・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・魔従教団について捏造+魔改造が施されている。
・法師にオリキャラ追加。二つ名は“黄鉄鉱の術士”(黄鉄鉱=パイライト)
・オウムの仕草ネタがある。
・ある人物が改悪を受けている。
・キャラクター崩壊注意。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。
――いつか、こんな日が来ると覚悟していた。
魔従教団に所属する藍柱石の術士、アマリ・アクアマリンには“秘密”がある。異界人たちに対し、アマリはその“秘密”を一言も話していない。この秘密を知っているのは、共犯者関係と言えるような存在――鸚鵡のような外見をした魔法生物のホープスだけだ。
アマリは異界人たちに対し、重大な隠し事をしていた。偶然に偶然が重なり、アル・ワースの案内役を務めることになって以降は、救世主一行と触れ合いながら旅を続けた。彼らとの語らいはアマリにとってかけがえのない時間になっていたし、彼らを大切な仲間だと認識していた。
救世主一行との旅路はとても刺激的だった。教団内部にいた頃の自分――及び、自分を取り巻く環境からは想像がつかない出来事を沢山体験してきたし、様々な困難を彼らと一緒に乗り越えてきたことで、少しづつだが、毅然とした態度で物事に挑めるようになったと思う。
(みなさんとの出会いがあったから、私は、あの頃の私よりも変わることができた)
恐怖を完全に克服したわけではないし、引っ込み思案が改善されたわけでもない。だけど、教団にいた頃より、アマリは喜怒哀楽を表出させることができるようになったと思う。自分の心のままに振る舞えることが、こんなにも気持ちがいいことだとは知らなかった。
迷い歩く度に、手を引いてくれた。大丈夫だと笑いかけてくれる人、背中を押してくれる人、一緒になって悩んでくれる人がいてくれた。――そんな人たちに、自分も応えたいと思った。他者を信頼し、他者から信頼されることが、こんなにも有意義なことだとは知らなかった。
教団で、同期たちや法師、導師から賛辞の言葉を貰ったときには、こんな高揚感を感じたことはなかったのだ。
(短い間だけど……本当に、色々なことがあったなぁ)
ワタルたちも、宙継とセイカも、ナディアたちも、ベルリたちも、アンジュたちも、青葉たちも、アマリにとって大切な人たちである。
アマリが抱える“秘密”の巻き添えにしていい人たちではない。こんな“秘密”に巻き込んでしまうわけにはいかない。
下手をすれば、アマリたちの都合で、仲間たちが不利益を被る危険性がある。――ただでさえ、彼らには敵対関係者が多いのに。
ドアクダー軍団の魔神、ネオ・アトランティス、バイストン・ウェル兵士のオーラバトラー、キャピタル・アーミィ、ゾギリア軍――思いつく限りでこれ程の敵対者がいる。しかも、ネオ・アトランティスはドアクダー軍団と共闘、オーラバトラーはドアクダーの配下となっている。キャピタル・アーミィはミスルギ皇国所属のため、実質的にはミスルギ皇国もこちらの敵に回る可能性があった。
ナディアと初めて出会ったとき以来、ネオ・アトランティスは姿を見せていない。転移しているのか否かは不明だが、シグナスの敵対者であるゾギリア軍の動向だって気になる。『メガファウナと敵対していたキャピタル・アーミィも転移していた』という実例故に、油断はできない。黒と鋼のオート・ウォーロック――魔従教団の法師たちが行った転移に、ゾギリアが巻き込まれていないという保証はないのだ。
(魔従教団……アル・ワースの秩序と平和を守る、正義の術士たち。彼らを敵に回すと言うことが、どれ程の物か……)
特に、魔従教団に対して絶対の信を置いているシバラクあたりは、アマリの“秘密”を知ったら仰天するに違いない。魔従教団のゴーレムがこちらに攻撃を仕掛けてきた理由が『単なる暴走ではない』ことを見抜いていた彼であるが、本当の理由までは見抜けていなかった。
この旅路で出会った人たちの顔を思い浮かべながら、アマリはゼルガードを見上げる。メガファウナの格納庫を新たな居場所にしたのはつい最近だったのに、もう随分と長い間、メガファウナのクルーだったような気になってしまう。アマリが思っている以上に、救世主一行との旅は楽しかったようだ。
楽しいことには終わりがつきものである。救世主一行との旅が
「ホープス」
「――行くのですね、マスター」
