鋼の鳥は約束の場所へ   作:白鷺 葵

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【諸注意】
・拙作『大丈夫だ、問題しかないから』(ガンダム00×地球へ…×スパロボシリーズ×Gジェネシリーズ等の変則的なクロスオーバー作品)がUXの世界観に組み込まれており、ガンダム00原作死亡者の一部が生存している。
・『大丈夫だ、問題しかないから』がたどり着いたかもしれない一種の未来図。そのため、あちらのネタバレの塊状態である。
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・先天性で刹那がTSしており、グラハムとくっついている(重要)
・オリキャラが多数出演している。
・スパロボUX時空がネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・スパロボXもネタとギャグ方面で愉快なことになっている。
・魔従教団について捏造+魔改造が施されている。
・法師にオリキャラ追加。二つ名は“黄鉄鉱の術士”(黄鉄鉱=パイライト)
・キャラクター崩壊注意。
・基本的にダイジェスト形式。
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)
・ホープス×アマリ(重要)

上記が大丈夫の方は、この先にお進みください。


未来への闘志
エクスクロスになってから


 地球を旅立ち、ELSの母星へ向かったお父さんへ

 

 

 お父さんの方はいかがお過ごしでしょうか? 僕の方では、マナの国の調査を中断することになり、ドアクダー打倒の旅に集中することとなりました。

 

 ネクトオリビウムを巡り、ヴァリアンサーと呼ばれる機体が戦場を飛び回る世界のお話は、この前お話しましたよね? カップリングシステム用語をイデアさんの前で並べた結果はどうなりましたか? 顔を真っ赤にして俯いて、テーブルを叩き割っていませんか?

 グラハムさんあたりが、刹那さんにやってみようとして張り倒される光景が鮮明に浮かんで離れません。プロポージングとかまさにソレっぽいです。……ところで、お父さんのプロポージングはいつになるでしょう? ずっと楽しみに待っていますので、目途が立ち次第連絡ください。

 

 ディオさんの世界で1泊2日の弾丸ツアーを終えた僕たちは、アル・ワースへ戻ってきました。今後の方針を話し合ったその日の夜、メガファウナ動乱を思わせるような出来事が発生したのです。アマリさんとアイーダさんの行方不明事件が発生しました。

 アマリさんの場合、以前から何かを抱え込んでいることはみんなが察していました。だから、自分ができる範囲でアマリさんのことを気にかけていたのです。しかし、アイーダさんまで一緒に行方不明になってしまうというのは予想外の事態でした。

 ベルリさんがフォローとして先行してくれたので、後はフリューゲルのラインバレルシステムを使ってジャンプ。戦場に駆けつけることができました。アマリさんたちは魔従教団のゴーレムたちに襲われていたようで、術士が操るオート・ウォーロックを撃退したのです。

 “アル・ワースの法と秩序の番人を敵に回した”ということで、シバラクさんは顔を真っ青にしていましたが、アイーダさんの『向うが仕掛けて来たので撃退した』という主張を聞いたワタルくんやアウトロー組によって押し切られました。

 最後はワタルくんの一括で、『この場は正義のために戦う』と表明していましたが、アマリさんに止められました。魔従教団を庇い続けるアマリさんは『全ての責任は自分にある』と言い、僕たちに手出ししないようにと言ったのです。

 

 直後、ミスルギ皇国に与したキャピタル・アーミィ部隊が強襲してきました。戦力としてゾギリア軍も新たに加わってました。僕たちの知らないところで、ゾギリア軍も転移に巻き込まれていたようです。第3者の乱入に自分の不利を察したのか、魔従教団のオート・ウォーロックは撤退していきました。

 ミスルギ皇国所属混合部隊は、どちらも僕らの仲間たちに対して強い敵意を持っています。対話を測る間もなく、交戦することになりました。アル・ワースに飛ばされてきたばかりの異界人がいることもお構いなしに、です。敵部隊からは切羽詰った感がひしひしと滲み出ていました。見ていてとても心配になる程に。

 

 特に、弓原雛さんのそっくりさんであるゾギリア軍兵士ヒナ・リャザン氏と、キャピタル・アーミィマスク部隊の指揮官マスク氏が非常に痛々しい状況になっていました。こちらが思念波で読み取らなくても、あちら側から垂れ流し状態になっていたので、嫌が応にも見えてしまったのです。

 

 ヒナ氏は青葉さんとのやり取りが原因で、自由連合側のスパイ嫌疑が浮上したようです。上層部からは疑いの目で見られ、下手をすれば投獄・処刑の危険性もあるとか。彼女の父親であるリャザン氏も軍人のため、そちらへの悪影響も避けられない。戦果を挙げなければと緊張しているときに、また青葉さんから通信が入ったことで、怒りが爆発したようでした。

 青葉さんは彼女を追いかけようとしましたが、ディオさんの命令に従って戦線へ戻ってきました。『バディの想いを踏み躙って勝手なことはできない』と語った青葉さんに、ディオさんは非常に驚いた様子でした。高圧的な思念波が軟化したようなので、2人が本物のバディとして歩み寄れる日が近いのかもしれません。

 

 マスク氏は、アル・ワースに飛ばされる以前から、ベルリさんに対して強いコンプレックスを抱いていたようです。キャピタル・アーミィの高官の息子という恵まれた出自、飛び級が許される程の才能の持ち主でありながら、大した主義主張もなくキャピタル・アーミィの敵に回ったベルリさん。マスク氏とは何もかも正反対です。

 マスク氏は『ベルリ・ゼナムという命の在り方が気に食わない』という気持ちが空回りし、後ろ向きに全力疾走しているように見えました。突っ走った方向は違えど、アロウズに所属していた頃のグラハムさん――ミスター・ブシドーと行動パターンが非常によく似ています。仮面をしている点も似ています。

