・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープスが可哀想な目に合う(ヒント:捏造/“この時点での”ホープスの好みの味≒某魔獣の好みの味)。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。
地図系統や座標軸絡みのOSが使えなくなった宙継とセイカは、得体の知れぬ世界を歩くための案内人――あるいは情報収集できそうな村や町を探すために思念波を展開した。
そこで察知したのが、助けを求める女性の悲鳴。嘗てアルティメット・クロスとして、正義の味方として飛び回ったときの経験が、我関せずを決め込むことを良しとしなかった。
宙継とセイカは顔を見合わせて頷き合い、悲鳴の聞こえていた方角――思念が渦巻く方向へ向かって駆け出した。
少女の悲鳴と渦巻く思念からして、孤軍奮闘状態で途方に暮れていることは明らかだった。多勢に無勢、心細さと恐怖に震える思念が、宙継とセイカを急かすように漂う。
おまけに、間髪入れず似たような思念が1つ増えた。こちらは少年のもので、酷く動揺している。見知らぬ地に飛ばされ、出会い頭に敵意を向けられて混乱している様子だった。
双方を取り囲む敵の思念は上手く読み取ることができない。思念波には“機械系の敵が何を考えているのか判断しにくい”という弱点があるので、恐らく敵はその系統だろう。
「いた、あそこ!」
セイカが指さした場所には、数世代前に流行ったブリキの玩具を思わせるようなロボットたちが徒党を組んで、宙継より年上の少女と同年代くらいの少年に襲い掛からんとしているところであった。多勢に無勢どころか、完全な弱い者いじめである。
嘗ては正義の味方、アルティメット・クロスとして戦乱を駆け抜けた刃金宙継が、そんな光景を黙って静観するわけがない。
勿論、そんな宙継と共生の道を選んだELSのセイカも、弱い者いじめを黙認するような真似をするはずがなかった。
「多勢に無勢で、か弱い女性や少年を甚振ろうとする輩ってのは感心しませんね」
「どこの世の中にも、そういう奴らがいるんだよね。そのせいでいつも、フツーに生きてる人が迷惑するの」
宙継とセイカの存在を視認したロボットたちは、両名を邪魔者だと認識したらしい。少女と少年を追い詰める側と宙継たちに襲い掛かる側に別れ、後者が攻撃を仕掛けてきた。
アルティメット・クロス在籍時の座右の銘は“悪党には容赦と加減は必要なし”である。対話の大事さは分かっているが、対話を放棄して襲い掛かってくる輩の毒牙にかかってやる義理はない。話が通じないならまず無力化させ、それでも聞く耳を持ってくれない場合は――仕方がないことだが――倒す他ないのだ。
殴りかかってきたロボットの攻撃を回避し、宙継は思念波を叩きこむ。衝撃波が発生し、ブリキのロボットは情けない悲鳴を上げて吹き飛ばされた。……どうやらこのロボットは、「ブリキー」という鳴き声で会話を行っているらしい。同族同士とは普通に会話が通用しているようで、独自の言語を有していることは明らかだった。
宙継が冷静に分析している脇では、セイカが思いっきり正拳突きを繰り出していたところだった。即座に同化しないあたり、この子もちゃんと手加減したり、人間のコミュニケーション法を学習しつつあるのだろう。今回講じた手段が鉄拳制裁であることに目をつむりながら、宙継は娘のような少女の成長に喜んだ。
「わ、私も……!」
宙継とセイカの戦いっぷりに触発されたのか、少女が眦を釣り上げる。
「ほ、炎よ、舞って! ――イ……IGNEST!」
少女がそう叫んだ途端、彼女の掌から炎が舞い上がった。威力はそこまで大きくない上に、ブリキのロボットに対してダメージを与えたような様子も見受けられない。
だが、どういう訳か、少女が使った炎は奴らにとっての脅威と判定されたようだ。ブリキのロボットたちは悲鳴を上げながら逃走していく。それを見た少女は安堵の息を吐いた。
彼女はブリキのロボットがわき目もふらず逃げて行った理由に心当たりがあるらしい。『ドグマ』だの『魔従教団』だのという単語を呟いて、難しそうな顔をして唸っていた。
(――あれ?)
