・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・魔従教団について捏造+魔改造が施されている。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。
旅は道連れ世は情け。例え成り行きから始まろうとも、一緒に困難を乗り越えていくうちに、連帯感が築かれていくものである。
実際、アルティメット・クロスの前身であるアンノウン・エクストライカーズに所属することになった宙継も、成り行きから始まった身だ。
そもそも、宙継がアンノウン・エクストライカーズに所属することになった経緯は、父クーゴと彼の機体・ブレイブESP-Psyon搭載型試験機が、とある任務中に撃墜されたことが始まりである。父はこの任務でMIAになり、実質的な殉職扱いされていた。しかし、父は人知れず、アンノウン・エクストライカーズに保護されていたのである。
後に、父が身を寄せていたアンノウン・エクストライカーズは、軍官僚のハザード・パシャによって極悪非道なテロリストに仕立て上げられてしまう。その影響は息子である宙継にも及び、ハザードの部下たちによって宙継は軟禁されてしまった。実際は、軟禁なんて言葉は生ぬるい。複合型イノベイターである宙継は、実験動物にされかけたのだ。
当時は情報が錯綜しており、宙継も“アンノウン・エクストライカーズが正義の味方である”ことを知らなかった。宙継を突き動かしたのは、「お父さんはテロリストなんかじゃない。悪いことなんかしていない」という一念である。だから、監視役の不意を突いて脱出した宙継は父の元へ向かおうとした。そこで偶然、早瀬軍団の立ち合いに居合わせてしまう。
早瀬軍団の一員としてJUDAへと引きずり込まれた宙継は、JUDAの本社でアンノウン・エクストライカーズと合流。MIAから凶悪なテロリストのレッテルを張られた父クーゴと無事再会する。宙継の予想通り、クーゴは何も悪いことをしていなかった。その事実に安堵し、何より、五体満足の父と再会できただけで充分だったのだ。
その後も、アンノウン・エクストライカーズは様々な人々を仲間に加えていく。未来から宙継たちの時代へ転移してきたラドリオ星や火星の関係者、三国志の英傑(外見が完全にガンダム系だが分類は人間)、マクロスフロンティアの関係者たち、竜宮島の子どもたち、人類に味方したフェストゥム、ザフトやプラントの軍関係者、アーカムシティの貧乏探偵魔術師とヒーローマンを使役する少年、人類軍の脱走兵、バイストン・ウェルの聖戦士たち、ソレスタルビーイングのガンダムマイスター等々、文字通りの“寄せ集め部隊”だ。
部隊名も必殺仕事人アンノウン・エクストライカーズから、究極の混成部隊アルティメット・クロスへと改名。数多の試練を乗り越えていくうちに、敵対していた面々が仲間に加わった。死の体現者として君臨することで人類を救おうとした加藤機関の関係者、死者から生者への怒りを体現した愛国者にしてバイストン・ウェルの王、魂を燃やし続けて答えを掴んだ修羅2名、ミールの命を忠実に果たしたが故に戦うことになったフェストゥムの少年、国連軍関係者、スクラッグによって改造されたダークヒーロー、永遠と永劫の輪廻を踊り続けた大導師……。
こんな大所帯になるとは思わなかった。それ以上に、“永劫に繰り返される
未練がなかったわけじゃない。「もしもあのときああしていれば」と思わずにいられなくなることもある。
特にアルティメット・クロスの中核にいたアニエスやサヤは、それに該当するような分岐点を何度も目の当たりにしていた。
何かが違えば、彼らを取り巻く運命は、劇的に切り替わっていたが故に。
父であるクーゴが撃墜された戦場で、マスターテリオンの眼前にヒーローマンや飛影が現れなかったら。マスターテリオンが「余はいつも通り怠情でデモベをしていたはずなのに、突如、攻略本に載ってない隠しルートが始まった。こんなこと今まで一度もなかったのに……しかも、これはスパロボ参戦ルートだ! マジパネェな!!」と大興奮しなければ。
マスターテリオンが大人げなく大興奮した挙句、はっちゃけて最終決戦用の鬼械神リベル・レギスを持ちだしてこなければ。(手加減していたらしいが)最高威力の攻撃を放つ際、的としてジン・スペンサーを選んでいなかったら。アニエス・ベルジュが、ジンを庇って撃墜されていなかったら。狙われたのがアニエスで、庇って撃墜されたのがジンだったら。
前の輪廻からリチャードが連れて来た娘/エルプスユンデが、サヤ・クルーガーではなかったら。此度の輪廻でノーヴル・ディランが生み出したエルプスユンデが、アユル・ディランではなかったら。サヤとアユルの能力値や、命に目覚めたタイミングが逆だったら。サヤが体現した命の側面が生ではなかったら。
