鋼の鳥は約束の場所へ   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・魔従教団について捏造+魔改造が施されている。
・フリューゲルの機体システムに、スパロボUXの他版権要素が加わっている。
・一部キャラクター崩壊注意。
・ヴィルキスの表記がビルキスになっている。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)

上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。


救世主と龍神ファンクラブ

 地球を旅立ち、ELSの母星へ向かったお父さんへ

 

 

 暫くぶりにメッセージを送りました。お父さんの方はいかがお過ごしでしょうか? 僕の方では、マナの国を目指して旅を続けています。

 

 アル・ワースには、僕ら以外にも様々な異界人が召喚されているようです。異界人の召喚は活発に行われており、ついに、個人規模ではなく団体規模――1国の軍の1個大隊――まで召喚されていました。しかも、複数の勢力が異界人を戦力として取り込み、運用しているようなのです。

 現時点で異界人を戦力として取り込んでいるのは、アル・ワース北部の聖域である創界山を支配下に置くドアクダー軍と、東部にあるマナの国では最大規模の国力を持つと言われるミスルギ皇国です。前者は平行世界のバイストン・ウェルの兵士たち。後者はリギルド・センチュリーのキャピタル・アーミィ部隊を傘下に取り込んだ模様。

 異界人の軍勢としては、推定19世紀から転移してきたネオ・アトランティスも含まれています。しかし、ナディアさんの一件で姿を現し、なし崩しでドアクダー軍と共闘して以来、奴らは姿を現していません。“悪い連中は悪い奴らとつるむ”と相場が決まっているので、今後、どこかと同盟を組んで現れる可能性もあります。

 

 リギルド・センチュリーのアメリア軍アル・ワース部隊責任者クリム・ニック大尉から命を受け、メガファウナから同行依頼を受けた救世主一行はそれを快諾しました。

 そろそろ『戦艦が来たら移動が楽になるだろう』と考えていたので、メガファウナとの遭遇と同行はタイムリーだったと言えます。1個大隊規模の転移は予想していませんでしたが。

 

 異世界の技術は、異なる時空から終結したギルド技術者たちを大いに沸かせていました。僕も悪の組織の技術者として出向中の身、彼らの中に混ざってよく話をします。特に、19世紀組から見た僕らの機体は、“未来の超技術”として目を惹くようでした。ジャンくんとハンソンさんが大喜びしていたのが印象に残っています。

 

 各世界の技術やホープスが開発した魔導機等によって、アル・ワースに転移して以来不調だった機体の兵装の修理も進みました。

 まだ完全とは言い難いですが、今後激化していくであろう戦いで、少しでもみなさんの役に立ちたいなと考えています。

 

 戦艦での移動ということで、誰かしらが日替わりで偵察しに行くようになりました。周囲の安全を確認し、有事の際は戦艦へ連絡して戦闘態勢への移行をスムーズにしたり、増援の派遣を打診したりする必要性が発生したためです。そこら辺は、アルティメット・クロス時代とあまり変わりありません。

 特に、アル・ワース関係の知識をあまり持たない異界人が多いという特性故に、偵察の重要性は高まっています。僕らと敵対関係にある部隊は多種多様で、機体の種類も豊富ですからね。もしかしたら、今後もさらに増えていくことでしょう。今回は何種類くらいの敵と相まみえることになるのでしょうか?

 アルティメット・クロス時代の敵も多種多様だったことを思い出します。異種族であるELS・フェストゥム・バジュラ、地球連邦軍の太陽炉搭載機、ザ・ブーム軍、オーラバトラー、ファフナー系の機体、アルマやマキナ、東西博士――ウェストとミナミの発明品等々、色々ありましたね。閑話休題。

 

 

 偵察と言えば、丁度、フリューゲルに搭載されていたシステムの1つが回復した日のことです。

 

 その日の偵察は、19世紀組のみなさん――グランディスさん、サンソンさん、ハンソンさん/グラタンでした。偵察に向かう直前、みなさんは“救世主ご一行”という看板に関して、何か思うところがあったようです。『自分たちのような脛に傷持つ人間が、清廉潔白な正義の味方と一緒にいていいのか』というものでした。

 特に、ワタルくんの保護者兼アル・ワースの神様と呼べるような存在である龍神丸に対して、強い苦手意識を持っていたようです。『上から目線でとっつきにくい』、『自分たちのようなハグレ者とは縁のない立派な御仁』という印象が強かったようで。

 

 量産型とはいえ、魔神を侵食して情報を手にしたセイカ曰く、『魔神は“アル・ワースに存在する神獣の魂を核にした機械の総称”』とのこと。

 だから、機体には意思や感情があるそうです。但し、喋れるのは“位の高い神獣”だけであり、○○丸というのは一種のブランド名扱いとなっているとか。

 セイカがその話題を口に出した結果、サンソンさんとハンソンさんの表情が余計に曇りました。この時点で、なんだか嫌な予感がしたのです。

 

 僕同様、偵察に向かった3人の様子に違和感を覚えたワタルくんが、グラタンの跡を追いかけて出撃。あっという間に彼と龍神丸の姿は見えなくなり、他の面々は大慌てでした。本来なら大問題なのですが、フリューゲルのシステムが回復していたので、その試運転も兼ねて使ってみました。

 ワタルくんと龍神丸の座標を思念波で察知し、彼らの動きが止まったところで転移を決行。メガファウナごと現場に転移すると、グラタンと龍神丸が息ぴったりの連携を繰り広げていたところでした。偵察開始前の蟠りは解消されたようで、サンソンさんもハンソンさんも元気になっていてよかったです。

 

 点を繋いで線を引けば、目的の場所へ飛ぶことができる――ラインバレルの由来でしたね。

 