 “碌でもない場所を終着点と見定め、そこへ向けて迷いなく突っ走っていた”グラハムに比べれば、“どこへ行きたいのかも分からないまま、闇雲に突っ走っている”マスク氏の方が危険です。しかも、その道標はベルリさんへの憎悪。刹那さんへの愛と『還りたい』という儚い願いで戦っていたグラハムさんより禄でもないことになりそうで心配です。

 

 

 家出から戻ってきたアマリさんから、魔従教団と戦う羽目になった事情を聞きました。

 

 アマリさんは魔従教団の術士ですが、教団設立3000年の歴史の中で初の脱走者なのだそうです。脱走者と言っても、教団の在り方に不満があったわけでもないし、教団の方針に逆らって悪事を働いたという訳ではありません。アマリさんは今でも魔従教団の在り方を信じていますし、自分の役職と所属組織を誇りに思っています。

 ですが、上司から『()()()()?』と問われたことを皮切りに、漠然とした不安と焦燥を抱えることになったようです。“このままでいいのか”と思い悩むアマリさんでしたが、“魔従教団関係者に相談しても取り合ってもらえない”ことを本能的に察していたため、誰にも相談できずにいたようでした。

 

 そんなある日、アマリさんは教団の研究所から脱走してきた名無しの魔法生物――のちのホープス――と邂逅。彼の話を聞いたアマリさんは、自分が抱えていた“漠然とした不安と得体の知れぬ焦燥”の意味を知りました。

 自分が生きていることへの疑問、自分の存在意義に対する疑問。『アマリ・アクアマリンという人間には、“魔従教団の術士として研鑽を重ねる”以外の人生しかないのか』という問いに対して、魔従教団という組織、組織に所属する同僚や上司が、答えを示してくれるとは到底思えなかったそうです。

 魔従教団に所属したままでは答えを得られないと悟ったアマリさんは、ホープスと契約。不良品として長らく捨て置かれていたオート・ウォーロックのゼルガードを持ち出す形で、教団を飛び出しました。――あのときの僕とアマリさんは、非常によく似ています。

 

 アンノウン・エクストライカーズがテロリストの疑いをかけられたことで、必然的に、そこに身を置いていたお父さんもテロリストの疑いがかけられたことがありましたね。僕は地球連邦軍の監視下に置かれ、大なり小なり暴力を受けたときのこと。周りの軍人はお父さんをテロリストとして罵倒し、蔑み、嘲笑していました。

 僕がどれ程『お父さんはテロリストなんかじゃない』と主張しても、あの連中は話を聞いてくれなかった。お父さんの情報を一切教えてくれなかったし、存在自体が悪意で塗れていたので、僕は奴らの話を信じませんでした。このまま奴らの元で大人しくしていても、真実を知ることは叶いません。そう思った僕は、奴らの監視から飛び出したんです。

 

 その話をしながらアマリさんの行動に同調した結果、大人たちの何名かが額を抑えて天を仰ぎました。抱き合わせで、元凶たるハザードの所業も説明していたためだと思われます。『そりゃあ逃げて正解だ』と太鼓判を押してくれました。閑話休題。

 

 アマリさんは、魔従教団が設立されて以来初の脱走者だそうです。それ故、教団側もアマリさんの処遇を決めかねている節があり、今まで追手が迫ってこなかったのでしょう。アマリさんの周りにいた機体に対して攻撃を仕掛けてきたのは、教団側が僕たちを『アマリさんを唆した黒幕である』と認定した可能性があったからではないか、と。

 その説を示す根拠は薄いのですが、アマリさんの追手として現れた術士はホープスを諸悪の根源扱いしていました。鸚鵡の姿をした魔法生物であることを異常な程に蔑んでいたのですが、他にも何か理由があったのではないかと思えてなりません。彼の周囲には、どす黒い思念が渦巻いていましたから。あれから暫く、ホープスも機嫌が悪かったです。

 色々ありましたが、アマリさんは僕らと一緒に旅を続けていくことになりました。救世主の道案内役として、魔従教団に所属し教義を体現する藍柱石の術士として、僕たちの仲間として。ドアクダー打倒の旅を続けながら、魔従教団側からかけられた嫌疑を晴らして渡りをつける――これが、今の僕たちの最終目標です。

 

 部隊名も救世主一行から『エクスクロス』へと変わりました。部隊名を名付けたのはアマリさんです。名前の意味は交差するという単語を組み合わせたものであり、さしずめ“異邦人が交差し合った混成部隊”というところでしょうか。

 

 命名を見ていた僕は、究極の混成部隊アルティメット・クロスが誕生した瞬間を思い出しました。あの頃は、僕らこそが“地球を救うために集められた可能性”であることも知らず、繰り返される宇宙の輪廻を知らず、世界の初期化をするために現れた神と戦うことになるとは思いませんでしたね。

 他の虚憶による経験上、エクスクロスは最後にどんな神と対峙することになるのでしょう? 神を超えることができると知っている僕だからこそ、そんなことが気になってなりません。今のところ、アル・ワースに存在する神は、魔従教団が信仰する智の神エンデくらいしか情報がありません。実体も不明です。

 

 それと、部隊の全体方針は“異界人の帰還で魔従教団に渡りをつける”ですが、教団への疑いが晴れたわけではありません。世界の真実を突きつけられたアンジュさんも、僕とは違う理由でしたが、魔従教団に対して懐疑的でした。僕自身も、そのスタンスは変わっていません。

 

 第1に、“3000年続く教団の歴史の中で、教徒が誰も脱走や改宗をしていない”なんておかしいんです。実際、宗教団体では「A教の教徒だったけど、信仰に疑問が生じた。その答えをB教に見出したので改宗する」ということは普通にあり得ますし、刹那さんの過去――宗教団体系テロ組織から脱走した――のようなケースだって起きて然るべきです。