果たして、あの世界はどのような未来を辿ったのか。
――それを観測する術は、もう何も持っていない。
虚憶で把握できたのは、アニエスとサヤが生の面を体現して生き残る可能性の世界だけだった。別の世界で命を落とした仲間の姿を見たこともあれば、此度のループのように全員が生き残る姿を見ることもある。しかし、ナイアやカリ・ユガ、ジンやアユルが口にしたような可能性を見たことは一度もなかった。
可能性があることは示唆されても、その世界を観測することはできない。可能性を束ねるための研究は、当人であるノーヴル博士の死やリセット機構のカリ・ユガの打倒によって、ほぼ失われてしまったに等しかった。恐らく、アルティメット・クロスの研究機関も、参考資料程度の扱いで留めることだろう。
ノーヴルだって、自らが“世界を救うために行った研究”を、誰かに悪用されるというのは許せないはずだ。
輝かしい成果が葬られることになろうとも、彼女はきっと後悔しないだろう。私利私欲ではなく、本気で世界を救おうとした女傑なのだから。
◆◆
「――まあ、僕らのときも、同じ惑星の時間軸上にある過去・未来・現在が一同に会する形で集結した“
「す、凄い……」
「宙継が言うと、強い説得力がある……」
「大部分が実体験ですから」
気圧されたような様子のアマリとジャンに対し、宙継は「僕も“集められた側”の人間ですけどね」と補足する。
そんな自分たちより少し離れた場所で、大人たち――グランディス、ハンソン、サンソン、シバラクらが、ひそひそと話をしていた。おそらく、宙継の外見と中身のギャップに関する話題なのだろう。同年代の少年少女より濃密な人生を生きた結果なのだから、致し方ない。
平和な世界で生きてきた人々からすれば、宙継の佇まいは「妙に達観している」ように感じるのだろう。同じ“平和を愛している”人間同士だったとしても、生きた時代と背景が違えば、そこは溝や差異として感じることがある。対話は可能でも、その主張に同意できるか否かは別問題だ。
「結局は武力で無理矢理叩きのめしたんでしょう? 野蛮じゃない」
実際、宙継の話を聞いていたナディアは嫌悪感を露わにしていた。彼女の様子からは、“あらゆるものに対する強い拒否”という刺々しい感情が流れている。あの様子だと、根は感受性豊かで甘えたなタイプらしい。多感な少女にとって、なんでもありのファンタジー世界という現状は辛かろう。
おまけに、ナディアにとって頼れる仲間の大半が行方知れずとなっているのだ。転移直前の状況が絶望的だったことも、悲観的かつヒステリックになっている原因なのかもしれない。“頼れる仲間がこの場にいない”という点は宙継も同じである。故に、ナディアを咎める気にはならなかった。不安な気持ちはよく分かる。
ここで補足しておくが、宙継の外見年齢は7歳である。ナディアの実年齢は14歳。傍から見れば“7歳児から生温かい眼差しを向けられる14歳の少女”という奇妙な状況だ。ナディアも居たたまれない気持ちになったようで、バツが悪そうに視線を彷徨わせる。
「……ごめんなさい」
「いいえ。誰かに気持ちをぶつけないとやっていられないという気持ちは、よく分かりますから」
「人間は“ため込んでいると爆発して、自分でも思いもよらない行動を取る”っていうからね。適度にガス抜きしなきゃ」
因みに、セイカの外見年齢は中学生程度――ナディアより年下――に見えるレベルだ。
年下2名に宥められるのは、マリーに対して姉御肌気質を見せるナディアには厳しかったらしい。
――さて。
救世主ご一行様は更なる仲間を加え、賑やかになっていた。新たに加わったのは9名と1匹。
ドッコイ村から徒歩で一行を追いかけてきた忍部ヒミコ、アル・ワースの現地人である鳥人(……?)の渡部クラマ、推定19世紀のパリから転移してきた面々――ナディア・ラ・アルウォール、ジャン・ロック・ラルティーグ、マリー・エン・カールスバーグ、キング、グランディス・グランバァ、サンソン、ハンソン。
マリーとキングからSOSを受けた救世主一行は、その場を目撃したとかたるクラマの案内に従って現場に急行。そこで、敵を蹴散らして被害者を保護したパリ組と遭遇する。一時は被害者と加害者の関係を誤解したことで一触即発になりかけたが、和解。今後のことを話し合っていたときに、第一階層のボスとその手下が襲い掛かって来たのだ。
悪いことは連続して起こるようで、ナディアを狙っていたネオ・アトランティス帝国の連中がドアクダー一味と手を組んだのである。即席の連携だったため大した脅威にはならなかったが、あの様子だと、ドアクダー軍団が異界人を取り込んで戦力強化を図るという手段を選択していてもおかしくはなさそうである。
