・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・魔従教団について捏造+魔改造が施されている。
・魔従教団にオリキャラ追加。
・フリューゲルの機体システムに、スパロボUXの他版権要素が加わっている。
・「クーゲルの武器が1つしかない」という背景を捏造。
・異種族側の見解故に、少々過激な表現あり。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。
『……自信はありませんが、やってみます……』
旅立った頃のアマリは、常に弱気で引っ込み思案な少女だった。自分に確固たる自信がなく、そんな自分を変えたいと願いながらも、どうすればいいのか分からなくて――或いは、変わることに対して怯えを抱くが故に、いつも足踏みしているような状態だったと思う。
魔従教団の教義や自分の存在意義に違和感を感じながらも、アマリはそれを表立って主張できるような性格ではなかった。自分の意志を抱きながらも、結局は流されることに甘んじていた。教団がアマリの変化を見落としていたのは、彼女が自分の意見を口に出さなかったためだろう。
その性格上、何かある度アマリはホープスを頼っていた。ホープスの嫌味や意見に対し、逆らう気概もなかった。そんなアマリを誘導することは容易かったのだ。
どこぞの“悪趣味な輩”が、歪んだ世界体制を作り上げた理由がよく分かる。誰もが自分を信奉し、依存し、思うがままに動かせる――確かに、
ただ、“悪趣味な輩”の趣味趣向を理解した――自身の趣味趣向も“奴”と非常に似通っていると言って、ホープスが“奴”と同じやり方に甘んじるつもりはない。確かに誘導はするが、あくまでもそれは必要最低限、発破の範囲で収まるように調整する。周囲や本人に悟られぬよう、慎重に慎重を重ねて。
『ホープス、機体の制御をお願いします! ――行きますよ!』
ワタルたちと出会い、共に戦うようになってから、アマリは段々と変わり始めた。
引っ込み思案や臆病を克服できたわけではない。キャピタル・アーミィから人質を奪還する部隊に名乗りを挙げても、後ろでビクビクしていた場面はまさにソレだ。
けれど彼女は、『奪還部隊としては役に立てずとも、戦闘で取り戻す』と奮起した。実際、彼女はかなりの数のカットシーを戦闘不能に追い込んでいる。
それは、“悪趣味な輩”が施した加護の恩恵とは別の変化だった。アマリは少しづつ、本来持っていたであろう芯の強さを表面へ発露できるようになったのだ。
(この変化は、果たして吉と出るか、凶と出るか……)
アマリの横顔を盗み見ながら、ホープスは思案する。迷い歩きながらも、それでも自分の心のままに進もうとする少女の強さ――それが辿り着く果ては何処か。
彼女と自分は運命共同体。彼女が辿り着く結末は、ホープスが辿り着く結末と同義だ。最良であってほしいと願うのは、ホープスが望む自由のためである。
主であるアマリの変化に注視するのは――様々な表情の変化を観察していたいとさえ思うことに、セイカが言うような感情は無いのだ。
確かに、アマリの素直な気質は可愛らしいとは思うし、自分の意志を表出させるようになって見えてきた彼女の明るさも好ましいと思う。冗談や軽口を叩く姿なんて、契約を交わした当初のアマリからは予想できなかった。新たな彼女の一面を知ることができたのは、ワタルを筆頭とした異界人との出会いのおかげだ。
自分の意志を持って動くようになるということは、“奴”の思い通りに動く駒から遠ざかることを意味している。同時に、ホープスにとっても、アマリを誘導しにくくなることを意味していた。喜ばしい変化とは言い切れないのに、どうしてか、彼女の変化を素直に喜んでいる自分がいる。そこに打算や策謀は無く、純粋なものだった。
(……知らない。こんな感情、私は知らない)
ホープスは、内心首を傾げる。表出させれば、即座に反応して口を出してくる輩がいるためだ。
そいつ――セイカは何かを察したようにこちらを見て、ニヤニヤと笑った。セイカはホープスが持て余す感情を『恋』や『愛』と定義し、意味不明な賭けを仕掛けてきた張本人だ。もしホープスがこの感情を『恋』や『愛』と定義したら、件の賭けはアイツの勝利になる。
ホープスはセイカを睨み返しつつ、内心かぶりを振った。アマリの変化を注視しているのは、運命共同体として彼女のことを心配しているからだ。彼女の行く末は、ホープスの運命でもある。自分の願いを叶えるためにも、アマリには強くなってもらわなければなるまい。
3000年の歴史を持つ魔従教団よりマシだという理由でアマリを選んだが、この変化の兆しはどこまで影響を及ぼすのか。まだ出たばかりだというのに、根拠だって揃っていないのに、アマリ・アクアマリンという少女に対して、期待を抱き始めている自分がいた。何かを見出さんとする自分がいることも。
根拠のない期待はしないはずなのに、根拠のない可能性など無意味なのに、願望なんて意味をなさないのに。
もし仮にセイカの言う通りだったとして、『恋』も『愛』もホープスの腹の足しにならない。
実際、今だって、自分が抱く感情は何の味も――
「…………ん?」
