鋼の鳥は約束の場所へ   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・魔従教団について捏造+魔改造が施されている。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)

上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。


いつか、あなたの心に咲く花は

 地球を旅立ち、ELSの母星へ向かったお父さんへ

 

 先日メッセージを送ったばかりなのに、また送ってしまいました。僕を取り巻く現状が目まぐるしく変わったため、お父さんに是非知ってほしいと思ったのです。

 このメッセージがお父さんに届くまでのタイムラグを考えると、お父さんがこの手紙を受け取る頃には、僕の現状も今以上に変わっているのかもしれませんね。

 

 「想像しろ。それが出来ない人間に待ち受ける末路は、死だ」――出向先の上司、加藤さんがよく言っていた発言を引用させてもらいます。それを引用する許可も無ければ、大部分が僕の解釈が混じった話になりますが。

 

 脅威に対する意識を疎かにしてしまえば、いざというときに発生した事象に対応できなくなってしまう。死への恐怖を忘れてしまえば、何かに備える意識を疎かにしてしまい、それが原因で滅びの道を転がり落ちてしまう。滅びの未来から、僕らが学び取ったことでしたね。

 想像することは、思考することと同義です。悩み、迷い、決断を下すために必要な要素だと僕は思っています。想像するから、思考するから、人類は“正しい進化”を選択できる。デウス・エクス・マキナから売られた証明への挑戦――“人間であり続ける”ために必要なこと。

 しかし、想像力には限度があります。想像を絶するような生還劇や逆転劇を、人は奇跡と呼ぶのです。フェンリルを起動させた翔子さんがバイストン・ウェルで“凄腕の聖戦士”と呼ばれる実力者になったのも、オーバーライドのエネルギーに特攻しようとした石神さんを止めるために現れた援軍たちの乱入も、奇跡の1つだと言えるでしょう。

 

 長くなってしまいましたが、僕の現状をお話ししましょう。

 

 僕は今、アル・ワースと呼ばれる異世界にいます。オドと呼ばれる魔力が世界中の摂理を満たす、文字通りのファンタジー世界です。「一応、“宇宙に浮かぶ惑星である”定義は存在しているので、微弱で不安定ながらもELSネットワークを張り巡らせることができる」とセイカが言っていました。このメッセージも、不安定な中で出しています。

 セイカからは「このメッセージがいつ届くかは分からない」と警告されましたが、敢えて僕はメッセージを送ることにしました。何も言わないままではお父さんを心配させてしまうのではないかと思い、可能性が0でないのならやる価値はあると判断したためです。アルティメット・クロス時代の名残みたいなものですね。

 

 現在、アル・ワースの北部にある山間部の里山にあるモンジャ村に滞在しています。20世紀初頭の日本の山村を思わせるような家や田畑が広がる、長閑な村です。

 本来ならばその日のうちに旅立つはずだったのですが、村と救世主であるワタルくんを襲撃してきた敵を撃退したので、そのお礼として、おもてなしを受けることになりました。

 

 座って待つのが苦手だったのでお手伝いに率先して参加したら、オジジさんとオババさんに「手伝ってくれてありがとう。お前さんは優しい子だねぇ」と褒められました。最終的には、おもてなしされる側だったワタルくんやアマリさんたちもお手伝いに名乗りを挙げて、みんなでご飯を作りました。ご飯を作るのも食べるのも楽しかったです。

 そんな中で意外だったのは、鸚鵡のような外見をしているホープスも配膳を手伝ってくれたことでしょうか。魔法生物という出自故か、ドグマの応用で、器用に物体を運ぶことができるようです。あの様子だと、本気を出したら料理を作って振る舞うこともできるかもしれません。仕込みたいです。閑話休題。

 

 異世界に飛ばされるという事態そのものは、アルティメット・クロス時代に『バイストン・ウェルへの転移』という形で体験していました。しかし、『ループ構造になっていた銀河内部ではない』本物の異世界転移というのは初経験です。未知の世界に対する好奇心や困惑がなかったわけではありませんが、あの頃の体験は応用が利きました。

 僕の外見年齢と同年代の小学生、戦部ワタルくんが突然の異世界召喚で大慌てになっている横で、僕はどうにか普段通りの態度と思考回路を保つことができました。加藤さんが常々仰っていた、「想像しろ」という言葉があったおかげです。あの言葉がなければ、僕もワタルくんと同じく動揺していたことでしょう。

 それと、魔術に対する耐性は、九郎さんとアルのおかげで既に獲得していました。ですが、僕が話した内容は、逆に現地の術士――僕らの世界で言う魔法使い/魔法少女――であるアマリさんをタジタジにさせてしまったようです。宇宙が吹き飛ぶレベルの出力を叩き出す機体ですから、しょうがないのかもしれません。

 

 僕が転移したアル・ワースは今、前代未聞の危機に陥っているようです。現状では敵も様子見と言ったところで、アルティメット・クロス時代の切羽詰った気配が感じられないという点が救いでしょうか?