 脱走者や離反者が一人もいない組織体系と聞くと、どうにも胡散臭い。S.D.体制時の管理社会を連想してしまうのは、あの体制下で存在を許されなかった古の同胞たちの叫びを識る者だからでしょうか? 実際、僕やお父さんたちは“一般人には何も知らせないまま、都合が悪い連中を排除する”ことがまかり通ってしまう現場を見たことがありましたね。

 所属組織に対して一切不満を持たないという点も怖いです。S.D.体制下の“コンピューターの忠実な部下として、安寧を貪っていた連中”と似ている気配を感じました。洗脳の類が横行していそうです。マザーコンピューター・テラという実例が、機械技術で可能だったと考えると、魔法ならもっと容易にできそうな気がしてなりません。

 

 第2に、魔従教団の術士が搭乗していた機体です。一般的な術士が登場するオート・ウォーロック――ディーンベルは、僕たちの世界に出現した謎の機体と同一のものでした。つまり、“僕らの世界に現れて、フリューゲルと交戦した連中”は魔従教団の術士たちだったということです。

 彼らは門を開くための技術――魔法を有していました。使い方を変えれば、異界人を自由に呼び出すこともできます。アル・ワースの秩序を守るために異界人の力が必要なのか、もしくは別の目的のために異界人を呼びだしているのかは分かりません。こうなると、法と秩序の番人という教義も怪しいものです。

 

 魔従教団への警戒は、疑念を持つ面々が重点的に行うことにしました。疑いが濃厚になれば、みんなも自ずと気にするようになることでしょう。疑うには確証が足りないという面もありますからね。

 

 

 先の戦いで保護したシーブック・アノーさんとセシリー・フェアチャイルドさんも仲間に加わり、一行は更に賑やかになりました。

 

 2人の機体――ガンダムF91とビギナ・ギナをハッパさんたちが調べてみたところ、どうやらG-セルフやG-アルケインと同じ規格――ユニバーサル・スタンダードが使われているようなのです。そのため、この4人は乗せ替えが可能とのこと。技術班は『偶然にしては出来過ぎている』ということで、独自に調べている真っ最中。

 僕の世界の出来事――“輪廻する宇宙”の同軸上に存在する、過去と未来の可能性――のことを考えると、『“偶然同じ規格だった”のではなく、“同軸上に存在する過去と未来”』と考える方が自然でしょう。技術だけではなく、それぞれの世界の歴史と照らし合わせてみたら答えが出そうですよね。

 ただ、『同じ名前の人物が、別の年代に出てきている』ということで、歴史側からの擦り合わせが上手くいかないようです。『ベルリさんの世界では別時代で活躍した有名人が、シーブックさんの世界では同じ時期に一堂に会している』らしく、シーブックさんたちとメガファウナ関係者が揃って首を傾げていました。

 

 ユニバーサル・スタンダードの謎が解けたら、この世界に召喚された異界人の共通点等も明らかになるのでしょうか? 現時点では“無作為に連れてこられている”感が強いようですが、召喚するしないを判断する基準らしきものは存在しているはずなのです。

 帰還する方法も気になりますが、召喚された理由も放置しておけません。嘗て僕らの世界で、ノーヴル博士の仕組んだ一件のこともあります。一見無意味で無価値なことのように見えても、何かしらどこかに意味が込められている――そう思ってしまうのは、実体験からくる深読みのせいでしょうか?

 

 

 色々長く書きましたが、今回はこの辺にしておきます。

 では、失礼しました。

 どうか息災で。

 

 

 ソラツグ・ハガネ/刃金宙継より

 

 

★★

 

 

 腹黒鸚鵡が教団の術士に罵倒されていたのは、つい先日のことだった。術士からは「鸚鵡の姿をしている」という理由で、散々詰られていたか。

 件の術士の主張は、ELSやフェストゥム、バジュラ等を脅威と認定し、排除しようとしていた輩の主張と非常によく似ている。

 最近でも、ELSと人間が友好関係を結ぶことに対して否定的な政治家が『化け物風情が、人間に擬態をするんじゃない』と叫んでクビになっていた。閑話休題。

 

 イオリという術士はホープスを敵視していた。背教者を産んだ犯人という点だけではなく、イオリがアマリを異性として見つめているという恋愛ブーストもかかっているためだろう。彼からすれば、ホープスは自分とアマリを引き裂こうとしている悪魔のような存在に見えている可能性がある。

 確かに、イオリの言動は“洗脳されたヒロインを取り戻そうとする主人公”のような雰囲気が漂っていた。しかし、元救世主一行/現エクスクロスの面々から見れば、イオリのやっていることはストーカーに近しい行為だ。アマリに訴えられないから大事に至っていないことなど、きっと理解していない。

 

 イオリから罵倒され、アマリを奪った悪者のように扱われたホープスは、ずっと機嫌が悪かった。――恐らく本人も、どうして自分がこんなにも苛々しているのか、よく分かっていないはずだ。

 

 

「ねえ。この前のアレについて、答えは出たの?」

 

「出てってください」

 

 

 セイカに問われたホープスは、ぴしゃりと言い切る。答えを言いたくないのか、未だにどう言い表せばいいのか分かっていないらしい。

 口に出してしまえば最後、自分が賭けに負けると本能で察知しているのだろう。だから、ここから追い出そうと必死なのだ。

 

 セイカはひっそりと悪い笑みを浮かべる。

 

 

「イオリ・アイオライトという術士から、『鸚鵡のくせに』だの、『アマリを返せ』だの、『アマリを渡せ』だのと言われたんでしょ?」

 

「…………」

 

「それが嫌だから、腹が立ってる」

 

「…………」

 

「お前の方も、『彼女をイオリに渡したくない』って思ったでしょ」

 