ネオ・アトランティスの操る機体に興味を持ったセイカが意気揚々と取りつき――操縦士のネオ・アトランティス人は機体の外へ放逐した――機体を分析したり、それを目の当たりにした龍神丸が再びマナーモードになったり、「ゼルガードも狙ってる(=同化して解析したい)」という発言にホープスが「やめろ」と激しく取り乱したり、後から乱入してきたクルージング・トムと謎の機体がうっかり正面衝突してしまったり、様々なことがあったが、戦いに勝利したのだ。
このときの出来事を思い出したアマリは、不安そうに目を伏せた。
『ネオ・アトランティスがドアクダー軍団と手を組んだ場合、敵の戦力増強に繋がります』
『でも、それは僕たちも一緒だ。異世界から来たみんなと一緒に戦ってきたんだから。もし、また異界人が来たら、こっちの仲間になってもらえるよう頼んでみようよ』
敵が異世界からやってきた人間――抜け殻になっていない健康体で、何らかの戦闘能力を有している者――を仲間に加えて戦力増強を図るなら、こちらも同じ手段で対抗すればいい。ワタルの考えは実にシンプルであった。
実際、救世主ご一行の仲間は、本人含めて9割近くが異界人である。どちらかと言えば、敵側がこちらの真似をしたのだ。これから、相手も様々な異界人を戦力として取り込んでいくことだろう。俗にいう“スカウト合戦”というヤツだろうか。
ネオ・アトランティスと同じように『元の世界でも巨悪だったが故に、こちらの世界の巨悪と意気投合した』パターンもあれば、『何も知らないことをいいことに、敵側の掘り込みのせいで敵対してくる』パターンもある。後者は説得可能なのが救いだろう。
『場合によっては、“人質や大事なものを盾に取られたから従っている人”や、“何らかの手段で洗脳された人”、“義理を果たすために身を置いている人”もいるかもしれません。それらへの対応手段も考えておかなきゃいけませんね』
『ねえソラ。この前ELSネットワークで視聴した『マジカル☆アマリン』の登場人物に、『アマリンの使い魔と恋敵関係にある』という理由で敵対してた魔法使いがいたよ。三次元に置いて、“嫌いな奴が所属しているから敵対する”ケースってアリなの?』
『元々の人間関係については、拙者たちが好き勝手にどうこうする訳にもいかんしなァ……。時折声をかけて、気にしてやることくらいしかできん』
宙継が挙げた例に対し、セイカが更に具体例を挙げてきた。ELSネットワークが上手い具合に働いていたところを手繰り寄せたらしく、セイカは大好きな魔法少女番組を視聴できたらしい。本人はリアルタイム視聴派だが、今回は事情が事情なので妥協することにしたそうだ。閑話休題。
仲間に加えた異界人と同郷、または顔見知りと遭遇したとき、彼/彼女らの反応は、大きく2つに分かれる。同じ世界の出身ということで協力を申し出てくれる場合と、同じ世界の出身であるが故に、共闘を拒まれる場合があるのだ。あちらの人間関係をどうにかしない限り、争いからの敵対は免れない。
しかし、他者が築いた人間関係に対して干渉することは難しい。上手くいく可能性は0ではないが、悪化させてしまう危険性と隣り合わせである。人間関係が破綻した系の話題が飛び交うのも、きっとそのためだ。こればっかりは、シバラクの言葉通り、“適度に声をかけて気にしてやる”以外に方法は見当たらなかった。
敵対する理由を解決することができれば、仲間を増やすことに繋がる。その手段を集めることが非常に難しいのだ。その手段を整えたとしても、最終的に和解か敵対かを選択するのは本人である。振り上げた拳を上手い具合に下ろせない限り、該当者は敵対をやめないだろう。
聖アドヴェントと殴り合いを繰り広げた世界で出会ったエスターの発言――『怒る理由がなくなったら、怒るのをやめればいいんじゃないかな?』――を成せる人間は少ない。中には『怒るのをやめようとしている自分自身に怒っている』場合だってあるのだ。
費やした時間や支払った犠牲が大きければ大きい程、そういう思考回路に陥ってしまう。嘗て宙継の世界で起きた戦いでも。似たようなケースがあった。現在の地上人の堕落を目の当たりにしたサコミズ王が、現在に生きる命に剣を向けたのだ。
彼がそうした理由は、旧日本軍として死んでいった同胞たちの無念さを、堕落した命へぶつけたかったから。
「自分たちはこんな世界の為に死んだのではない」という叫びを体現しようとしたためだ。
「僕はオババ様に呼ばれてアル・ワースにやって来たけど、他の人はどうやってアル・ワースに呼ばれたんだろう?」
「異なる世界の壁を超えるような自然災害に巻き込まれたんだと思うけど……」