 フリューゲルの量子ワープおよび転移機能、ラインバレルシステム。クアンタに搭載された量子ワープ、マキナが有しているオーバーライド、フロンティア船団やバジュラが有したフォールド波による転移――それらの特徴を組み合わせて作り上げた、次世代の転移システム。

 浩一先輩から「機体の名前をシステムに使いたい」と頭を下げた日のことを思い出します。名前の由来として、ヒトマキナのいる月へ殴り込みに行ったときの出来事を引き合いに出したら、先輩は満面の笑みを浮かべて『ナイスな提案じゃないか!』と喜んでくれました。

 ヒーローものにもありますよね。“先輩や師匠から、何かしらを受け継ぐ”という展開。それが浩一先輩の琴線に触れたようで、ストレートに許可が下りました。名前の由来を語るときは、いつも誇らしげな気持ちになっていたものです。

 

 システムの名前の由来を教えたら、ワタルくんやジャンくんとハンソンさんがワクワクしていました。

 圧倒的なピンチを覆し、仲間を救ったという部分に浪漫を感じたためでしょう。閑話休題。

 

 グラタンは、偵察中にシュワルビネガー率いる量産型ゲッペルン軍団と遭遇。最初は単騎で戦っていたようですが、後からやってきた龍神丸と合流して戦っていたようです。メガファウナごと転移してきたことで戦術上の有利不利は逆転し、僕たちはシュワルビネガーたちと撃破しました。奴は撤退していったので、またどこかで相見えることになるでしょう。

 

 メガファウナ含んだ僕たちが、グランディスさんとワタルくんたちに合流する前に、『龍神丸がトーク術でシュワルビネガーを圧倒』していたらしいのです。どうやら4名は龍神丸本人から固く口留めをされているようで、詳しいことは話してもらえませんでした。

 なので、僕も『思念波で何があったかを全部把握している』ことは内緒にすることにしました。訛りが強すぎると、第3者は言葉を聞き取り理解することができなくなってしまいますよね。それでマシンガントークなんてされてしまえば、呆気にとられる以外にないわけです。咄嗟にそういうことができるのって、凄いですよね。

 

 ドアクダー軍団を撃退後、ふとしたことからシバラクさんの戦神丸の話題になりました。彼の魔神も喋るそうですが、実際にその現場を目撃したことは一度もないんです。

 シバラクさんは電話で何度も話をしているそうなので、“操縦者であるシバラクさん以外、戦神丸の声を聞き取ることはできない”タイプなのかもしれません。

 最も、僕の仮説は証明されることはありませんでした。戦神丸の声をみんなに聞かせようとして公衆電話に駆け込んだシバラクさんの会話で、戦神丸から出勤拒否をされたためです。

 

 『現在、酒を飲んでフラフラだから来れない』、『ドアクダー軍団と戦っていたときは、風邪気味で辛かった』とのことですが、風邪気味なのにお酒を飲んでいるというのはどういうことなのでしょう? そんなことしたら悪化するのは当たり前じゃないかと思うのですが、創界山の生態系はよく分かりません。

 

 シバラクさん曰く、以前は『デート中だから』という理由で出勤拒否されたことがあったようです。

 それを語ったシバラクさんは血涙を流していました。未だにお嫁さんのアテがないためでしょう。

 

 

 他にも、異世界から来た寄せ集め部隊ということが災いして、ちょっとした騒乱も発生しました。

 

 ある夜のことです。マリーさん、ヒミコさん、ラライヤさんが行方不明になってしまいました。近辺にはまだキャピタル・アーミィがいるかもしれないのに、彼女たちは戦力を一切持たないで遊びに行ってしまったらしいのです。

 探しに行こうにも、現在は夜。迂闊に動けば、こちらが逆にキャピタル・アーミィの罠に嵌められてしまう危険性があります。僕が思念波を使うという手もあったのですが、『今回の一件を解決したい』と名乗りを挙げた“彼”に任せることにしました。

 

 彼――ライオンのキングは、マリーさんと仲が良い相棒です。彼の嗅覚と野生の勘は、見事に相棒の居場所を発見しました。彼の思念波を読み取った僕が座標を割り出し、他の面々に伝えました。結果、アイーダさんが現場に突撃し、相手を容赦なく責め立てていました。ベルリさんは添え物状態になっており、彼女を止められずにいました。

 それこそが僕らの作戦です。アイーダさんの突撃に釘付けになっている敵の目を欺き、敵陣に潜入して人質を救う――その作戦は見事に成功。人質を全員救出することに成功しました。あちらも結構大混乱だったようで、マスク氏の副官さんが『なんだこれ、可愛いぞ!』と頓珍漢な発言をしていたのが印象に残っています。あの人ボン太くん好きそうだな。

 アイーダさん本人は救出部隊を希望したのですが、セイカの『“正論をぶつけ続けると、怒りで我を忘れて、感情的な行動に走るタイプの兵士”がいっぱいいる。アイーダは正論で責めるタイプだから、下手したら、“貴女の完璧な正論に怒った兵士が、突発的な行動をして、人質が殺されてしまう”危険性がある』という意見で諦めてくれました。

 

 作戦開始前はしょんぼりしていたのですが、作戦決行中は普段通りの突撃っぷりを炸裂させていたようなので安心です。開戦時の台詞が『各機突撃』だったのと、終了後は特に喧嘩になっていなかったようなので大丈夫でしょう。

 

 マスク氏の副官さんが『女子どもを偵察に使い、こちらが油断した隙に攻め込んでくるなんて卑怯だぞ』と主張してきたので、『遊んでいた女の子を拉致尋問し、挙句の果てには人質に使うというのは如何なものかと。貴女で例えれば、“好きな人とのデート中に、何の前触れもなく、突如拉致監禁される”ようなものですよ? 想像してみてください。貴女がそんな目に合ったら、どんな気持ちになりますか?』と質問してみました。