アマリの決意に惹かれるようにして、黒い鸚鵡は止まり木に降りる。こちらを見上げる金色の瞳は、凪いだ湖面のように静かだ。
「みなさんに迷惑はかけられません」と決意を口にすれば、ホープスは恭しく頭を下げた。早速ゼルガードを動かすため、ドグマでコックピットのハッチを開ける。
そこへ向かおうとしたホープスは、止まり木から飛び立たず、後から続こうとするアマリの方へと向き直った。こちらを見下ろす黒い鸚鵡の目が、ゆらりと揺れる。
――まるで、アマリを憂うように。
「……マスター、私は貴女の使い魔です。立場は対等ですが、私は貴女の選択と判断を、なるべく尊重したいと考えています」
『落ち着いてください、マスター』
『例え世界が変わったとしても、私と貴女がすることは変わりません。いつも通りやればいいんです』
『“見知らぬ地に来たからと言って、今までの経験まで無に帰した”……なんてことはないでしょう? ――行けますね、マスター?』
普段の嫌味たっぷりな笑みは鳴りを潜めていた。彼の声には茶化すような響きも、こちらを小馬鹿にするような調子も感じられない。
今のホープスは、ただ真摯に、アマリのことを案じている。ディオの世界に飛ばされたときの戦闘で、アマリに発破をかけたときの声色と同じだった。
「……本当に、このような形で、彼らと別れてよろしいのですか?」
酷い問いかけだと思う。多分、ホープスは全部分かっている上で、アマリに訊ねているのだ。アマリの本音も知っているし、状況が切羽詰っていることも知っていて、敢えて問うている。
“みんなと旅を続けたい”という自分の願望と、“大事な人たちのために何をなすべきか”という理由を天秤にかける。アル・ワースに戻って来てから悩んで出した答えは、今この瞬間でも変わらない。
「はい。……それしかないと思います」
短い間だったが、救世主一行は大切な仲間だった。彼らを守りたいと思うくらい、この出会いはかけがえのないものだった。アマリは迷いなく頷き返す。
「ドアクダー軍団は、ワタルくんたちが倒してくれるはずです」
「マスターも、彼らの仲間の1人ではないのですか?」
「……そうだったらいいなって、思ってました」
アマリは願望を口に出す。それが叶わぬことだと突き付けられたような心地がして、胸の奥に痛みが走る。――でも、仕方がないじゃないか。今回の件は、何も言わなかった自分が悪いのだから。秘密はいずれ明らかにされるものだと相場が決まっている。
魔従教団に所属する藍柱石の術士アマリ・アクアマリンは、教団設立3000年の歴史の中で初の脱走者だ。脱走者と言っても、教団の在り方に不満があったわけでもないし、教団の方針に逆らって悪事を働いたという訳ではない。
教団に来てから、アマリは毎日ドグマの修練に励んでいた。導師キールディン直々に洗礼を受けた者として周りからも注目されていたし、術士として働くための英才教育を受けてはいた。だが、だからといって、無理矢理拘束されるようなこともなかった。
同期の術士との仲も良好だったし、立場が上な術士――法師との間にも軋轢が発生したこともない。人間関係も、教団員としての仕事も充実していた。何もかもが順風満帆だった。回り続けるこの世界に対し、疑問を挟む余地だってなかったのだ。
『――
アマリに声をかけてきたのは、つい最近法師になった少女だった。
僅か13歳でドグマの才能を爆発的に開花させた才能を見込まれ、異例の出世を遂げた術士。導師キールディン直々に洗礼を受け、“黄鉄鉱の術士”という2つ名を賜った実力者だ。鋼色のオート・ウォーロックを駆るその姿を、アマリは何度か目撃したことがある。彼女用のディーンベルは、破壊力と防御力に特化した重装備型だった。
黄鉄鉱の術士は、アマリに会うたびに不思議なことを言ってきた。『貴女の居場所はここじゃない。こんな所で使い潰されていい命じゃない』や、『貴女はこの箱庭の違和感に気づいているんでしょう?』と言われたことから、魔従教団の術士としての自分に強い違和感を抱くようになった。
このままではいけない――漠然とした不安から湧き上がった衝動ではあったが、それは日に日に膨れ上がる。ついに、アマリはそれを無視できなくなっていた。
このままでいいのか――不安は焦燥へと変わる。誰かに相談しようと思ったこともあるが、教団内部にはアマリと同じ悩みを抱えていそうな人物は見当たらない。
“魔従教団の術士として、いずれ教主になるための研鑽に勤しむ”――アマリが過ごす日々は、アマリを取り巻く世界は、それ以外に何も存在しないのだろうか?
