボンズさんが就任してようやく落ち着きました。就任時は「マザーみたいに1人で多くのことをこなすまでには至らないけれど、家族と一緒に頑張ってみる」と苦笑していたことは、昨日のことのように思い出します。今では立派にみんなを率いていますので、ベルさんの人事は的確だったと言えるでしょう。

 総帥として業務を行うリボンズさんの横顔からは、『僕はまだ子どもだ。僕たちには貴女が必要なんだ』と言ってベルさんに縋りついていた子どもの面影を薄らくみ取れる程度です。姿形はずっと変わらないけれど、あれが大人になるということなのかと感慨深く思っています。僕もいつか、そんな大人になる日が来るのでしょうか。

 ヒリングさんやリヴァイヴさん、ブリングさんやディヴァインさん、リジェネさんも、家族として、同胞として、リボンズさんを支えようと奔走しています。アニューさんがお父さんたちと同じ外宇宙探索隊として抜けてしまった穴も埋まるようになったので、アニューさんが気にしていらっしゃるようでしたら伝えてあげてください。

 

 “もういない”人々と共に旅立った白い船は、今、どこの宇宙(そら)を飛んでいるのでしょうか。ベルさんが逝ってしまってから1年ですが、随分昔のことのように思います。

 ユガの狭間で別れた人々――操くん、サコミズ王、呂布さん、フェイさん、ジンさん、アユルさんたちにも、安らかな安息があることを祈ってやみません。

 

 あと、ビリーさんとミーナさんに子どもが生まれました。元気な男の子です。ミーナさんの様子から鑑みるに、まだまだ作る気満々な模様。最終的には何人儲けるつもりなんでしょうか? ネーナさんが悔しそうに呪詛っていたことが忘れられません。テオドアさんが歌手として再デビューし、多忙になってしまったから致し方ないんでしょうね。

 

 ところで、お父さんと一緒に外宇宙探索に乗り出した、ソレスタルビーイング号のみなさんはどうなっていますか?イアンさんは発狂していませんか? ティエリアさんとミレイナさんは楽しくやってますか? マネキン夫婦は仲良くやっていますか? スメラギさんとラッセさんの胃痛は大丈夫ですか? アンドレイさんは絹江さん不足になっていませんか?

 ロックオンさんたちは派手な兄弟喧嘩を繰り広げているのですか? フェルトさんとアニューさんは、義姉妹として夫たちの兄弟喧嘩に呆れているのですか? キラ准将はえげつない発言をしていませんか? クリスさんとリヒティさんは仲良くしていますか? 刹那さんとグラハムさんは元気に愉快なやり取りを繰り広げていますか?

 

 ――お父さんは、イデアさんと仲良くしていますか?

 

 アルティメット・クロスの事後処理が終わった後、軍部とソレスタルビーイングはお互いに対し、表立って敵対的な行動はとらない方針になってますよね。戦争犯罪者として裁かれることはあるかもしれませんが、おそらく形骸的な処置になるでしょう。むしろ、戦争犯罪者として裁いた結果が『ELSや外宇宙生命体との対話を行うための最前線へ出向』かもしれません。敵味方として殺し合うことは、もう二度と起きないはず。

 

 僕が何を言いたいかというと、『お父さんは自分の幸せを考えるべき』だということです。好きな人と一緒に生きていいと思うんです。

 誰かとのおつき合いとか、結婚とか、そろそろ真面目に検討すべきではないでしょうか? その相手に誰が入るのかなんて、お父さん本人がご存知のはずでしょう。

 結構長い間おふたりを見守ってきた人間としては、“そろそろ2人とも腹を括るべきではないですか”と思ったり思わなかったり。

 

 だって、お父さんと出会うために200年近くロックオンしていた一途な人がいるんですから! 一途に貴方を想っている人がいるんですから!

 お父さんだって、まだ齢1桁の頃から「みんなに会う」ために頑張って来たんでしょう!? どうしても会いたかったみんなの中に、あの人がいたんでしょう!?

 

 僕はお父さんのことが大好きですし尊敬もしていますけど、そこだけはどうしても納得できません。もしここで「お前がその姿を保ち続けることをやめるなら考える」と言うのでしたら、親子喧嘩を勃発させることもやぶさかではありません。僕が7歳児の姿を保っているのは、貴方に助けられたことを忘れたくないからです。貴方に救われたこと、守られたこと、愛されたことを亡くしたくないからです。僕自身の命が尽きるまでやめませんのであしからず。

 

 ミュウおよびイノベイターは便利なもので、人よりも若いままの姿を保つことができます。ついでに長命であることも発覚しており、右半身の7割がELSと同化しているミュウ――僕の場合は、『数百年程生きるのではないか』と言われています。全身が完全に同化したイノベイターやミュウの場合、どれ程の時間を生きるのか……考えるだけで気が遠くなりますね。