「…………」

 

「お前が持て余している感情は嫉妬だよ。アマリを術士に取られてしまうと思い、それが嫌だから、不機嫌になってるんだ。――違う?」

 

「…………」

 

「そういうの、相手のことが好きじゃなければ、出てこない感情なんだよ」

 

 

 ニヤニヤしながら煽れば、ホープスはぷいっと背中を向けた。梃子でも認めたくないらしい。

 

 いい加減観念すればいいのに、とセイカは思った。自分の中に芽生えた恋や愛を認めてしまえば、世界は劇的に生まれ変わる。きっと今まで以上に、鮮やかで美しい世界を体感できることだろう。本当に、難儀で勿体ない生き物だ。

 他にも色々入れ知恵してみたいことはあるが、現段階では時期尚早だ。奴がアマリへの感情を自覚した後の方が都合が良さそうだ。人と共に生きようとするELSや、ELSネットワークで視聴した『マジカル☆アマリン』の内容を思い出しつつ、セイカは考える。

 

 『人間であることが、そんなに偉いのですか?』――その台詞は、人の姿をとれない異種族生命体へ向けられた、人類たちが紡ぐ“悪意ある言葉”への反撃だった。

 異種族生命体は、人間と外見が遠い奴の方が圧倒的に多い。人に近い外見であっても、部位に僅かな差異があれば、人間への猿真似というお題目で非難してくる輩もいる。

 人間は、彼らが思った以上に万能ではないし、威張れるような立場ではない。本来なら、寄り添い補うことで力を発揮していく種族だ。

 

 長らく地球の頂点に立っていたためか、人類はそのことを忘れてしまっている者が多い。自分たちがすべてを思うがままに出来るという驕りも、そこから湧いてくるのかもしれなかった。

 

 

「ホープス」

 

「……何ですか?」

 

「自由になりたくて飛び出したのに、今のお前は窮屈そうだね」

 

 

 セイカの言葉を聞いたホープスは眦を釣り上げる。羽冠を大きく立てたあたり、不機嫌であることは確実だ。本人も何となく、自分が今窮屈であると感じているのかもしれない。

 今のホープスは、どことなく加藤に似ている。目的を果たすために、膨大な時間と犠牲をつぎ込んできた計画が「すべて間違っていた」と言われ、途方に暮れているような状態だ。

 流石に、ホープスの内情は加藤レベルではないだろうが、「認めてしまったら瓦解してしまう」と思いこみ、「認めることに対して怯えている」という点は共通している。

 

 

「お前が何を思ってアマリと契約したかは知らない。理屈で納得しても、心が納得できないってことは普通のことだからね。理解を拒む理由があったって当然だよ。……どんなに時間がかかってもいい。ちゃんと答えを出して、立ち上がって歩き出せるようになってくれればそれでいい。――自由であると言うことは、“誰と一緒に生きていくかを選べる”ってことも含まれているはずなんだから」

 

 

 セイカはひらひらと手を振り、ホープスのラボを後にする。叡智の探究者が恋や愛を知らないとは、本当に勿体ないことだ。しかも本人は無自覚で、恋や愛を体現しかかっている――こんなに面白い事象があるだろうか? いやない。

 宙継の母君候補が恋愛ごとに突っ込んでいく理由はよく分かる。彼女の姿に感銘を受けたからこそ、セイカは自分の抱く感情の答えを知ることができた。現在進行形で、恋愛というもものに全力投球している真っ最中だ。故に、恋や愛の素晴らしさはよく知っていた。

 

 勿論、異種族間における恋愛がハードルが高いことも知っている。

 

 セイカの成り立ち上、宙継は“セイカの父親役”として振る舞うからこちらのアピールに対して鈍感だ。養父のクーゴがイデアの恋愛感情に気づかないところを見ると、血が繋がっていなくても親子なのだと思い知る。親子のうちどちらかに決着が付けば、もう片方も進みそうな気がするのだが、なかなか上手くいかないようだった。

 周りの連中も喧しい。人型が取れなかった当初、ELSを快く思わない連中からは散々『化け物』と罵られた。セイカが人型に擬態することで、やっと表面上の悪口が収まったような形である。現在は裏側の悪口――『人間に擬態したからといって、バケモノであることには変わりない』等――をどうにかしたい。

 

 

(速く、“どんな種族と結ばれても許される時代”が来ればいいのになぁ)

 

 

 人類が他種族を繋ぐ橋渡し役になる日が来るのなら、セイカが思い描く出来事――人間と異種族生命体が婚姻関係を結ぶこと――が普通になる日も来るのだろう。

 自分の世界ですらまだだから、アル・ワースにそんな日が訪れるかなんてもっと予想できない。ホープスに発破をかけることは、奴を茨がひしめく森へ突っ込ませることと同義だ。

 それでも――それでも、あの異種族にも、誰かを愛し、誰かを想う喜びを知ってほしい。その想いが返って来たときの歓びを知ることが出来たら、きっと世界が変わるはずだ。

 

 ホープスが恋と愛を理解したとき、どんな風になるだろう?