そんな疑問を抱きながら修練に励んでいたとき、アマリは名無しの魔法生物と出会う。彼は教団の研究所で生まれたが、『このまま実験動物にされて死ぬのは御免だ』と思って脱走したという。彼の話を耳にして、アマリは自分の中に何かが生まれたのを、明確に感じ取った。漠然とした不安と得体の知れぬ焦燥の意味を、言葉として表せるほどに。
自分が生きていることへの疑問、自分の存在意義に対する疑問。『アマリ・アクアマリンという人間には、“魔従教団の術士として研鑽を重ねる”以外の人生しかないのか』という問いに対して、魔従教団という組織、組織に所属する同僚や上司が、答えを示してくれるとは到底思えなかった。――だからアマリは、教団を飛び出したのだ。
「仲間だからこそ、その1人でありたかったからこそ、私はみなさんから離れなければいけないんです。……教団の粛清に、彼らを巻き込まないために」
「……畏まりました」
ホープスも恭しく頷き返した。しかし、彼はコックピットに向かわず、無言のまま俯く。何かを思案しているらしい。
「これは、私個人の見解――所謂“独り言”です」
「?」
「私は、救世主一行と旅をする中で起きたマスターの変化を“好ましいもの”だと思っていました。きっとこれから、彼らとの交流を経て、もっと良い方向へ変わっていくのだろうと」
ホープスは止まり木に留まったまま、軽く羽をばたつかせてみせた。
不満を叩きつけようとしたが、現在時刻のことを思い出したが故に、周囲へ配慮しているかのようだ。
現在時刻は深夜。クルーの大半が寝静まっている時間帯だ。物音で誰かが目覚める可能性もある。
「私個人としては、もう少し、貴女の変化と成長を見守っていたかったのですがね」
「え……!?」
「今の貴女は、教団で初めて出会ったときより、ずっといい表情をしていますから」
アマリは思わず目を見張った。嫌味や茶化しで煙に巻くことが多いホープスが、真剣な面持ちでアマリにそんな言葉をかけるだなんて。旅立った当初は、そんな気配なんて全然感じなかったのに。嫌味全開の辛辣で、いつも厳しい魔法生物だとばかり思っていた。
驚愕によって硬直するアマリを、ホープスは眼中に入れていない様子だった。今の彼は、アマリへかける言葉を選ぶことに夢中になっている。普段とは違い、アマリをからかえるような精神的余裕が無いらしい。どうすればアマリに伝わるのか、心を砕いていることは明らかだ。
『アマリとホープスの主従関係って、全然“対等”って感じじゃないよね。“ホープスがアマリを誘導してる”って感じだ』
『異種族同士の関係は色々ありますが、裏で糸を引いている系にありがちな関係ですよね』
いつぞや、セイカと宙継が零した言葉が脳裏をよぎる。真の意味で“対等”な関係というのは、セイカと宙継、マサキとシロやクロのような関係を指すのだ。
互いに遠慮も恐縮もなく、遜ることも扱き下ろすこともない。厳しい言葉を投げつけ合っていたとしても、その言葉の裏には、互いを尊重し、信頼し合うが故の気遣いが滲む。
今現在のホープスには、“アマリに対して優位に立とう”とする意図は一切見受けられなかった。ただ純粋に、彼はアマリのことを思って助言をしている。
――今、確かに、本当の意味で、アマリとホープスは“対等”の関係だった。
主と使い魔にしては力関係が逆転していて、対等にしてはホープスが常に優位に立っている歪な状態――そんな状態から始まった奇妙な契約関係に、憂いを抱かなかった訳じゃない。答えを探して旅に出たけれど、答えの在りかはおろか、ホープスと上手くやっていく自信もなかった。
だけど、今ならば胸を張って言える。真の意味で“対等”となったアマリとホープスなら、きっとこれからの旅を乗り越えられそうだ。仲間たちとの交流は、いつの間にか、アマリとホープスの距離感も縮めてくれたらしい。アマリがこっそり感心していると、ホープスは俯く。その横顔には、どこか陰りがあった。
「……らしくないことを言いました。幾ら対等な関係だとしても、出過ぎた行為ですね。マスターの邪魔をしてしまい、申し訳ありません」
「いいえ。ホープスは、私を心配してくれたんですね。ありがとうございます」
アマリの言葉を聞いたホープスは、酷く驚いたように目を見開いた。鬼気迫るように向けられた金色の瞳には、彼の面持ちに気圧されたアマリの顔が映し出されている。お互いがお互いに困惑していたが、ややあって、ホープスはアマリへふいっと背を向けた。
「――私とマスターは、運命共同体ですから」
彼の声は、普段とは違ってどこか固かった。僅かながら、震えがあったような気もする。普段、淀みなく嫌味を紡ぐ鸚鵡からは想像がつかない変化だ。
アマリは目を丸くした。ホープスはこちらを振り返る余裕がないようで、「ほら、早く出発しましょう」と急かす。そのくせ、アマリが動くまで微動だにしない。
「ふふ」
「……どうか、しましたか?」
「嬉しいなあって思ったんです。なんだか、ホープスとの距離が、あの頃より縮まったような気がして」
「仲良くなれたような気がして、嬉しいんです」と締めくくったときだった。
アマリに背を向けていたホープスが、突如首を動かしてこちらに振り返った。先程以上に大きく目を見開いた鸚鵡は、何度も何度も首を傾げている。アマリの発言は、何か彼の気に障ったのだろうか? 問いかけの言葉は、しきりに首を傾げてアマリを見つめるホープスの形相によって飲み込まれた。
心なしか、ホープスの冠羽がほんの少し立ったに感じたのは気のせいではない。確か、『少しだけ冠羽を立てる』というのは、鸚鵡の仕草で『すごく喜んでいる』ことを意味していたような――?