 旅をする中で出会う外宇宙生命体の中には、百年単位すら「短く儚い命」と称する生き物がいるのかもしれません。神と呼ばれるような力を振るう上位生命体が跋扈していてもおかしくない。虚憶で見た聖アドヴェントやネバンリンナ、バルギアスやジスペル、ミューカス・エンペラーやクレディオもインパクトが凄かったです。

 彼や彼女の存在もまた、上位生命体や高位存在の一角でしかないんですよね。何を見てもどうしても参考にならないことが多いですが、応用が利くことが救いでしょうか。神様を斃して未来を手に入れたという実績も相まって、人類は新たなるステージへと足を進めているように思います。

 

 未来へ還った人にも、過去へと還った人にも、現在を生きる僕らにも、それは確かな標になっている。

 きっとこれからどんな困難があっても、命が紡いだ愛と希望が道を切り開いていくんだ。――僕はそう信じます。

 

 

 話題は変わりますが、最近不思議な夢を見ます。

 

 僕は不思議な施設の内部にいるんです。その施設はどうやら宗教団体のようなもので、大樹をシンボルにしていました。何かを信仰していることは明らかだったので、興味本位で施設内部を探索してみたんです。不思議な格好をしている人々とすれ違いましたが、彼らは僕を認識していない様子でした。

 好都合だったので探索を続けると、異様な雰囲気を放つ部屋があったんです。宗教団体が信仰している大樹の絵や厳かな雰囲気とは全然違う、キラキラした部屋でした。祭壇には10代後半~20代前半くらいの女性の写真が飾られているんです。亜麻色の髪に緑柱石を思わせるような瞳が特徴的な、綺麗な人。

 多くの男性が彼女を崇拝している様子でした。祭壇の壁には誰かの名前が書かれていたのですが、何故か読み取ることができなくて。辛うじて『ファンクラブ』だけは認識することができました。微笑みを浮かべた写真や彼女を模した人形が一杯飾られていて、LOVEという単語がポップな字体で踊っていました。

 

 件のファンクラブは、年若い青年や、肩幅の比率を空目して二度見したくなるような男性が中心になっているようでした。双方共にガチ勢です。ですが、その部屋にはもう1人――いいえ、正確にはもう1羽と称した方がいいでしょう――いたのです。鳥の影が、じっと祭壇を見つめていました。正確には、祭壇に飾られている女性の写真を。

 値踏みをしているようにも思いますし、どこか魅せられているような気配も感じます。どこか悪意に近いような企みの気配も感じますが、鳥の背後からは、更に超弩級の悪意を感じました。以前感じたマザーコンピュータ・テラ並みの悪意を。所謂『上には上がいる』と言うヤツですね。正直理解(わか)りたくありませんでした。

 

 鳥の影はずっと、写真を見ているんです。ずっとずっと、見続けているんです。暫くすると、どこかへ飛び去ってしまって。――いつもそこで目を覚ますんです。

 

 青年も男性も、鳥の影も、何かを話していました。何かを口走っていました。でも、夢から覚めて覚えていることはほんの僅かです。

 『アル・ワース』や『智の神エンデ』という単語が何を意味しているかはさっぱり分かりませんが、新たな戦いの気配が近寄ってくるような感覚がありますね。

 

 裏で糸を引いている“何か”の気配を色濃く感じます。アルティメット・クロスがまだアンノウン・エクストライカーズだった頃に起きた戦いで、嘗て僕の生みの親――お父さんの双子の妹である刃金蒼海が、マザーコンピューター・テラから与えられた叡智を駆使して世界を私物化しようと企んだ計画を思い出しました。

 マザーコンピューター・テラが蒼海に知識を与えたから蒼海が狂ったのか、発見者である蒼海の狂気に毒されたマザーコンピューター・テラが一種の未来予知的な演算を行ったのか、未だに答えが出ていないそうですね。その辺は軍の記録でも有耶無耶にしているようです。

 奴を同業者と呼んだデウスエクスマキナは何かを知っている素振りを見せていましたが、そこにヒントがあるのかもしれないと僕は考えています。お父さんを見て口走った「本来の生贄」や「幸せな目隠し」というワードが、ずっと頭の中に引っかかっているんですよね。

 

 ……結局、「既に奴の企みは瓦解したから、語る必要はない」として、何も教えてはもらえませんでしたっけ。

 終わったなら教えてくれたっていいと思うのに、神を自称するヤツはどうしてみんな不親切なんだか。

 