一部の単語に既視感を感じて、宙継は目を瞬かせる。
そういえば最近、似たような単語をどこかで耳にしたことがあった。大樹が描かれた厳かな部屋、少女の写真が飾られた祭壇、緑を基調にした制服と不気味な仮面を身に着けていた謎の構成員、年若い青年と肩幅を二度見したくなるような男性、祭壇の写真をじっと見つめる黒い鳥――宙継が見た不思議な夢の光景がリフレインする。
よく見れば、先程不可思議な炎を使ってブリキのロボットを追い払った少女にも見覚えがあった。でかでかと書かれた『■■■ファンクラブ』という垂れ幕に書かれていた名前は塗り潰されたように不鮮明で認識できなかったし、顔写真も靄が掛かっていたようにぼやけていた。目が覚めると忘れてしまう程、ぼんやりとしか認識できなかったのだ。
だが、今なら分かる。『ファンクラブ』と書かれた垂れ幕の下に飾られた写真に写っていたのは、紛れもなく彼女だ。服装は緑を基調にした制服だった――今現在、彼女が身に纏っている服装とは全く違かったけれど、確かに彼女だ。宙継は思わず息を飲んだが、少女と少年は自分のことで手一杯らしく、宙継の様子に気づいていないようだった。
「ね、ソラ。見た? さっきのヤツ、アマリンみたい! しかもあの子、よく見るとアマリンにそっくりだよ!」
「うちに帰れたら撮り溜まってるでしょうから、そのときに見ましょうね」
「リアルタイムでは見られないなんて……! 邪道だけど、この際、ELSネットワークを介して見るべきか……!?」
『マジカル☆アマリン』の話題で勝手に一喜一憂するセイカであるが、“少女がアマリンにそっくり”という点は宙継も同意できた。
実際、件の少女の顔立ちは『マジカル☆アマリン』の主人公――
もし実写化されたら、キャストとして彼女が選ばれそうな程であった。閑話休題。
「あの、大丈夫ですか?」
「助けてくれてありがとうございます」
「キミ、凄いんだね! 今の、一体何をどうしたの!?」
宙継に声をかけられ、少女と少年はぺこりと頭を下げた。特に少年の食いつきが凄い。
……それもそうか。ミュウの思念波を目の当たりにして、反応しない方が異常である。
嫌悪される可能性も視野に入れていたが、悪い反応じゃなくて本当に良かった。
「僕は民間企業・悪の組織からJUDAおよび加藤機関に出向している技術者兼MSパイロット。ミュウとイノベイターの複合型ハイブリット系新人類の、刃金宙継と言います。刃に金属の金、宇宙の宙に跡継ぎの継ぐと書くんです」
「悪の組織!? 宙継くんは悪い奴なの!?」
「悪の組織というのは企業名ですが、世間では慈善企業として認知されていますよ。むしろ『お茶目な正義の味方』です」
少年の驚きようは当然だ。何も知らない状態で『悪の組織』という単語を聞けば、特撮ヒーローものの敵組織を思い浮かべるのが常であろう。実際、少年もそう思ったようで、警戒気味に身構えた。少女も眉間に皺を寄せて警戒態勢をとる。
とりあえず、悪の組織の所業――孤児院の慰問、ボランティア活動、技術指導をしているときの光景を思念波で見せてあげたら、少年から「なんで悪の組織って名前にしたの!? 普通に正義の味方にすればいいじゃん!」と突っ込みを貰った。
「『正義の味方が正義の味方と名乗るのでは面白みがない。『悪の組織が世界征服を目指して動いたら、周りの人間が笑顔になり、幸せになっている』というコンセプトだからこそ、面白いんだ』――今は亡き、先代社長の言葉です」
「……そうなんだ……」
……先代社長だったベルフトゥーロ・ティアエラ・シェイド――ベルフトゥーロ・ティアエラ・シュヘンベルクの話をした際、うっかり思念波が漏れてしまったらしい。
宙継が思い浮かべていたのは、果て無き
ただ、悪の組織を立ち上げたベルフトゥーロが悪い人ではないことは伝わったようで、先程のような敵意は溶けて消えていた。これで、恩人にかけられた嫌疑は晴れたようだ。
「あたし、セイカっていうの。ソラと共生している金属生命体で、人間たちからはELSって呼ばれてるんだ」
「き、金属生命体……!?」
「うん。元々は別の惑星に住んでたんだけど、故郷が滅亡寸前になっちゃって、他の知的生命体に助けを求めて旅立ったんだ。で、あたしたちは人類が住まう星に辿り着いたの!」
セイカの自己紹介を聞いた少女は、大きく目を見開いた。流れ込んできた思念からして、彼女がセイカ――ELSのようなタイプの生命体を目の当たりにしたことは初めてのことらしい。だが、外見や先祖が違うレベルの異種族なら、この世界にも存在している様子だった。
金属生命体であるセイカのことをどう思ったのか気になって、宙継は少女と少年の反応を観察してみる。双方共に驚いてはいるが、嫌悪の感情はない。特に後者の少年は、好奇心を発揮して色々質疑応答を繰り返していた。拒絶されずに済んで一安心である。
宙継とセイカが迷子であることを伝え、彼女たちが一体どんな状況であるのかを問えば、少女が説明してくれた。彼女の話を要約すると、以下の通りになる。
少女の名前はアマリ・アクアマリン。異世界『アル・ワース』に存在する宗教および治安維持集団の一種・『魔従教団』に所属する、藍柱石の術士だという。宙継の世界で分かりやすく言えば、魔法使い――この場合で言うなら、『マジカル☆アマリン』の主人公/魔法少女――に近しいものがあった。アマリは少年――戦部ワタルの保護を依頼されており、ワタルがこの近辺に来るのを待っていたという。