……
「ほ、ホープス……!?」
「…………な、なんでしょう? わ、私の顔に、何かついていますか?」
おまけに、本人は自分の冠羽が立ち上がっていることに気づいていない。しかも、いつもなら流暢に嫌味を量産しているはずなのに、珍しく言葉を詰まらせている。
しどろもどろな返答をする相棒を問い詰めれば、いつぞやの“使い魔に愛らしさを求める云々”のとき同様拗ねてしまうだろう――どうしてか、そんな気がした。
折角、ホープスが無自覚で『嬉しい』と表現してくれたのだ。機嫌を損ねて仲が冷え切ってしまうのは、困る。非常に困る。嫌われてしまうのは嫌だ。
ホープスはまた、しきりに首を傾けていた。アマリの様子を注意深く観察しているようにも見えるし、どう反応すればいいのか考えあぐねているようにも見える。相手の出方を伺っているという部分は、アマリと同じような反応だった。
そういえば、アマリが自分の意見――ホープスに対して好意的な反応を見せたのは、今回が初めてな気がする。いつもはホープスにやり込められたときの不満や困惑ばかりで、結局何も言えなくなることの方が多かった。実際、ホープスの意見や発言は常に的確であり正論ばかり。アマリ如きが覆せるような粗や綻びはない。
ぐうの音も出ない正論を叩き込まれてしまえば、それ故に、黙らざるを得なかった。間違っていない意見というものは、時に厄介だ。不満を抱く側の方が間違いだから、必然的に、間違っていると分かっている側が常に我慢し続けなければならない。“片方だけがひたすら耐え続ける”なんて歪な関係は、いずれ破綻が訪れる。
旅立った直後、アマリはいつも自分の意見を言えなかった。叡智の探究者たるホープスの方が、アマリよりもずっと物を知っていたからだ。どんな状況でも冷静さ――冷徹さを失わず、常に的確な判断を下していたからだ。アマリの粗を直視させては、逃げられないよう追い立てていたようにも思う。発破のかけ方だって、煽っているという色合いが強かった。
大丈夫だと言われて、背中を押すような励ましを貰ったのは初めてだった。
アマリのことを心配し、変化と成長を素直に褒めてもらえたのは初めてだった。
――彼がそんな変化を見せてくれたことが嬉しかったのも、そのことを素直に伝えたのも、今回が初めてで。
ホープスは一切口に出していないけれど、アマリと同じ反応を返してくれたのが嬉しかった。
彼がアマリに歩み寄ろうとしてくれたように、アマリもまた、彼に歩み寄りたいと願ったのだ。
(……そんな風に思えたのも、みなさんと一緒に旅をしてきたからなんですよね)
仲間たちとのふれあいで変わったのは、アマリだけではない。ホープスもまた、彼らとの交流によって変わりつつあった。
アマリ1人だけの旅路――1人と1羽旅を続けていたら、ホープスは徹頭徹尾“嫌味を量産し続けるだけの鸚鵡”だったろう。こちらに歩み寄るような仕草を見せてくれることはなかったはずだ。アマリの方も、“ホープスと仲良くしたい”や“仲良くなれて嬉しい”なんて思わなかったかもしれない。
お互いがお互いに対してそう思えるような関係を築くことができたのも、救世主一行の案内役として、多くの人々と接することができたおかげだ。ホープスの場合は、セイカと仲良く(?)喧嘩していたことが1番の刺激だったのであろう。魔法生物と外宇宙生命体という人外同士、繋がりのようなものができていてもおかしくはないのだから。
「私も、出会ったばかりのホープスより、今のホープスの方が好きですよ。親しみやすくて」
「――――!!!」
ぶわあ、と、ホープスの冠羽が逆立つ。しかしそれはすぐに収まり、彼はゆらゆらと首を動かし始めた。アマリを観察するというよりは、自分の好奇心のままに体を動かしているという毛色の方が強い。そういう仕草は鸚鵡なんだ、と、アマリは心の中で感心した。
出会ったばかりの彼と今の彼の様子を比較すると、後者の彼は挙動不審な動きをしている。いつもなら絶対に見せない間の抜けた姿。――だからこそ、そんな緩んだ一面を見せてもらえる程、自分たちの関係が良好になりつつあることを感じた。それが嬉しくて、つい頬が緩む。
アマリは自然と、ホープスへ手を伸ばしていた。確か、鸚鵡は首元を撫でられると気持ちが良いんだったか――そんなことを考えていたせいだろう。
首を動かすのをやめたホープスは、訝し気にこちらを見上げた。本人に無許可で撫でるのは、やっぱりよろしくない。許可を取らずとも答えはNoだ。
慌てて手を引っ込めて、アマリは何でもない風を装う。――仲間たちと過ごした日々は名残惜しいが、もう行かなくては。
「マスター。先程の言葉は――」
「待ってください。こんな時間帯に、どうしたんですか?」