「いいえ。僕の場合は自然災害ではありませんでした。得体の知れないロボットと戦っていた直後、膨大なエネルギーが発生して、それに飲み込まれる形で転移したんです」
ワタルが首を傾げ、ジャンが眼鏡のブリッジを直し、宙継は顎に手を当てる。仲間が増えれば、物事についての考察が深まるのは当然だった。今の自分たちが掴んでいる情報はごく僅か。全員が“何らかの理由で、『気づいたらアル・ワースにいた』という状況だった”、“それぞれの世界には、大きな戦力がある”という共通項くらいだ。
宙継とセイカの世界は、多種多様の巨大ロボットが存在している。ガンダム、アルマ、マキナ、ファフナー、デモンベイン等々、具体例にはキリがなかった。ワタルの世界にも、正義の味方と呼べるロボットたちが存在しているらしい。ナディアの世界には、19世紀の技術力じゃ決してたどり着けないような叡智を駆使するネオ・アトランティス帝国の連中がいた。
「何者かが何らかの意図を持って、アル・ワースに異界人を召喚しているのかもしれません……。例えば、サイバスターやフリューゲル、ELSやネオ・アトランティスの戦力を自分の物にするために」
(……僕のフリューゲル以上に凄い機体、いっぱいあるんだけどなあ)
現時点で発覚している情報から類推した結果が、アマリによって纏められる。宙継の世界には、宙継以上の戦力が山ほど犇めいているのだが、何故そちらはノータッチなのだろう。
個人的に、この世界はデモンベイン系の機体が良く似合う。
確かに、デモンベインのスペック、および破壊力はとんでもない。下手すれば宇宙が吹っ飛ぶ危険性がある。最大戦力候補であることは間違いないが、勧誘が失敗して敵対した場合のリスクが高い――「存在そのものを無に帰される」危険性も孕んでいた。黒幕が召喚しなかったのは、後者のリスクを天秤にかけたためだろう。
「何者かって、誰が……?」
あとは、何者かの中に該当者の名前を当てはめればいいだけだ。さあ、該当者の名前に関する類推を始めようか――そう思ったときだった。
突如、宙継たちの周囲を何かが飛び回ったのである。大きな蠅か、小さな鳥か、それとも敵陣営が繰り出してきた兵器か。
仲間たちが身構え、ドグマを行使しようとしたアマリよりも先に、忍術を使ったヒミコが件の高速物体を確保する。
「もう! 乱暴じゃないの!!」
「チャム!? 貴女もこの世界に飛ばされてたの!?」
「ええっ!? な、なんで貴女が私の名前知ってるの!? 私と貴女は初対面でしょ!?」
現れたのは、バイストン・ウェルを生活圏とするミ・フェラリオ――所謂妖精の類だ――のチャム・ファウであった。
しかも、彼女は宙継たちの知っているチャムではなく、平行世界からアル・ワースに召喚された存在らしい。
ただ、「アルティメット・クロスで一緒に戦った仲間の平行存在」という話題のおかげで、チャムへの疑いはスムーズに晴れた。
――しかし、彼女の傍には、相棒であるはずのショウ・ザマの姿がない。
宙継の世界におけるショウ・ザマは、アルティメット・クロスに所属する聖戦士だ。宙継から見た“過去の地球”に生きていた彼はバイストン・ウェルへ飛び、紆余曲折あって地上へ戻ってきた。宿敵と刺し違えながらも、彼は主であるシーラ・ラパーナに浄化のタイミングを指示。その後は気を失ってしまい、宙継たちの生きる時代へとやってきた。
宙継の世界に転移したとき、彼はチャムだけでなく、恋人であるマーベル・フローズンと彼女が操る機体も一緒に転移していた。件の恋人たちは『転移直前に死に別れていた』らしく、2人がお互いの無事を喜び合っていたことが印象に残っている。――いや、今重要なのはそっちじゃない。
「ショウさんとチャムさんはニコイチなんです」
「ニコイチって何?」
「2人揃っていることで真価を発揮する組み合わせのこと。あたしとソラみたいにね!」
「要するに、漫才コンビみたいなものですね」
首を傾げたワタルに、セイカが自慢げに解説する。しかし、ホープスはニタリと悪い笑みを浮かべて茶々を入れてきた。
途端に睨み合いへ発展したセイカとホープスは、即座に罵り合いを開始した。人外同士、仲がよろしくて何よりだ。
ワタルもニコイチの意味を――正しいか否かは微妙だが――理解したらしく、元気よく返事を返してくれた。閑話休題。
「ニコイチの片割れがいないってことは……」
「そうなの! お願い、ショウを探すのを手伝って! ダンバインを届けなくっちゃ!」
どうやら、ショウはチャムとダンバインから離れた場所に転移させられたらしい。つまり、今の彼は“ドアクダーやネオ・アトランティスのロボットたちに襲われた場合、対抗手段を一切持たない”という状態にある。一方的に嬲られることは明らかだ。