ワタルは小学校に通う4年生。学校帰りに龍を見かけたことが切っ掛けで、このアル・ワースに転移してしまったそうだ。その際、ブリキのロボット――ブリキントンの群れに襲われていたアマリの姿を目撃。何が起こっているのか理解できずにいた彼に対して、ブリキントンたちは標的を変えて襲い掛かって来たらしい。後は、宙継が駆けつけて大暴れしたところからは存じたとおりである。
「まあ、私もピンチだったから、人のことは言えないんだけどね」
「まったくです、マスター」
アマリが苦笑したのとほぼ同じタイミングで、一羽の黒い鸚鵡が飛んできた。眼鏡をかけ、貴族を思わせるような紫のベストと白いシャツを身に纏っている。
脳量子波越しに、セイカが『アマリンのお供そっくり!』と声を上げる。割と大きな声だったので、彼女の声は宙継の頭の中にわんわんと響いた。――ちょっと、痛い。
「私たちは救世主を保護しに来たのに、通りすがりである彼らが来なければ、ブリキントンに為すがままだったではないですか」
「それはその通りなんですけど、見ていたんなら、助けてくれてもいいのに……」
「それは私の職務ではありません」
「そんな……」
件の鸚鵡はホープスといい、アマリの使い魔的な存在らしい。使い魔と主という関係性だが、ホープス自身は「自分たちは対等である」と語っていた。
……正直な話、ホープスの方が力関係が上のように見えるのは、主であるアマリがホープスに対して明確に反論できないせいだろう。
アマリは拗ねるように頬を膨らませたが、ホープスの調子に押されてしまったのだろう。何かを言いたそうに口を開いたが、結局押し黙ってしまった。
それを見ていたセイカの表情が一気に冷めた。巷で言う「チベットスナギツネ顔」と評した方がいいかもしれない。
「どうしたんです? セイカ」
「――ねえソラ。あの鳥さんはヘンタイさんなの?」
「ええっ!?」
「はあ!?」
いきなり核爆弾級の話題をぶち込まれ、宙継は思わず噴き出した。セイカの質問はホープスとアマリにもハッキリ聞こえてしまったらしい。双方共にぎょっとした様子でこちらを見る。セイカの瞳は、ハザードを見下すかのように冷ややかで、憤りという炎が揺らめいていた。
因みに、ハザードとは宙継の世界で戦った軍人である。アンノウン・エクストライカーズやエルシャンクを嵌め、軍に彼らを“人類を滅ぼそうとするテロリスト”認定させたのを皮切りに、様々な悪事を行って自軍の邪魔をしてきた奴だ。訳有ってアンノウン・エクストライカーズに居候していた父クーゴもその煽りを受け、テロリスト扱いされてしまう。
宙継もまた、ハザードの関係者たちから「テロリストの身内」認定され、事実上の幽閉状態にされていた。中には宙継に暴力を振るう輩もおり、命の危機と父の無罪を信じた宙継は、奴らによる監視の包囲網を強引に突破。早瀬浩一とその関係者が“早瀬軍団”を結成する場に居合わせ、そのままアンノウン・エクストライカーズに合流した。
その後もハザードは数々の悪事――地球をザ・ブーム軍に売り渡す、和解が成立しかけたフェストゥムたちに向けて核兵器を打ち込む、核兵器が積まれた戦艦を守ろうとした衛を背後から撃ち殺す(後に生存していたことが発覚したが、あの時は血が冷えた)、キバの輩を遠隔操作で突っ込む自爆特攻兵器に改造する、エルシャンクに向かって核兵器を撃ちこむ(操が守ってくれたが、彼が消滅する原因となった。後に生存が発覚し、自軍に合流)、地球を見捨ててバジュラ本星へ向かう等――を働いた。
勿論、奴の犯した悪事を、正義の味方が見逃すはずがない。地球連邦の大統領から直々に依頼を受けたUXは、奴を追いかけて宇宙へ飛び出した。みんなでハザードの乗る戦艦を攻撃するのは、今までの鬱憤を晴らすようで爽快だったことは今でも思い出せる。フラストレーションが溜まっていたと言えど、あの爽快感はちょっと異様だった。最後はジョウとイルボラによって止めを刺された獅子身中の虫は、ついに年貢の納め時を迎え、宇宙の藻屑となったのである。
宙継たちにとって“ハザードを見るような目”は、最大級の侮蔑を示す表現としてよく使われていた。閑話休題。
「待って下さい。貴女は何か、酷い誤解をしていらっしゃるようですが――」
「だってそうでしょ!? 自分の主が、得体の知れない機械人形に好き勝手されそうになってるのに助けないって、“そういう趣味”を持ってるからでしょう!? エロ同人みたいに、エロ同人みたいに!」
「エロ同じ……ッ゛!? ちょ、ちょっと待っ――」
「しかも、分かってて遠くから静観してたんでしょ!? 完全に“ピー(R-18御下品ワード)”好きじゃん! ELSネットワークで見たけど、ハードでマニアックな奴いっぱいあったよ!」
「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!?」」
弁明を悉く切り捨てられた挙句、奇妙なレッテルを張られたホープスと、娘のような存在から飛び出した危険なワードに衝撃を受けた宙継は揃って絶叫する。
宙継の頭は、2重の意味で痛かった。1つはセイカの発言、もう1つはセイカが発する脳量子波および思念波である。宙継はのたうち回りそうになった。
前者はそんな知識をどこで有してきたのか。後者は感情任せに情報や感情の本流を撒き散らしているせいで、宙継の脳に負担がかかったせいだ。
「私だったら、ソラがそんな目に合ったら相手を完膚なきまでに叩きのめしてやるもん! この命に代えてもソラを守るもん! だって私はソラの相棒だもん、それくらいするのは当たり前のことでしょ!?」