 

 現状説明が長くなってしまいましたね。では、現状に至るまでの経緯をお話します。

 

 マザーコンピューター・テラの跡地を調査していた僕は、僕らの世界に転移してきた謎のロボットと遭遇。こちらのコンタクトに対して攻撃行動を取った機体を無力化しました。

 パイロットたちと対話を行おうとしたのですが、操縦者たちはみんな、心ここにあらずというような状態になっており、会話を試みることが不可能となっていました。

 彼らを然るべき施設、および団体へ保護してもらうことを検討していたとき、突如空に暗雲の渦――巨大なエネルギーの集束が発生。そのエネルギーによって、僕とセイカたちは異世界へと転移してしまったようです。

 

 その後、僕とセイカは現地人であるアマリさんとホープス、僕と同じように転移してきたワタルくんと遭遇。ワタルくんを狙ってきた魔神・量産型ゲッペルンを名無しの協力者と撃退した僕らは、アマリさんの案内の元、創界山付近にあるドッコイ村へと到着したのです。

 ドッコイ村には『悪の帝王・ドアクダーによって創界山に架かる虹の色彩が奪われたとき、アル・ワースに危機が訪れる。龍神に見いだされた救世主が異世界から召喚され、ドアクダーを打倒し世界を救うだろう』という救世主伝説が語り継がれていました。

 

 実際、村の虹は色彩を失っており、近隣周辺ではドアクダー軍に所属する幹部連中が暴れていました。しかも、救世主であるワタルくんの息の根を止めるため、新たな刺客がドッコイ村に攻撃を仕掛けてきたのです。

 そちらは僕たちや村で出会った現地人・剣部シバラクさん、そして、救世主として覚醒し愛機を手にしたワタルくんで撃退しました。村や住民の方々に目立った被害はなかったことは幸運と言えるでしょう。

 『図工の時間に造ったロボットが、異世界アル・ワースで魔神と呼ばれるロボットになる』現象を見たのは初めてです。セイカが「是非とも同化して解析したい」と発言したことがきっかけで“龍神丸マナーモード事件”が発生しましたが、何とか説得しました。

 

 ――そうして僕たちは村人からの歓待を受け、現状の説明へと至るわけです。

 

 アマリさんからご教授頂きましたが、最近、このアル・ワースでは、僕と同じような境遇――異世界から召喚された、救世主伝説とは無関係の人物が増えてきているそうです。どのような力が働いているか、誰が主導しているのかの詳細情報は掴めていない模様。……ただ、碌でもない存在の介入がありそうな予感がしました。

 異界人を召喚しそうな巨悪の候補としては、創界山の虹から色彩を奪った張本人ドアクダーが有力視されています。明確な証拠はありませんが、オジジさんとオババさん曰く「奴が持つ強大な力なら、異世界から人間を次々召喚することは可能である」そうです。みなさんも、ドアクダー犯人説に同意しているようでした。

 

 正直な話、ドアクダー犯人説は『あくまでも仮説の段階』だと僕は思っています。龍神丸がワタルくんをアル・ワースに召喚したように、ドアクダー以外にも異界人召喚を行いそうな該当者がいてもおかしくありません。“異世界から人間を召喚するのは、神レベルの高次存在だけではない”ということです。

 「原理的には、()()()()()()()“異なる場所・時代から、任意で人間を召喚することができる”」という話をしたら、ホープスの表情があからさまに変わりました。人間が異世界人を召喚しているという話題に対して、彼は何か覚えがあるようです。……残念ながら、上手い具合にはぐらかされてしまいましたが。

 その話題の延長で、僕とセイカは僕らの世界のこと――アルティメット・クロス時代の話をすることになりました。特にワタルくんが一喜一憂してくれて、「人類は他種族との共生、その架け橋になるであろう希望だ」という話題に浪漫を感じてくれたようです。この場に操くんがいたら、きっと良い友達になれたことでしょう。

 

 ただ、アルティメット・クロスには伴侶持ちが多かったので、シバラクさんの怒り様が凄かったです。

 

 シバラクさんは現在婚活中で、剣の修行の傍ら、素敵な女性との出会いを求めているようです。そのため、美人を見れば口説くし(但し、未成年の女性/例.アマリさんは射程圏外のため、仲間として接しています)、リア充を見ると悔しくて仕方がない様子。

 特に刹那さんとグラハムさん、九郎さんとアルさん、ダミアンさんとカレンさん、剣司さんと咲良さん、ジョウさんを取り巻く三角関係、浩一さんを取り巻く三角関係、アルトさんを取り巻く三角関係、一騎くんを中心とした人間関係の玉突き事故がお気に召さなかった模様。

 とりあえず、成立したカップルや各種関係大炎上の面々がどんなプロセスを踏んできたのかを懇切丁寧に見せてあげたところ、「拙者の“理想の恋愛像”が凝縮されていて、大変参考になった」と仰りながらメモを取っていました。目が本気でした。

 

 『お前たち2人が俺の翼だ』という台詞を大層気に入ったようなので、その台詞を言って大炎上した面子を引き合いに出して顛末を見せておきました。

 これで、シバラクさんが“恋愛方面で大炎上する”心配はないでしょう。あれはアルトさんの台詞だから許された感が強いですから。

 