 彼女の想像力は並大抵のものではないようで、マスク氏とのデート中に拉致監禁されてデートが台無しになった光景を鮮明に思い浮かべました。最終的には、自分を拉致監禁した相手を八つ裂きにしていました。『……せ、戦争とは、そういうものだ』と言った副官さんの声が震えていたあたり、気持ちは理解して頂けたようです。因みに、想像上の彼女はメイクも服装もばっちり決まっていました。それ故に、犯人を八つ裂きにする彼女の“鬼のような形相”が映えていました。

 

 キャピタル・アーミィのはねっ返り娘VS救世主ご一行の突撃娘による戦いは、後者に軍配が上がりました。

 突撃娘関連の話題を逸らそうと奮闘したベルリさんに労いの言葉をかけるあたり、アイーダさんは自分の突撃癖を自覚していたようです。

 

 今回は僕たちの勝利で終わり、キャピタル・アーミィの連中は去っていきました。ですが、また似たようなことが起きたら大変なことになります。

 

 10代後半~20代前半のラライヤさんはともかく、マリーさんやヒミコさんはまだ年端もいかない子どもです。常に大人しくしているのは、性格的にも年齢的にも難しい話でしょう。

 今回反省していたとして、喉元過ぎればまた遊びに熱中してしまい、同じことを繰り返す――なんてことも考えられます。あと、怒り方によっては、話がこじれる危険性も。

 反応だって様々です。深く反省し過ぎるレベルで落ち込んでいるマリーさん、別な話題で盛り上がりドニエルさんの話を一切聞かないラライヤさんとヒミコさん。極端でした。

 

 ドニエルさんは子どもの叱り方には一切慣れていないようで、両極端な反応を示す3名に四苦八苦していました。

 そんな状況を打破する方法は、ノレドさんが提示してくれました。

 

 ノレドさんは、マリーさん、ヒミコさん、ラライヤさん、ナディアさんを集めて『メガファウナ生活班』なるものを結成。生活班の仕事は主に、掃除洗濯炊事のような家事を中心にして、前線で戦う面々をサポートするお仕事です。“暇を与えると遊びに行ってしまうなら、仕事を与えれば余計な行動はしないだろう”ということですね。

 生活班のリーダーはノレドさんです。彼女はマリーさんを元気づけ、ヒミコさんとラライヤさんの興味を惹かせ、ナディアさんに“戦うのと家事ならどちらがいい?”という誘導尋問で家事を選択させた強かな人でした。セイカに『ベルリさんの背中を追いかけてきた恋する乙女』と言われたときの動揺など、微塵も感じさせません。

 

 あちらはとんとん拍子で解決したのですが、今度はアイーダさんが『私が部隊長です』と言い張って大変なことになりました。アイーダさんが隊長になってしまったら、作戦がすべて『全軍突撃』という闇雲な作戦一択しかなくなるためです。

 機転を利かせて『アイーダさんは切り込み部隊の隊長ですね。一点集中突破系の作戦に関しては、貴女以外に適任はいません』と誘導しましたが、上手くいったかは分かりません。後はベルリさんに任せました。ダメな息子でごめんなさい。

 

 ドニエルさんは、マリーさんたちと同じ年頃なのに大人びている僕に感心していらっしゃいました。同時に、年頃の子どもとして振る舞わない姿に違和感を抱いたそうです。

 関係者の中には前者よりも後者を機敏に感じ取った方がいらっしゃったようで、とても心配されてしまいました。“いい子でいようとする”悪癖は、未だに抜けていないようです。

 ……と言っても、僕は“お父さんにとってのいい子”になりたいのであって、大人全般が喜ぶような“使い勝手のいい子”になりたいとは微塵も思っていません。なるつもりもありません。

 

 ただ、そのことに関してうっかり失言をしてしまいました。

 

 『お父さんにとっての“いい子”になれない自分に、生きる価値はないと思っていた』と言ったら、セイカに怒られてしまいました。周りも目の色を変え、本格的に僕と僕らの親子関係を気にし始めたので、『今は違います。“お父さんの息子”であるためにも、“ELSと対話に成功し共存する新人類”としても、“セイカのパートナー”という人生最大の大役を成し遂げるためにも、そう簡単に死んじゃいられません。セイカを残して死ねるわけないじゃないですか。僕にはキミしかいないのに』と言ったら、セイカから『そういうとこだぞ!』と再び怒られてしまいました。顔が真っ赤でした。

 おかしなことを言ったつもりはないんですけどね。だって、僕らの世界からアル・ワースに転移した人間や生き物は僕ら――刃金宙継とセイカしかいません。嘗てアルティメット・クロスとして戦い抜いた仲間たちは、アル・ワースにはいないんです。ショウさんとチャムさんも平行世界の人間だから、僕らの知っているショウさんとチャムさんではないです。そんな状態なのに、どちらか片方が死んでしまったら、一人ぼっちになってしまいます。寂しいのは、辛いですから。僕自身、セイカを一人ぼっちにしたくないし、セイカがいなくなってしまうのも嫌です。大事な相棒なので。

 

 そのことをセイカに言ったら、また『そういうとこだぞ!!』と叱られてしまいました。やっぱり顔が真っ赤でした。本当にどうしたんでしょう?