「セイカ……」
普段の宙継だったら、セイカの言葉に対して頷き返していただろう。……但し、現在は頭痛との戦いを繰り広げていたため、頷く間がなかっただけだが。
(……確かに、セイカの言葉にも一理ある)
痛みを堪えつつ、宙継は思案した。アマリとホープスのやり取りを見るに、使い魔であるホープスはアマリに対して慇懃無礼な態度をとっているように感じる。
“本気で主を敬っている”というよりは、“上手い具合に主を煽て、自分の都合のいい方向に誘導しようとしている”ような気配があった。
確かに、彼の発言は的確だ。戦いや旅に不慣れな主のことを慮っての意見ではある。……ただ、それが本当に、「主であるアマリのための意見か?」と問われれば、どことなく胡散臭さが漂ってくるのだ。
“腹に一物抱えている”という点では、アルティメット・クロスの関係者にも該当者が何名かいた。ロミナ姫の忠義を貫くため、敢えてアルティメット・クロスを裏切って立ちはだかったイルボラ。人類を救うため、人類に死を想像させようとして必要悪――死の象徴になろうとした加藤久嵩。加藤久嵩を含んだ人類と正義の味方を救うため、己の命を捧げようとした石神邦夫。娘のような存在に“いのちの答え”を見つけさせるため、自分の命を賭けたリチャード・クルーガー。愛する女性を死の側面に覚醒させるため、彼女ではなく自分が死ぬことを選んだジン・スペンサー。永遠に続く輪廻の輪から人類を解脱させようとして、数多の可能性を集め続けたノーヴル・ディラン。
彼や彼女の行動原理は『世界を救うため』であり、『自分が愛する者たちが生きる、自分が愛する世界を守りたい』という願いと望みのためだった。一見、彼や彼女が掲げた正義には独善や矛盾を孕んでいることが多い。こちらが必死に説得しても、一切聞く耳を持とうとしないのも特徴だ。そして何より、
石神が“自分が正義の味方になれない理由”――ヒトマキナが作り出したオーバーライドの力場に突っ込んで対消滅する――ことも、ジンが死に急ぎに似た行動を取った理由――サヤが生側の“いのちの答え”に辿り着いてしまったがために、アユルを死側の“いのちの答え”に辿り着かせようとした――ことも、ノーヴルが可能性を束ねた理由――世界をリセットしようとするカリ・ユガを打倒し、人類を永劫の輪廻から解脱させる――も、最後の最後になってから明かされた。
答え合わせがされてしまえば、彼や彼女の行動は理に適っていた。無意味・無謀・無策と思えるような言動にだって重要な意味があり、綿密に練られた
(ベルさんだって、亡き夫イオリアへの愛と誓いがあった。グラハムさんにだって、刹那さんへの惜しみない愛があった。――だから、2人は己の役割に殉じようとしたんだ)
来るべき対話を成功させるため、300年間ソレスタルビーイング関係者を見守り続けたベルフトゥーロ。
自分が死ぬ虚憶を延々と見続ける中で、己の役目が“未来への水先案内人/永遠の道標”であると悟ったグラハム。
2人が宿していたような強い激情は、主を導く希望の翼――ホープスからは一切感じない。むしろ、得体の知れぬ薄ら寒さがあった。
似たような薄ら寒さは、戦いの最中で何度も感じたことがある。人類を監視しようとしたマザーコンピューター・テラ、マサーコンピューター・テラを悪用して世界を私物化しようとした刃金蒼海、可能性を束ねた煽りを受けて凶悪な小悪党へと成り下がったハザード・パシャ、自分が楽しむだけに無駄な輪廻を誘発させていたナイアルトホテプ。
そういえば、最近見た夢で、“祭壇を見つめる鳥の影にも、似たような気配を感じた”ことを思い出した。あの鳥の外見は、どんな鳥だっただろう? ……丁度、ホープスとよく似た鳥ではなかっただろうか? ――だがしかし。
「フェストゥムのワームスフィアーを再現して、跡形もなく消してやるもん! なんなら、マークニヒトのデータから学習した成果を見せてあげるよ!? 今、ここで!!」
「待ってやめて待って! そんなものをこの場で披露したら、本当にみんないなくなっちゃうから――痛い痛い痛い! う゛ぉ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!?!?!?」
数多の情報と感情をダイレクトに叩き込まれ、宙継の思考は中断された。
痛みを堪えるため、反射的に頭を抱える。のたうち回らなかったのは、単に意地の問題だった。
セイカのせいで、この場は完全に大混乱に陥った。
「ほ、ホープスには、そんな趣味が……!? そんな性癖があったなんて……!」
「違いますマスター! 誤解です! 濡れ衣です! だから距離を取らないでください!!」
「え、ええと……その……」
アマリが顔を真っ赤にして恥じらいつつ、従者にかかった性癖(疑いの段階)に困惑する。心なしか、2人の距離が若干開いてしまったように感じたのは気のせいではない。
主の様子から自身の窮地を悟ったホープスは頭を抑えながらも、首を激しく振って否定。自分にかけられた誤解を解くことに奔走していた。
更にワタルに至っては、眉間に皺を寄せて一言。
「“ピー(R-18御下品ワード)”って何?」
「ワタルくん、聞いちゃダメです!」
小学4年生にそんな御下品ワードを言わせてはいけない――その一心で、宙継は吼えた。
派手に一喝されたワタルはびくりと肩をすくませる。自分でもびっくりするような大声だった。