 ……あれ、アルトさんは許されたんだっけ? ジョウさんが許されなかったことは確かだったんですけど。

 

 

 唐突ですが、話題を変えます。

 アマリさんとホープスのことです。

 

 アマリさんはアル・ワース全土で強い力を持つ宗教団体、魔従教団に所属する術士だそうです。術士は魔従教団の教えを体現するため日夜研鑽に励みつつ、アル・ワースの平和と秩序を守るために行動していると言います。僕らの世界で信仰されている宗教に、国軍および治安維持部隊としての役割が付加されていると言えるでしょう。独自権限があるという点では、宗教団体の側面が強いのかもしれませんね。最近は異界人の護衛と保護も行っていると聞きました。

 

 アマリさんは5歳のときに、ドグマ――僕らの世界で言う魔法――の才能を見出されて教団へスカウトされたそうです。以来、家族と会ったり連絡を取ったりは一切していない模様。家族とはもう13年も会っていない/連絡も取っていないのに、家族に対する未練もなければ心配する素振りもないのが異様でした。

 シバラクさんは「教団員として当然」だと仰るのですが、アマリさんの発言内容は“カルト教団に洗脳された信者”にしか見えません。「僕の世界には、“機械に頭を弄られた結果、家族や友人を自分の駒扱いするようになったヤバイ人”がいた」と訴えてみたのですが、逆に「心配のし過ぎ」と言いくるめられてしまいました。一部は実体験なんだけどなあ。

 

 最後の抵抗として、出向先の上司/加藤さんの台詞「想像しろ。――それが出来なければ、辿り着く結末は死だ」を添えたのですが、効果があったか否かは微妙です。

 

 彼女の相棒――使い魔であるホープスは、魔従教団で生まれた名無しの魔法生物だったそうです。事情は一切話してはくれませんでしたが、彼はアマリさんをパートナーとして見定め、契約を結んだことで“ホープス”という名を与えられたと言っていました。名前の由来は由来は“希望”。彼は「安直な名前」と語っていましたが、僕はいい名前だと思います。

 安直と嘲笑いつつも意外と気に入っているようで、「そんなに気に食わないなら改名すればいいじゃん。アマリに抗議して付け直してもらったら?」というセイカの言葉に対して、凄い勢いで反論・噛みついていました。“アマリさんに名前を付けてもらった”ということも込みで、自分の名前を価値あるものだと感じているようです。素直じゃないなぁ。

 セイカと言い争う姿は微笑ましいのですが、ホープスは腹に一物抱えている気配がします。僕の話――特に、愛と希望に関わるような話を冷めた様子で聞いていたり、負の感情を漂わせる知恵の実を好んでいたり、困惑したり途方に暮れた様子のアマリさんを眺めている姿が非常に楽しそうだったりと、明らかに“よくないもの”としての側面が滲んでいるのです。

 

 対話を行う知性と理性はありますが、『その気がなくなった』瞬間、阿鼻叫喚になりそうな気配がします。“ホープスが優位に立っている”という主従関係も、嫌な気配を倍増させる原因なのかもしれません。アマリさんは“被洗脳者である可能性を差し引けば”信頼に足る気質と人柄を持っている人物ですが、殊更、ホープスには気を付けた方がいいのかもしれませんね。

 

 突破口がないわけではありません。主従としての力関係は逆転していますが、ホープスはアマリさんに対して執着めいた様子を見せることがあります。アマリさんからアル・ワースに関しての教えを乞うていたら、長時間放置されたセイカ共々拗ねていました。拗ね方が完全に瓜二つでした。

 アマリさんが謝罪すると即座に上機嫌になるあたり、現金で俗っぽい一面もあるようです。慇懃無礼な態度は崩していないけれど、素直で勤勉な努力家であるアマリさんの在り方は素直に賞賛していました。アマリさんという存在自体が、ホープスへの楔になりそうです。アマリさんには悪いのですが、彼女の頑張りにすべてが掛かっています。

 

 ELSと共生する新人類として、アマリさんとホープスの関係が良好になるようにと願ってやみません。

 異種族コンビの先輩として、僕らも何かできないかを思案してみようと思っています。

 

 

 色々長く書きましたが、今回はこの辺にしておきます。 

 

 では、失礼しました。

 どうか息災で。

 

 

 ソラツグ・ハガネ/刃金宙継より

 

 

★★

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 手持無沙汰という言葉が、今の自分()()にはよく似合う。セイカはちらりと視線を向けた。

 ホープスもちらりとこちらに視線を返す。喜ばしくないことであるが、今、お互いの気持ちが理解できてしまった。

 

 視線の先には、アル・ワースに関する質疑応答を繰り返す宙継とアマリの姿がある。時折ワタルやシバラク、つい最近旅路に加わったサイバスターの操縦者――マサキ・アンドーとその使い魔であるシロとクロの茶々や解説が入っていた。

 

 

(1人と2匹が増えて、より一層賑やかになったなあ)

 

 