「どうしたの、ホープス?」
「……いいえ、なんでもありません」
――何の味も、しなかった、はずだ。
『微かに甘みを感じた』なんて、きっと気のせいだ。
ホープスは自分に言い聞かせた。
★★
異世界に飛ばされたので帰る方法を探していたはずが、期せずしてまた異世界へ飛ばされた。この場合、セイカと宙継たちが“帰ろうとしている世界”については、複雑な扱いとなっている。
そもそも、自分たちは異なる世界からアル・ワースに飛ばされ、元の世界へ戻ることを目指して旅を続けてきた。そこから更に別世界へ飛ばされたのだ。部隊の士気が乱れるのも当然と言えよう。
アル・ワース出身者であるアマリ、ホープス、シバラク、ヒミコ、クラマらが『アル・ワースへ戻りたい』と思うことは至極当然のことだ。ワタルは異界人であるが、救世主としての責務――ドアクダー打倒を果たすために『アル・ワースへの帰還』を望んでいる。使命を放り出して帰るような輩だったら、ワタルは救世主に選ばれなかった。
しかし、セイカと宙継を筆頭とした異界人が帰りたい場所は、“自分たちの世界”なのであってアル・ワースではないのだ。救世主一行としてアル・ワースを旅してきたのは、『元の世界へ還る手がかりを探すため』である。元の世界へ還るという目的がある以上、その方法を掴めれば、別にアル・ワースを旅する必要はないのだ。
他にも、ノーマであることが原因で何もかもを失ったアンジュや、ドラゴンを狩ること以外の存在価値を認められない環境で生きてきたヴィヴィアンは、『アル・ワースへ戻る』という意識が薄い。むしろ、『異世界に逃げ込んだ方が、ノーマという種族の差別がなくなるから楽』なのだという。人間が行う差別意識とは、少々度し難い。
『そもそも、人間の権力者って“人間の中でも、何かしら優れた才能を持っている”ことから人をまとめ上げ、領地拡大が絡んだ戦いに勝利することで勢力圏を広げ、そこに文明圏を築いたんでしょ? 王族や名家と呼ばれる一門は、“持っている才能を駆使して、他者よりも長期間、権力者や有力者として君臨して功績を挙げていたことから名乗ることが許された”に過ぎない。結局のところ、人間の括りである有力者と平民、もしくはヒエラルキー最下層者の差って、その程度でしかないんだよ。私たちELSのような“個の概念の重要性が薄い”異種生命体からすれば『ただそれだけの差で、どうして権力者が威張ることが許されるの?』って疑問に思うレベルなんだよねぇ』
『ふーん。……貴女、面白い考え方をするのね。気に入ったわ』
多くの人々が『間違いではないが、そこまで言われたら形無し』だの『異種族間に広がる認識の差異』だのと零す中、アンジュは愉快そうに目を細めてセイカを見返していた。
彼女は“自分が生き残るために戦っている”女傑だ。自分が信じていた世界や価値観をブチ壊され、自分の立場がヒエラルキー上位者から最下層へひっくり返ったという衝撃を経た結果、半ば開き直るような形でここまで這い上がったのだろう。自分自身の手で運命を勝ち取ろうとする姿は、アルティメット・クロスの仲間たちとも非常によく似通っている。
おそらく、古のミュウやマザーコンピューター・テラの一件と対峙した宙継の価値観とも、非常に親和性が近そうだ。宙継もまた、世界を変えるために奔走する人間の1人である。イノベイターやELSを取り巻く環境も、アル・ワースのマナの国におけるノーマの扱いとよく似通っている面があった。閑話休題。
さてどうしようかと考えたときだった。ホープス曰く、『異界の門が開いたときと同じような反応が出ている』らしい。『そこへ行ってその反応を利用すれば、アル・ワースへ帰還できる可能性がある』とのことで、情報収集がてら、救世主とメガファウナは東へ進路を定めた。『アル・ワースへ戻るか否かは、そのときに決めればいい』と。
尚、反応が出ていた場所では戦闘が行われているらしい。『反応を追いかけて現場へ行けば、戦闘に巻き込まれることは必須だろう』とのことだ。それでも、“帰還方法、およびこの世界に関する情報収集ができる”というメリットを重要視した結果でもある。戦闘準備をしながら、仲間たちは待機時間を過ごした。
『救世主一行の最終判断をしているのって、アマリだよね。実質、アマリが部隊の決定権を握ってるようなものじゃない?』
『もしかしたら、アマリさんには部隊の責任者になる資質があるのかもしれませんね』
今までの旅路で思っていたことを宙継に訊ねてみると、彼は静かな笑みを浮かべて答える。宙継は懐かしそうな表情でアマリの姿を見ていた。あの眼差しは、アルティメット・クロスのリーダーとなったアニエス・ベルジュを見ているときと同じ眼差しだった。
アニエスも成り行きでアンノウン・エクストライカーズに所属し、気づいたら“部隊の最終決定権を握っていた”ような状態だったという。要所要所で物事を選択してきたことや、その経験から戦術指揮について勉強し始めたこともあって、最終的にはアルティメット・クロスを率いるリーダーとなったのだ。
アマリ・アクアマリンはどんなリーダーになるのだろう? 仲間たちを導く御旗になるのか、仲間たちに支えられながら共に歩んでいくのか――どちらにしても、今後が楽しみな逸材である。……彼女の隣にいる