平行世界の仲間といえど、ショウが危険な目に合うのを見過ごすわけにはいかない。方向性は違えど、他の面々もショウを助けることにしたようだ。
異界人を仲間にして戦力増強を図るという意味でも、異界人を保護して元の世界へ帰してやるという意味でも、ショウの存在は重要である。
見捨てるなんて選択肢、存在しているはずがなかった。仲間たちは顔を見合わせて頷き合い、即座に機体へと乗り込んだ。
***
彼女の言葉と案内に従い、現場に駆け付けた先では、オーラバトラー同士が激しい鍔競り合いを繰り広げていた。
「チャム……チャム・ファウか!?」
「やっぱりショウだ! やっと見つけた!」
赤いオーラバトラーの集団と、灰色のオーラバトラーが戦っている。しかし、機体の搭乗者はショウではなかった。彼は機体に乗らず、孤軍奮闘する機体を心配そうに見守っていたためである。避難しないで残っていたのは、あの機体に乗っている人間と彼が“縁ある者”同士だったからだ。
トッド・ギネス。宙継の世界では既に故人となっており、竜宮島の灯篭流しで彼の話題に触れただけである。虚憶――バルギアスやジスペルが暴れていた世界――では、アメリカ・ボストンに落とされそうになったプラズマダイバーミサイルを、オーラ力で防ぎ切った実力者だ。母親を敬愛する親孝行な息子でもある。
宙継の経緯や「親孝行のやり方を教えてほしい」と土下座したら、一緒になって悩んでくれた人だった。日米文化の違いに頭を抱え、宙継の発想に七転八倒し、宙継の料理の実験台になったときは健康診断で『文句なしの健康優良児』となり「なんでお前が女じゃないんだろうなあ」とぼやいたり等、愉快な人だったように思う。
ショウとは元々同じ陣営にいたのだが、価値観の違いでショウが所属する陣営が変化。陣営同士の関係で敵対し、以後は戦いを繰り広げていたという。
彼との戦いに敗走し続けたことが理由で、トッドはショウに対して強い執着と嫉妬心を抱くようになり、憎しみのオーラを増幅させていくこととなった。
最も、生来の彼は、ライバル視している人物への対抗心よりも母への敬愛が強い人だ。たとえショウと鍔迫り合いをしていても、母国=母の危機となれば、最後はきちんと手を止めて、母国=母への敵を倒すために立ち上がれるタイプだった。
「ショウ、早く乗って!」
「分かった! トッド、今行く!」
ダンバインに乗り込んだショウは、即座にトッドを援護しに向かった。宙継たちもそれに続き、オーラバトラーたちと対峙する。
戦いを挑むより先に、まずはやるべきことがあるためだ。宙継はワタルに視線を向け、ワタルも頷き返す。
「セイカ、思念波と疑似的なトランザムバーストの展開をお願いします」
「了解!」
セイカは即座にELSの群れに指示を出し、トランザムバーストを展開する。嘗てダブルオーに搭載されていた“大量のGN粒子散布による意識共有空間を作る”機能を学習し、ELSでも展開できるように調整したものだ。
本来ならクアンタムバーストを搭載したかったのだが、ELSと融合した機体でもお釈迦になりかねないという点から、スペックの低めなトランザムバーストにしたらしい。最も、対人同士であればトランザムバーストでも充分であるが。
誤解をなくすための意識共有領域を展開した上で、救世主一行の代表者であるワタルが口を開く。オーラバトラーをコーラバトラーと言い間違えていたが、彼は立派に説得役を務めていた。――しかし、彼が名乗った途端、空間からオーラバトラーたちの思念が雪崩込んでくる。
『ワタルと名乗る子どもを見たら、彼に付き従う人間ごと彼を討て』――彼らは既に、ワタルの敵対者であるドアクダー側と協力関係を結んでいたのだ。
おまけに、ワタルがアル・ワースの救世主であることや、アマリが異邦人たちの保護と帰還を手伝おうとしていることを知った上での敵対意思である。
その理由は単純だ。“アル・ワースで生きていくための、強力な後ろ盾が欲しい”。
子どもの救世主や下っ端の魔従教団員と、現時点では既にアル・ワースの創界山を抑えた強大な魔王。実利主義者の大人たちがどちらを選ぶかと考えれば、後者を魅力と感じるのは当然だと言えよう。その理論がまかり通る世界の出身者であるならば、もう既に、似たような理由で他の権力者に仕えているオーラバトラーもいるのかもしれない。
「こっちのことを伝えても、ワタルと敵対するってのかい……!」
「こうなったら、戦うしかありませんね……!」
グランディスが苛立たし気に眉間の皺を深くして、アマリも決意を奮い立たせて向き直る。
「救世主サマだか何だかどうでもいいが、余計火に油を注ぐことになったな!」
「向うも生き残るために戦うなら、こっちも同じだ! やるぞ、チャム!」