 楽しそうに語らう宙継たちの姿を眺めながら、セイカはひっそりと微笑んだ。宙継にアル・ワースの友人が増えると言うことは喜ばしいことである。

 この世界には、宙継の支えになる存在――アルティメット・クロスの人間は誰もいないのだ。悔しい話であるが、正直、セイカは役として力不足だった。

 

 何故、旅路の仲間にマサキらが追加されたのか。そもそも現在、自分たちはどこを目指して旅をしているのか――その経緯を語らせてもらおう。

 

 ドッコイ村のオジジとオババ曰く、「ドアクダーの手に墜ちた創界山は、奴によって7界層に分けられ支配者を送り込まれている」らしい。この近辺には、第1界層に区分された地域を支配するドアクダーの部下――クルージング・トムがいるらしい。実際、ドッコイ村を襲撃してきたシュワルビネガーがそう叫んでいた。

 クルージング・トムの根城は、ドッコイ山にあるという。山は村から南の方角にあるそうだ。だが、この中で一番アル・ワースを旅していたシバラクでも、ドッコイ山に登った経験はないらしい。そんなとき、案内人として名乗り出たのは、魔従教団の術士であるアマリだった。

 創界山は“アル・ワースのヘソ”と呼ばれるような重要な場所らしく、アル・ワースの平和と秩序を守る魔従教団と縁があってもおかしくはない。アマリがドッコイ山の場所を知っていて、案内役を引き受けられるほどの知識があるのはそのためだろう。

 

 アマリたちの案内に従って、ドッコイ山を目指す旅が始まった。しかし、旅を初めて早々、ホープスが異界の門が開く――異世界から人が召喚されてくる気配を察知する。

 異界人の保護を仕事としていたアマリへ協力し、現場に駆け付けたところ、魔従教団のゴーレムに襲われていたサイバスターとその操縦者たちに遭遇したのだ。

 

 マサキらの援護をし、危機を脱することには成功する。助けられた恩義と世界規模の迷子(しかも、本人曰く「これは2回目」とのこと)という経緯から、彼は救世主ワタルご一行様と同行することになったのである。

 

 

『……マサキさん。サイバスターって、今後改造されたり、後継機が作られる予定とかありますか?』

 

『いや、そんな話は無いが』

 

『『パイロットがいなくなったら、虚像で代替用の操縦者を作る』や、『虚像で生み出した操縦者は、記憶引き継ぎ自覚無しにして、肉体を延々と再生して使用する』ような機能の追加予定は?』

 

『うっわ、エグっ! しかもやけに具体的だな!? 現物でも見たのかよ!?』

 

『……実物ではないのですが、どこかの世界で生きた誰かの記憶や感情を、ちょっと……』

 

 

 こんなやり取りが発生したのは、宙継が虚憶――聖アドヴェントが幅を利かせていた世界で出会った虚像の操縦者、アサキム・ドーウィン――に引っ張られたせいだろう。

 

 “彼の正体が単なる虚像で、有していた不死性は“記憶引き継ぎで肉体を新しく再生された”だけの上、彼自身が『誰かの代替品』でしかない”と発覚しても、Z-BULEの面々にとっては、アサキム・ドーウィンは確かにその存在と人間性を確立していた。シュロウガのシステムが今も健在なら、彼は延々と記憶引き継ぎの肉体再生を行われて生きているはずである。シュロウガが虚像を創り出すことをやめるまで、アサキムに安息はない。一刻も早く、彼が静かに眠れる日が訪れることを願うばかりである。

 宙継がマサキにアサキムの話題を振ったのは、彼とアサキムの容姿や言動が非常に似通っていたことや、彼の操縦するサイバスターがシュロウガと非常によく似たデザインと性能を持つ機体だったことが挙げられる。今後次第では、“サイバスターがシュロウガに化ける/サイバスターの後継機としてシュロウガが造られる”なんて、とんでもないブッキング発生する現場に居合わせることになるためだ。現時点では、『その心配はない』ことが救いである。

 

 ……しかし、シュロウガも虚像に変わった特徴を持たせたものだ。アサキムには密かに方向音痴の疑いがかけられていたり、特徴的な言動から『人生の迷子』と呼ばれていたこともある。ダメ押しとして、“Z-BULEより先に出発したはずなのに、遅れて待ち合わせ場所へやってきた”という実例があったことも拍車をかけた。

 超弩級の方向音痴は、サイバスターの操縦者であるマサキにも共通している。本人が語っていたが、“目的地へ向かおうとして、惑星全体をぐるぐる周回していたことがあった”そうだ。地図の有無に関しては濁していたが、多分、地図を見て迷子になった気配がする。正直、方向音痴くらいは調整してやれよと思った。

 それでも、約束や予定の時間よりN時間~数日単位の遅れ程度で済ませた――()()()()()()()()()()()()()()()()()()辿()()()()()()()()()()――あたり、サイバスターの出力が段違いであることは伺えた。あの機体並の出力があれば、ドッコイ山へも、()()()()()()()()()()、秒単位で辿りつけるはずである。

 