ホープスが何かを言いかけたのと、格納庫にやってきたアイーダがアマリに声をかけてきたのは、ほぼ同時だった。
◇◇
『旅を続ければ、あたしやソラみたいな異界人もどんどん仲間になるだろうね。アマリにも友達が増えて、色んな顔をするようになる。お前に対してはずーっと怯えっぱなしで不満そうな顔ばっかりなのに、他の人と話しているときだけすっごく楽しそうな顔をしていて、そのせいでどんどん距離が空いてしまう。――そうなったらお前、どんな気持ちになる?』
『仲間だからこそ、その1人でありたかったからこそ、私はみなさんから離れなければいけないんです。……教団の粛清に、彼らを巻き込まないために』
セイカの言葉を思い出したのは、アマリが彼らと別れることを決意したためだ。仲間たちと過ごしたかけがえのない日々を、大切に想っていたためだ。
ワタルや宙継を筆頭とした面々と出会い、一緒に旅をするようになってから、アマリはよく笑うようになった。ホープスはそんな彼女の変化を好ましいと思っていたし、彼らと共に旅を続けた方が、アマリにとって良いことだと思っていた。できれば、その変化をもう少し見ていたい、と。
……そこに、仲間たちに対する負の感情がなかったわけじゃない。羨まなかったわけじゃない。アマリの表情の変化は、ホープスだけでは絶対に引き出せなかった。アマリはずっと、ホープスに対しては壁があった。――壁を作った張本人であるホープスが、こんなことを言うのはおかしいのかもしれないが。
どうして自分ではダメなのかと、そんなことを思うようになったのはいつからだろう。
自分にも彼らと同じように、色々な顔を見せてもらえないだろうかと思ったのは、いつからだろう。
自分たちの関係ではできないようなこと――彼らのように“仲間として支え合いたい”と思ったのは、どうしてだろう。
『ホープスは、私を心配してくれたんですね。ありがとうございます』
『嬉しいなあって思ったんです。なんだか、ホープスとの距離が、あの頃より縮まったような気がして』
『仲良くなれたような気がして、嬉しいんです』
アマリから、そんなことを言われるとは思わなかった。自分の中に湧き上がってきた温かなものを、何と例えればいいのだろう? ほんのりと甘い、この感情の意味が分からない。
衝撃を受けて大混乱になっていたホープスが唯一分かったことは、“アマリが自分と仲良くなりたいと願ってくれた事実が、思いのほか嬉しかった”ということくらいだ。
特に、『私も、出会ったばかりのホープスより、今のホープスの方が好きですよ。親しみやすくて』と言われたときがピークだったように思う。――いや、それよりも。
『好き』という単語1つで、酷く浮ついた気持ちになったのは何故だろう。胸の奥が温かくなって、ほんのりと甘いような、どこか酸っぱいような、形容できない味わいがじんわりと広がる。もう少し熟したならば――なんて、思いを馳せずにはいられない。
今まで、こんな味がする
「もうメガファウナの灯りも見えませんね……」
アマリの呟きに、ホープスは回想を止めて意識を現実へと引き戻す。
数刻前、アマリは強い決意を以て、仲間たちとの別離を選択した。メガファウナの格納庫から黙って出立しようとしていたところでアイーダに見つかり、どうしてか、彼女に付き合う羽目になっていた。メガファウナの姫様/G-アルケインはずんずんとゼルガードに随伴する。お転婆突撃姫は一体何を考えているのか。
誰であれ、アマリの決意を挫くような真似はさせない。もしアイーダが引き留めようとするなら、強硬手段も辞さない構えでいた。今だって、ホープスはアイーダの動きを監視している。――別に、アマリの『好き』の意味を訪ねようとした際に邪魔されたことを根に持っている訳ではない。断じて、そんな幼稚な理由ではないのだ。
アマリが述べたとおり、この距離からはメガファウナの灯りは見えない。見送りをするだけにしては、帰るべき場所から随分と離れている。
勿論、アマリもそれを察していたようで、「見送りはもう充分」とアイーダに告げた。彼女は暫し沈黙した後、にっこり笑って一言。
「お邪魔でないのであれば、もう少しだけ」
「邪魔です」
「ホープス!」
アイーダに対して物言いが刺々しくなったのも、邪険に扱ってしまったのも、先程から非常に苛々しているのも。
彼女の乱入によって、アマリの『好き』の意味を訪ねようとした現場を邪魔されたことが原因なのではない。
今この瞬間にも、アマリに咎められて不機嫌になったからではないのだ。断じて、そんな幼稚な理由ではないのだ。
自分でも制御不能なレベルで荒ぶる心を抑え込みながら、ホープスは、なるべく淡々とした調子で言葉を紡ぐ。