 話題は変わりますが、最近、マザーコンピューター・テラの跡地で不思議なエネルギー反応が発生しているという噂を聞きました。JUDAの皮を被った加藤機関の面々や悪の組織もバタバタしているため、件の調査は僕が1人で担当することになっています。先程、話題にマザーコンピューター・テラを挙げたのは、近々また関わりを持つことになるためでした。

 地獄公務員の面々はロストバレルで悪事を働いてばかりの沢渡を追いかけていますし、穏やかに暮らすことを選んだショウさんとマーベルさんを邪魔するつもりもありません。彼らやお父さんたちのように、それぞれの場所で頑張っている人たちがいる――だから僕も、僕のできることを精一杯頑張りたいんです。

 もし誰かが、虚憶で見たネバンリンナ以上にトチ狂ってるマザーコンピューター・テラを悪用しようとしているのなら、嘗てその機械によって人生を歪められた人間の1人であり、アルティメット・クロスの一員である僕が止めるべきだと思っています。もう二度と、お父さんやグラハムさんのような被害者を出さないためにも。

 

 ……特にグラハムさんは、マザーコンピューター・テラの力を得た蒼海によって酷い目に合わされていますから。

 

 薬や快楽漬けにされ、関係者の命や自身の記憶を盾に取った脅迫で心を折られかけながらも、あの人は帰って来た。一度は破滅の運命を受け入れ突き進んでいたけれど、お父さんとの友情や刹那さんへの愛が、彼の“望む場所へ還りたい”という想いを抱かせ続けるに至った。――それ故に起きた奇跡を、僕は知っています。救われたように笑ったあの人の姿も。

 後遺症として“自分が死ぬ虚憶を延々と見続ける”という枷を背負っても尚、グラハムさんは普段通りの態度を崩さなかった。後で本人から聞きましたが、「弱音の吐き方まで気を使っていた」ことを知って驚いています。お父さんや刹那さんには僅かな違和感を抱かれ、最終的には見破られたようですが。……本当に、強い人です。愛の方向性は迷走気味だけど。

 

 そろそろ35回目の誕生日が近づいているそうですが、グラハムさんの傷は癒えたのでしょうか。いつか完全に癒えて、“自身の死”という虚憶の呪縛からも解放されることを祈っています。例えまた迷走することはあっても、お父さんや刹那さんがいるんですから、きっと大丈夫でしょう。僕も、アルティメット・クロスのみなさんがいてくれるから平気です。

 

 色々長く書きましたが、今回はこの辺にしておきます。帰還の目途はまだ立っていないようですが、僕のすることは変わりません。お父さんたちが外宇宙へ航海の旅に出るのなら、僕が貴方の帰ってくる場所を守ります。

 美味しいご飯を作って待っているので、帰って来たら「ただいま」と笑ってくれたら嬉しいです。それから、外宇宙探索で見聞きしたことや、お土産話を沢山聞かせてくださいね。そのときを楽しみにしています。

 

 では、失礼しました。

 どうか息災で。

 

 ソラツグ・ハガネ/刃金宙継より

 

 

◆◆

 

 

 

 始まりと終わり、過去と未来、生と死、命のこたえ。数多の陰謀が交錯した長い動乱は終わり、人類は永遠のループを解脱した。

 世界は新たな始まりを迎え、集った可能性はそれぞれの世界へと還る。それぞれの世界で、未来を生きるために。

 

 

「よいしょ、っと」

 

 

 瓦礫の山を乗り越えて、刃金(はがね)宙継(そらつぐ)は目的地に辿り着く。

 

 嘗て別荘地として流行っていた名残を廃墟という形で残したこの島は、地下にマザーコンピューター・テラが存在していた場所だ。アルティメット・クロスが活躍する戦乱よりもっと前に発生した戦いが起きていた頃は、刃金蒼海以外この島に出入りしていなかった程寂れていたという。誰も出入りしない場所だからこそ、マザーコンピューター・テラの存在はずっと秘匿されてきたのかもしれない。

 勿論、戦乱を超え、マザーコンピューター・テラが完全に停止した現在、この島は完全な無人島となって捨て置かれている。停止寸前に出された『メギドシステムによる地球の破壊』なんて悍ましい命令が遂行されることも無ければ、未来予知に等しい演算能力が悪用されることもない。人類を監視し、歪な箱庭を創り出したシステムは絶たれた。歪みの犠牲者たちも、当時の痛みを抱えながら歩き出している。

 

 

(入り口は……潰れてますね。思念波を使っても人や動物の気配はないし、誰かが出入りした形跡もない)

 

 