 周りのみんなも生暖かい眼差しでこちらを見つめていたし、ホープスはこれ幸いとセイカをからかって遊んでいました。最後は取っ組み合いになる寸前まで行きました。

 仲良くしろとまでは言いません。夕食を盾に取り、『最低でも、戦闘に支障が出るような真似はしないでほしい』と念を押しておいたので、大丈夫でしょう。

 

 

 色々長く書きましたが、今回はこの辺にしておきます。

 では、失礼しました。

 どうか息災で。

 

 ソラツグ・ハガネ/刃金宙継より

 

 

◆◆

 

 

 マナの国――マナと呼ばれるエネルギーを用いた文明圏を築き上げた国々の総称である。マナを用いた高度情報社会は日常生活レベルにまで及んでおり、“マナの国で生きていくためには、マナを扱う資質が必要である。マナを扱えなければ、この国では生きていけない”とまで言われるレベルらしい。

 その特性故に、マナの国に住まう民が国外に出ることは皆無だという。他国の人々がマナの国に関しての情報を入手できないのは、そのためだ。マナを使わない/マナが存在しないと生きていけない国での生活に慣れきってしまったためか、マナがない国に出て行こうとする意志が湧かないのだろう。

 他にも、“マナを使う資質がない”人間に関する扱いも、後ろ暗い雰囲気が漂っているようだ。マザーコンピューター・テラと同じような気配を感じるのは、宙継の杞憂ではないのだろう。アマリやクラマが、マナの国に関係する噂話をしていたのを耳にしている。詳細を最後まで聞くことはできなかったが、嫌な予感はしていた。

 

 その予感は、とんでもない形で眼前へと示される。

 

 

「か、怪物だ! 空の裂け目から怪物が出てきた!」

 

 

 メガファウナの副官が悲鳴を上げて天を指さす。彼の言葉通り、天から異形の群れが現れた。その外見は、西洋のファンタジーでよく目にするドラゴンと酷似している。

 アマリ曰く、あの異形はドラゴンと呼ばれているらしい。異世界から現れ、マナの国周辺に出没する生物であること以外、よく分からないのだという。

 

 ダメ押しと言わんばかりに、ドラゴンはメガファウナに攻撃を仕掛けてきた。「元々好戦的な性格である」とのことだが、それは人間側から見た側面でしかない。

 実際、“好戦的だと思っていた異形には一切攻撃意志は無く、本人たちの尺度――コミュニケーションだったり、善意だったり――による行動だった”ということがある。

 しかし、人間にだって尺度がある。彼らの行動を人間の尺度に当てはめた結果、それが“攻撃および侵略行為”に合致してしまった。誤解は加速し、憎悪へと変わる。

 

 取り返しのつかないところまで行ってしまったら、それこそどうしようもなくなる。誤解と憎悪の連鎖をどこかで断ち切らない限り、アル・ワースから戦乱はなくならないし、マナの国はドラゴンを脅威認定したまま戦いを続けることになるだろう。

 

 

「1つ、みなさんに進言してもいいでしょうか?」

 

「今は緊急事態だ。手短に頼む」

 

「分かりました。手短に言います。ドラゴンに対し、疑似トランザムバーストによる意識共有領域の展開を行うことを許可してください」

 

「それって、対話の為のシステムだよね? ってことは、宙継くんは、ドラゴンと対話を試みようっていうの!?」

 

 

 ドニエル艦長から発言許可を得た宙継の言葉を聞き、ジャンが驚いたように声を上げた。宙継は頷き返す。

 勿論、多くの者が驚き、宙継の発言を正気かと疑った。対話が可能だとは思えないという意見が多数だとも分かっている。

 

 アマリは首を振り、きっぱりと言い放った。

 

 

「無理です! ドラゴンには対話が通じません!」

 

「それをあたしたちの前で言う? その程度の理由で、“人類とELSの対話を成功させ、これからの未来を担う希望になったあたしとソラ”を説き伏せられると思って?」

 

 

 「伊達に宇宙(そら)へ花咲かせたわけじゃないんだよ!」と、セイカは胸を張った。ELS・フェストゥム・バジュラという三大異種族との対話と和解を成したアルティメット・クロスあがりだからこそ、こんな見解を持つに至っている。それに、自分たちがしてきたことが間違いではなかったという現場も目の当たりにしたのだ。

 脳裏によぎるのは、バジュラ本星で行われた電脳貴族との決戦。バジュラクイーンを乗っ取り、バジュラの持つネットワークを利用して世界を支配しようと企む連中から、バジュラを助けようとしたときだ。電脳貴族がマクロスクォーター目がけて、最大火力の攻撃を撃ちだしてきた瞬間のこと。

 電脳貴族のマクロスキャノンからクォーターを守ったのは、シェリルとランカの歌を聞いたバジュラたちだった。そんなバジュラとクォーターを守るため、ELSとフェストゥムが立ちはだかった姿を、宙継は今でも鮮明に思い出せる。駆けつけた彼らはバジュラをインプラントから次々と解放し、電脳貴族の戦力を根こそぎ無力化してみせた。

 

 

『みんなが、キミたちを守りたいと思っているんだ。バジュラも、ELSも、フェストゥムも……! この宇宙に生きるすべての命が、キミたちの意志を……!』

 

 

 戦いたくないと叫び、美羽を守るために身を呈したフェストゥム――操の言葉は重かった。彼もまた、美羽や一騎、アルティメット・クロスと絆を紡いできた異種生命体である。

 

 絆を持つのは人間だけじゃない。人間同士だけじゃない。異種族同士にだって、絆は築かれる。ELSたちが宇宙(そら)に花を咲かせてみせたように、空が好きという共通認識から総司と美羽を守ろうとしたフェストゥムがいたように、シェリルとランカの歌によってインプラント制御から解放されたバジュラが2人を助けようとしたように。

 実体験と現物という二大正論を示され、仲間たちはぐうの音も出ないようだ。それに、根拠はこの2つだけではない。ネバンリンナが猛威を振るった世界での出来事を思い出しながら、宙継は言葉を続けた。あちらの“宙継”の体験から()()()()()()()()()()は、この1つに尽きるのだから。