ああいう手合いは、遜るよりも直接言わねば伝わらないのだ。こちら側が僅かでも遠慮すれば最後、突撃姫の仇名通り、相手の心へずかずかと突っ込んで踏み荒らしかねない。
アマリがどんな気持ちで、仲間たちに何も言わずに飛び出したと思っているのか。どれ程の決意を以て、離別を選択したと思っているのか。――ああ、無性に苛々する。
「アイーダ様。アメリア軍の高官をお父上に持つ貴女に、周囲はなかなか意見できないでしょう。ですので、私は、敢えて直接的な言葉で言わせていただきます。マスターは相応な覚悟の上で、皆様の元を去ることにしたのです。アイーダ様の存在は迷惑と言わざるを得ません」
「やめなさい、ホープス」
「いいんです、アマリさん。ホープスにも感謝します」
「私は彼の言う通り、私は、厄介な『姫様』ですから」――はっきりそう言い切ったアイーダの微笑は、どこか憂いに満ちていた。その笑い方は、どうしてか、ホープスと出会ったばかりのアマリを連想させる。
アマリも、当時の自分とアイーダを重ねて見たのだろう。放っておけなくなって、「心の内を聞かせてほしい」と声をかけた。アイーダは、ぽつりぽつりと言葉を紡ぐ。“このままでよいのだろうか”――その疑問は、嘗てのアマリが教団を飛び出そうと決意した理由そのものだった。
アイーダはアメリア軍総督の娘であり、メガファウナでは『姫様』として扱われている。彼女も軍属であり、本来の階級は少尉だ。だが、その肩書が通用しているのは、彼女の世界だけなのだ。完全な異世界であるアル・ワースにおいて、アイーダは単なるMSパイロットでしかないのである。
「仲間を率いる器も無ければ、パイロットとしての腕前が特段優れているわけでもない」と言い切ったアイーダは、普段の強気なアイーダからは想像できない。自信満々な態度はどこへやら。以前“突撃姫と煽ったら、締め上げられそうになった”一件が嘘のようだ。
「……知りませんでした。アイーダさんが、そんなことを考えていたなんて……」
「もっと自信満々な女に見えました?」
「はい……」
「それは、そうあろうと思って生きていたためでしょう。私から見れば、アマリさんこそ、強い人間だと思います」
内心、ホープスは思わずアイーダの言葉に頷いていた。決断するまでに時間はかかるが、一度覚悟を決めた後のアマリは強い。腕力とはまた違う心の強さを、ホープスは幾度となく目撃してきた。彼女の成長も、彼女が有する強さが開花した証である。
アイーダはアマリの決意を察していたらしい。ホープスの話を引き合いに出して、彼女はにっこりと微笑んだ。アマリは思わず表情を曇らせる。自分たちが教団からの脱走者であることは、まだ誰にも言っていないのだ。そして今も、それを話すつもりはない。
「無責任なことを言うかもしれないが、アイーダさんはそのままでいいと思う」――自分の話題を棚上げし、アマリは微笑む。
「『姫様』であるアイーダさんに、心を捧げた人がいるんです。それって、とっても素敵なことじゃないですか」
「アマリさん……」
「だから、アイーダさんの在り方は間違っていないと思いますよ」
そう語ったアマリの瞳は、何かに思いを馳せるように遠くを見つめていた。あの横顔は、宙継に思いを馳せるセイカと非常によく似通っている。どうしてそんなものをアマリに重ねてしまったのか、ホープスには分からない。
得体の知れぬ息苦しさを感じていたとき、どこかでオドが蠢く気配を感じ取る。時空が歪んでいるときに発生するものだ。ホープスがアマリとアイーダに警告したのと、新たな異界人が現れたのはほぼ同時。
出現した機体は、アイーダやベルリの搭乗しているG系の機体とよく似ていた。片方の機体には男性が、もう片方には女性が搭乗しているらしい。救世主一行の方針は“異界人の保護”だ。
オドオドするアマリを引っ張るように、アイーダが仕切る。リーダーが必要な現場では、彼女のような率先して動くタイプが頼りになるものだ。
だが、今の自分たちよりも頼りになる組織は動き出したらしい。それをホープスが伝えたのと、魔従教団のルーンゴーレムが現れたのはほぼ同時。
自分が脱走兵であるが故に、アマリは思わず身構えた。こちらの存在が向うに感知されれば、新たな異界人とアイーダごと、ルーンゴーレムは狙い撃ちしてくるだろう。
教団の
それだけではなく、今回のルーンゴーレムは索敵精度が高いようで、ゼルガードにも狙いをつけ攻撃してきた。
「あの岩人形、まだ暴走しているのですか!?」
「――そうではありません」
――もう隠しておけないと悟ったのだろう。アマリは眦を釣り上げた。
それが彼女の決断なら、従おう。ホープスは小さく頷き返し、ゼルガードを動かす。平原の中で一番見晴らしのいい場所――目立つ場所へ降り立った。