彼は素直な性格だったようで、宙継の言葉に従って、それ以上の追及はしないでくれたことが救いだ。
最早迷走するしかない状況を一変させたのは、幸か不幸か敵の襲撃であった。先程のブリキントンたちが、魔神と呼ばれる機体を駆って襲い掛かって来たのである。
その数、合計7体。アルティメット・クロス時代はこの倍近い数が増援として現れるのは日常茶飯事ではあったが、味方がいたから大したことなかったのだ。
「…………」
「ねえ、どうしたの!? 何で急に黙っちゃったの!?」
「――覚悟を決めました」
魔神の数を数えていたアマリが顔を上げる。彼女の言葉通り――何処か不安な色は拭えないままだが――自身の前に立ち塞がる困難に向き合おうと決意したように。
アマリの話を聞く限り、魔神はワタルを狙っているらしい。アマリがワタルを保護するためにここを訪れたのは、ああいう輩からワタルを守るためだ。ワタルはただの小学4年生で、「自分がロボット軍団に狙われるような要素はない」と主張するが、アマリはその理由を知っている様子だった。
先程アマリが言っていた「救世主」という言葉が、何かしらのヒントなのではないか――宙継が1人で類推している間に、戦況は勝手に動く。ブリキントンたちが乗ってきた魔神とは違う機体が、ワタルとアマリたちを守るかのように飛び出してきた。魔神は相当の手練れのようで、敵を一刀両断していく。
しかしながら、1人で全てを相手するにしては、7体――つい先程1体が切り捨てられたので、残りは6体――というのは“いささか数が多い”。思念波を展開した際に置いてきたフリューゲルをこっちに呼び寄せようかと思案したとき、別の機体が背後から接近してきた。
黒い翼を有する白いロボット。それをアマリの傍まで連れてきた/操縦していたのはホープスだ。
相変わらずホープス優勢のやり取りを繰り返した主従は、ロボットに乗り込んで戦線へ飛び出していく。
「お姉さん……」
「茂みに隠れて待っていて」という言葉に従うしかなかったワタルが、心配そうな顔をしてロボットを見送る。昔の自分と横顔が重なって見えたような気がしたのは、嘗ての自分が父の背中を見守っていたのと同じ気持ちを感じ取ったからだろう。
数多の悪意と対峙する父親の背中を、覚えている。逆風にもめげずに飛び、還りたいと願った場所まで辿り着いた背中を、一度たりとも忘れたことはない。宙継は黒い翼を有する機体へ視線を向けた。不安に震えながらも、必死になって飛んでいる姿が父の機体――はやぶさ/ブレイブと重なる。
「ワタルくん」
「な、何?」
「ちょっとそこで待っててください。――
「え、えええ?」
宙継を無力な一般人だと信じ込んでいるが故に、ワタルは首を傾げる。彼にとって、今の宙継はどう見えているだろうか?
そんなことを思いつつ、宙継はセイカと共に思念波を飛ばす。フリューゲルが近づいてくる気配を感じながら、宙継は相棒の到着を待った。
戦線に派手な動きがあった。新たな魔神の群れが徒党を組んで現れたのである。新手の数は先程と同じ7体だ。残り3体に加算されたので、合計は10体。アマリとホープスが操縦している機体やワタルたちを守るために現れた謎の魔神にも、疲労の色が滲んでいた。特に前者は、出力が不安定になりかかっている。
どうやらアマリは戦いに不慣れなようだ。もうすぐ戦いが終わると思っていたところへの増援だ、心理的に手痛いのは当たり前だと言える。彼女とホープスが操縦している機体は、ESP-Psyonドライヴと非常によく似通っている――“パイロットの精神状態を反映する”タイプの機体らしい。
魔神たちはその隙を見逃すことなく、アマリの機体へと殺到する。手練れである魔神がフォローに入るが、数で押されているために突破されてしまった。アマリの機体へ向かって、魔神たちが集中攻撃を繰り出す。アマリの機体は必死になって避けて反撃を繰り出していたが、思うようなダメージは与えられていなかった。
文字通りの万事休す――そのタイミングで、ようやく遠隔操作して急行させたフリューゲルが姿を現す。夜空を思わせるような鉄紺の機体が、宙継のすぐ傍に降り立った。
「ちょ、宙継くん!? これって、宙継くんのロボット!?」
「はい。そういう訳ですんで、ちょっと行ってきます」
ひらひらと手を振り、宙継はコックピットに転移した。機材類や武器類の調子を確認する。アル・ワースに転移させられたショックか、幾つかの武装に不備が発生しているらしい。だが、戦うことに関しての問題は無さそうだった。“増援で出てきた魔神に、ELSを取りつかせて遠隔操作する”というエグい手段だってある。
セイカも件の手段を行使することに対して迷いはない。ジリ品なのはこちらだし、相手は無力な子どもに対して数の暴力で襲い掛かって来るとんでもない奴らだ。ロボットを1体くらい拝借したって、相手側にとっては痛くも痒くもないだろう。
アマリとホープスや手練れの魔神を操るパイロットは、突如戦線に現れた宙継の機体/フリューゲルに対し、警戒の色を見せる。
彼らの危惧は当然のことだ。ただでさえジリ貧なのにこれ以上出てこられては、撃墜されてしまってもおかしくない。
宙継は回線を開いて呼びかける。まさか宙継も戦線に参加してくるとは思っていなかったのか、アマリが驚きの声を上げた。
「宙継くん!?」
『5分だ』
「5分です」
先輩である早瀬浩一の言葉を、宙継は勝手に拝借する。
つい最近発生した事件で、彼が使った口上だ。
このことを知ったら、浩一は何と言うだろうか?