 念には念を入れてみたが、宙継が想定するような最悪のケースは存在していなかったようだ。同時に、報告で挙がっていたような『不思議なエネルギー反応』は見当たらない。

 何も起きないことに越したことはないのだ。このままガセネタであってほしいな、と、宙継は思う。……最も、調査に来たばかりで、結果がまだどうなるかは分からないが。

 

 

「ソラ、どうしたの?」

 

「このままガセネタだったらいいのになって思ったんです。この世界がまた戦乱に包まれるのは御免ですから」

 

「……そうだね。せっかくみんなと仲良くなれたのに、また戦うの、嫌だな」

 

 

 宙継の隣に寄り添うのは、少し年上の少女――亜麻色の髪をウェーブロングにし、透き通った蛋白石(オパール)のような瞳を持っている――を模した金属生命体ELSだ。個体の識別のため、宙継はセイカ――漢字表記で星歌――と呼んでいる。セイカは不安そうにふるりと身を震わせた。セイカは、刹那が対話を成功させる以前に出会い宙継と融合したELSの一部が、宙継から可能性を学んだことで生まれ落ちた個体である。ELSの端末的な存在であるという意味では、人間に友好寄りのミールが端末として生み出した来栖操に近しい存在だ。

 ELSは“人類には多様性がある”ことを学び、それに見合った存在をメッセンジャー兼人類とELSの架け橋として生み出した。地球に残り、人類との共生を達成するために残った個体が、セイカを筆頭とした“純粋なELS”や宙継のような“ELSと融合した人間”である。自分たちが見聞きし体験したことは、本体のELSたちに共有される仕組みになっていた。そうやって、彼らは人類と共存するための可能性を学んでいる。同時に、それは外宇宙探索部隊と行動を共にしているELSにも共有されていた。

 大分距離が離れてしまっても、彼らのネットワークは強固らしい。多少のタイムラグはあれど、最終的には全ての個体に情報が伝達される仕組みなのだ。人類側はそれを良い方面で活かせないかと考えている。宙継が父・クーゴに宛てた手紙を思念波にして飛ばしているのも、研究の一環という面があった。セイカにとって宙継は、共生主であると同時に教師的な存在である。セイカが何を学び、人間との交友を望むELSとしてどんな選択をするのかは、宙継に懸かっているのだ。

 

 

(子育てってこんな感じなんでしょうか……)

 

 

 宙継を引き取り育ててくれたクーゴのことを思い出しながら、宙継はそんなことを考える。

 

 父はいつも、宙継のことに対して心を砕いてくれていた。軍に勤めているが故に忙しい身でありながらも、料理を作り置きしていてくれたり、今日の出来事をメモして交換ノート的なやり取りをしたり、非番の日は一緒に過ごしてくれたり、父親として必死に頑張っていたことを知っている。

 蒼海から『出来損ない』だの『失敗作』だのと言われ、存在を全否定されてきた宙継のことを救い、気にかけてくれた。宙継が零した呟きを拾って、本当に父親になってくれた。大きな背中を想い出し、宙継は思わず表情を綻ばせる。

 

 

(僕も、あの人にとっての“自慢の息子”になりたいなあ。セイカが、僕にとっての大切な相棒であるのと同じように)

 

 

 そのためにも、宙継が背負ったこの大役を――人類とELSの架け橋になることを、ちゃんと果たさなければならない。宙継がひっそり決意を固めたときだった。

 

 

「ソラ、何か来るよ!」

 

 

 セイカの指摘に顔を上げる。真っ青な空のど真ん中に、曇天の雲が渦巻いていた。中央部には魔法陣を連想させるような不気味な光が点滅している。

 次の瞬間、その渦から何かが飛び出してきた。緑と白を基調とした謎のロボットと、青い土人形のようなデザインのロボットたち。

 元アルティメット・クロス関係のデータベースにも、こんな機体は存在していない。ELSたちのネットワークにも存在していない、完全な未知の存在たちだ。

 

 

「どうする?」

 

「脳量子波と思念波を併用して呼びかけてみます。セイカ、力を貸してください」

 

「わかった」

 

 

 セイカと協力して、宙継は脳量子波と思念波を展開した。目の前の機体に乗っているパイロットたちへ、コンタクトを試みる。

 即座に撃墜行動を取らないのは、アルティメット・クロスで培った異種族との対話が起こした奇跡を知っているためだ。

 

 自分の所属と名前、攻撃する意思がないこと、ここがどのような惑星でどんな知的生命体が住んでいるのかを告げ、何をしに来たのかを問いかける。ここで対応を間違ってしまえば、嘗ての戦乱を再現する事態に陥ってしまうためだ。

 

 人類との相互理解が構築されていなかったのと、人類側が脅威認定したために争いを繰り広げていたバジュラ。

 “すべてを同化することで高次元へと至る”という目的の為に、()()()人類と同化していたフェストゥム。

 学習能力が高すぎたことと人類の対応によって間違った知識を学習し、挨拶と攻撃を勘違いしたことで泥沼になりかかったELS。

 