 

 

「それに、“どこかの世界にいる僕”は、ドラゴンと対話可能であることを体験しているようなんです」

 

「何だって!?」

 

 

 宙継が“平行世界に存在する自分や、自分の関係者の体験や感情を、虚憶という形で受け取ることができる”ことは、他の面々に既に話している。

 実際に、受け取った虚憶の一部をみんなにも見せたこともあった。実例は既に提示されている。仲間たちは難色を示しながらも、条件付きでゴーサインを出してくれた。

 異世界からの寄せ集め部隊で、許可を出してもらえることだけでも儲けものだ。早速出撃した仲間たちの視線を受けながら、フリューゲルは前へ出る。

 

 早速、セイカの力を借りて、いつものように疑似トランザムバーストを展開した。

 意識共有領域においては、言語の有無など関係ない。ドラゴンたちの声に耳を傾けようとして――

 

 

<――きゃあああああああ! 龍神様と救世主様よ!>

 

<まさか、本物をお目にかかれるだなんて!>

 

 

 頭の中に響いたのは、黄色い女性たちの声だった。部隊の大半が女性だったらしい。

 

 彼女たちの視線を釘付けにしているのは、ワタルと龍神丸である。彼女たちの反応は、美海・ホリー・エイーダのコンサートでエキサイトしていた勉の姿を連想させた。もしくは、収容所で行われた慰問ライブでエキサイトするガランやキバの輩たちだろう。

 ……しかし、どうしてか、宙継の脳裏には別の虚憶が浮かんでいた。聖アドヴェントが幅を利かせていた世界にあるアッシュフォード学園で、『キューピッドの日』という催し物が行われたときのこと。学園の生徒たちが、獲物を狙っていたときの図が頭から離れない。

 

 『やってやるぜ!』と鼻息荒く葵を狙っていた男子学生。『お姉さんが逮捕しちゃうぞ』と両手をワキワキさせて正太郎を狙っていた女子学生。

 終いには、外見が性別不明ということで『モノにしてしまえばこっちのものだ』と目をぎらつかせながらアルトを狙っていた男子と女子学生も現れたか。

 あちらの“宙継”や正太郎にとってのキューピットの日は、リアル『逃走中』と称した方が正しいような有様になっていたように思う。閑話休題。

 

 

「……ドラゴンって、性別あったんですね」

 

「オスの数が圧倒的に少ないようだが、どういう部隊構成なんだ……?」

 

「しかもあの反応……どこからどう見ても、アイドルの親衛隊やファンの類にしか見えないな」

 

 

 まさかの新事実に、現地人であるアマリがあんぐりと口を開けた。ショウとマサキも首を傾げる。疑問はそれだけではない。

 

 

「あのドラゴンたちは、ワタルや龍神丸のことを知っているようだが……?」

 

「僕、ドラゴンを見たのは初めてなんだけど……。龍神丸は何か知ってる?」

 

「……い、いや……」

 

 

 異世界からの襲撃者が、どうしてワタルや龍神丸のことを知っているのだろうか? シバラクの疑問は当然のことであるし、当のワタルには覚えはない。龍神丸は歯切れの悪い返事をするのみに留めている。しかも、ドラゴンたちの様子からして、彼女たちはワタルや龍神丸に対して非常に好意的な感情を抱いているようだった。

 意識共有領域から聞こえてきたドラゴンの声を纏めると、『彼女たちは何らかの命――何かの試金石のため――を帯びて、アル・ワースのマナの国近辺に転移してきた』という。どうやら、この盛り上がりようは、ワタルや龍神丸と関わりがあるらしい。詳しいことを読み取ろうとするが、雑音があまりにも多すぎた。

 

 アルカトラズ慰問ライブの囚人並みに、ドラゴンたちは歓声を上げている。どれもこれも救世主であるワタルと魔神である龍神丸に対する声援ばかりだ。

 中には卒倒してしまいそうな個体や、サインを巡って取っ組み合いになっている個体や、恍惚とした表情で両名を見つめている個体もいる。

 あそこにいるのは脅威となる異形――ドラゴンの群れではない。押しがステージ上に現れたので盛り上がっている、ドルオタやファンの群れだ。

 

 ドラゴンたちはワタルと龍神丸を讃えていたが、暫くして、自分たちの思考回路がワタルを始めとした面々と共有されていると悟ったのだろう。別方面で騒ぎ始めた。

 

 

<嘘、聞かれてた!?>

 

<私たちの声は聞こえないはずなのに、どうして!?>

 

<恥ずかしい……! 救世主様や龍神様に引かれたら、私もう生きていけないわ……>

 

<丁度いい。このまま特攻して、救世主様と龍神様の経験値(こやし)になりましょう。それなら、恥も消せるし、使命も果たせるし、お二人のお役に立てるし一石三鳥……!>

 

「待て! 自ら命を捨てるような真似をするんじゃない!」

 

 

 目が座ったドラゴンが数匹、濁った眼で龍神丸を見つめる。ただならぬ気配を察知した龍神丸は、慌てて彼女たちに呼びかけた。それだけで自殺をやめたり卒倒したりするあたり、ファンの中でもとりわけ“ガチ勢”と呼ばれる類の方々らしい。

 ワタルと龍神丸を交渉役にすれば、案外なんとかなるのではないか――救世主一行は何となしにそう察したようで、誰が何を言わずとも、どうすればいいのかを悟ったようだ。ワタルや龍神丸もそれに異論はないようで、ドラゴンたちと率先的にコンタクトを取る。