件のポイントに到着すると、案の定、戦闘が行われている真っ最中だった。戦闘準備は整えていたので、こちらは即座に出撃して布陣を展開する。
大部隊を展開している方は、乱入者である救世主+メガファウナ一行を敵と認識したらしい。異界の門近辺から動こうとしない勢力は、おそらく“この周辺を拠点としている”のだろう。『この場を切り抜ければ協力体制が敷けるかもしれない』と言ったショウに、グランディスは『恩を売っておくってワケだね!』と補足していた。
本来であれば、後ろ盾が一切ない異世界では大暴れできない状況だ。だが、大部隊を率いている連中は、明らかに殺気を撒き散らしている。様子見気分で対峙するには荷が重い相手ばかりだ。脱出装置が上手く作動してくれと願いつつ、全力を尽くさなければならないだろう。片方の部隊もこちらと一緒に戦う判断を下したようだった。
『いいものですな。見知らぬ世界で見知らぬ敵との遭遇とは』
『自由過ぎます、ホープスは!』
『せっかくの状況なのです。マスターもお楽しみくださいませ』
『と、とてもじゃないけど、そんな気なんてなれません……!』
クソ鸚鵡はいつも通りクソ鸚鵡で、困惑する主などなんのその。未知の相手と主の困惑を味わいながら、図太くこの状況を楽しんでいた。
実際、ゼルガードの出力はアル・ワースで活動していたとき以上に安定しない。最近はやっと安定した出力を叩き出せるようになったのに。
アマリが持っていた芯の強さが発露するようになったばかりだったのに、今回のことで抱いた不安も足かせになっているようだった。
主がピンチに陥ってるにも拘らず、クソ鸚鵡ホープスは自分の興味以外関心がない。もう少しどうにかならないのかと思ったときだ。
『落ち着いてください、マスター』
そうやってアマリに声をかけたホープスは、静かに語りかけた。
彼の声がワントーン優しい響きを宿していたように聞こえたのは、セイカの気のせいではない。
『例え世界が変わったとしても、私と貴女がすることは変わりません。いつも通りやればいいんです』
『ホープス……』
『“見知らぬ地に来たからと言って、今までの経験まで無に帰した”……なんてことはないでしょう? ――行けますね、マスター?』
『――勿論! いつも通り、やってみせます……!』
ホープスから発破をかけられたアマリは、いつもの調子を取り戻す。普段は嫌味でからかうだけのクソ鸚鵡が、相棒らしき言動を見せた。明確な気遣いらしき姿を見せたのだ。この変化に注視しない訳がない。やっぱり愛じゃないか! 本人は全力で否定するのだろうが。セイカはニヨニヨ笑った。
こちらも好奇心を満たしつつ情報を入手するため――宙継からの許可もあって――黒い機体を浸蝕する。発狂したパイロットが自爆しようとしたので、それより先に同化を済ませてシステムを掌握。脱出機能を無理矢理作動させてパイロットを吐き出した。着水したパイロットが『くぁwせdrftgyふじこlp』等と喚く声が聞こえたので無事だろう。
ELSたちは一度、GN-XⅣを同化した際、多くのパイロットたちの命を奪ってしまった。中には自爆を選択させてしまったパイロットだっている。命が失われる悲しみや痛みを知ったからこそ、同化して情報収集を行う際、セイカは操縦者の脱出を徹底するようになったのだ。伊達に学習してきたわけじゃない。
機体名はクーゲル。この世界で大きな国力を有する大ゾギリア共和国軍の主力量産機で、様々なバリエーションが開発されているらしい。
しかし、この部隊のクーゲルの武装はマシンガンしか有していなかった。――いや、クーゲルという機体自体、マシンガンしか武装がない。
機体を同化して得られたのはこの程度だが、大ゾギリア共和国の国力に疑問符が付くことは避けられなかった。
『……本当に、大ゾギリア共和国って凄い国なのかな。“内情隠して強がってる”なんてことは……』
『本来なら、武装1つで国力の全貌が明らかになるはずがありません。……ですが、これがイコールだった場合、ゾギリアは相当ヤバい状況だって言えそうです』
『大日本帝国――サコミズ王が置かれた極限状態と比べたら、どっちがヤバいかな?』
『うーん……現物を見てみない限り、何とも言えませんね。“量産機の武装強化を差し置いてでも、優先すべきことがある”事実から、類推できることは限られますが』
宙継とそんな会話を繰り広げつつ、セイカはELSをクーゲルに擬態させて差し向けていた。あちこちから『くぁwせdrftgyふじこlp』等と叫ぶ声が聞こえたが、特に問題はない。
味方側――共闘することになった戦艦から『何ですかあれ!? 何!? エイリアンか何か!?』『……最早、何でもありみたいだ』等の声が聞こえたが、後で説明すれば何とかなるだろう。
まあ、どったんばったんした末に、自分たちはどうにか大ゾギリア共和国の連中を追い払うことに成功。共闘した面々と合流し、情報交換会と相成った。
シグナスの艦長である倉光源吾は、穏やかな昼行燈という皮を被った冷徹な軍人だった。こちらが変な動きをすれば即刻捕縛命令を出していることは、宙継の思念波経由で伝わっている。更に、状況説明をしたときのキャパシティオーバーっぷりを表面に出さないポーカーフェイスの持ち主でもあった。