 彼らとの戦いで犠牲になった人々のことを悪くは言えない。当時の人類は自分たちの身を守るので手一杯で、彼らを理解する余裕はなかったから。実際、彼らが人類に対して行った行動は、人類にとっての攻撃行動だったから。

 誰かが疑問を持たなければ、誰かが「分かり合いたい」と願わなければ、この平和は得られなかった。対話をすることもなく、理解し合うこともなく、共生の道を模索することもなく、殺し合いの果てに絶滅していただろう。

 

 

(――さあ、どう出る……?)

 

 

 どうか友好的であってくれと願った瞬間、機体の真正面に魔法陣が展開した。迸る雷と青く光る弾丸が、宙継たちの元へと容赦なく降り注ぐ!

 

 

「撃って来た……!」

 

「仲良くするつもりはないということですか……!」

 

 

 友好的どころか悪意に満ちた攻撃だ。思念波で防壁を展開して凌ぎながら、宙継は敵機を睨みつける。攻撃を仕掛けてきたあたり、あの機体に乗っているパイロットたちを放っておけば、やっと平和になったこの世界に新たな戦乱が呼びこまれてしまうことは確実だ。

 正直舌打ちして悪態をつきたい心境なのだが、セイカの教育上に悪いので押し止める。宙継が何を成すべきかを察知したのか、セイカは小さく頷き返した。次の瞬間、宙継とセイカの意志に応えるようにして、愛機が眼前に転移する。現れ方の参考は、以前美海がアルカトラズの慰問ライブでペインキラーを召喚したアレだ。

 当時とは違い、宙継は野郎でオーディエンスは1人もいない。よって、キバの輩から応援されるようなこともない。隣にいるのはセイカと愛機だけ。文字通りの孤軍奮闘だ。――それでも、アルティメット・クロス/正義の味方としての矜持がある。

 

 宙継は即座に愛機のコックピットに転移する。セイカも、ELS用のコックピットに転移して準備を終えたらしい。

 主である宙継が搭乗したことを察したかのように、計測機器やウインドウに光が灯る。迎撃するには特に問題はない。

 

 

「――行きますよ、フリューゲル!」

 

 

 宙継の声に応えるかの如く、愛機――フリューゲルのカメラアイが光った。

 そのまま勢いよく飛び出し、謎のロボットたちと対峙する。

 

 フリューゲルは、嘗てユニオンの主力機体であったフラッグの系譜を引く可変型MSだ。開発元は悪の組織であり、とある事情で悪の組織に所属していた父親が搭乗していた機体・はやぶさと、地球連邦の次期主力MS候補として試験導入されていたブレイブのデータを下地にして作られた機体である。性能はブレイブ寄りだが、ブレイブとの変更点があった。

 

 まず第1に、新人類である宙継やELSであるセイカ用の改造が施されているという点だ。刃金宙継はELSと融合したハイブリット型イノベイターであると同時に、外宇宙からやってきた新人類・ミュウの系譜を引く者である。イノベイターとの違いは、“サイオン波という特殊な脳波を使った超能力を使える”ことにある。他者の心を読み取るだけでなく、シールドを張って攻撃を防いだり、思念波を使って他者に干渉したり、周囲の物体に干渉することで物理的な攻撃力を発揮することもできた。

 得意分野は個人によって違い、4種類存在する。思念波の色によって分類することが可能だ。破壊力に突出した過激なる爆撃手(タイプ・イエロー)、シールドによる防御を得意とする完全なる防壁(タイプ・グリーン)、思念波を使った読心術やテレパス能力に優れた思念増幅師(タイプ・レッド)、すべての能力を高い水準で発現することができる荒ぶる青(タイプ・ブルー)。嘗てはその能力故に、別宇宙で反映していた人類から絶滅させるべき害虫扱いされていたが、後に手を取り合って生きていくことになった。

 地球再生を夢見て旅するミュウたちがこの宇宙へ迷い込んだことで、一部のミュウがここの地球に残ることを選んだ。悪の組織の関係者は、その直系の子孫や、ミュウたちと心を通わせたことで己も目覚めた者や、その子孫たちで構成されている。宙継も“ミュウを受け入れることで、自らもミュウに目覚めた”者だ。元々ミュウが住んでいた銀河では、「人類は最終的にミュウへ進化する」という研究結果が存在していたらしい。イノベイターと潰し合う危険性も考慮されているようだが、現時点では様子見と言ったところか。

 