ここからなら、ゴーレムを操っている術士にも、アマリの声が聞こえるはずだ。岩人形を動かしている術士は、必ずこの近くにいるはずである。
「私は、ここです! 無関係な人たちには手出ししないでください!!」
しかし、ゴーレムは異界人とアイーダ諸共攻撃を仕掛けてきた。アイーダはゴーレムの攻撃を暴走だと思っているし、異界人たちも急な襲撃で困惑している。おそらく、ゴーレムの操り手もそれを狙っているのだろう。このままでは全滅だ。
「マスター……」
「それならば、やるしかありません……!」
予期せぬ事態になってしまったが、元々こうなることは覚悟の上だ。あの旅路で思い切りが良くなったのか、ゼルガードの出力がぐんと上昇していく。
「そこの2機のパイロット、後退してください!」――そう叫んで2機の前に躍り出た少女の姿は、旅立ち直後にオドオドしていた少女のものとは思えない。
本人も自覚していないだけで、アマリは現場指揮能力に長けている。今回の旅路と仲間たちとの交流で、彼女の才能はここまで開花したのだ。
最初は
袋小路の中で見つけた小さな種は、確かに芽吹いて成長しているのだ。その姿に魅せられる。その姿に示される。
“彼女なら、ホープスの望みを叶えてくれるだろう”と――いいや、“彼女と共にならば、自由を掴むことができる”と、信じられるような気がした。
「前に戦ったルーンゴーレムより、大した力は持っていません。でも、明確な意識を感じる以上、暴走したわけでもない。……操っている術士は、近くにいますね」
以前のアマリだったら、自力で答えを出すことすらままならなかっただろう。ホープスに誘導されなければ状況分析ができなかった頃の姿からは、今の彼女の姿を想像することはできなかった。そのことに内心感嘆しつつ、ホープスはアマリを見守る。
アマリは視界に作用するドグマを使った。彼女のREPERTUSによって、隠れていた術士とディーンベルが纏っていたドグマが吹き払われる。自分の読みと、アマリの読みがぴたりと一致した結果だ。悪態をつく術士を尻目に、ホープスは素直に賛辞を述べた。
「お見事です、マスター」
「…………」
「……マスター?」
「普段のホープスだったら、『この程度は常識ですよ?』って言うのに……」
「……貴女は私を何だと思っていらっしゃるのですか?」
「馬鹿にしたわけじゃありません。――ホープスに褒めてもらえたのが初めてだったから、驚いてしまったんです」
アマリは照れ臭そうに微笑んだ。ホープスとやり取りをしていてこんな顔を見せたのは、恐らく初めてのことである。
遠巻きでしか見たことのない表情だ――そう思ったとき、一瞬、ホープスは本気で呆けてしまった。
刹那、膨大な情報が頭の中に叩き込まれる。理解するよりも先に、形容できない甘さと酸っぱさが、ほのかに漂った。
――が。
「魔法生物……! 藍柱石の術士が背教者になったのは、貴様が彼女を唆したからだと聞いている! よくも禄でもないことをしてくれたな!!」
ホープスの食事を邪魔するが如く、ディーンベルの操縦者が吼えた。
この声には非常に聞き覚えがある。祭壇に飾られていた少女の写真を信奉してやまなかった低級二流術士だ。ホープスが見ていて苛々した人間の1人、菫青石の術士。エンデの仮面の加護により、アマリは声の主が誰か気づいていない。会話に若干のすれ違いを見せながらも――その事実に、ホープスはひっそり嘲笑った――、菫青石の術士は己の使命を語り出す。
菫青石の術士は、上層部から直々に『背教者であるアマリと、彼女と共に行動している人間たちを討て』と命令されたようだ。だが、奴は上層部を説得。智の神エンデからの神託もあって、任務を『背教者アマリ、および魔法生物とゼルガードを確保し、教団へと連れ戻す』という内容へと変えて貰ったという。……どのような心境の変化があったのか。
そして何より、『私怨による魔法生物への折檻』というのは、あくまでも菫青石の術士による独断らしい。教団の術士が私怨で魔法生物を甚振るとは、
菫青石の術士は、延々とホープスへの私怨をばら撒き続ける。背教者アマリに対する糾弾より、ホープスへの怨念への比率が遥かに高い。
奴は「鸚鵡のような外見のくせして生意気」だの「智の神エンデに仕える命として生まれた魔法鸚鵡のくせに」だの「鸚鵡風情が人を惑わすな」だのと叫んでいた。
「魔法生物であること以外、単なる“喋る鸚鵡”でしかない貴様が、彼女を導くとでも言うつもりか!? 智の神エンデの真似事など、貴様如きにできるはずがないだろう!!」
――鸚鵡、鸚鵡、鸚鵡。
そればかり挙げ連ねて吼える輩の、なんと煩いことか!
全部ホープスの外見を蔑んでいるだけではないか!!