「うん! 行こう、ショウ!」
トッドのビアレスとショウのダンバインは、躊躇うことなく戦線へと飛び出した。
元々は友軍同志として戦っていた時期があったためか、それともライバル関係を結んでいたためか、2機は連携して敵機を屠っていく。“一度死んで生き返り、二度と死ぬつもりがない男”と“戦いを止めるために生き抜くと決意した男”の意志は、彼らのオーラ力を増幅させていた。
オーラバトラーはビアレスやダンバインだけでなく、ワタルの操る龍神丸へと殺到する。勿論、ワタル1人にすべてを押し付けるつもりはない。ワタルに向かって突っ込んでくる機体を遮り、セイカがELSを差し向けた。機体だけを同化し、バイストン・ウェル兵はそのまま放り出す。
直後、オーラバトラー――ドラムロの姿をとったELSが出現し、同じドラムロ部隊を襲い始めた。バイストン・ウェル兵から見れば、友軍機が突如裏切ったようにしか見えなかったのだろう。彼らの連携や戦術が派手に崩れ始めた。
「な、なんだよアレ!? 金属がドラムロを飲み込んだと思ったら、またドラムロが現れて、友軍だった奴らを襲い始めたぞ!? SFパニック映画のエイリアンかよ!?」
「前回はドラムロなんて機体見かけなかったから、解析してみたくて同化してみた」
「お前はエイリアンか何かか!?」
「外宇宙からやってきた金属生命体だけど」
「マジかよやっべえサインくれ!」
某星の戦争を作ったSFの本場が出身国であるトッドに、ELSの存在は色々と感じるものがあるらしい。そんな軽口を叩きながらも、彼は普通にドラムロを撃退していく。
敵でなければ、彼は特にELSを危惧しないらしい。ショウも困惑したようだが、味方ということで危険性を棚上げすることにしたようだ。
襲い掛かるドラムロ部隊を、自分たちは次々と撃破する。生きるためという理由に縛られるように襲い掛かってきたドラムロを、フリューゲルは躊躇いなく撃ち抜いた。機体の手足を吹き飛ばされ、武装を無力化されたドラムロが転がる。バイストン・ウェル兵はコックピットから抜け出し、そのまま逃げて行った。
仲間たちもなるべく不殺を試みたが、操縦者の脱出を確認できないまま爆風に飲まれる姿を目撃することがあった。そうなってしまったら、もうどうしようもない。どうか無事であって欲しいと祈るのみだ。宙継は内心歯噛みしながら、フリューゲルを操縦してドラムロに攻撃を仕掛ける。
程なくして、自分たちに仕掛けてきたドラムロたちは沈黙。この場は凌いだと思ったが、そこへクルージング・トムが姿を現した。沈黙したドラムロ部隊を「テントウムシ」と呼んで蔑んでいたことから、“兵士たちと交わした契約――生存の保証は名ばかりで、最初から駒として使い潰す算段だった”ことは明らかだった。
奴は増援として、ヘリやドラムロたちを引き連れていた。クルージング・トムが引き入れたドラムロ部隊は、かなり大人数だったらしい。
沈黙したドラムロ部隊を口で一蹴したクルージング・トムは、新たな戦力としてショウとトッドを見出したようだ。
勿論、チャムからすべてを聞いていたショウは首を横に振る。彼がその判断を下すに至ったのは、チャムのSOSに頷いてダンバインを届けたワタルたちの行動があったためだろう。
「アイツの言うことを信じちゃダメだ! アイツは悪い奴なんだ!!」
「まあ、確かに正義の味方っていう面構えじゃねえが……」
ワタルの言葉を聞いたトッドも、妙に納得したような顔をしてクルージング・トムの顔を見つめる。肥満体系に特徴的なケツアゴ、どこか脂ぎっているように見える顔にくるんとウェーブが掛かった髭……何処からどう見ても悪人の面構えだった。
この様子であれば、彼がクルージング・トムの側について行くことはないだろう。
「この際、灰色の方はどうでもいい! 水色の方はどうだ!?」
「何っ!?」
クルージング・トムの発言は、水色の機体――ダンバインに搭乗するショウの力は、灰色の機体――ビアレスに搭乗するトッドの力よりも上であると語っているのと同義だ。ショウへのコンプレックスを募らせるトッドが、この発言を無視するはずがない。
ダメ押しと言わんばかりに、クルージング・トムは言葉でそれを伝えてきた。言外でさえもトッドの心を刺激していたのに、言葉にされてしまえば、トッドの堪忍袋の緒が切れてしまうのは当然だった。
彼の怒りや憤りという感情がゆらりと漂い始める。オーラバトラーもまた、搭乗者のオーラ力と感情によって出力が左右される機体だ。
悪感情を募らせてしまうと、ハイパー化――攻撃力を中心にして機体性能が上昇するが、搭乗者では制御不能、あるいは搭乗者を殺してしまう――する危険性があった。