 第2に、フリューゲルは人類だけの技術で生み出されたものではないという点だ。この機体は外宇宙探索用の新型MSとしての運用を視野に入れており、ELSやバジュラ、フェストゥム等の外宇宙生命体の力を借りるという前提がある。フリューゲルの協力者として選ばれたのは、刃金宙継と融合していた金属生命体ELSであった。フリューゲルに関わるELSのまとめ役を担っているのがセイカである。

 フリューゲルはELSが融合することで運用されることを前提とした機体だった。そのため、表面は既に、セイカを母体に置くELSたちによって覆いつくされている。その他には、ELSから与えられるであろう膨大な情報量を捌けるよう、それ相応のスパコンやOSも搭載されていた。嘗てELSとの対話を試みて失敗し、脳に大きな損傷を負った刹那・F・セイエイのケースから配慮された安全装置だ。

 

 

「セイカ!」

 

「分かった! みんな、お願い!」

 

 

 セイカの指示を受け、フリューゲルに取りついていたELSたちが形状を変えて独立する。小型ELSの群れはフォーメーションを組み、ビームを発射した。

 謎のロボットたちは不可思議な防壁を展開して防御を行う。どんな原理か分からないが、あの防壁は、ELSによるビーム攻撃の威力を大幅に削いだようだ。

 

 

(今の防ぎ方、どのデータにも該当しない……?)

 

 

 “原理が分からない”ということは、それだけで充分な脅威になり得る。降り注ぐ雷の群れを回避しながら、宙継は相手の動きを見極めようと試みた。

 

 敵機は強い敵意を以て、宙継とセイカの操縦するフリューゲルへ攻撃を仕掛けてくる。件の機体には、パイロット個人用のカスタムは行われていないらしい。どれも均一的な攻撃を仕掛けてくる。

 あの様相からして、機体の特徴を一言で言い表すとしたら“移動砲台型のロボット”だろうか? しかし、機体スペックは均一でも、雷の威力には個人差があるらしい。セイカはそれに目敏く気付いたようで、不思議そうな顔をしていた。

 

 “持ちうる能力によって出力に差異がある”という点は、フリューゲルに搭載されているESP-Psyonドライヴと類似点がある。ESP-Psyonドライヴはミュウの持つ思念波を増幅し、機体に搭乗した状態でも発現できるようにした特殊機能のことだ。しかし、思念波には“使い手の心理状態によっては暴走してしまう”危険性も孕んでいる。

 思念波は感情と密接にリンクしており、感情のままに力を振るえば、周囲はおろか力を振るった本人すら破滅させる程の威力を叩き出す。それが怒りであれ、恐怖であれ、決意であれ、使い方によっては、使った本人を死に至らしめるケースだって存在しているのだ。感情と力に飲み込まれてしまわないよう留意しつつ戦う必要があった。

 

 

「ソラ。やっぱりあの魔方陣、『マジカル☆アマリン』に出てきたのと同じだよ!」

 

「興奮するのは分かりますけど、今はアレをどうにかすることを考えましょう。仕事が片付いたら、『マジカル☆アマリン』の視聴に付き合いますから!」

 

 

 雷が発生する原理を観察していたセイカが目を輝かせた。彼女の姿を形成する際元になった魔法少女アニメを思い出しながら、宙継は敵機へ対応する。

 

 降り注ぐ雷を、サイオン波を纏った日本刀型のブレードで切り捨てていく。それを見て怯んだ機体へ向かい、容赦なく首部分を切り落とした。

 宙継のサイオン波――荒ぶる青(タイプ・ブルー)を目の当たりにした敵機体の動きが乱れ始める。心なしか、放たれた雷の威力も下がってきたように見えた。

 敵の隙を見出し、ブレードで敵機を無力化していく。程なくして、宙継たちに攻撃を仕掛けてきた機体はみんな沈黙した。改めて、パイロットたちにコンタクトを試みる。

 

 

(……変だ。パイロットの感情や思念が一切感じられない)

 

 

 沈黙した機体の搭乗者は、全員抜け殻になっていた。彼らは虚ろな目で天を仰いだっきり、何も語ろうとしない。何も感じていない。

 

 自分が捕まる場合、人は何かしら感情を抱くはずだ。もう戦わなくて良いのだという安堵、これから何が起こるか分からないという不安、自分の今後に対する心配。

 勿論、抱く感情は人それぞれ。何かしら差異が出るのも当然のことだ。――なのに、彼らから伝わってくる感情は、みんな均一でぼんやりしている。

 

 

「思考が統一されてるのかな?」

 

「人間の場合、『思考が統一されている』となると、碌でもないことが多いんですが……」

 

 