「人間であることが、そんなに偉いのですか?」
「何……!?」
「エンデの徒であることは、そんなに素晴らしいのですか? 魔従教団員であることが、そんなに尊いのですか? ――エンデの仮面と加護がなければ何もできない低級二流術士が、私とマスターの操るゼルガードに勝てるとでも?」
「貴様……! 旧式のオート・ウォーロックで、ディーンベルに勝てると思うなよ!!」
苛々が頂点に達したので、ホープスは反射的に煽り返す。今の言葉は、菫青石の術士の逆鱗に触れたらしい。ディーンベルの出力が一気に上がる。魔従教団がディーンベルを主軸に運用しているのは、“術士の魔力を安定的に増幅できる”という扱いやすさが重視された結果だ。
ゼルガードの形式がお蔵入りになった理由は、
「アマリさんは私たちの仲間です! 彼女を傷つけることは、私が許しません!!」
決着をつけようとするアマリとホープスを遮るように飛び出したのは、やっぱりアイーダ/G-アルケインだった。彼女は無謀にも、無策のままディーンベルに勝負を挑む。
だが、そこへベルリが操るG-セルフが乱入し、ディーンベルのドグマからアイーダ/G-アルケインを守り抜いて見せた。ついでにG-セルフも無傷のままである。
更に、援軍として転移してきたのはメガファウナとシグナスだ。戦艦2機を纏めて転移させた下手人――宙継とセイカ/フリューゲルが、青緑色の光を撒き散らしながら降臨する。
どうやら仲間たちは、アマリが何かを抱えていることを察していたらしい。それぞれが独自に目を光らせて、アマリの行動に気を配っていたという。『黙って出ていく』という行動も予測済みだったようで、即座に捜索を開始したのだという。今回はベルリをビーコン役にして、フリューゲルのラインバレルシステムを使ったらしい。
「まさかアイーダさんまで行方不明になるとは予測してなかった」と苦笑したベルリであったが、即座に彼はディーンベルとゴーレムの群れに向き直った。メガファウナやシグナスから、次々と機動部隊が飛び出してくる。誰も彼も、アマリのことを魔従教団に売るような輩は1人もいない。
雁首揃えて現れた連中を、ディーンベルが放置するはずがなかった。メガファウナとシグナスを標的にしてドグマを撃ちこもうとする。――勿論、そんな真似はさせない。アマリとホープスはゼルガードでディーンベルに体当たりを喰らわせた。そのまま、なるべく仲間たちから離れた場所まで奴を誘導する。
そんな自分たちの姿を、菫青石の術士は尊い自己犠牲と判断したようだ。その通りにしてやると声高に叫び、ドグマを撃ち放ってきた。
――だが、その思い込みこそが奴の誤算。奴の隙そのものだ。ホープスがタイミングを目くばせすると、アマリは頷いてオドを集中させていく。
「今から私は、私だけのドグマを使います」
「あり得ない! そんなことができるものか!」
菫青石の術士は首を振って否定した。エンデの加護を失った背教者が、エンデの加護を受けて血の滲むような研鑽を積んでようやく習得するような御業を披露できるはずがない、と。
失敗すればこの場が吹き飛ぶ。だが、アマリの魔力量なら、被害を受けるのはゼルガードとディーンベルのみで済む。
ホープスだって納得した上で協力しているから、吹き飛んだとしたら自己責任として受け入れる所存だ。
――だからわざわざ、仲間たちを巻き込まぬ場所までやってきた。
「ダメです、アマリさん! 死んでは……!」
「大丈夫です、アイーダさん。――私は生きる意味を見つけるために、ここにいるんですから!」
オドが渦巻く。ドグマが具現する。
破壊の力を存分に示した光球はゼルガードの両腕に、雷光はゼルガードの両足へと集束した。ゼルガードはそのまま突撃し、ディーンベルを破壊の力で殴りつけ、蹴り飛ばした。ディーンベルへ光球をぶつけ、勢いそのまま蹴りを叩きこむ。――これが、アマリが自らの力で生み出したドグマ、電光切禍。
彼女のドグマは最後まで発動し、暴走することなく顕現した。ディーンベルは行動不能に陥る。菫青石の術士が苦悶の声を上げると同時に、奴が身に着けていたエンデの仮面が粉々に砕け散った。そこでアマリは、追手が菫青石の術士――同期のイオリ・アイオライトであることを知ったようだ。
奴との完全決着をつけようとした瞬間、今度は別な反応が出た。丁度、メガファウナとシグナスのいる方角を中心とした9時の方角。――現れたのは、ゾギリア軍だ。彼らもあの転移に巻き込まれ、アル・ワースへと誘われたらしい。おまけにキャピタル・アーミィと手を組んでいる。
新手の出現を「邪魔が入った」と言ったイオリは、そのまま撤退する。
去り際、奴はこちらを睨みつけ、捨て台詞を吐いた。
「アマリ・アクアマリン……この屈辱は忘れないぞ! 必ずあの鸚鵡から、お前を取り戻してみせる!!」
ディーンベルが去っていくのを見送ったアマリは、沈痛そうな面持ちで目を伏せた。今までに見たことがない心の揺れに、思わずホープスは首を傾げる。
奴に対する彼女の感情もまた、アマリが求める真実なのだろうか? 本人に問うてみたが、彼女は力なく首を振るのみ。それを問う間もなく、新手が攻撃を仕掛けてきた。
イオリ・アイオライトに関することは保留にし、まずはこの現状を打破することを考えるべきだ。ふつふつと湧き上がってくる苦味から意図的に目をそらして、ホープスは戦場へと向き直った。
大分オリジナル要素が強化されました。全編ホープス×アマリになるとは思わなかったなあ……。そのおかげか、普段より早く書きあがりました。やっぱりホープス×アマリは偉大だったんだな!!
今回登場したイオリが連呼した「鸚鵡」は後のフラグになります。金属生命体セイカが裏でアップを始めました。異種族恋愛ではホープスと対を成す導き手は、彼に対してどのような入れ知恵をするのでしょう?(すっとぼけ)