ビアレスから漂うのは、すべてを遮断するかのように猛り狂う嫉妬心と敵愾心。クルージング・トムには計算したつもりはない。全くの偶然だ。
「おい、オッサン。この程度で俺の実力を全部見たような気になるんじゃねえよ。――何なら今、あんたの目の前で、ショウを倒してやるぜ!」
宙継が口を開くよりも、トッドが有言実行してしまう方が早かった。ビアレスは即座に機体の向きを変え、ダンバインへと襲い掛かった。オーラの力を宿した刃がぶつかり合う。つい先程まで共に戦っていたことが嘘みたいに、だ。
ショウの説得でもトッドは止まらない。たとえクルージング・トムが悪の手先だろうと、そっちに引き込まれたら戦力として使い潰される可能性が高かろうと、コンプレックスによって曇ってしまったトッドには、もう何も見えないし聞こえやしない。
クルージング・トムは、トッドが自分の軍門に下るのを見届けると、満足げに笑って撤退していった。連れてきたヘリとドラムロの指揮権は全てトッドに譲渡される。彼のオーラ力はどんどん歪んだ形で発露し、増幅していった。――まるで、何か強い悪感情の影響を受けたかのように。
ショウ曰く、「今の状況は、トッドがハイパー化したときと同じ状況」らしい。このまま力へ飲まれてしまえば、最後は感情に覚えて自滅してしまうだろう。
トッドは溢れる憎悪へ身を委ねてしまった。それはこの周辺に渦巻くオドにも影響を与え始めたようだ。下手すれば、トッドだけでなく、この周囲も焦土へ変わってしまう。
「これ、ついさっきセイカが言ってた“人間関係の大事故”ってやつ!?」
「まさか、本当に目の前でこんなことが起きるなんて……!」
「みんなお願い! トッドを止めて!!」
タイムリーな話題を思い出したのか、ワタルとアマリが戦慄する。一旦フリーズしてしまった両名だが、チャムの悲鳴で危機的状況であることを思い出したらしい。即座に前へ向き直った。止めるも何も、本人がやる気で向かってきているのだから、迎え撃つしかあるまい。
今のトッドからは、遺恨を棄てて休戦協定を結ぶような余裕は感じられなかった。むしろ、自ら積極的に遺恨へ囚われに向かっている。前後不覚になってしまった彼は、ショウと行動を共にするワタルや自分たちも敵と見定めたらしい。部下となった機体を率いて襲い掛かってきた。
トッドの説得を行うショウを守るために、仲間たちは周囲の雑兵を撃退していく。ドラムロも、量産型ヘルコプターも、今の自分たちには敵ではなかった。機関砲を撃って来たヘルコプターを、フリューゲルのダガーを投擲して叩き落とす。襲い掛かってきたドラムロには、容赦なく一太刀浴びせてやった。
程なくして、雑兵たちは完全に無力化された。これで、ショウの邪魔をする者はいない。
振り返れば、丁度、ダンバインがビアレスを無力化したところだった。ショウの説得を受けても尚、トッドはショウとの敵対、および決着を所望しているらしい。だが、ここで死ぬつもりはないようで、今回は撤退することを選んだようだ。
追いすがるダンバインを弾き飛ばし、ビアレスは創界山の向こうへ――クルージング・トムのいるであろう場所へと消えていく。機体の立て直しが遅れたショウ/ダンバインにできたことは、曇天の向こうに消えていくトッド/ビアレスの背中を見送ることのみ。
<トッド……。お前はまだ、悪夢の中にいるのか……>
ショウの悲痛な叫びは、トッドに届かない。
ショウ・ザマを打ち倒すという夢の中で、トッド・ギネスは必死にもがいている。もがけばもがく程、自分が闇の中へと沈んでいくことに気づいていない。
彷徨い続ける彼の手を引き上げてやる手段は、どこにあるのだろうか。それを見つけない限り、トッドをこちらに引き入れることは不可能だ。
今のトッドは、『怒るのをやめることすらできなくなった』状態に等しかった。このままならば、彼は破滅の階段を転がり落ちていくだろう。
(平行世界のショウさんだとしても、僕は祈ろう。彼の辿り着く場所に、安らぎがあることを)
宙継はもう一度空を見上げた。分厚い曇天の空が、どこまでも広がっている。――どこまでも、どこまでも。
***
アル・ワースに異界人を召喚している候補者の中で、実際に異界人を戦力投入してきたのはドアクダー軍団であった。
それ故、黒幕として色濃くなったのがドアクダーである。あくまでも候補者止まりなのは、召喚方法に関する情報が一切入って来ないためだ。
「実際に異界人を戦力にしてきたんだから、呼び出した黒幕はドアクダーじゃないの?」
「ワタルくん。世の中には、他人が他の理由で行った研究に便乗しようとする輩だっているんですよ」
ワタルの疑問に対し、宙継は返答した。確かにワタルの言う通り、ドアクダー軍団/クルージング・トムは、ナディアを襲う過程でワタルに敵対したネオ・アトランティスを味方認定したり、バイストン・ウェル兵をスカウトしたりして、異界人を自分たちの戦力として取り込んでいる。
