――トキワのもり――
乾いた音が鳴った。
レッドは太い木の幹に叩きつけた己の拳を引く。木はびくともしておらず、わずかに木の葉を落とすだけだった。
弱い。レッドは己に思う。
先日のグリーンとの戦いでかろうじて勝ちを「譲られた」ものの、もしもあれが掛け値なしの真剣勝負であればレッドは一敗地にまみれていたことは明白だった。
トレーナーは六匹までポケモンを所持することができる。対してレッドには一身があるのみであった。あきらかな不利。レッドは苦虫をかみつぶした顔をしながら木を叩いた拳を見やる。
手の甲が切れ、薄く血が滲んでいる。
木を叩いてこれなのである。もしも「いわタイプ」や「じめんタイプ」を叩けばどうなるだろう。一本の木を折ることすらできない手は、無残にも折られることになりはしないだろうか。そして仮に一匹二匹を倒しても、そこから先の戦いへ向かえるかすらもわからない。
体を鍛えてから二度の死闘を行ったレッドは初めて壁にぶつかったと言ってよい。それは心に影を落とし、体を重くする。
レッドは一度構えを解いて、あたりを見まわした。鬱蒼とした、というほど暗くはないのが「トキワのもり」である。少し遠くには整備された道が見え、木々の間からは太陽の光が差し込んでいる。
レッドは自分が叩いていた木を見上げた。レッドの二人分はあるであろう横幅に見合い、他の木々よりも頭一つ分は飛びぬけている。
「大きいな……」
レッドは呟くように言った。
それは木に言ったのか、それとも自分の前途にいるのであろう強敵に言ったのだろうか。もしかしたらレッドも気が付いていない、彼の観察者への無自覚のメッセージなのかもしれない。
「たすけてえ。だれがああ」
悲鳴が聞こえた。涙の混じった悲痛な声。
トキワのもりを抜ける道路をあるいていたレッドは反射的に声にした方を向いた。声の大きさからすると遠くはないはずだ、レッドは近くにおいていたバッグを取ると急いで駆け出した。
道を走れば遅くなる。素早くレッドは林へ突っ込む。迷いはない。
やせいのキャタピーが――レッドのたいあたり――たおれた。
飛び出してきたムシポケモンは蹴散らして進む。すでにこのトキワのもりのポケモンたちは相手にはならない。レッドは人間としては十分すぎるほどに強い。だが、その中途半端な強さに彼は寂しさを覚えていた。
走る。木の幹を蹴り、石を飛ばし。邪魔者は倒しながら。
「たすけてぇー」
はっとレッドは悲鳴が上がる方向に向きなおした。個人的な悩みに心を取られてしまって一瞬、本来の目的を忘れてしまった。声のする方向から若干ずれながら進んでしまっていたのだ。
「助けに来たよ!!」
レッドは走りながら答えた。
拍子抜けである。
「だずげでえ」
レッドの見上げた先には、木に登って降りられなくなった麦わら帽子の少年がいた。彼は太い枝に股をかけて必死に木に抱き着きながら泣きべそをかいている。レッドはふうと息を吐いた。
「うけとめるよ、飛び降りて」
「むりだよぉお」
レッドの声に少年は首を振って返した。木はそう大きくはない、三メートル程度だろうか、少年はその中腹より少し上に捕まっているのだ。仮に落ちてもけがをするかは微妙な高さでもある。木のそばには一本の虫取り網が落ちている。おそらく少年の物だろう。
「大丈夫、必ず受け止めるから」
レッドは少し声を優しくして言った。事実、彼がミスをするとは思えない。
「むりだっでば」
少年が降りてこなければどうしようもないが。
たとえレッドから見て高くない木も少年から見ればそうとも限らない。
レッドは困った。ポケモンが相手なら木を叩くなり、揺らすなりして落としてもいいが相手は人間、それもレッドよりも少年である。