アマリの魔法、宙継の思念波による“救世主ご一行の歩み”と“ELSとの対話が成されるまで”を目の当たりにしたことも、救世主ご一行の話をすんなり受け入れる理由になったようだ。……いや、受け入れざるを得ない状況に叩き落とされたというべきだろうか。『問題しかないかなぁ』と呟く彼の背中は、非常に疲れ切っていた。
彼の心労は更に悪化することになるのだが、それは別の話である。倉光は最後まで、人前で『頭が痛い』という発言も仕草も一切見せなかった。艦長として、軍人として、相当な器を持つ人物であることは明らかである。彼を敵に回すことがなくて本当に良かった、というのが、こちら側の本音だ。
『……もし、倉光艦長や私たちが貴女たちの話を信じなかったら?』
『シグナスの搭乗員が“この地球上で初の
『ひゅっ』
状況説明に来た那須まゆかの質問に、セイカは笑顔で答えてあげた。人間が鋭く息を飲む音を、宙継以外で初めて聞いた。
まゆかによる状況説明で分かったことは、大きく2つ。1つ目は“この世界は、大ゾギリア共和国と自由条約連合という2大陣営による戦いが繰り広げられている”こと、2つ目は“戦争の原因は、ネクトオリビウムと呼ばれる新エネルギーの使用権を巡るもの”だ。後者のエネルギーは、共闘した青年――渡瀬青葉の時代に新発見されたものらしく、青葉が70年前の日本から飛ばされた時間遡行者であることが明らかになる。
最初は青葉の言葉に対して懐疑的だったシグナスのクルーたちだが、倉光が既に“救世主ご一行のトンチキ具合”で散々殴りつけられていたため、青葉の主張は比較的すんなりと受け入れられることと相成った。宙継の『青葉さんは嘘をついていません。現役新人類舐めないでください』と、セイカの『お前も新人類にしてやろうか。そうすれば一発で判別できるぞ』というアシストも効いたのだと思う。即座に掌を返してこちらの言い分を信じてくれた。
彼や彼女らは聡明な軍人だ。戦争中にELSのような外宇宙生命体に乱入された場合、3つ巴という名の泥沼地獄が発生すると見抜いたのだろう。
この地球に住まう人類たちには、異種族と対話を行う余裕もなければ手段もないのだ。現状、同族同士による資源の奪い合いで手一杯なのだから。
来訪するELSは既に、地球連邦軍がELS迎撃・殲滅用途で開発した主砲の威力とシステムを再現可能・チャージ速度の改良済みという仕様である。
喧嘩の売り方によっては、躊躇いなく撃ってくるだろう。刹那・F・セイエイが行った対話方式を参考にしているが故に。
『ELSが再現可能な武装の1つだけど、この世界の技術がコレを止められる算段はある?』
『ELSの学習能力は高いですから、リアルタイムで新たな擬態や既存武装の改良を見せてくるでしょう。理論上、“そちらが手の内を見せれば見せる程、ELSも更に強くなります”ね』
『……機密があるからコメントは控えとくが、これだけは言える。――絶対、
セイカの問いと宙継の補足に対し、ヤール・ドゥランが頭を抱えて悲鳴を上げていた。
まゆかやリーは特に何も言わないが、顔が真っ青だった。
――それはさておき。
「昨日、俺たちが戦ったのはそのゾギリアであることは分かった。向うの戦力がどの程度かは分からないが、追撃が来る可能性が高いのでは?」
「貴方たちに協力した僕らのことも敵と認識しているはずだし、もしかしたら、僕らを自由連合側の戦力として数えてくる可能性もありますね。追撃を行う場合、前回以上の戦力を投入してくることは確実でしょう」
「正論だ。キミたち、戦争ってものを知っているな」
ショウと宙継の見解を聞いたリー・コンラッドが、感心したように目を丸くしていた。2人は複雑な気持ちを隠すように、曖昧な笑みを浮かべて流す。
知りたくて知った訳じゃないから尚更だ。特に、宙継の話はアンノウン・エクストライカーズ/アルティメット・クロス時代に散々味わった経験がある。
「それでも動かないのは、この基地で伍長さんの言っていた“画期的な戦闘システム”を研究していたからだと見たぜ」
「成程。その資料を敵に奪われないために、研究資料を消去しているのですね」
「キミたちの推理が当たっているかは別として、だ。察しの通り、シグナスがここを発てないのには理由がある」
「って言っても、それももうすぐ終わるだろうさ。そうしたら、ここからオサラバだ」
マサキとアイーダの考察に対しても、リーとヤールは明確な話をしようとしなかった。機密をきちんと守る軍人の鏡である。そんな彼らに敬意を表し、セイカと宙継は“思念波で彼らの思考回路を丸裸にする”ことは控えた。
シグナスの面々は、救世主一行とメガファウナに対しても人道的な対応をしてくれた。後ろ盾を持たない異邦人を使い潰すことは容易だろうし、放置して目的を果たすことだってできたはずなのに。
彼らの在り方は、ELSの母星へ旅立っていった良識派の軍人たちを思い起こさせる。異種族との対話を成し得た革新者たち。
ああ、我が母星を救うために旅立った、ソレスタルビーイング号の乗組員たち――宙継の父親とその仲間たちは元気だろうか?