 だが、救世主ご一行様の移動手段は徒歩だった。案内役であるアマリとホープスの機体であるゼルガードの巡行モードと、ワタル自身の希望によるものだ。

 

 前者が一番の問題である。ゼルガードは戦闘時は問題ないのだが、ただ移動するだけの場合は徒歩並みのスピードしか出せないらしい。

 ホープス曰く「アマリの要修行」とのこと。ゼルガードの運び役を務める彼が「戦いに向いていない」というのも理由らしい。

 

 ……本人の自己申告でしかないので、真偽は不明だ。

 

 

(……あの鸚鵡、やけに大人しいなあ)

 

 

 思考をそこで棚に上げ、セイカはちらりと視線を向ける。ホープスは相変らず、むすっとした表情を崩さない。

 

 普段なら、セイカもホープスも気にすることなく会話へ割り込むタイプだ。特に後者は、アマリへチクチク嫌味を言わずにはいられない性癖持ちらしい。だが、今回は珍しく、ホープスは遠巻きからアマリを見つめるだけに留めていた。

 ホープスはむすっとした顔のまま、じぃっとアマリを見つめている。丁度、アマリがマサキの使い魔――外見は猫――であるシロやクロと戯れているところだった。あちらは慇懃無礼な鸚鵡と違い、愛嬌があるタイプだから親しみやすいのだろう。

 

 

「口を開けば嫌味ばかりの鸚鵡より、愛嬌がある可愛い猫の方が癒されるよね」

 

「未成年の前で年齢指定モノの発言を繰り返す“娘”の相手は、宙継様には多大な心労になっているのでしょうね」

 

 

 会話のデッドボール。セイカは思わず真顔になった。

 

 視界の端で、宙継がシロのブラッシングをしている姿がちらつく。

 どこか緩んだような笑顔は、なかなかお目にかかれないレアものだ。

 

 

「アマリがぐうの音も言えずにいる姿を見て、最高に愉悦ってる腹黒鸚鵡に言われたくないんだけど」

 

「嫉妬や不安を拗らせるあまり、宙継様のキャパシティを超えた発言や脳量子波を垂れ流して追いつめている貴女が言う台詞ですか」

 

「なんだとこのクソ鸚鵡。本当はペットと同じように撫でられたいクセして、高いプライドのせいでチャンスを悉く潰しているくせに」

 

「鸚鵡と呼ばないでください、人間に擬態しただけの金属生命体風情が。私には、ホープスという()()()()()()()()()()()()()があります」

 

「それはこっちの台詞だよ腹黒変態鸚鵡。人間に擬態しただけの金属生命体風情って何? 私には、セイカっていう()()()()()()()()()()()があるんだ」

 

 

 肉体ではなく言語で激しく殴り合う。自分とほぼ同じようなことを、同じように返してくるのが腹立たしい。普段と変わらぬ慇懃無礼な態度を崩さないところも、余計に腹立たしさを煽ってくる。ペット扱いされることを拒否したくせに、ペットのように可愛がられる使い魔を見て苛々してるお前は何なのか。

 セイカが眉間に皺を寄れば、ホープスは小さく鼻を鳴らした。彼の反応からして、セイカの心の中に燻る負の感情を美味しくいただいているらしい。腹を立てれば立てるほど、ホープスはセイカの感情を喰らい続ける。嫉妬や怒りを見せることは、ホープスに餌を与えているのと同義なのだ。むかっ腹が立つのは当然と言えよう。

 

 現状、セイカが何をやっても、ホープスが喜ぶような展開――つまりは、ホープスへの餌やり――になってしまう。悔しいことこの上ないが、無視するのが一番の得策だ。

 ……残念ながら、この嫌味鸚鵡相手に無視を決め込むことができれば苦労はない。彼の慇懃無礼な態度は、誰が聞いても「なんだと!?」と反抗したくなること請け合いである。

 反抗心から湧き上がった怒りや憤りも、ホープスにとっては“それなりに腹の足しになるご飯”扱いなのだろう。その関係で、奴は常に勝者の位置をキープしているのだった。

 

 唯一の例外は、ホープスの言葉に対して素直に謝ってばかりいるアマリくらいなものだろう。

 奴が彼女を贔屓目に見ている気配は、前々から察していた。

 

 

(……正直、ホープスのような性格の鸚鵡が、アマリのような女の子を見出した“打算的な理由”が分からないんだよなあ)

 

 

 セイカは眉間に皺を寄せて考え込む。アマリ・アクアマリンの第一印象は、『魔法少女マジカル☆アマリン』と瓜二つ――“可憐で可愛らしいが、芯が強く、真面目で努力家な女の子”だ。あと、彼女の笑顔を見ると心が和んだり、不思議と明るい気分になることも挙げられるだろう。

 アマリンとの違いは、“引っ込み思案でオドオドしており、強い押しや畳みかけられるような正論に弱く、どことなく頼りなさそうな雰囲気を漂わせている”という部分が強い点か。魔術やオド絡みの事案には術者の精神状態が関わっているため、ゼルガードの出力もなかなか安定しないらしい。

 