「…………」
見捨てる。という思考ができるほどレッドの心は冷えてはいない。
そうだ、とレッドは思い足を広げて構えた。じりと少年の下に体を持っていく。
「今、助けてあげるから」
「ふぇ?」
赤い顔を少年は下に向ける。レッドはニコリと笑った。
足に力を入れる。急激な力の開放が熱気となってレッドの体から蒸気となって立ち上る。
ゼニガメとの戦いでつかみかけた力「電光石火」の発動。まだ完全ではないがこの程度のことならわけはないだろう。
レッドの地を蹴り、飛び上った。衝撃に地面に穴が開く。
レッドの体が木に掴まる少年の高さまで浮かんだ。一瞬レッドと少年の目が合う。少年は泣きはらした赤い目を丸くしてレッドを眺める。見るというには目の前の現象が少年には信じられないらしい。
少年の腋にレッドは手を入れる。「えっ」と少年が言った時には、その体が木から離された後だった。
「わあああああ」
重力を感じる。少年はレッドに抱かれたまま落ちていく。
レッドの足が木を蹴った。反動で飛び上り、少し離れたところに着地する。衝撃を消した静かな着陸。胸に抱いた少年には怪我一つない。
「大丈夫?」
少年はレッドの問いかけにブルと体を震わせた。そして口をぱくぱくと動かす。レッドは刺激が強すぎたかなと思ったが、次の瞬間
「すっげええ、兄ちゃんすっげええ」
少年の感嘆の声が上がった。顔を赤くする理由が変わっている。
観察者は見ている。
少年の名はユウキと言うらしい。白いシャツに短パンといういわゆる「むしとりしょうねん」のユウキは帽子をかぶりなおして、地面に落ちていた虫取り網を拾い上げながら言った。
「兄ちゃんありがとう。まじかっけーかった」
白い歯を見せてユウキは笑った。少年らしい無邪気な笑い。
「いや、大したことはしてないよ」
レッドは手を振ってはにかんだ。ユウキの裏のない賞賛が嬉しい。その反面、自分を否定していたことが彼の心に残っている。それは苦い。
「じゃあ、僕は行くよ。ニビシティに行かないといけないしね」
レッドが言うとユウキは目を輝かせて。
「ほんと!? 一緒に行こうよ。今から帰るんだ」
ユウキの申し出に少し驚いたレッドだったが、ぐぬぬと迫るユウキにクスリお笑いかけて。
「それなら行こうか」
「やったあああ」
ユウキは両手を上げて喜んだ。そしてユウキは花のような笑顔を向けて。
「兄ちゃん速くいこう! わ……」
ユウキが目を開く。レッドは背後に気配を感じた。
「兄ちゃん!!危ない」
「痛だっ」
背中が何かに刺されるような感触。反射的にレッドは前へ飛び、見えぬ敵から離れた。そして振り向いて構えを取る。
そこには、黄土色の体をしたさなぎが糸を体に付けて浮いていた。
「こ、クーン?」
コクーン。ムシポケモンの一種だ。基本的には戦闘の力がなく、進化前のビードルよりも劣る。それが自ら降りてきてレッドに奇襲をかけたのだ。
コクーンは呆然とするレッドを無視して頭上に糸をはいた。糸は近くの木に絡まった。そしてコクーンは体をくねらせて反動をつけて飛び上る。
「なっ」
逃げる気か。レッドはあわてて追おうとして足を踏み出す。
「げふう」
心臓が抑えられるような強烈な圧迫感。口の中に広がる血の味。ユウキが悲鳴を上げる。
レッドは毒にかかっている。
レッドはコクーンの「どくばり」にやられたらしい。さっきの攻撃はそれだった。
がっとレッドは踏みとどまった。目を上げてみると、コクーンが木を糸で伝いながら逃げていく。しかし時折レッドを振り向いてはその黒い目で彼を見る。
「誘っているのか……僕を」
レッドはぎりと歯を噛んだ。拳を握りしめて足に力を入れる。そのたびに体のどこかを毒が破る。閉じたレッドの口から血が漏れ、顎から赤い水滴が落ちた。