そんなことを考えていたとき、突如警報が鳴り響いた。シグナスの離脱とゾギリアの追撃は、後者の方が早かったらしい。
リーはこちらに対し、母艦であるメガファウナへ戻ることを指示する。それを聞いた仲間たちは、顔を見合わせた。
「戻っても、見物を決め込むわけにはいかねえだろうな……」
「状況に流されて、結局、死ぬなんてのは真っ平御免だものね」
「戦いたくないとか、言ってる場合じゃないんですよね……!」
マサキ、アンジュ、ベルリの言葉は、救世主一行の下す判断を顕著に示していた。彼らの姿に、元々一般人だった青葉は目を丸くする。救世主の決断を尊重したリーが次に問うたのは、渡瀬青葉の下す判断だ。
青葉は素直に、リーの提案に従った。シグナスに残る彼をそのままにして、救世主一行はメガファウナの元へと駆け出す。いつも通り敵と対峙し、帰りたい場所へ還るために戦うのだ。宙継の背中を追いかけながら、セイカも足を速めた。
***
「中間管理職が良識派だとしても、上司がああいう類だと“こう”なるんですよね……」
襲い掛かって来るゾギリア兵を無力化しながら、宙継は深々とため息をついた。
今回、シグナスを襲撃してきたのは、敵の中でも手練れ且つ良識的な軍人の部隊だったらしい。倉光が自ら回線を開き、敵との交渉に当たった。彼は“メガファウナの離脱”を勝ち取ろうと手を尽くしてくれたのだ。倉光は、“連合所属の機体ではない、非戦闘員の乗る艦”という主張で押し通すつもりらしい。
敵の指揮官は一定の理解を示しながらも、部隊全体への命令権の持ち主/彼の上司の主張――メガファウナとの交戦で被害が出ていることや、戦闘データから分析した救世主一行の機体に搭載されたシステム系列に目を付けたことから――に従うことを選んだ。彼個人の判断なら、きっとメガファウナを見逃してくれただろうに。
勿論、救世主一行に“シグナスを見捨てて逃げる”なんて考えを持つ輩がいるはずもない。ドニエル艦長が何か言うより先に、全員が出撃して布陣を展開した。
倉光に対して「寄せ集め部隊ゆえ、指揮権は自分にない」と語ったドニエルだが、例え彼に指揮権があったとしても、機動部隊の面々と同じ判断を下しただろう。
実質共闘だが、体裁としては“メガファウナは自衛のために出撃しただけに過ぎず、自由連合及びシグナスとは無関係である”形だ。
「そういえば、お父さんの虚憶にも、似たような体裁で協力体制を敷いていた戦いがありました」
「ああ、AEU特務部隊OZとブリタニア・ユニオンのアレかぁ。ゼクス・マーキスとはそこから長い付き合いになったって聞いたけど」
「プリテンダーでも一緒でしたからね、あの3人」
ゾギリア軍と大乱戦を演じる面々を視界の端に留めつつ、宙継操縦桿を動かした。フリューゲルは、すれ違い様にクーゲルの腕を切り飛ばす。セイカは即座にELSの群れを展開し、クーゲルに取りつかせた。発狂して自爆や特攻を行うより先に機体の同化を済ませ、中身のパイロットはさっさと脱出させておく。普段通りのルーチンワークだ。
先日交戦したデータは、既に向うで分析が済んでいるのだと思う。しかし、やっぱり現物――ELSによる同化と擬態を生で体験するのは別物らしい。同胞をクーゲルに擬態させて敵部隊にけしかけると、多くの兵士がパニックに陥った。寸でのところで踏み止まっているのは指揮官機くらいである。頭の柔軟さは倉光と同格か。
誰1人として『ELSが擬態できるのは1機だけ』とは言っていないので、セイカは更に擬態クーゲルの数を増やしてみた。複数の擬態を生み出して見せたのは今回が初めてのため、仲間たちからも驚きの声が響き渡る。更に“撃墜されても他のELSと合体する”ところも披露してみた。指揮官機の通信から、上層部の阿鼻叫喚が響き渡っていた。
『貴方たちに協力した僕らのことも敵と認識しているはずだし、もしかしたら、僕らを自由連合側の戦力として数えてくる可能性もありますね。追撃を行う場合、前回以上の戦力を投入してくることは確実でしょう』
――さて、先の宙継が述べたとおり、ゾギリアの戦力は“この場に展開していた部隊”だけではなかったらしい。
伏兵という形で飛び出してきたのは、昨日こちらと交戦した指揮官機と、それに随伴する形で現れた新手だった。倉光の指示を受けたブラディオン/ディオがシグナスの護衛のために戻るが、敵機が接近する方が早い。だが、敵機が攻撃を仕掛けるより先に、シグナスからルクシオン/青葉が飛び出す方が早かった。
ルクシオンとブラディオンのシステムが起動する。青葉とディオの繋がりを深めることで機体の出力を跳ね上げるソレは、イノベイターやミュウが脳量子波や思念波を展開しているときの感覚と非常に似ていた。案の定、2機は見事な高速機動型戦闘と連携を披露し、昨日の機体からシグナスを守り通す。
この場での有効打は、ルクシオン/渡瀬青葉とブラディオン/隼鷹・ディオ・ウェインバーグの2機/2名だ。彼らを主軸にし、ゾギリアを迎え撃つ。
フリューゲル/宙継とセイカも、彼らの道を切り開くことに異議はない。突っ込んできたクーゲルを叩きのめし、2機/2人の道を切り開いた。