 彼女は5歳の頃に教団に引き取られた。その際、教団の最高位である導師から直々に洗礼を受けたことで、『藍柱石の術士』という2つ名と『アクアマリン』の姓を得たそうだ。教団最高位から洗礼を受ける術士は滅多におらず、術士にとっては名誉なことらしい。教団に属する術士はみな姓を棄て、洗礼を受けてから2つ名とそれにちなんだ姓を与えられるという。教団のシステムが完全にカルトのヤバいやつなのだが、セイカの疑問は宙継によって遮られ、頑なに否定するシバラクの喧しさから引っ込めざるを得なかった。閑話休題。

 13年の修行を積んだ彼女の立場は、末端に属する下っ端教団員。上層部や同期の一部からは「これから伸びていく術士」として有力視されていたらしい。特に、上層部は法師とよばれる役職に就く『黒曜石の術士』セルリック・オブシディアン、同期は同じく周囲から有力視されていた『菫青石の術士』イオリ・アイオライトなる術士が、アマリのことを推していたという。魔従教団の構成員は男性の方が多いようで、女性の術士は珍しいそうだ。

 

 ……その話をセイカへ語ってくれたとき、ホープスはあからさまに苛々していた。本人は分かっていないようだが、件の男性名が飛び交うことが原因である。

 最も、自分の中に湧き上がった負の感情を喰らう――所謂自給自足――に満足しているため、自身の感情を深く分析しようという発想には至らないようだが。

 

 

(術者としての実力は、“ゼルガードが戦闘形態へ移行できる最低限の水準を保つのがやっと”。将来への投資や青田買いの名目があっても厳しいレベル。引っ込み思案でオドオドしているという性格の問題もあって、ゼルガードの出力はなかなか上昇しない)

 

 

 ここまで分析すると、腹黒鸚鵡が契約を交わす相手として、アマリを見出した理由がますます不明になってしまう。

 

 ホープスならば、アマリよりも能力の高い術士をたくさん知っていたはずだ。教団の中でも高い立場にいるセルリックや、『正義感が強く、真っ直ぐな気質を持つ勇猛果敢な青年』――ドグマを安定して操れる実力者――であるイオリを選んだ方がいいように感じる。

 そう考えると、ホープスがアマリと契約を結んだ理由と、セルリックやイオリのような術士を契約相手として選ばなかった理由は、密接に関わっているのかもしれない。……歪んだ性癖持ちである(暫定)という部分も、若干影響していそうな気配がするが。

 

 

(そう考えると、『アマリに対して異様に厳しい理由が期待の裏返しである』という主張も怪しいなあ。時々『好きな子だからいじめたい』みたいな部分がにじみ出てることがあるし)

 

 

 しかも、本人無自覚だから猶更(タチ)が悪い。――最も、そこが狙い目なのだ。

 時には涼しい顔で、時にはどこか悪さを含んだ笑みを浮かべる腹黒鸚鵡を突き崩す、格好のネタになる。

 愛によって敗れ去った機械――ネバンリンナと似たような目に合わせてやるのも楽しそうだ。

 

 

「ホープスってさあ」

 

「?」

 

「なんやかんや言うけど、アマリのことが大好きなんだね」

 

「!?」

 

 

 不意打ちで爆弾を落とされ、ホープスはぎょっとしたようにセイカへ向き直った。セイカは勢いよく畳みかける。

 

 

「だってそうでしょう? 自分の名前を安直だって蔑むような口調で言うのに、改名はしたくない。青田買いするにしてもハズレじゃないかって言われると、主を馬鹿にされた気分になって一言言わないと気が済まなくなる。自分に頼りきりだったアマリに仲間が増えていくのを見ると、なんだか寂しさ以外にも感じ入るものがある」

 

「…………何故、貴女に私の感じているモノが分かるのですか?」

 

「やっぱり図星だったのか。まあ、言動を見てれば大体見当がつくんだけど」

 

 

 ホープスはセイカを訝し気に見つめる。愛の価値を軽んじている様子は、地球艦隊・天駆と死闘を繰り広げたネバンリンナそっくりだ。

 しかし、愛と希望を嘲笑った連中は、愛と希望によって軒並み倒されている。やり方によっては、ホープスを狼狽えさせることも可能だろう。

 負の感情を貪り喰らう獣に愛の芽生えを突きつけたら、この鸚鵡はどのような反応に出るだろうか? どんな風におちょくってやろう――セイカは悪だくみを始める。

 

 

「だってあたしもそうだもん。ソラのこと大好きだし、愛してるからね」

 

 

 ――セイカにとって、刃金宙継は特別だ。

 

 人間とのコミュニケーション手段を模索していたELSは、人類の一部が持つ脳量子波に目をつける。ELSは彼ら/彼女らとコンタクトを取ろうと四苦八苦したが、人類側から強い拒絶を受けた。ELSの行為は“人類側から見たら、敵対行為も同然である”と学べなかったことも、事態の泥沼化へ舵を切った一端を担ってしまったのだ。