 そのときは先輩として、からかいながら助言の1つや2つを贈ってみたいものだ。

 

 セイカは鼻歌混じりでメガファウナのパイロット待機室へ向かう。そこで、偵察を終えたシグナスの面々と遭遇した。

 

 

◆◆

 

 

「ところで、ヴィヴィアンとアンジュは帰らなくていいのか?」

 

 

 ヒミコがパラメイルのライダーたちにそんな質問をしている姿を見て、宙継はふと、元の世界のことを考えた。

 

 刃金宙継は、悪の組織のMSパイロット兼技術者としてJUDA≒加藤機関に出向し、そちらの方で仕事に従事していた。それだけでなく、元アルティメット・クロスの仲間たちや関係者たちとも、定期的に連絡を取り合っていた。アル・ワースに召喚されて以降は、不安定なELSネットワークを介して関係者各位にメッセージを送っている。

 しかし、自分が送ったメッセージがいつ相手へ届くかも分からないし、相手から返事が返って来るかも分からない。セイカは自分の好きな魔法少女アニメを受信しているようだが、単に運よく受信できているだけという可能性もある。もし、こちらのメッセージが届かないままだった場合、宙継は行方不明者として捜索されていることだろう。

 

 仲間たちのことだ。心配してあちこち探し回っているのかもしれない。

 外宇宙探索へ向かった養父クーゴも、宙継のことで憂いを抱いているかもしれない。

 職場で頼まれていた仕事だって山ほどあるのだ。関係者各位はてんやわんやしているだろう。

 

 

(僕が突如いなくなったことが原因で、悪の組織やJUDAおよび加藤機関の社会的信頼に影響が出ているかもしれませんね。下手したら、どちらからも首を切られて然るべきか……)

 

 

 事件を解決して元の世界へ帰ったとして、そこに自分の居場所があり続けるかと問われれば微妙である。行方不明になっている間に別の人員が補充され、所属していた共同体からは『突然いなくなって、関係者に迷惑をかけた非常識な人間』としてレッテルを張られることになり、元の場所へ戻れない危険性があるのだ。

 会社や共同体から見捨てられても、身近な人たち――家族や友人――が待っていてくれるならまだ救いはある。最悪のケースは、家族や友人からも見捨てられてしまう場合だ。“必死になって帰って来たのに、元の世界には何も残っていない”とか、悲しすぎる。何のために帰って来たのか分からないではないか。

 

 ……せめて弁明する時間くらいは残していてほしい。裁きはきちんと受けるから。

 

 幸い、JUDA≒加藤機関の面々は、アルティメット・クロス時代に体験したクアンタムバーストの件で、“まずは相手の話(≒言い分)を聞こう”というスタンスを取っていた。

 異世界アル・ワースの話を信じてもらえるか否かは別問題だし、弁明をしたところで結末が変わるかと問われると疑問が残る。無断で長期間休むなんて、解雇されて当然の所業だ。

 場合によっては、辞めさせられる前に何かの罰則を受ける可能性だってある。それが合法的処置に基づいたものか、それとも非合法(もみ消し可能)な手段なのかは分からない。

 

 

(説教役として動くとしたら、加藤さんか森次さんあたりが妥当ですかね?)

 

 

 加藤は組織の理念に反した行動をとった部下を手に懸ける非情さを持ち合わせていたし、森次は圧倒的な実力と絶妙な手加減から敵味方関係なく恐れられている。どちらかと言えば、手加減という点から森次が出てきそうな気配がした。前者の加藤は粛清役が相応しかろう。

 

 脳裏に浮かんだのは、カカゼオを手際よく無力化したときの森次/ヴァーダントの姿だった。バインダーと装備を次々とパージし、マシンガンからレールガン、更に太刀による連続突きと一閃を叩きこみ、再転送されたバインダーを即座に装備し直し、無数の太刀で相手を串刺しの刑に処す――グラハムが「見事な対応」と称賛し、暉が「あれが、本物の暴力……!」と恐れた攻撃である。

 しかし忘れるなかれ。あんな連続攻撃をカカゼオに叩き込み、レズナーがいるコックピットをぶち抜いても尚、森次は本気ではないのだ。彼が本気を出していた場合、レズナーはもうこの世からオサラバしている。おまけに山下曰く、『本気出した場合、素手でグチャグチャにしますよ』とのこと。実際、あのときの森次は武装を駆使していたし、アルティメット・クロスに拘束されたレズナーの身体はピンピンしていた。……心がどうだったかは知らないが。

 

 

「“本物の暴力”で手打ちにしてもらえないかなぁ」

 

「本物の暴力!?」

 

 

 宙継が思わずそう零したとき、ぎょっとした声が響いた。振り返れば、ワタルとクラマ、ヴィヴィアンらが戦々恐々とした顔でこっちを見ている。一緒にいたヒミコは「物騒だな!」と笑い飛ばしていた。――どうやら、宙継が呟いた言葉と面々の会話が変な具合にマッチングしてしまったらしい。

 ワタルたちは今、アンジュとヴィヴィアンが所属していた組織のことについて話していたようだ。ヴィヴィアンは組織に戻っても構わないと考えているようだが、アンジュはこのまま脱走する算段を立てているという。どうやら、アルゼナルという組織に対して『いい思い出がない』ことが原因のようだ。

 会話の流れで、ヴィヴィアンはワタル達にクイズを出した。『自分たちがこのままアルゼナルに捕まった場合、どんな罰が待っているのか』と。ワタルとヒミコが答え、ヴィヴィアンが物騒な一例をヒントとして提示した。それをクラマとアンジュに咎められた直後、宙継の「本物の暴力」発言が繰り出されたらしい。

 

 

「森次社長――出向先の上司がよくやるんです」

 

「ブラック企業じゃねえか! そんな会社(とこ)辞めちまえ!!」

 

「敵対したり増長したり道を踏み外したりしない限りしませんから大丈夫です! ……ただ、今回の場合は僕の無断欠勤で迷惑をかけたから、致し方のない措置なのかなと」

 

「お前は普通に受け入れてるみたいだが、絶対おかしいからな。絶対おかしいからな!」

 

 

 クラマは顔を真っ青にして、宙継の肩に手を当てて揺さぶってきた。「逃げていいんだ。このまま逃げたっていいんだ。むしろ逃げるべきだろコレ」と、滾々と説き伏せる。

 腹に一物抱えていると言えど、クラマもまた、人を騙すのに向かないタイプだ。根はお人好しの世話好きで、不器用ながらも心優しい()なのだ。宙継はそっと目を細める。

 