……恐らく、敵の狙いも件の2機であろう。新型の情報は1つでも欲しいだろうから。閑話休題。
「!」
「どうしました、ホープス!?」
「門が開きます」
ゾギリアを叩いて叩いて追い払い続けていたときである。ホープスが門の開閉を察知し、仲間たちへと伝えてきた。
アル・ワースへ帰ることを望む面々は、ゾギリアを叩きつつ様子を伺う。場合によっては、開いた門を利用すればアル・ワースへの帰還も可能なはずだ。因みに、フリューゲルに搭載されたラインバレルシステムは“同じ世界線上にある座標しか使えない”ため、アル・ワースへ戻るという芸当は不可能であった。閑話休題。
門が開いて現れたのは、水色の鉱石を適当に積み上げて出来たような岩人形の群れだった。それを目にしたアマリが驚愕の表情を浮かべる。件の岩人形はゴーレムと言い、魔従教団がよく使う尖兵の1つ。鉱石のオドを使って生み出し、魔従教団の術士が刻んだ術式によって自立行動を行うらしい。
<ソラ、あの門……!>
<僕らが転移する直前に見た魔法陣と似ています>
脳量子波と思念波でやり取りをしながら、セイカと宙継は眉間の皺を深くした。異世界から戦力を呼び込んでいる候補者はドアクダーが濃厚だったが、ここへ来てまた候補が増えた。
しかも、その団体はよりにもよって、仲間であるアマリが所属している魔従教団である。アル・ワースの平和と秩序を守ることを謳っている、巨大な治安維持宗教団体。
あのゴーレムは、宙継の世界に現れ戦いを挑んできた機体とは全く違う。けれど、ゴーレムが出現する際に展開した魔法陣は、宙継をアル・ワースへ転移させた魔法陣と同じだった。
混迷した状況は、解決するどころか、転がり落ちるようにして悪化する。――ゴーレムが、メガファウナの機動部隊目がけて攻撃してきたためだ。
ゴーレムが発射した弾丸は無差別に降り注ぐ。……心なしか、ゼルガードを中心にした攻撃範囲のように見えたのは、セイカの気のせいだろうか? 魔従教団員であるアマリに対し、グランディスが面々の疑問――何故、教団のゴーレムがこちらに攻撃を仕掛けてくるのか――を訪ねる。アマリは歯切れの悪い調子で、「分からない」と返した。
自身の見解を告げたのはシバラクだった。彼は魔従教団を頑なに正義の味方扱いしている節があり、「魔従教団は理由もなしにこんなことしない」と主張。ゴーレムが暴走していると結論付ける。魔従教団からカルト系の臭いを感じ、不信感を抱いていた宙継は、あからさまに表情を歪めた。しかし、特に何も言わずゴーレムの方へと向き直る。
ゴーレム部隊はゾギリア軍も標的にしたようで、彼ら目がけて弾丸を撃ちだしてきた。まるで、“この場で動くもの全てを滅しよう”としているかのようだ。
勿論、仕掛けてくる相手を放置するわけにもいかず、ゾギリア軍もゴーレムと交戦することを選択した。但し、こちらと協力するつもりは一切ないらしい。
事実上の三つ巴。文字通りの大混戦だ。ゾギリアとゴーレムを相手取りながら、メガファウナと救世主+自由連合部隊は敵を叩き続ける。
「大分数が減ってきたね。先にゾギリアが片付きそうだよ」
「先日襲い掛かってきた指揮官も撤退したし、今回の指揮官機や桃色の機体も満身創痍ですからね。僕らがゴーレムの迎撃に移っても大丈――」
「――雛! そこにいるのは、雛なのか!?」
セイカと宙継が移動しようとしたとき、早速問題が起きた。
青葉の声に視線を向ければ、ルクシオンと桃色の機体が何やら取っ組み合いらしきことを繰り広げていた。桃色の機体はハッチが吹き飛んでおり、コックピットに座る少女の姿が露わになっている。青葉は少女を雛と呼び、必死に声をかけていた。
渡瀬青葉の友人、弓原雛。青葉がこの時代に辿り着く前に出会い、青葉を救った少女。敵機体に乗っていたパイロットの少女は、青葉の思念から読み取った弓原雛と瓜二つだった。だが、彼女は青葉に対して、殺意にも似た敵意をむき出しにしている。顔が同じだけの別人にしか見えない。
しかし、青葉は彼女こそが弓原雛であると確信している様子だった。自身と彼女の間にある差異に驚きながらも、青葉は少女に呼びかけ続ける。
彼女の名前もヒナ――フルネームはヒナ・リャザンだった。ヒナ/桃色の機体は青葉/ルクシオンを振り払い、フラフラしながら撤退していく。
結果的に、青葉は敵を逃がしてしまった。そのことをディオに激しく咎められるものの、残った指揮官機の攻撃によって問題は有耶無耶となった。
「コネクティブ・ディオ!」
「アクセプション!」
ルクシオンとブラディオンが能力を解放して指揮官機とぶつかり合う姿を見送って、フリューゲルはルーンゴーレムと対峙する。
ゴーレムの武装は1種類のみで、単純な戦闘能力は高くない。ただ、一度に現れた数が多くて面倒だった。神話や小説に登場するゴーレムは、材料さえ用意できれば比較的楽に量産できるものであることが多い。多分、教団のゴーレムも、その毛色が強いのだろう。単純であるが故に、数を増やすことが容易である。
大量の弾丸をばら撒くゴーレムの攻撃を縫うようにして躱し、サイオン波で形成したダガーを投擲する。ダガーは頭に突き刺さり、ゴーレムは軋んだ音と共に砕け散った。自分たちの世界で戦った機体より脆いように感じる。やはり、岩人形とロボットの差は大きい。