 しかしながら、彼女たちは『それはそれ、これはこれ』という割り切りをしっかりできるタイプだったらしい。「戦う必要はないのでは?」という2人の言葉に対し、ドラゴンたちは首を振った。<貴方様が救世主様と龍神様であるからこそ、戦わなくてはならないのです>と。

 

 

<救世主様、龍神様。ご無礼をお許しください>

 

<我らが一族の悲願のため、アル・ワースを救うため。――貴方がたのお力、試させていただきます……!>

 

 

 ドラゴン部隊はそう言うなり、自身の使命を果たすために戦いを挑んできた。外見と図体は異形そのものだが、彼女たちの中身はただのドルオタである。中には<あんたはあっちの機体の相手してよ><嫌よ! 救世主様と龍神様の経験値(こやし)になるって決めてたんだから!>と喧嘩を始める個体までいた。

 悪意あっての襲撃者ではないことから、むやみやたらに命を狩る必要は皆無だ。とりあえず、今までと同じように、戦闘不能に陥らせる程度に留めておく。<救世主様は本当にお強いです>だの<私だって救世主様と龍神様の経験値(かて)になりたかった>だのと言いながら、撤退していくドラゴンを見送る。

 こんなに複雑な気持ちで戦う羽目になったのは、竜宮島に核兵器搭載の戦艦を持ってきたハザードの護衛をする羽目になったとき以来だ。そんなことを頭の片隅で考えつつ、宙継は戦いに集中する。ドラゴンたちが仕掛けてきた試金石に対し、救世主一行が全力で応えていたときだった。

 

 突如、レーダーに謎の機体の反応が現れる。数は2機。それはすぐに、この戦線に姿を現した。

 

 白と青を基調にした機体と、桃色を基調にした機体。ネバンリンナが大暴れした世界の虚憶で目の当たりにした機体――パラメイル。

 実は、片方の機体――白と青を基調にした機体だ――の分類は()()()()()()()()()のだが、この場で開示する情報ではないだろう。

 

 

「あれはパラメイル。ドラゴンを狩る人間が乗っている機体です」

 

「アンジュ……! あたしたちのことを知っている人がいるみたいだよ!」

 

「私たちのことを『人間』扱いしたってことは、外の国から来たみたいね」

 

 

 彼女たちの会話に、宙継は思わず眉を顰め――不意に、虚憶がフラッシュバックした。脳裏に浮かんだのは、『ノーマ』と呼ばれた人種たちの扱い。

 

 マナの国で生まれた女性は、自身がノーマと発覚すると、即座に社会から抹消・隔離された。元の身分が平民だろうと貴族だろうと、それこそ皇族だろうと関係なしに。戦闘訓練に明け暮れた女性たちは、パラメイルを駆ってドラゴンと戦うことを強いられる。職業の選択権など存在しない。

 しかも、マナの国の民たちは、ドラゴンの脅威を一切知らないまま育つ。ドラゴンの存在を知っているのは、ごく僅かな官僚や皇族の関係者くらいだろう。彼女たちを戦線に立たせ、民たちは安全圏から離れない。ノーマの命や権利を踏み躙ることで成り立つ歪な社会――それが、マナの国の正体だ。

 

 

「…………っ」

 

 

 胸糞悪い。以前遭遇したクンタラもそうだが、虚憶におけるマナの国の社会体制も歪みすぎている。

 こんなの、古のミュウや現在のイノベイターやミュウたちが置かれている状況と変わらないではないか。

 操縦桿を握り締める手に、自然と力がこもる。――この世界のマナの国も、虚憶と同じような支配体制なのだろうか?

 

 

「ソラ。今、ハザードの演説を聞いているときみたいな顔をしてるよ」

 

 

 「落ち着いて」と、セイカが声をかけてきた。彼女はいつも、脱線してしまいそうな宙継を引き留めてくれる。おかげで余計な被害を出さずに済みそうだった。今なら、養父(クーゴ)その親友(グラハム)の関係性がよく分かる。相手がこちらの手を引いて、正しい場所へ引き戻してくれる――その尊さを、自分たちは知っていた。

 

 

「ありがとう、セイカ。おかげで、能力を暴発させずに済みそうです」

 

<――ビルキス……! その実力、試させてもらうぞ!!>

 

「――聞こえますか、パラメイルのライダーさん! ここは協力して、ドラゴンと戦いましょう!」

 

 

 宙継が落ち着きを取り戻したのと、新たに現れたドラゴンたちがビルキスを敵認定をしたのと、アマリがパラメイルたちに協力を要請したのはほぼ同時だった。ヴィルキスを威嚇するドラゴンの様子からして、本命はあちらだったのかもしれない。

 アンジュと呼ばれた女性は悪い笑みを浮かべ、もう片方の機体と一緒にドラゴンへと突っ込む。協力どころか単騎で暴れ回るつもりのようだ。持ち前の機動力で飛び回り、その勢いのままドラゴンたちに攻撃を仕掛ける。ドラゴンたちも応戦した。

 

 彼女たちは自分がノーマであることを明かし、特別ボーナス目当てに群れを全滅させることを宣言する。状況を理解できずにいる面々に、アマリが重い口を開いた。社会から抹殺し追放したノーマに、ドラゴン退治の責務を負わせる代わりに生存権を認める――マナの国の実情を説明し終えたアマリの表情は曇っている。勿論、それは仲間たちも一緒だった。

 だが、話はここで終わらない。トランザムバーストによる意識共有領域を展開したことで、こちらはドラゴンたちが“何か重要な使命を背負って、ワタルと龍神丸への試金石として勝負を仕掛けてきた”ことや、“ドラゴンの中身がただの救世主と龍神丸の大ファンでしかない”ことを知っている。パラメイル部隊は、明らかにドラゴンを殺そうとしていた。

 