 今は、森次にかけられた謂れのないレッテルを剥がさなければ。森次だって、戦闘の実力が抜きん出ているだけで、周りの人間が思う以上に愉快な人なのだから。

 

 

「森次さんは、尊敬できる素敵な人ですよ。戦闘に関して突出しているだけであって、冷静沈着で、友達思いで、不器用だけどひたむきな熱血漢なんです」

 

 

 宙継は思念波でその光景を見せる。

 刃金宙継やその関係者が目の当たりにした、森次玲二という青年の姿を。

 

 

『さぁ英治、正義の味方ゴッコは終わりだ。今からお前を救ってやろう』

 

『……ああ、知っていたさ……。ただ、私はそれを望んでいなかった。ただの友達で充分だった』

 

 

 嘗て自分が犯した過ちを清算するために、友の前に立った青年を。

 

 

『私は正義の味方ではない。しかし、この世界を救うのは、我々だというコトだ!』

 

 

 正義の味方になりたいと願いながら、そうなれなかった青年を。

 けれど、『“正義の味方”の道を切り開く者』へと至った青年を。

 

 

『……フ、気づいたか。そうだ、これは――』

 

『――長崎土産のカステラだ』

 

 

 本人にはその気が一切ない上に、洒落の効かないユーモアを持っている、ちょっと変わった青年の姿を。

 

 

『分からん』

 

 

 時々周囲を不安にさせるようなこと――マキナの電脳を酷使する/一歩間違えれば自分が死にかねない――を平然とやらかすような、雑っぽい青年の姿を。

 

 思念波は、GN粒子における意識共有空間同様『心で接する』ものだ。言葉で告げることよりも、誤解が少なくて済む。周りにいた面々も、ぴりぴりした空気を解いていた。良くも悪くも根が真面目過ぎた人なのだと――それ故に愉快な人なのだと、理解してもらえたようで何よりである。

 彼らの意見を代弁するかのように、ワタルが笑みを浮かべて口を開く。「宙継くんの上司――森次さんって、悪い人じゃないんだね」――その言葉を聞いて、宙継は頷き返した。一部の人は「スイカ割り」だの「カステラ」だの「過労死」だのとブツブツ呟いている。大なり小なり思うところがあるらしい。

 

 

「問題です。宙継の言ってた、森次社長の“本物の暴力”とは、一体何を意味しているのでしょう!?」

 

「参照はこちらです」

 

 

 ヴィヴィアンの問いかけに対し、宙継は思念波を使って答えた。カカゼオを撃墜した際の森次を映し出す。

 

 

『やはりこいつは、只の的だ』

 

『聞こえなかったか? ――全力で潰してやると言ってるんだよ』

 

『もうお終いか』

 

『――命中』

 

 

 流れるような連撃で的を殲滅したヴァーダントは、ゆっくりと巨大マキナのコックピットに近寄った。凶悪な笑みを浮かべた森次を見て、自分の敗北を悟ったレズナーが上ずった悲鳴を上げる。勿論、コックピットという閉鎖空間故、レズナーの逃げ場はどこにもない。ヴァーダントは太刀を振りかざし、迷うことなくコックピットをぶち抜いた。

 周囲の温度が若干下がったような気がする。誰かが鋭く息を飲む音が聞こえた。直後、拘束されてもピンピンしているレズナーと、『森次さんは全然本気じゃないッスよ』と冷静に語る山下の姿を見て、各々戦慄したり感心したりしていた。『本気だったら素手でグチャグチャにします』という補足が入ったら、また誰かが息を飲む声が聞こえた。

 

 「あのノリは参考になるわね」――アンジュが悪い笑みを浮かべて何かを考え始める。ヴィルキスの性癖が歪む、あるいは過労死するのではないかと思ったのは何故だろう。

 「機体が大爆発したのに、操縦者がピンピンしてるなんて……! 自在に手加減できるとかヤバくないか!?」――青葉はぞっとしたような顔で呟く。そこが森次の凄いところだ。

 「森次さんって人、本当に味方ですか!?」――アマリが鬼気迫った表情で宙継に問いかけてきた。宙継は頷く。たまに忘れそうになるが、森次玲二は立派な仲間だ。事実である。

 

 

「アルゼナルの指令が男だったら、丁度、彼みたいな感じかしら? ……あの指令、彼と違って天然っぷりは皆無だけど」

 

「自分の生命線を雑に扱うような真似もしないよね。こっちの指令は、生命線はしっかり押さえつけて抱え込みそうなタイプ?」

 

「ひええ……」

 

「うわあ」

 

 

 アンジュとヴィヴィアンの会話を聞いた青葉が情けない声を漏らした。

 ワタルも“森次みたいな女性”を思い浮かべ、何とも言えぬ表情を浮かべる。

 

 アルゼナル――ドラゴンと戦うことを義務付けられたノーマたちを収容する施設にして、ドラゴン退治の最前線に位置する組織だ。

 

 彼女たちが所属する団体の司令がどんな人物かに関する話題は、今回初めて断片が語られたような形である。アンジュとヴィヴィアンの話を聞く限り、アルゼナルの指令は「森次玲二からユーモア・愉快さ・自身の生命線を雑に扱う部分を引いて、スパルタを倍にしたような女傑」らしい。

 “何を考えているのか――行動原理がさっぱり分からない”という部分は、石神や加藤の色合いが強そうだ。“常にヒステリック”とも言っていたが、アルティメット・クロスで常にヒステリックだった人は誰だろう。一般人目線からの生々しい本音を吐露していたのは美海だったように思うが、彼女のソレは、ヒステリックとは別分野だろう。

 

 そういえば、と、宙継はクラマに視線を向けた。

 