「ええい、いい加減にせんか!」
シバラク/戦神丸がゴーレムを叩きのめす。刻まれていた術式を破壊されると動作は止まるが、ゴーレムも形を保っていられないらしい。あっという間に砕け散った。
そのすぐ後ろでは、グラタンが主砲を撃ちこんでゴーレムを破壊していた。刹那、ルクシオンとブラディオンがゴーレムへと突っ込んでくる。
見れば、ゾギリア軍は既に戦線から撤退していた。青葉とディオは成し遂げたらしい。この場に残されているのは、魔従教団のルーンゴーレムのみだ。
「ソラ、あれから情報引き出すために同化してみたいんだけど」
「許可します。魔従教団のきな臭さは、前々から気になってたので」
宙継のゴーサインが出たので、セイカは早速ELSを差し向けた。ELSの群れが殺到し、1体のルーンゴーレムと同化する。どこからか20世紀の洋画――具体的に言えば『ターミ○ーター』――に関する話題が聞こえてきたが、セイカにとっては些事であった。
魔従教団のゴーレムは、アマリとホープス/ゼルガードを集中的に狙うように指示されている。そんな術式が刻まれた理由は不明だが、多くのゴーレムに同じ命令術式が使用されていた。単純でありながらも連携を見せるゴーレムの挙動は、この術式から発生しているらしい。
オドやドグマの云々は学習不足のため何とも言えないが、今回使役されているゴーレムは、質より量を重要視した能力構成となっているようだ。魔従教団の誰が、このゴーレムの群れを使役しているのだろうか? 現時点で名前が分からずとも、術式のパターンを学習すれば後で照合できる。
どうやら、ゴーレムの術式は宙継の世界にあるプログラミングと似たようなものらしい。
人の好みや設定者の得意分野によっては、プログラムを構成する際に使う内容に差異がある。
ゴーレムの術式も、似たような要領で刻みつけられているのだろう。
「術式は2種類。動作に関しては同じ術式が使われてるけど、式の組み方は全然違うから、別人が作ったんだろうね」
「関係者は2名……ですか」
「しかも、2名とも手練れっぽい。あくまでも“出力で見る限り”だけど」
別のパターンを有しているルーンゴーレムを同化して、情報を収集する。セイカの見解を聞いた宙継は、ますます眉間の皺を深くした。
現状、魔従教団へのきな臭さが色濃くなっただけである。異世界の門を自由に開く輩となれば、手練れ中の手練れであろう。
「マスター」
「分かってます! ――行って、TEMPESTA!」
ゼルガードが手をかざし、凄まじい暴風を発生させる。真正面からそれを喰らったルーンゴーレムは、あっという間に砕け散った。
あんな暴風を発生させて敵を屠るアマリでさえ、魔従教団の中では『下っ端』なのだ。彼女を基準にした場合、魔従教団の手練れはどれ程の力――破壊力を有しているのだろう? データが少なすぎるため何とも言えないが、もしかしたら、今後の展開で相対峙することもあるのかもしれない。
敵が増えるというのは勘弁願いたいものだが、今後の展開がどうなるかなんて予想はつかない。魔従教団と良好な関係を築ける可能性もあるし、薄暗い本性を露わにして襲い掛かってくる危険性だってあり得る。特に宙継は、魔従教団の様子から、後者の色を色濃く感じ取っている様子だった。
宙継の悪意関知能力はずば抜けて高い。嘗て、自分を生み出した女――刃金蒼海のどす黒い悪意によって命を失いかけた経験が、宙継をミュウへと覚醒させるトリガーになった。それ故に、宙継は他者の悪意に対して人一倍敏感になっている。養父も割と悪意に敏感ではあったが、恐らく父親より上だろう。
ルーンゴーレムの大軍団は、程なくして倒された。最後の1体をゼルガードが屠り、戦線から敵機は残っていない。
だが、一息つく間もなく、再び強いエネルギー反応が発生した。――再び、異界への門が開く。
「気を付けてください! あの岩人形が、また来ます!」
アイーダの警告通り、門からゴーレムの群れが殺到した。先程門から現れ、こちらに攻撃を仕掛けてきたゴーレム部隊より、圧倒的に数が多い。メガファウナの機動部隊とシグナスの2機を足したとしても、新手の数は自分たちの2倍近い戦力差があった。
次に出てきたのはゴーレムとは違う機体が2機。片方が黒、もう片方が鋼色の機体だ。デザインは違うものの、宙継の世界に現れた機体と雰囲気が非常によく似通っている。宙継は身をこわばらせるようにして身構え――鋼色の機体に注視する。
鋼色の機体は、明らかにフリューゲルを見つめていた。宙継は相手の思念を掴もうとするが、それに触れることは叶わない。強い鉄壁に遮られたためだ。
間髪入れず、ゴーレム部隊が動き出す。2機は大きく腕を広げた。凄まじい轟音とともに、足元に大きな魔方陣が広がっていく。
黒と鋼の2機を中心にして、ゴーレム部隊が規則正しく魔法陣の上に並んだ。――膨大なエネルギーが収束する。
「あれは……!」
「どうやら、我々の望みは叶うようです」
黒と鋼色の機体に覚えがあるのか、アマリが驚愕の声を上げる。その横で、ホープスは淡々と事実を告げた。そのタイミングで、魔法陣が激しい光を放つ!