「ど、どくけし。あ、あるよにいちゃん、はやく、はやく」
うろたえながらユウキが「どくけし」をレッドに渡す。レッドはスプレーになっているそれを使い毒を消す。すっと体が楽になった。ポケモン用でも効くらしい。
「ありがとうユウキ君」
「へ? く……??」
レッドはコクーンに目を向けなおした。コクーンは一定の距離を保ってじっとレッドを見つめている。レッドは前傾に構えた。
「ユウキ君。僕はあいつを倒す。ここで待っていてくれ」
「だいじょうぶ? にいちゃ……いやちがうちがう。頑張れ兄ちゃん。コクーンなんか経験値稼ぎの相手だってみんな言っているよ!! 兄ちゃんなら楽勝だって!!」
レッドは軽くうなずいて。飛び出した。
コクーンは速い。木に素早く糸を張り付けてはまた別の木に移っていく。レッドは走りながら舌を巻いた。ただコクーンが逃げているだけならすぐに追いつけるだろう。速いとは言ってもコクーンとレッドではスピードが違う。だが追いつけない。コクーンはまっすぐ逃げるのではなく右に左に方向を転換しながら逃げていく。
「くっ」
コクーンの方向転換に木の幹を蹴ってむりやりレッドは体を合わせる。
近付いては逃げられる。その繰り返しの中で森の奥へ入っていく。
電光石火。それがレッドの頭によぎる。
無理だ。レッドは即座に否定した。それをすればトップスピードはコクーンをはるかに凌駕できるだろう。しかし一回限りである。もしも外せばそれ以上は足の筋肉が持たない。
コクーンが糸を切った。そのまま林へ飛び込む。
「待てっ」
レッドも一歩遅れて飛び込む。枝がばきばきと音をたて、葉の揺れる音がする。
目の前に光。林の出口。レッドは走りぬける。
「ぷはあ」
抜けた先は竹藪だった。青い竹があたりに群生している。地面には竹の葉が敷布のように引かれている。コクーンの姿は見当たらない。レッドは立ち止まりあたりを見回す。
がさ、と音が鳴る。
レッドは腰をひねって肩を構える。彼はその音の正体を見極める前にたいあたりを繰り出す。確認してからでは遅い。地面を蹴った。竹の葉が数枚浮き上がる。
突っ込む先に一匹のコクーン。それは身をそらして伸びあがっている。驚いているのだ。
「くらえええ」
レッドの体当たり。コクーンにダメージ。
「ちっ」
仕留めそこなった。レッドに弾き飛ばされたコクーンは竹藪の中へ飛んでいき、竹に当たって止まる。コクーンを幹に受けてしなった竹のから音が鳴り、コクーンが地面に落ちる。その上へもう一匹のコクーンが飛び降りた。
「なっに」
二匹のコクーン。レッドの目の前に現れる。レッドが拳を握った。上等と気持ちを固めた。だが飛び降りてきたコクーンがもう一匹の弱ったコクーンを助けるでもなく、なんとその体にどくばりを突き立てた。
コクーンのどくばり。コクーンを倒した。
コクーンのレベルが10に上がった。
閃光が竹藪に走る。レッドは眩しさに腕で目を覆った。
油断。視界を自ら閉じた一瞬。レッドに肌にぞくりと粟が立つ。
腕を解く。閃光の中から何かが飛んでくる。レッドは目を見開いた。
槍。高速で飛んでくる。
「うおおおおおお」
全力でレッドは横へ飛ぶ。そのわきを槍がえぐった、血が飛ぶ。レッドは転がってすぐさま起き上った。追撃。槍の穂先が目の前に迫る。死が頭を――
――電光石火。
レッドは後方へ飛び間一髪で回避する。距離を取って初めて敵の姿が見えた。
二槍を両手に持つ巨大な赤の目の敵がレッドを見ている。その黄色い巨体とそれを支える透明な羽。そして「蜂」として尻についた針。
スピアー。コクーンの進化形にして全ポケモン中もっとも速く最終形になるポケモン。