『5分で全部片付けてやる!』
「5分で全部片付けます」
借りるのは言葉だけではない。本当に借りたいのは、彼の胸と正義だ。
点と線を繋いで、偽りの未来を打ち壊した機体――ラインバレルを駆る正義の味方。
『俺は!
「――だって僕も、
早瀬軍団の最年少メンバーとしての、ささやかな矜持だった。
「アマリさん、自己紹介について1つ訂正させてください」
刃金宙継。ミュウとイノベイターの複合型ハイブリット系新人類で、民間企業・悪の組織からJUDAおよび加藤機関に出向している技術者兼MSパイロット――この自己紹介に関して間違いはないが、1つだけ不備があった。
「僕は刃金宙継。ミュウとイノベイターの複合型ハイブリット系新人類で、民間企業・悪の組織からJUDAおよび加藤機関に出向している技術者兼MSパイロット。――そして、輪廻を解脱し世界を救った究極の混成部隊『アルティメット・クロス』に所属する、“正義の味方”です!」
アルティメット・クロスは実質的に解散状態であるが、同じ時間の中で生きている面々とは連絡を取り合っていた。何かある度に協力し合い、事件に対峙したことだってある。
みんなそれぞれの団体に別れて動くようになったけれど、アルティメット・クロスの名前が完全に消えたわけではない。未来は今でも、人々の手によって紡がれ続けていた。
“集え、はじまりの元に”――アルティメット・クロスの物語が始まった冒頭の言葉を脳裏で諳んじながら、宙継とセイカは魔神に向き合った。
魔神の1体が宙継とセイカ/フリューゲルの元へと突っ込んでくる。宙継は操縦桿を動かし、魔神の攻撃を軽く避けて見せた。アマリとホープス、魔神を操る手練れの操縦者が息を飲んだ気配を感じ取る。宙継は即座に旋回し、反撃態勢へと移行した。
宙継の思念波/サイオン波で作り上げた青い小太刀を、ブリキントンが操る戦車型の魔神へ投擲する。嘗て宙継が搭乗していたちょうげんぼうという機体で、よく使った武装だ。小太刀は戦車のど真ん中に命中。魔神は呆気なく爆発四散した。
討たれた仲間の敵討ちだと言わんばかりに、背後から別の魔神が迫る。そちらはセイカが買って出た。小型ELSの群れを展開し、魔神へと差し向ける。金属生命体の浸蝕/同化を受けた魔神は、抵抗叶わずそのまま飲み込まれてしまった。
「動かせますか?」
「うん。その代わり、ELSビットは使用不可能になるけど、いける?」
「勿論」
フリューゲルには、ELSビットと呼ばれる武装が搭載されている。ビーム兵器やビット兵器を学習した小型ELSがビット型に擬態し、ビーム攻撃や障壁を展開する仕組みとなっていた。ELSビットを制御するのは、フリューゲルや宙継と共生関係にあるELSの母体的存在であるセイカが担当していた。
ELSを他の機体に取りつかせたり、ELSに他の機体に擬態してもらった場合、セイカはそちらを動かすことに集中する。
そのため、フリューゲルに搭載された武装・ELSビットは使用不可能になるのだ。メリットとデメリットを理解したうえで、宙継はセイカの問いに答える。
「同化完了。それじゃ、動かすよ!」
程なくして、ELSによって完全に同化された魔神――量産型ゲッペルンは、セイカの支配下に置かれた。「うわ。GX-XⅣよりスペック低いね」とぼやきつつ、セイカは早速ゲッペルンを元朋友たちへと嗾ける。先程まで味方だったはずの存在から襲い掛かられることは想定外だったらしく、ブリキントンたちの統制が一気に乱れた。
日ごろから「想像しろ」と語っていた加藤の言葉が脳裏をよぎる。ああやって混乱する奴から命を落とすと言う理論は、あながち間違ってはいなかった。勿論、奴らの隙を自分たちが逃すはずもない。フリューゲルは崩壊した陣形に突っ込む。逃げ惑う機体の1つが爆発四散した。残りは――支配下に置いた1機を除いて――7体。
「敵の魔神の1体を支配下に置いた。これで、実質あと7体倒せば凌げる」ことを、回線を開いて2名に連絡する。セイカの索敵結果では『これ以上の増援は訪れない』とのことだ。宙継の発言が呼び水になったのか、不安定だったアマリの機体が持ち直し始めた。先程までの弱気など感じさせず、黒い翼の機体が魔法を次々と行使する。
変わって、手練れが操る魔神は安定してゲッペルンを屠っていく。
この調子なら、先程切った啖呵通り、5分もかからずすべてが片付くだろう。
――宙継の予想は見事に的中し、程なくして、ゲッペルンの群れは完全に掃討された。手練れの魔神は去り、残されたのは、アマリとホープスが操る黒い翼の機体と宙継とセイカの乗るフリューゲル、そうして茂みに隠れていたワタルのみ。
「強いんだね、魔法使いのお姉さん! あと、宙継くんとセイカちゃんも!」