 地球人とコンタクトが撮れたはずの個体は、再生できない程粉々にされてしまったことで情報が共有できなくなった。浸蝕先の人間が自ら命を絶ってしまったり、ELSの出す脳量子波や浸蝕のショックに耐え切れず、脳を損傷し植物状態になってしまったことも、人類の理解が上手く進まなかったことの理由でもある。

 

 そんな中、一番最初にELSの本質を察したのが刃金宙継だった。イノベイターとミュウというハイブリット型新人類としての側面が、ELSの感情を読み取ったのだろう。

 助けを求めるELSへ、彼は手を差し伸べた。ELSは彼へ殺到し、彼の浸蝕を開始。彼は意識不明の重体に陥ったものの、彼の思念は途絶えていなかった。

 宙継との交流や、宙継の思念波越しで人類の動きを見てきた結果、宙継を浸蝕したELSは個を学習。その恩恵として、個の原理を盛り込んだ新たなELSが生まれたのだ。

 

 ELSと人類が手を取り合える可能性として、その個体は刃金宙継から名を与えられる。

 “外宇宙から来た生命体と分かり合うために奏でられる星の歌”という意味を込めて、セイカと。

 

 人類には多種多様の考え方がある。性格的なぶつかり合い、所属する組織同士のぶつかり合い、利害によるぶつかり合いが常に発生しているのも事実だ。だが、ある要素が関わると、そういうぶつかり合いの垣根が取っ払われ、互いに同じ感想を抱くことがあり得るのだ。――その要素の1種が、歌だった。

 

 

『僕が受け取る虚憶の多くは、歌を介することが多いんです』

 

『ありとあらゆる要素を超えて、人々に同じ気持ちを抱かせる。そこから取っ掛かりができて、話をするようになり、そこから分かり合うことができる』

 

『――いつか、それが人間同士だけじゃなくて、人と人ならざる者同士のコミュニケーションを築くための希望になってくれたらいいな』

 

 

 そう語った宙継の微笑を、セイカは今でも覚えている。宙継が見せてくれた虚憶の中で、歌を通じて異種族同士が分かり合えた光景があったことも。

 「歌を失いたくない」という理由で共同戦線を張ってくれたゼントラン/ゼントラーディ。歌を通じて分かり合えた人類と彼らの未来が、歌舞く翼の時代へと繋がった。

 地球に内包された未来の可能性が次に挑んだのは、宇宙を流浪する昆虫型生命体バジュラ。彼らの有する菌に感染した歌姫たちと、歌姫の想いを背負って飛んだ翼の行く末を知っている。

 

 

(誰もが、誰かにとっての英雄だった。誰もが誰かのことを愛していたから、そう在れた。在ろうとした)

 

 

 歌姫たちにとっての英雄が、元歌舞伎役者のパイロットだったように。/だから歌姫たちは、彼の翼であろうとした。

 滅びの未来から託された少女たちの英雄が、正義の味方だったように。/だから少女たちは、彼にいのちの答えを示した。

 

 顔の右側に大きな傷跡を持つ軍人の英雄が、ELSとの対話を成した革新者だったように。/だから彼は、彼女の未来を切り開くために前へと飛び出した。

 悪の組織を立ち上げた女社長にとっての英雄が、300年の時間を費やした計画を立てた学者だったように。/だから彼女は、彼の死後も諦めずに戦い続けた。

 刃金宙継にとっての英雄が、彼の養父であるクーゴ・ハガネ/刃金空護であったように。/だから彼は、父親と同じように、誰かに手を差し伸べられるような人間になろうとした。

 

 ――セイカにとっての英雄が、刃金宙継であるのと同じように。

 

 

「また、愛ですか」

 

「腹の足しにならないって顔してるね」

 

「事実です。…………それに、私とマスターの間には、そのようなものは存在しません」

 

 

 ホープスはツンとした顔でそっぽを向く。「そんなものは存在しない」と言い切ったものの、その言葉を口に出すまでに奇妙な間があった。

 

 人には4つの窓があるという。1つは、自分が自覚し他人に対して開け放っている窓。2つめは、自分は自覚しているが他人には閉じた状態の窓。3つめは、自分は知らないだけで他人から見ると開いている窓。4つめは、自分も他人も存在を関知していない未知なる窓だ。

 今のホープスは、他者であるセイカから見れば充分分かりやすいタイプだ。しかし面白いことに、ホープス本人は一切自覚していない。つまり、今のホープスから把握できる窓は3番目――他者だけが知っているホープスの一面――である。

 

 自分が自覚していない部分を突かれた場合、意志持つ者は非常に狼狽えるのだ。これはセイカが学んだことである。

 宙継の養父クーゴが、彼に思いを寄せるソレスタルビーイングのガンダムマイスターからガンガンに口説かれて動揺するのと似たようなものである。

 同時に、養父を口説こうとしたガンダムマイスターが、養父による無自覚かつ痛烈なカウンターによって撃沈するようなものでもあった。閑話休題。

 

 

「じゃあさ、想像してごらんよ」

 

「何をです?」

 