スピアーが羽を動かす。一瞬の残像を残してレッドとの距離を詰める。そして槍を繰り出す。空気を貫く瞬撃。レッドは身をひねってかわす。
「こっちの番……!」
連撃。スピアーの槍がレッドの腹を狙う。たまらずレッドが下がる。三連撃。スピアーが初手で使った槍を戻し、もう一度突く。
「でんこうせっかああ!!」
レッドが叫ぶと同時の加速。超速の世界でスピアーの槍が顔をかすめていく。レッドはスピアーの脇を走り抜けた。
背後を取る。振り向きざまにレッドは肩を構えてスピアーの背中へたいあたりを繰り出す。スピアーの体が飛び上った、いや飛んだ。羽を鳴らしての上方への回避。レッドのたいあたりが外れた。
10秒にも満たない攻防。レッドはスピアーを見上げようとして、膝が落ちた。電光石火のダメージがレッドを襲う。
「ぐっ……」
レッドは倒れない。心臓がその鼓動を速くする。肺が空気を求める。それでも戦いは終わらない。
スピアーの羽音。頭上から。
レッドは横へ飛ぶ。一瞬遅れてスピアーの槍が通り過ぎる。
旋回し、わずかに浮遊しながらスピアーはレッドを睨む。両手の槍を構えて彼の隙を伺う。その速さ、その正確さ、その無駄のなさ。これこそがスピアーの絶技「みだれづき」。
「はあ、はあ、はあ」
レッドの背中に冷たい汗が流れる。その上スピアーの槍にかすったことが重大な異変を彼に起こしている。
レッドは毒にかかっている。毒のダメージ
「ぐう」
吐き気がする。しかし、レッドはスピアーから目を離さない。隙は、死へ。スピアーとの対峙が彼の精神を削っていく。
レッドは構えなおした。足が軽く痙攣していることがわかる。それでもレッドは戦いの姿勢を崩さない。それは腰を落として足を大きく広げた姿勢。
傍目からもわかるほどの死地にレッドはいる。汗が彼の頬を流れる。口の中には血が溜まっている。
「こいよ」
レッドは指をちょいちょいと動かしてスピアーを誘う。これでこそ戦いだと彼の乾いた心が歓喜している。レッドがにやりと笑い口元が崩れ、血が流れる。
スピアーが突進する。構えた両槍がレッドに迫る。レッドは一歩、前へ出た。
レッドとスピアー、そのスピードはスピアーがコクーンだった時と逆転している。それでもレッドはゆるりと足を踏み出す。
スピアーが槍を突き出そうとした瞬間。レッドは口の中の血を吐く。スピアー、その目に向けて。
レッドのみずでっぽう。スピアーのきゅうしょにあたった。
目に血を受けてスピアーの目測がずれる。大きく構えを崩したスピアーが槍を外す。レッドは手を構えた、拳は握らない。手刀を両手で構える。
「お前の技。僕にもできる!」
レッドのみだれづき。スピアーにダメージ。
四連撃。レッドはスピアーへ手刀を叩きこむ。スピアーはたまらず体を傾げた、そこへレッドは肩を構えて突っ込む。
レッドの体当たり。スピアーにダメージ。
スピアーが鳴き声を上げて下がる。レッドはここだと足を踏み出そうとして、よろける。
「がは」
激しい攻撃にレッドの体が悲鳴を上げた。心臓がぎゅと掴まれたように、体の時が止まってしまう。呆然と二秒。全く無抵抗なレッドをスピアーが槍で突こうとして外す。
スピアーも相当なダメ―ジを負っている。いつのまにかスピアーは足をつけて羽を止めている。だが膝はつかない。レッドが意識をスピアーに向けた。やっと立て直した瀕死の体を奮い立たせる。
スピアーがよろけながら前へ出る。その姿を見てレッドは分かった。
こいつは僕だ。レッドは思う。
「おまえは……最初にぼくに攻撃したコクーンだな……。ぼくを使って他のコクーンを弱らせたかったのだんだろう」
何のために、などと言うのは愚問だ。
「強くなりたかったんだよね……わかるよ……」