 森次が本気を出す――自身にかかっているリミッターを外す際、左目を隠す。森次は左目を失明した状態で、あの実力を叩きだしているのだ。過去の罪の象徴として、彼は敢えて、左目を失明したままにしたらしい。そのため、ファクターとして覚醒した直後、自身の左目を治療したヴァーダントへ怒り、機体の左目を“素手で殴って潰した”という。

 クラマもまた、左目に眼帯をつけていた。旅の途中で出会ったときから、彼は左目に眼帯をつけている。「傷があるのか」、「眼病なのか」との問いに対しては面倒くさそうにはぐらかしていた。宙継は森次のリミッター解除を引き合いに出し、クラマに問いかける。

 

 

「クラマさんは、どうして眼帯をつけてらっしゃるんですか?」

 

「…………」

 

 

 森次を引き合いに出されたクラマは、居心地悪そうに視線を彷徨わせる。自分の左目の心配をし始めた子どもに対し、何と答えるべきか迷っている様子だった。

 ヒミコとワタルも、「森次の左目は失明している」という話題から彼の左目が気になり始めたのだろう。しきりに「大丈夫?」と声をかけていた。

 

 暫しの沈黙の後、クラマが絞り出すような声で答える。

 

 

「……ものもらい……」

 

「……あー……」

 

<畜生! 鳥じゃなかった頃は、ものもらいなんざ出来てなかったんだ……!>

 

 

 森次の話の後にこんな話題を振られたら、大変答え辛かっただろう。格好良くない理由だと自覚していたからこそ、クラマは眼帯についてはぐらかしていた。しかも、思念から漂う悲痛な叫びからして、左目のものもらいは()()姿()にさせられたときに発症してしまったらしい。眼帯で隠すことを選んだとなると、治療も上手くいかなかったのかもしれない。

 他の仲間たちからも、居たたまれない眼差しを向けられる。勿論、そんな集中攻撃に耐えられるはずもなく、クラマは目頭を押さえてため息をついた。意図してなかったとしても、宙継のせいで変な空気が漂い始めたのは確かだ。唯一ヒミコだけが「ものもらい」と連呼しながら大爆笑している。それを救いととるか地獄ととるか、判断するには材料が足りなすぎた。

 

 さてどうしようか――宙継がそんなことを考え始めたとき、丁度、偵察に行っていた面々が戻ってきた。

 

 

***

 

 

 近隣の村が山賊に襲われている――そんな話題を耳にしたエクスクロスの救世主・戦部ワタルが、メガファウナの中で大人しくするはずがない。彼に先導される形で、機動部隊は件の村へと足を踏み入れた。

 

 しかし、村の様子は思った以上に平穏だった。度重なる山賊の襲撃に合っているにも関わらず、村民たちは普段通りの暮らしを営んでいたためである。戦場を知っている身としては、もっと略奪の恐怖に怯えていてもおかしくない。人々にも余裕があるようで、笑顔で談笑している村民を多く見かけた。

 彼らから聞き出した情報を並べると、『救世主が山賊を撃退しに向かった』、『獣の国方面から来た旅人だと名乗っていた』、『彼の機体にはドリルがついていた』とのことだ。宙継は一瞬で、その人物が誰かに見当がついた。大グレン団を率いて戦った、シモンとグレンラガンである。別の虚憶で、彼とは何度も共闘していた。

 村を守っている人物がどのような性格なのかを知らないが故に、ディオが「余程の馬鹿か詐欺師である」と分析する。しかし、村人たちは詐欺師説を否定した。件の人物は『報酬を一切受け取らずに、山賊と戦うことを約束してくれた。自身に溢れている様子だったから、彼を信じた』とのことだ。

 

 シモンの場合、熱血と魂で不可能や理不尽を突貫するタイプだから、ディオの言う“余程の馬鹿”に該当するだろう。

 シモンが頼れる兄貴であることは虚憶で把握済みなので、特に警戒する必要は無さそうだった。

 むしろ、エクスクロスに引き入れる算段を探した方が、戦力的な面でも人柄的な面でもいいと思う。打算的な意味もあるし、宙継の個人的な考えでもあった。

 

 

<聖アドヴェントが幅を利かせてた世界では、シモンとニアの結婚式は見れなかったんでしょ?>

 

<2人の門出を祝う前に、多元世界は元通りになってしまいましたからね。クレディオがうじゃうじゃしていた世界でも、2人の結婚式がどうなったかは分からなかったですし>

 

「た、大変だ! 山賊が来たぞ!」

 

「あの人が、たった1人で戦ってる!」

 

 

 宙継とセイカが思念波で会話をしていたとき、村の方が騒がしくなった。声の方向に視線を向ければ、赤と黒基調のガンメン――グレンラガンが大立ち回りを演じている。

 獣人たちの機体はあっという間に倒され、第1波を凌ぐことができた。だが、すぐに第2波が到達する。今度は獣人の操るガンメンだけではない。オーラバトラーもいた。

 

 

「あの機体、ショウさんを倒すためにドアクダーへ行っちゃった人が乗ってた……!」

 

「トッドさん……!」

 

 

 見覚えのある機体を発見し、ワタルが声を上げた。宙継も頭を抱えたい気持ちになる。灰色の機体――ビアレスは、オーラバトラー部隊を率いる指揮官役を務めているらしい。彼らは獣人のガンメン部隊にグレンラガンを任せ、自分たちはこの村に襲撃をかけるつもりでいる様子だった。

 文字通りの多勢に無勢。いくらシモン/グレンラガンが強くても苦戦は必須。そして何より、1人で村を守り抜こうとする彼の姿を黙って見ている訳にはいかない。偵察部隊は顔を見合わせ頷く。宙継は即座にサイオン波の転移を行い、大急ぎで機体へ飛び乗った。