 セイカの言葉に薄ら寒いものを感じて、宙継は体を震わせた。元々「母体の元で思考が一元化されており、個の概念が無いに等しい」生命体――ELS、フェストゥム、バジュラの一角であるセイカは、思考が統一されていても違和感を感じにくい。特にELSは、最近個の概念を学習したばかりだから致し方ないだろう。

 ELS、フェストゥム、バシュラとは違って、人間は個に対しても重点を置く。自分を縛る全の概念に対して反抗する権利が保障されているように、おかしいことには「おかしい」という自由が保障されているように、迷い選択すると言う権利を行使できるように、多様性という概念が存在しているのだ。

 その権利を奪い取ろうとした存在を、宙継はよく知っている。前時代の遺物であったマザーコンピューター・テラが、人類と地球を監視しようとした出来事だ。己が定めた規格に合わない人間や新人類を容赦なく抹殺し、歪な支配体制を敷こうとした――演算能力に物を言わせた無自覚な悪意を思い出すと、酷く悪寒が走る。

 

 

『回答:人類は、私を受け入れない』

 

『私を受け入れぬ人類など、不要』

 

『――よって、そんな人類には地球など不要。メギドシステムにより、地球を崩壊させる』

 

 

 自分用に洗脳していた手駒たちを繰り出した姿も、惑星(ほし)を破壊するための兵器が火を噴かんとしたときの記憶も、神に等しいスーパーコンピューターによる暴挙に対して異を唱えた人間たちの意地も、未だ色あせない。

 

 メギドシステムを止めるために、ソレスタルビーイングやアロウズ、地球連邦軍も関係なかった。アンノウン・エクストライカーズの関連組織や悪の組織も手を貸してくれた。JUDAや加藤機関も裏でこっそり手を貸していたことを、後で石神と加藤から聞かせてもらった。あの機械のせいで世界が滅ぶのは、2人の望むことではなかったから。

 人間たちには個があって、様々な考えが存在することが許されている。それ故に、1つの答えで纏まることはとても難しい。けれど、それでも――生きるために、守るために、自分たちの意志を1つにすることができるのだ。敵も味方も手を取り合って、多くの命を背負って、同じ願いの為に行動を起こしたのだから。

 

 “彼らが自発的に、1つの目的の為に意志を一つにした”ならば、何もおかしいことはない。

 問題なのは、“何者かの手によって、彼らの意志が一元化されている”という部分である。

 このパイロットたちは明らかに後者だ。何者かの強い介入によって、言動と反応が均一化されている。

 

 

「……こういうのは、“何によって洗脳されてるか”が問題なんですよ。精神制御と言っても、やり方は沢山ありますからね」

 

「暗示とか、薬とか、機械による精神制御とか、高次元生物による介入とか? 最後のは『マジカル☆アマリン』でやってたけど。アマリンが魔獣の洗脳を受けて――」

 

「彼らを拘束して然るべき機関へ送り届けたら、ゆっくり観ましょうね」

 

 

 『マジカル☆アマリン』談義を始めようとしたセイカを引き留め、宙継がコックピットから降りようとしたときだった。

 

 

「ソラ、巨大なエネルギー反応!」

 

「回避は……間に合いそうにないか! ショック耐性っ!」

 

 

 澄み渡った蒼穹を引き裂くようにして黒雲が渦巻き始めた。一歩遅れて、黒雲の向こう側から強大なエネルギーを感じ取る。

 セイカの警告も間に合わない。宙継は回避ではなく防御に徹することを選んだ。黒雲を割くようにして魔法陣が展開し、眩い光が発せられる。

 あまりの眩しさに、宙継は思わず目を閉じた。瞼の向こうから刺さるような閃光は、程なくして消え去る。

 

 

「――え」

 

 

 目を開けて、宙継は間抜けな声を上げた。眼前に広がる景色は、宙継が来ていた無人島――マザーコンピューター・テラの跡地ではなかったからだ。

 

 紫や黄色、青や赤など、絵本やファンタジー小説の挿絵でしか見たことのない配色の木々や草木が至る所に生い茂っている。

 空の青さも見知った青とは違い、どことなく霞んでぼやけているような色合いだ。どこまでも続きそうな草原が、宙継の眼前に広がっていた。

 

 先程のエネルギー波を分析し終えたセイカが口を開く。

 

 

「さっきの光は、私たちELSのワープやバジュラのフォールド波、フェストゥムのワームスフィアーによる転移とよく似てる」

 

「ということは、僕らは……」

 

「“どこかへ転移した”ってことになるよ」

 

 

 「その“どこか”がさっぱり分からないんだけど」と、セイカは難しそうな顔をして唸った。彼女の言葉通り、地図座標に関する情報が悉くエラーを叩き出している。……そういえば、バイストン・ウェルに飛ばされたとき、似たようなエラーに直面したか。完全な異世界だったため、地図情報を入手することは大変だった。