最強の敵に親しくレッドは話しかける。言葉は通じない、それでもこのスピアーに奇妙な繋がりをレッドは感じた。
――「だいじょうぶ? にいちゃ……いやちがうちがう。頑張れ兄ちゃん。コクーンなんか経験値稼ぎの相手だってみんな言っているよ!! 兄ちゃんなら楽勝だって!!」
ユウキの言葉がレッドの頭によぎる。経験値稼ぎの相手。それが、その弱さがこのスピアーには、あの時のコクーンには許せなかったに違いない。そういつかコラッタに倒されて、屈辱を味わったレッドのように。
それでもレッドは前に出る。負けられないのは自分も一緒だ。同じ者どうしだから分かりあうことができる。同じ者どうしだからこそ引くことができない。
「兄ちゃん、がんばれ!!」
遠くでユウキの声がする。レッドは薄く笑ってスピアーに最後の言葉をかける。
「決着をつけよう」
――電光石火。
レッドの全力にこたえるようにスピアーは槍を突き出す。突いて引く、絶え間ない攻撃。息を止めたレッドは紙一重で避ける。電光石化のスピードにスピアーは食らいついてくる。それは執念といってよい。
レッドの手刀がスピアーの脇に当たる。一瞬もスピアーはひるまない。槍を出す。
高速の攻防。限界を換算せぬ動き。
レッドがスピアーの顔に手刀を入れる。スピアーが身を倒してよける。崩れた体勢で尻の針を突き出した。レッドは腰をひねって流す。腰に一筋の赤い線ができる。
三撃。レッドの反撃の手刀がスピアーに入る。スピアーはわずかによろけながら槍を繰り出す。レッドの頬をかする。
進化していく戦い。レッドは戦いをその身に吸収していく。スピアーは進化した自らの体の錬度上げていく。
それでも終わりの時が――くる。
スピアーの首に手刀が叩き込まれる。レッドの頬を尋常ではない汗が流れていく、だが顔はさわやかに笑っている。
レッドの胸を槍がかする。スピアーはよろけても、槍をとめない。スピアー<槍使い>とはだれが言ったのだろう。
スピアーの目が光る、最後の力を振り絞って。両手をさげた。
ダブルニードル。の構え。戦いの中で閃いた絶技。
レッドが踏み込んだ。電光石火に身を乗せた彼が少し速い
そう、少しだけ。紙一重の差だった。
レッドが拳を固める。体重を全て踏み込んだ足へ乗せる。そして拳を前へ。
「おおおおおおおおおおおおお」
レッドのメガトンパンチ――
スピアーの胸にレッドの拳が突き刺さる、スピアーの体が浮いて、後方へ飛んだ。竹の葉が舞いあげながら。
――スピアーはたおれた。
「やっぱすげえよ兄ちゃん」
ユウキの声にレッドはわずかに頷いた。激闘に力を使いはたして今は声も出したくない。足は痙攣しっぱなしで立てそうにもない。毒はユウキが「どくけし」を使ってくれたのだろう、苦しさはない。
「かみ、ひとえ……だ、よ」
レッドのふりしぼった声は弱々しい。先ほどまでの彼とは別人のようだ、それほどの戦いだった。
レッドは少し目を動かして、倒れ伏しているスピアーに目をやった。ひんしなのかぴくりとも動かない。レッドはくすりとわらう。意地の張り合いでここまでやりあうとは、スピアーも自分も馬鹿だなと。
それでもレッドは目が覚めた。ここ「トキワのもり」に入った時はトレーナーと戦うことを怖がっていた。それではいけないのだ。あのスピアーのように、強くなると心をレッドは固める。
敵が強いなら、ぼくはもっと――
レッドの意識が深い眠りの中に落ちていく。
「あれ、兄ちゃん? ここで寝られたら私が引っ張っていかなくちゃいけないじゃん。むりだって。兄ちゃん、ニビシティまでは遠いいよおー」
ユウキの声だけが竹藪に響いた。
スピアーLV10を撃破。レッドは電光石火、メガトンパンチ、みだれづきを覚えた。
少しだけ強くなりました。