視界は一瞬で塗り潰された。白から黒へと変わった世界に、ゆっくりと色合いが戻っていく。機体はいつの間にかメガファウナの格納庫に戻っていた。宙継とセイカはコックピットのハッチを開いて外へ出る。メガファウナのデッキに広がっていたのは、ディオたちの世界へ転移する前にいたポイントだった。
門を利用してアル・ワースへ戻る――自分たちの目的は期せずして果たされたらしい。足音に振り返れば、機体から降りた仲間たちがデッキへ集まって来たところだった。アマリも、ホープスも、ワタルも、シバラクも、ベルリも、アイーダも、グランディスも、サンソンとハンソンも、アンジュも、ヴィヴィアンも、マサキも、シロとクロもいる。
メガファウナの生活班としてバックアップをしていたノレドたちも全員揃っていた。救世主一行は誰1人として、自分の世界へ帰還していたり、ディオたちの世界へ残った者はいない。全員欠けることなく、アル・ワースに転移していたのだ。
それだけでは終わらない。見れば、メガファウナの近辺に、真っ白な戦艦――シグナスが並び立つようにして空に陣取っていた。
倉光たちが呆気にとられる思念が漂ってくる。今度は倉光だけでなく、シグナスのクルーがアル・ワースという異世界そのものに頭を殴られていた。
「では、ここが……!?」
「アル・ワース、なのか……」
「オー、マイ・スコード……」
レーネと倉光が震えた声で現実を受け入れ、帰還したとはいえど自分たちの世界ではないことに対する複雑な心境を、ステアが感嘆の言葉で吐き出す。
今頃、お隣にいるシグナス内部は大混乱だろう。『お前を新人類にしてやろうか』で反射的に頷いていた彼らも、本当の意味で、メガファウナ関係者が嘘をついていなかったことを理解したはずだ。同時に、青葉の時間遡行者関連のことも「そっちの方がまだマシ」レベルの認識になっただろう。
ドニエルが声をかければ、倉光は力のない声で応答した。石神の指示のせいで疲弊した森次を連想させるような憔悴っぷりである。クルーの中で一番休息が必要なのは、恐らく倉光だろう。「状況のすり合わせのため、休憩のため、近くで休もう」という意見に対し、シグナスの面々は異を唱えなかった。
●●
魔従教団本部、エンデの間。
立派な大樹とたわわに実った果実が描かれた壁画の前で、1人の老紳士が2人の術士と向き合っていた。
老紳士は2人組に対し、労いの言葉を贈る。
「――2人とも、よくやってくれました」
片や、青い髪とモノクルをつけた20代半ばの青年。黒いロングコートを身に纏い、ステッキをついている。与えられた2つ名は、黒曜石の術士。
片や、黒髪黒目が特徴な10代半ばの少女。着物を模したようなデザインで、空色の教団服を身に纏っている。与えられた2つ名は、黄鉄鉱の術士。
双方共に、この魔従教団の法師――魔従教団の実働部隊で指揮官の地位に就き、部下の術士たちをまとめる立場にある。いわば、教団の幹部だ。
黒曜石の術士は恭しく頭を下げ、黄鉄鉱の術士も前者を模倣するように頭を下げる。……前者と比べて、心なしか礼が乱雑に見えたのは何故だろうか。
しかし、男性たちがその違和感に気づくことはなかった。
実際、老紳士は気にすることなく言葉を続ける。
「アル・ワースの秩序を保つため、これからも励むように」
「御意。――すべては、智の神エンデの名のもとに」
「……すべては、智の神エンデの名のもとに」
――黄鉄鉱の術士が、心底嫌そうな気配を滲ませていることに気づくことは、終ぞなかった。
色々詰め込んでみた最新話。大部分がセイカのやりたい放題となりました。更に、オリジナルキャラとして“黄鉄鉱の術士”なる幹部が出現。何やら腹に一物あるようですが、彼女の動きも見守って頂ければ幸いです。因みに、黄鉄鉱はパワーストーンの1種である『パイライト』から来ています。一応、性格やキャラ付けの意味でモチーフになっています。
バディコンに詳しくない勢なのでちょっと分からないのですが、あの世界観でELSが来訪した場合、あの世界の人類はちゃんと対応できるのでしょうか? 人類同士の攻防戦で疲弊していそうなので、異種族の第3勢力がやって来たら泥沼になりそう。00や各種スパロボでも、異種族関連は泥沼一歩手前まで行ったからなぁ。
今回、やや無理矢理ですが、ホープスとアマリの絡みを加えてみました。セイカの介入もあって、ホープスが無自覚に段々絆されてきた模様。『仮に』でもセイカの主張に同意してみる部分があるあたり、大なり小なり影響を受けているようです。腹黒鸚鵡が色ボケ腹黒鸚鵡に進化する図も描写できたらいいなと思ってます。
蛇足ですが、刃金さん家の関係者によく似合う“共通の宝石/パワーストーン”は『パイライト』だと思っています。由来はこのサイトを参照。
『パワーストーン辞典 INDEX Hariqua - 天然石パワーストーンジュエリー ハリックァ』の『パイライト』<https://www.power-stones.jp/dictionary/other-stones/pyrite/>
そこから個人個人に対し、別な宝石の要素も加えられる感じですかね。今のところはこんな感じ。
*宙継⇒カバンサイト、クンツァイト
*セイカ⇒ローディザイト、フェカナイト
*クーゴ⇒ベニトアイト、ラズライト
*???⇒ダイアスポア、ローズクォーツ
参考はこちらを参照
『パワーストーン辞典 INDEX Hariqua - 天然石パワーストーンジュエリー ハリックァ』<https://www.power-stones.jp/dictionary/>