 協力者がいなければ、バイストン・ウェル組はまともに身動きできなかっただろう。そのときの協力者は“現地で知り合ったオーラバトラーたち”である。後に、フェンリルで自爆したと思われていた翔子が部隊へ合流した際、彼女は反乱軍の持つ地理や知識を網羅していたので、攻略時にはとても助けられたのだ。

 

 転移先に関する情報が一切ない場合、現地人の協力者を見繕うのがセオリーだ。……最も、現地人がどのような立場にあるのかを見極めた上で、協力者として相応しいか、慎重に選ばねばなるまい。

 

 因みに、宙継の出向先・JUDA/加藤機関である現上司――加藤と石神が、翔子が生還するに至ったプロセスを聞いたとき、「俺も想像力が足りなかった」と頭を抱えて蹲っていた。

 翔子が自爆する際に使ったフェンリルは気化爆弾だ。アレに巻き込まれたら最期、肉片や髪の毛一本すら残さず消えてしまう。生存しているなんてことは、まずあり得ない。

 石神の共犯者であるジュダも、「想像できるかこんな未来(モン)!」と悪態をついてもおかしくなさそうである。予測された絶望は、こうして変わっていくのだ。閑話休題。

 

 

「……とりあえず、人を探してみよう。情報を入手できないと、方針を立てることすらままならないよ?」

 

「それをELSである貴女が言うと、重さが半端ないですね」

 

「そうだね。私たちELSは、ビーム砲を撃つことを挨拶だと認識しちゃったもんねー」

 

 

 泥沼になりかかった当時のことを思い出したのか、セイカは難しそうな顔をした。ちょっとしたボタンの掛け違いが生み出した悲劇を、軽く見ることはできない。それが自身の意図するものでなかったとしても、他者の悪意から派生したものだったと言えど、相手側からすれば「だからどうした」と言われても仕方がないような出来事は何度もあった。

 

 特に、フェストゥムのケースが顕著だった。初期に出現したフェストゥム――フェストゥムを取りまとめる母体・ミールたちは、“純粋な()()”で同化を推し進めていた。死を恐れるべきものと認識したミールが、善意で「死の概念を無効化するために、誕生という概念と原理をなくしてしまおう」としたのがその例に該当する。

 後にフェストゥムは、蒼穹作戦絡みの出来事で憎悪を学習。ハザードが功績欲しさに撃った核ミサイルによって、怒りと憎悪に特化した一派が現れる。人類友好派のミールと殲滅派のミールがぶつかり合いを繰り広げ、その影響を受けたのが、来栖操を竜宮島/アルティメット・クロスへ接触させてきた派閥のミールだった。

 その後も、操を通じて人類を学習したミールは殲滅派へと鞍替えし、操に人類を滅ぼせと命令を下す。最後はミールの意見に反抗し、「戦いたくない」という自らの意思を貫く勇気を示した。フェストゥムを話ができる美羽を守るために飛び出したその背中を、宙継は今でも忘れられない。

 

 “空が綺麗”という理由で通じ合えた、大切な友達。彼はきっと、いつかまた生まれてくるだろう。

 もしまた会えたら、一緒に空を見上げると言う約束をしていた。閑話休題。

 

 

「それじゃあ、思念波を展開します。セイカ、手伝ってください」

 

「はーい」

 

 

 2人で協力して思念波を展開する。この近くに現地人がいるか否か、どの辺から人の気配を感じるかを察知する必要があった。

 人の気配さえ感じ取れれば、そこへ向かって移動することが可能になる。人が集まる所には町や村があり、情報収集にはうってつけだ。

 上手くいけば、案内役を見つけることもできるかもしれない。期待を抱きながら気配を探っていたとき――

 

 

「――こ、来ないでください! 来ないでぇぇぇっ!」

 

 

 ――どこからか、少女の悲鳴が響き渡った。

 

 




スパロボXのホープス×アマリにぶち抜かれて創作を始めたら、いくら検索しても自分の書いた作品しか出てこなかったので、むしゃくしゃして始めたのがこのお話です。完全に見切り発車で申し訳ない。
どうやったら早い段階でホープス×アマリに持っていけるだろうかと思案した結果、ELS・フェストゥム・バジュラが揃い踏みしたUXが頭に浮かんでこんなことになりました。
オリ主はアル・ワースにInした直後。次回で、丁度X原作の第1話に合流します。見切り発車ではありますが、ホープス×アマリのCPが増えることを願っています。

それと、思うところがあったので、先日投稿した1話を加筆して投稿し直しました。以降はこれくらいの文字数を目安にしていきたいと考えています。
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