 

「ちょ、ちょっと待って! ドラゴンたちは僕たちを試しているだけで、悪い奴って決まった訳じゃ――」

 

<お気遣いありがとうございます、救世主様>

 

<ですが、これが私たちに課せられた使命……!>

 

<――貴方にお会いできて、本当に良かった>

 

 

 ワタルの制止に対し、ドラゴンたちは優しく目を細めて答えた。彼女たちは既に覚悟を決めて――死ぬことすら厭わずに――使命を果たそうとしている。その瞳に迷いはない。

 

 

「な、なに!? ドラゴンの声!? 嘘……喋ってる。ドラゴンが喋ってるよ、アンジュ!」

 

「だからどうしたってのよ、ヴィヴィアン。相手がやる気満々なら、私たちがすべきことは1つに決まってる……!」

 

 

 迎え撃つ側であるアンジュとヴィヴィアンも、アマリ同様、ドラゴンが言語を介する現場を見たことがなかったようだ。理由があれど好戦的な態度を崩さないドラゴンに対し、ドラゴン退治のプロがどのような判断を下すかなんて1択だろう。……最も、彼女の表情は、悪い笑顔から苦々しい苦渋の顔へと変わっていたが。

 もしや、彼女もドラゴンの問題発言――<救世主様と龍神様の経験値(こやし)になりたいから、ビルキスの方は宜しく>だの、<救世主様はとってもお優しい方だ。それに比べてビルキスのパイロットは!>だの、<あんなゲス顔のボーナスと経験値(こやし)になるくらいなら、救世主様と龍神様の資金と経験値(こやし)になりたかった>だの――を聞いたのだろうか?

 「だって私、野蛮なノーマだから! あんたたちだってドラゴンでしょう? ――大人しく、私の特別ボーナスになりなさいよォォォォ!」と開き直りながら、ビルキスと呼ばれた機体を踊りかからせたあたり、疑似トランザムバーストによる意識共有領域はしっかりと効果を発揮していた様子だった。アンジュは容赦なく、ドラゴンに止めを刺そうとする。

 

 ――だが、死へ向かおうとするドラゴンたちを見送れるような神経をしていたら、きっとワタルは救世主になんて選ばれなかった。

 

 

「待ってください! パラパラメールのライダーさん!」

 

「!!?」

 

 

 ワタルの言い間違えによるインパクトが大きかったせいか、ビルキスの動きに大きな隙ができる。ビルキスに襲われかかったドラゴンは、その隙を利用する形で安全圏へと離脱した。

 

 

「ちょっと! 何てことしてくれるのよ!?」

 

「このドラゴンたちは僕たちを試しているだけで、悪い奴って決まった訳じゃないんだ! その理由を聞き出すまで、殺しちゃダメなんだ!!」

 

 

 アンジュがワタルに文句を言おうと口を開くが、ワタルが声を張り上げる。10にも満たぬ少年が紡ぐ真摯な言葉には、先程見事なゲス顔を披露したアンジュにも思うところがあったようだ。ワタルの純真さも、彼女が躊躇う理由の1つなのだろう。

 しかし、意識共有領域は、アンジュの本音――ドラゴンを倒して手にする特別ボーナスを惜しむ声――で満ち溢れていた。彼女の所属組織の給料体系は、ドラゴンを倒した成果で変動する出来高制らしい。生々しく世知辛い事情は、自分の力だけで生きていこうと決意している彼女だからこその悩みのようだ。

 

 ドラゴンの方もつられるようにして悩み始める。信仰する救世主や龍神丸の「命を粗末にするな」という言葉や、異形である自分たちを気に掛けるワタルの優しさを無碍にしたくなかったのだろう。彼女たちは暫く考え込んだ後、何処からともなく何かを取り出す。1匹のドラゴンが、龍神丸へ恭しく頭を下げ、それを差し出した。

 金塊だった。大きさはまばらで、最低でも時価十数万円~数百万円程度のものである。<はした金にしかならないことは重々承知していますが、せめてもの気持ちです。勝利の証としてお納めください>と語るドラゴンの眼差しは、どこまでも真面目だった。あまりの事態に、ワタルも龍神丸もどう反応すればいいのか悩んでいるらしい。

 その脇で、別のドラゴンが、ビルキスやもう1機のパラメイルへ金塊をこれみよがしにちらつかせている。勿論、特別ボーナス狙いのアンジュとヴィヴィアンが食らいつかないはずがない。金塊を奪い取るための戦いを始めていた。彼女たちの様子からして、所属組織は換金も行えるらしい。

 

 猫じゃらしのようにぶら下げられた金塊を、アンジュとヴィヴィアンは鮮やかな手つきで強奪していく。彼女たちは、今回はドラゴンを殺さないでくれる様子だった。

 

 宙継は安堵の息を吐く。ワタルも安心したようで、ほっとした笑みを浮かべていた。

 しかし、問題が解決したわけではない。眦を釣り上げたアマリが、仲間たちへ警告する。

 

 

「異界の門が開きます! みなさん、注意してください……!」

 

 

 現れたのは、新たなドラゴン部隊と、赤を基調にした機体だった。

 

 パラメイルと非常によく似通った機体デザインだが、厳密な分類はパラメイルではなかったはずだ。ドラゴンたちは赤い機体を指揮官と認識しているようで、機体を守るような陣を敷いている。目的は不明だが、指揮官が自ら乗り込んできたことは確かだ。救世主の案内役であるアマリでも、赤い機体の正体は分かっていないらしい。

 だが、ここは疑似トランザムバーストで展開された意識共有領域。赤い機体が無人機でもない限り、相手の意識を読み取ることはできるはずだ。ドラゴンたちに「救世主たちの実力を試せ」という命令を出している理由を掴んで、戦闘をやめさせることができる可能性だってある。宙継は意識を集中させ――