「僕は大したことしていません。勝てたのは、アマリさんたちがいたからです」
ワタルからの賛辞を貰い、宙継は照れ臭いのを堪えるようにしてアマリへ話を向ける。
アマリの方も褒められたのが嬉しいのか、ちょっと恥ずかしそうに苦笑した。
「見苦しいところも、沢山見せちゃいましたけどね」
「そう言った自覚があったことは安心しました」
しかし、使い魔にして指南役的な立場に立つホープスは、アマリが素直に喜ぶ時間を与えてくれない。黒い鸚鵡は嫌味たっぷりな態度を崩さなかった。
「あんまり言わないでください。思い出すと消えたくなるんですから……」
「これは失礼。ですが、向き合わなければ、弱点が克服できないこともお忘れなく」
「…………」
“嫌味な鸚鵡に『マジカル☆アマリン』のそっくりさんが言い負かされている”現場が気に食わなかったのだろう。
セイカはチベットスナギツネみたいな顔をして、宙継に愚痴をこぼした。――ホープスにも聞こえるほどの、大きな声で。
「ねえソラ。“ピー(R-18御下品ワード)”好きな鸚鵡が何か言ってるよ?」
「「やめなさい!!」」
***
案内人であるアマリ曰く、異世界アル・ワースには、複数の国があるらしい。
どの国も文明レベルに大きな差があり、ワタルの保護を依頼してきた地域――創界山近隣のドッコイ村は特に、“日本の古き良き田舎町”を再現したような、長閑で慎ましやかな村であった。里山には古民家がいくつも立ち並び、至る所に田畑が存在している。収穫間近の野菜が瑞々しく生い茂り、田んぼの稲は若葉から深緑色へと変わりつつあった。
村の名前があんまりにも安直な気がしたが、世界や文化が違えばネーミングセンスにだって差異ができて当然である。自ら問題を起こすつもりのない宙継は、特にコメントしないことを選択した。勿論、素直すぎて色々口走りそうなセイカに対して、しっかり釘を刺しておくことも忘れていない。先程の『R-18御下品ワード事件』を避けたかったためである。
尚、西部である創界山およびドッコイ村の他には、東部に神聖ミスルギ皇国を始めとした高度情報文明を扱うマナの国、南部にはつい最近新体制が敷かれるようになった獣の国が存在しているらしい。前者には一切覚えがないが、後者2つに奇妙な既視感を感じたのは気のせいではないだろう。宙継の虚憶には、双方の人々と関わったものがあるためだ。
虚憶を受け取る――どこかの平行宇宙に存在する刃金宙継が体験し、抱いた想いが、今ここに居る宙継に届く/宙継が受け取る現象――ことの意味を噛みしめつつ、宙継はアマリの説明に耳を傾けた。
アル・ワースに関する情報は、現時点ではアマリ・アクアマリンから開示/入手されるものしか存在しないのだ。聞けるだけ聞き出し、あとは現地で情報にどれ程の際があったかを確認するのが最善手だろう。
「どうでもいいけど、僕、お腹がすいちゃったよ」
「子どもですね。未知の環境への好奇心より、食欲の方が勝るとは」
「当たり前じゃん! お腹が減ったら、何もできないもの!」
ワタルが零した素直な言葉に対し、ホープスが釣られるようにして反応する。
「子どもは苦手だ」と零したホープスであるが、ワタルの“ある言葉”に対して異様な執着を滲ませた。
「……確かに真理ですね。
――その言葉に滲んだ得体の知れぬモノを、どんな言葉で表せば適切だったのか。
人類を俯瞰する立ち位置から物事を分析しているような気配を察知し、宙継は思わずホープスに視線を向けた。彼の眼差しからは、人間を下に見ているような傲慢さがちらついている。例えるならそれは、高次元生物の視点を持つ立場に近しい。カリ・ユガ、聖アドヴェント、クレディオの姿が連鎖的に浮かんでは消えた。
「アマリの使い魔である」と語るホープスに対して抱いた薄ら寒さも、多分ここに起因しているのだろう。彼は対話可能な知性と理性を持ってはいるけれど、共生可能な存在かと問われたら、何とも言えぬ疑問/疑念が残る。現状では友好的と分類出来そうだが、今後の展開次第では、アマリの無防備な背中に襲い掛かりそうな気配が漂っていた。
不意に、ホープスが宙継の方を向く。
金色の瞳と、黒い瞳が交錯した。
「……宙継様、どうかなさいましたか?」
「……もし僕が、『空腹よりも怖いものがある』と言ったらどうします?」
「ほう。それは興味深いですね。――因みに、それは何ですか?」
宙継が零した発言に対し、ホープスが目を瞬かせる。宙継はニッコリ笑って答えた。
「『僕の大切な人や、僕や僕の大切な人が大事にしている場所がなくなってしまう』ことです」
あの日の戦いを思い出す。束ねられた可能性が、永劫の輪廻を壊して解脱へと至った戦いを。自分たちが何を思って、戦うことを選んだのかを。