実際、自分たちはその光景を目の当たりにしてきた。それ故、アマリやワタルたちの中では“ドアクダー黒幕説”が有力視されている。それに対して“ドアクダーは
小学校中学年であるワタルにも説明できるよう、宙継は例え話で説明する。
「ワタルくんの大好物が、今、キミの目の前にあるとします」
「うん」
「キミが今、好物を食べようと手を伸ばした途端、何者かの手によって大好物が盗まれてしまいました」
「えっ!?」
「キミは犯人の影を目撃しています。その外見は、『翼の生えた鳥』でした。『ワタルくんの好物を奪った犯人』は、『翼が生えた鳥』です。しっかり覚えてください」
「う、うん。えーと、『僕の好物を奪った犯人』は『翼が生えた鳥』だね? 覚えたよ。それで?」
「――そして、丁度キミの近くに居合わせたのが、ホープスだったとしましょう」
「「!!?」」
まさかの候補に、ワタルとホープスがぎょっとしたように目を見開いた。仲間たちも合点が言ったように、ポンと手を叩いて宙継に視線を向ける。
だが、この配役に異を唱えた人物がいた。少女――ナディアは「待って」と声を上げて、クラマを指さした。
「クラマだって鳥でしょ? なんで具体例に使わないの?」
「違います。
今度はクラマが大きく目を開く番だった。彼は何かを言おうと口を戦慄かせていたが、嘴を真一文字に結んで宙継を凝視してきた。宙継は話を元に戻す。
「先程の例え話で『ワタルくんの好物を奪った犯人』は、『翼の生えた鳥』でした。ホープスも確かに『翼の生えた鳥』です。でも、『
「そっか! 『翼が生えた鳥』っていうのは、あくまでも“犯人を絞り込むための情報”であって、“犯人を示す決定的な証拠”にはならないんだね?」
「はい。でも、絞り込むための情報が多くなれば多くなるほど、犯人の候補者も段々と減っていきます」
「例えば、先程の条件に、『身体の色は緑』と付け加えたらどうなりますか?」と言えば、こちらを睨んでいたホープスは、渋々威嚇体制を解いた。
ワタルも納得したように頷き返す。元々、彼は年相応に好奇心旺盛だ。勉強が楽しいものであると教えることができれば、好奇心の赴くままに突き詰めていけるだろう。
科学者や技術者を志した人々は、幼少期に「この分野は自分にとって楽しいものだ」と認識したが故に、専門分野へと飛び込んだタイプが圧倒的に多いからだ。
折角なので、「後で算数でも似たようなものを習うので、覚えておくとテストで役に立つかもしれませんね。先生にびっくりされるかも?」と煽ってみれば、素直なワタルはパアアと目を輝かせた。これで少しは、勉強の方にも興味を持ってもらえるかもしれない。
「元の世界に戻ったら、どれだけの時間が経過してるのかな? 帰って見たら、家族友人知人が誰もいないとか、そんなことないよね?」「馬鹿やめろ!」――背後から、最悪のケースを持ちだしてきたセイカの言葉に、サンソンが顔を真っ青にしてツッコミを入れていた。
――それが成り立つ危険性があるから、異世界漂流とは恐ろしいものなのである。
そんなことを考えながら、宙継は立ち上がる。今日の夕飯当番は宙継だ。不機嫌になってしまったホープスを必死に宥めすかすアマリのためにも、なんとかご機嫌を取らねばなるまい。それと、アマリに余計な手間をかけさせてしまった謝罪でもある。
材料や調味料を確認しつつ、宙継は献立を考えながら手を動かす。前回の旅路も中々に不穏だったが、アル・ワースも負けず劣らず不穏な状況だ。異界人を自陣営に取り込むドアクダー、ドアクダーに協力することを選んだトッド、腹に一物抱えている系の鳥と
(――さて、僕には何ができるかな)
大所帯になった仲間たちのざわめきを背中にし、宙継は手を動かす。
そろそろ移動が大変なので、大きな艦を持っている人が仲間として加わって欲しいなぁ――なんてことを考えながら。
数日後、艦隊規模で召喚されたメガファウナとその乗組員と遭遇。共闘することで危機を跳ね除けたものの、メガファウナが所属するアメリア軍――その一個大隊を率いるクリム大尉から「キャピタル・アーミィと呼ばれる組織がマナの国・ミスルギ皇国に雇われ、アメリア軍に攻撃を仕掛けてきた。そのため、マナの国の調査をしてもらいたい」と命令され、彼らに同行することになるとは――このときの宙継は、一切考えてすらいなかった。
多方面で地雷を装填したり、地雷処理(?)をしたり、無自覚でメタ推理を披露してみせたり――宙継とセイカは今回もやりたい放題しています。今回はホープス×アマリ要素はお預け。次回こそは、ホープス×アマリの話題を組み込めたらいいなあ。