 村の近郊にいたメガファウナとシグナスに情報を送れば、艦長たちは即座に発艦を命じた。急いで現場に駆け付ける。丁度現場に到着したとき、シモンは敵と交戦している真っ最中。トッドから煽られても、ヴィラルに喧嘩を売られても、彼の意志/ドリルはどこまでも真っ直ぐ貫いていく。

 

 

「誰かが歩きゃ、そこに道が生まれる! 道が生まれりゃ、そこを誰かが歩く! そうやって、物事ってのは進むんだろうが!」

 

「笑わせてくれるぜ! その最初に歩く誰かがお前ってわけかよ! だがな――」

 

「――うるさいぞ、悪党!」

 

 

 ワタルの一喝を皮切りに、エクスクロスの旗本艦であるメガファウナとシグナス、エクスクロスの機動部隊が村の防衛ラインに展開する。それを見たシモン/グレンラガンは驚いたようにこちらに視線を向けてきた。

 

 虚憶の中で、率先して道を切り開こうとするシモンの背中を見てきた。どの虚憶でも、多くの人々が彼の背中に魅せられてきた。そうして今も、エクスクロスの面々は、彼の男気に惹かれてここに集う。彼が切り開き、突き進もうとする道に並び立たんと願ったのだ。

 シバラクに名を問われたシモンは、自らのことを『ただのシモン』と名乗った。獣の国の総司令官という立場を明かすつもりはないらしい。そんなものに拘らず、縛られず、自分の意志を貫く――そんなシモンだからこそ、多くの人々が付いてくるのだろう。宙継は思わず目を細めた。

 そのとき、宙継の思念波はアマリとホープスがひそひそ話している声を拾い上げた。恐らく、この2人はシモンの肩書を知っている。しかし、それを指摘する暇はない。今は大量に表れた山賊の群れをどうにかする方が先だった。ゼルガードの出力も一気に上昇する。

 

 トッドが山賊側にいることにショウが気づいて声を上げれば、トッドは忌々しそうにショウを睨みつけた。

 彼はショウの相手をすると言い、ダンバインの方に向き直る。ヴィラルは二つ返事で頷き、再びグレンラガンへ視線を向けた。

 ……成程。宿敵を持つ者であり、且つ、宿敵が目の前にいる者同士、お互いの行動に納得しているということか。

 

 

「あの連中……どうやら『例の奴ら』のようだ」

 

「やい、山賊ども! 僕たちが来たからには、これ以上好きにはさせないぞ! この救世主一行……じゃなくて、エクスクロスが、お前たちを退治してやる!」

 

「こいつは頼もしい援軍だぜ!」

 

 

 ワタルの名乗りを聞いたシモンが笑う。口で言っても分かってもらえない相手には痛い目を見てもらう――なんてことはない、いつも通りのやり方だ。アルティメット・クロス時代に何度もやってきた方法である。主な筆頭はハザード・パシャだった。

 対話方法としてトランザムバーストを展開するという手段もあるのだが、シモンの男気に無粋な横槍を入れるつもりはない。ちらちらとこちらに視線を向けてくるセイカを制し、宙継はガンメンとオーラバトラーの群れに向き直った。――そうして、戦いの火ぶたが切って落とされる。

 

 宙継/フリューゲルは、ショウ/ダンバインの元へ突っ込んできたトッド/ビアレスに割り込む。まさか横槍が入るとは思っていなかったようで、トッドは苛立たし気に声を荒げた。

 

 

「邪魔をするな、クソガキ!」

 

「トッドさんのお母さんって、トッドさんが山賊やってると知ったら喜ぶような人ですか?」

 

「はあ!?」

 

 

 この場で母親の話題を投げかけられることも、今の彼には想像できなかったらしい。「なんでこんな時にお袋の話題が出てくるんだよ!?」と声を上げた。

 しかし、それなりに効果はあるらしい。躊躇いがちな様子からして、彼の想像力はまだ機能しているようだ。しかし、踏み止まるという選択肢は存在していない。

 尚もショウの元へ躍りかかろうとするビアレスを引き留める。そんなに時間をかけるつもりはないので、宙継は手短に、言いたいことを伝えることにした。

 

 

「僕はお父さんが大好きです。だから、いつだって、お父さんに誇れるような自分でありたい」

 

「……何が言いたい?」

 

「今の貴方は、貴方の大切なお母さんに対して、誇れるような人間だと言えますか?」

 

 

 宙継の問いに対し、トッドは沈黙する。問いに答えるより先に、ビアレスを庇うようにしてドラムロが飛び込んでくる方が早かった。

 

 宙継たち/フリューゲルはそちらの対応に向かう。ビアレスは迷うことなくダンバインの元へ突撃した。オーラ力同士が激しい鍔競り合いを演じている。心なしか、ビアレスの武装に漂うオーラ力が揺らいでいるように見えたのだが、実際はどうなのだろう。少しは考え直してもらえたらいいのだが。

 山賊に身を落として無辜の民を傷つけることが親孝行だというなら、宙継は喜んで親不孝者になるだろう。そもそも、父であるクーゴがそんなことを望むはずがないのだ。要らぬ心配だったなと苦笑し、宙継は次の敵へと向き直った。

 

 




UXの森次さんネタを中心に、色々煮込んだ結果がこれです。手加減繋がりでジル、左目繋がりでクラマの情報と絡めてみました。ついでに、トッドに対して豪速球を投げつける宙継のネタも組み込めて満足しています。この世界線のトッドは、宙継の質問が理由で山賊を辞める模様。
ホープス×アマリネタの下準備もちょくちょく進んでいますが、まだ先は長そうですね。どこまで端折ろうか思案しているのですが、宙継がXの会話イベントでUXネタを発言する姿を入れる場面も欲しいなあと欲張ってしまいます。難しいものだ。
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