「旅を続ければ、あたしやソラみたいな異界人もどんどん仲間になるだろうね。アマリにも友達が増えて、色んな顔をするようになる。お前に対してはずーっと怯えっぱなしで不満そうな顔ばっかりなのに、他の人と話しているときだけすっごく楽しそうな顔をしていて、そのせいでどんどん距離が空いてしまう。――そうなったらお前、どんな気持ちになる?」

 

 

 セイカは意地悪く笑いながら、宙継の上司がよく口にする文句を投げてみた。ホープスは無言を貫いたままだが、何か思うことがあるのか、しきりに首を傾げている。

 ……成程。脈はあるらしい。種まきを行っているような気分になりながら、セイカはふふふと笑った。――後はたっぷり水と肥料を与えれば、いずれ花が咲くだろう。

 

 

「旅を続けるうちに、アマリだって、誰か格好良い人に心を奪われる日が来るんだろうねー」

 

「マスターが? ……まさか。マスターには、そのような相手はいませんよ」

 

「今は、でしょう? 出会いのチャンスなら、これから幾らでも訪れる。そのうち、アマリが誰かと結ばれる日が来るんだろうねー。そうなったら、ホープスはもうお払い箱かなぁ?」

 

 

 ホープスが、カッと目を見開いてこちらに向き直った。嘴が戦慄き、鶏冠が僅かに逆立っている。

 

 セイカへ対して反論したいのだろうが、図星や地雷をぶち抜かれた衝撃で言葉が出てこないのだろう。ホープスの優位に立てたのは、この世界に来て初めてのことだ。

 今まで散々人の感情を餌にしてくれたのだ。これくらいやり返したって問題ないはずである。寧ろ割に合わないだろう。セイカはくつくつと微笑む。

 

 

「――そういうの、相手のことが好きじゃないと、感じないものなんだよ。恋愛的な意味でね」

 

 

 あの日、刹那・F・セイエイを始めとしたアルティメット・クロスの想いを受け取ったELSが、宇宙(そら)に銀の花を咲かせたように。

 今この瞬間にも、セイカの心の中に、刃金宙継を想って咲く花があるように。宙継の心の中に、アルティメット・クロスが咲かせた花があるように。

 いつか、ホープスやアマリの心にも咲くだろうか。――互いを想い合うことを積み重ねた果てに、どんな花が咲くだろうか。

 

 

「……理解できませんね。理解したいとも思えない。第一、私とマスターはそんな関係ではありませんから」

 

「『だから、これは恋愛ではない』と?」

 

「ええ」

 

 

 ホープスははっきりと、セイカの言葉を否定する。金色の瞳からは、まだ揺らぎのようなものは感じられない。

 

 今はまだ、恋愛という名の種子が地面に蒔かれた段階だ。種が芽吹くのは、随分と先になることだろう。それが明日か、明後日か、1か月後か、1年後か――いつ芽吹くのかは分からない。下手をすれば、芽吹く前に枯れ果ててしまう可能性だってあるだろう。

 それでもセイラは諦めず、ホープスに種まきして肥料と水やりを続けるのだ。いつか、彼の中に大輪の花が咲くまで。花が咲くまでの過程をネタにして、ホープスをおちょくり倒してやるために。――あと、凄く面白そうだったから。

 

 

「じゃあ、賭けをしよう」

 

 

 種を植えた畑を吹き飛ばし、無視を決め込もうとしたホープスを引き留め、セイカは言葉を続けた。

 

 

「あたしは“お前の感情を恋愛と定義し、お前がそれを自覚する”方に、お前は“アマリへ向ける感情が恋愛ではないと証明する”方に賭ける。期限は、この旅が終わって、あたしとソラが元の世界へ帰るまで!」

 

「貴女は私を何だと思っているんですか。……ですが、まあいいでしょう。貴女の発言は、私の知的好奇心を大いに刺激しました。それへの感謝として、貴女の賭けに乗りましょう」

 

 

 お互いの視線が交錯し合う。金色の瞳と、蛋白石(オパール)の瞳がかち合った。

 前者は不審そうに眉を顰め、後者は不敵に微笑んで。

 誰も知らない秘密の賭けは、こうして始まったのである。

 

 

 

 

 

 ――後に。

 

 銀色の蛋白石(オパール)が、希望の翼に異種族恋愛のイロハを叩きこむことも。

 菫青石の術士を始めとした面々が、“色ボケ腹黒鸚鵡”と叫ぶような悪魔が爆誕することも。

 

 この時点では、誰も予想していなかったことだろう。

 

 




仕込み段階の章。本編以上の魔改造を行うための下地です。原作の展開を考えると、この賭けの勝利者と敗北者がどちらなのかは明らかでしょう。
そして、魔従教団にもねつ造と魔改造が行われています。その片鱗は【旅立ちの季節】の第1話にも顕著なのですが、それに関してはまた、別の機会に掘り下げる予定。
他にも他スパロボネタがちょくちょく盛り込まれています。「サイバスターを見てシュロウガを連想する」話題もその1つですね。
セイカとホープスの関係およびノリはこんな感じ。人間に想いを寄せるELSの入れ知恵で、原黒鸚鵡はどんな悪魔へ至るのか――その顛末を見守って頂ければ幸いです。
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