愛する人を守りたかった。愛する人が愛したものを守りたかった。愛する人が生きる世界を守りたかった。愛する人の笑顔を守りたかった。愛する人と生きる未来を守りたかった。
自分の手から零れ落ちた命がある。帰りたいと願いながら、ユガの狭間から帰ることを選ばなかった命がある。去り往く者たちから、今を生きる者たちへ託された希望がある。
生と死によって見出された“いのちの答え”。輪廻という鳥かごを打ち破って、鋼の鳥たちが未来へと飛び立つ背中を――刃金宙継という命は、きっと永遠に忘れない。
「――くだらない」
ホープスは暫し沈黙していたが、宙継に聞こえるか否か程度の声色でそう呟いた。
興味をすっかり失っているあたり、宙継の言葉に対して
彼の視線は、村に群生する木々へと向けられていた。平原でも生えていた色とりどりの木々には、樹木の色に対応した果実がたわわに実っている。見るからに美味しそうなのだが、木の実からはどす黒いオーラが漂っていた。宙継がぎょっと目を見開くのと、ワタルが興味津々に木の実を指さしたのはほぼ同時だった。
ワタルの問いに対して「その木の実は味がしない。美味しくないから食べない方がいい」と諭すだけのアマリに対し、宙継はぞっとした。件の果実は、「食べない方がいい」という一文で済ませていいものではない。触れてしまったら最期、“飲み込まれ、二度と帰れなくなってしま”いそうな気配が漂っていた。
痛み、悲しみ、苦しみ、絶望――あの果実から漂うオーラは、幾度となくアルティメット・クロスに襲い掛かった試練そのものだ。なんでこんなものが平然と生えているのだろう? しかも、ワタルに教授しているアマリの発言から鑑みるに、これらはアル・ワース中に群生しているという。
宙継は反射的に後ずさりする。入れ替わるようにして、ホープスがばさばさと翼を羽ばたかせた。木の実に口をつけていないのに、彼は確かに木の実を喰らっていた。……正確には、
「……ソラ、あれはヤバい奴だよ」
宙継のすぐ後ろに漂っていたセイカが、苦い顔をして木の実を見つめる。彼女は今、交流があった異種族友達――フェストゥムのことを思い出している様子だった。
皆城総司によって痛みを知ったフェストゥム・イドゥンが、その痛みに耐え切れず、「私を消せ」と絶叫していたことが頭をよぎる。今なら、彼がそう叫んだ理由が分かる気がした。
「今はまだ“何とかなりそうなやつ”だけど、転がり方によっては大変な存在になりそう」
「……激おこ状態のミューカス・エンペラーや、ゲッター戦を浴びたエイリアン等の系列ですかね?」
「あのまま対話可能な存在でいてほしいけど、大丈夫かな……?」
「ヴァサージ枠のままでいて欲しいものですが、今はまだ様子見するしかなさそうです」
宙継は、虚憶で出会った地球外生命体のことを思い返す。
進化の枝分かれで、人類種との交信能力を得たミューカスの亜種――ヴァサージ。言葉を介することはなかったが、彼はいつだってコネクト・フォースの味方でいてくれた。最後はミューカス・エンペラーと融合し、本種であるミューカスという種族ごと人類を救ってくれた。
ミューカスのコアへと至ったヴァサージによって、いずれ誕生するミューカスたちは「平和的な個体になる」と言われている。知的生命体の存在を許さず、ヴァサージらの種族と交信できる一族だけを例外として生存させていた暴虐の皇帝――ミューカス・エンペラーは倒れたのだ。
コアへと至ったヴァサージの伝令を受け、ミューカスたちは争いをやめていった。人類、および人類が生きる世界は平和を取り戻し、今後は地球外生命体と一緒に手を取って生きていくことになるだろう。――そんな『希望に満ちた物語』を思い描いたのは、名が体を表さぬ黒い鸚鵡のせいだった。
今回は真っ黒ホープスが出現。後の展開も踏まえた真っ黒さをイメージした結果がこんな感じ。現状のホープスは「好物と思考回路が某魔獣に近しい」ので、割と下種い思考回路となっています。
彼が原作25・26話、39話の某イベントでどこまで化けることになるのか、宙継とセイカによる浸蝕の影響がどう出るかを楽しみにしていただければ幸いです。のっけから飛ばしていますが、今後も加速していく模様。
主を助けずにいたらとんでもない目に合ったり、恥じらいながら困惑するアマリに対して「距離を取らないで」と威厳なく頼み込んだりしているホープス。いちゃつくまでにはまだ遠いですが、最低でもそこまで辿り着きたいと考えています。
尚、この小説はダイジェスト風味なので、いきなり場面がすっ飛ぶ場合があります。宙継とセイカから見たスパロボX・ホープス×アマリが主軸になっているためです。場面が吹っ飛んでいた場合は、「ああカットしたのか」と思って頂ければ幸いですね。