 

 

<■■■■■■■―――!!!>

 

 

 声になっていなかった。明確な言葉として読み取ることはできなかった。唯一分かったことは、彼女もまた、救世主と龍神丸の大ファンだということだけだった。

 仁王立ちしてガッツポーズでもしていそうな勢いで、彼女は救世主と龍神丸に関する賛辞を垂れ流す。思念の流れと勢いの激しさに、面々は思わず気圧された。

 終いには、仲間のドラゴンたちと一緒に恍惚としている始末である。勿論、彼女たちは意識共有領域が展開していることに気づいていない。

 

 龍神丸から声をかけられて、漸く彼女たちは“自分の内心が垂れ流しになっていた”ことに気づいたのだろう。正直もう遅いのだが、慌てて取り繕っていた。

 

 彼女たちの目的は、アンジュの搭乗するビルキスらしい。女性の意識がそちらに集中したことからして、ドラゴン部隊の本命がそちらだったことは明らかだ。

 最も、救世主と龍神丸に対しては、アンジュとビルキスとは別ベクトルで関心があったことも事実である。それが、あの反応に繋がっていたのだろう。

 

 

「貴女は僕たちを試して、何をしようとしているの?」

 

「……幾ら救世主様のご質問でも、今、それにお答えすることはできません」

 

 

 赤い機体を操る女性は、ワタルの問いに対して申し訳なさそうに答えた。彼女はあくまでも、自信に課した使命を果たすつもりらしい。

 

 

「私は生き残るために戦う。それを邪魔するなら、叩き潰すのみ! ――行くわよ、ヴィルキス!」

 

 

 視線を送られたビルキス――アンジュの言うヴィルキスは、赤い機体と対峙する。高機動戦闘型の機体同士が派手に鍔競り合いを始めた。赤い機体に付き従っていたドラゴンたちは、まだ残っていたドラゴンたちに状況の確認をしたのち、金塊を抱えてこちらへ挑みかかって来る。色々な意味で準備万端と言ったところか。

 戦術的な問題とはいえ、龍神丸以外の機体と戦う羽目になったドラゴンは、大なり小なり不満を抱えているらしかった。それでも自分たちの責務――試金石を果たそうとするあたり、真面目な性格なのだろう。あるいは、それを果たすことが一族の悲願を叶えるために必要なことだから、全力投球しているのか。

 フリューゲルによって戦闘不能に追いやられたドラゴンは、金塊を献上して戦場から去っていく。周囲を見渡すと、ドラゴンは全て撤退していた。赤い機体もヴィルキスとの鍔迫り合いに敗れ、撤退しようとしていた。そんな指揮官機へ、アンジュのヴィルキスが追いすがる。

 

 次の瞬間、この場一帯に歌が響き渡った。

 

 どこかで聞いたことがあるように感じたのは、宙継が歌とサイオン波を通して虚憶を見ることができるためか。いつかどこかで、誰かがそんな歌を歌っていたような気がしたのも、そのためだろうか?

 宙継が答えを見つけるよりも、アンジュが反応する方が早かった。彼女はどうやら、この歌に覚えがあるらしい。赤い機体の搭乗者が紡ぐ歌に合わせて、アンジュもまた歌い始める。2つの旋律が重なり合った。

 

 

「機体が金色になった……!?」

 

 

 ヴィルキスと赤いパラメイルが共鳴するようにして、その色を変化させる。ベルリが驚きの声を上げる中、両機体の肩から砲が展開した。

 

 

「ソラ。あの2基の攻撃がぶつかり合ったら、バジュラのフォールド波やELSの転移と同等のエネルギー数値になるって計算結果出たよ」

 

「えっ!? それって、別な場所に転移するってことじゃないですか!」

 

 

 エネルギー出力同士の計算を終えたセイカが告げる。彼女が例に出したのは、空間移動に関連する要素ばっかりだ。あの攻撃がぶつかり合った際に起きる現象は、1つに限られる。

 宙継が制止するより先に、ヴィルキスと赤い機体のエネルギー充填が終わる方が早かった。――ヴィルキスと赤い機体は躊躇いなく、互いに向かって砲を撃ち放つ!!

 

 ――そうして、世界は真っ白に染め上げられた。

 

 




ドラゴン相手に対話をしてみた結果がこれ。キャラ崩壊の理由は“ドラゴンたちの反応”です。折角なので、大部分を救世主と龍神の大ファンにしました。この理由なら、対話できた状態で原作をなぞっても違和感ないかなと思いました。大丈夫かな?
ホープス×アマリをやりたくて書き始めたのに、気づいたら全く別なお話になりつつあることに困惑しています。本題に入るまでが長いので、関係ない部分や原作通りの部分をバッサリ削った方がいいようですね。……どこまで削るかが悩みどころですけど。

蛇足ですが、宙継と絡みがあったUXメンバー(00以外)は以下の通り。
・必殺仕事人な主人公&ヒロインコンビ→UXの中心人物として慕う。
・浩一を筆頭とした早瀬軍団→早瀬軍団最年少の弟分故に、みんなを先輩と慕う。
・森次さん→なんだか放っておけない出向先の上司。
・石神→出向先の上司だが、彼がふざけているときの扱いは塩対応。
・加藤→出向先の上司。彼の口癖は、座右の銘の1つになっている。
・歌手組→彼女たちの楽曲が好きで、よく聞いている。ライブも見に行った。
・広登→歌手になる夢を応援している。一緒に歌ったこともある。
・操→青空大好き同盟。異種族の友達。彼が『生まれて』くるのを楽しみにしている。
ラインバレル勢との絡みが中心になっている模様。
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