時は近未来。人類から特殊な力<
その能力は個人が持つにはあまりにも脅威だった。世界中では突如現れたセブンスによる混乱が蔓延しているなか日本ではいち早くセブンスに目をつけた超複合巨大企業<
それがセブンスを物のように扱うことによって、一部では人権すら奪い去って。
しかし、それはもはや過去の物であった。ほんの数か月前、皇神に反抗する海外のセブンスの人権保護を訴えるグループ「フェザー」の工作員に手によって皇神に所属するセブンスのリーダーであった紫電が暗殺、彼が企画していたセブンス管理計画『
その結果、皇神の抑止として機能が止まってしまった。
そんな不安の中でも人々の営みは変わらずに進む、たとえ外より脅威の手が迫ろうとも。
皇都某所、とある路地裏の近く。一人の少年が歩いていた。しかし、その成りは一般人と言い難いほどに体があまりにも薄汚れていた。よく手入れされていた三つ編みの蜂蜜色の髪はくすんで艶を失い、服も元はきちんとしたものであったがすでに何か所も引き裂かれて浮浪者が纏うような襤褸切れを纏っている。肌もろくに洗ってはいないのか各所に汚れが目立っていた。ふらふらと夜の中の道を歩く少年はまるで幽鬼のようだった。
足を止めて振り返った先、様々なネオンが煌めき人々の喧噪が響く穏やかに見える街、今や安全とは言い切れないほどに治安が悪化してしまった、密かに悪意が潜み始めた街。その原因に想いを這っして振り返る。ふと口から言葉が吐露する。
「これで良かったのかな……いや、いいんだ。彼女が生きているのならばいいんだ」
その少年の名はGV、もしくはガンヴォルト。かつてフェザーに所属しており、無限の可能性を持つセブンス「
GVは自分が憑依だと確信している以外の記憶はない。理由は定かではないがおそらく今の人格が覚醒するまでの半生によって耐えきれずに自死を選んだかは分からないが全て忘れたほうがいいくらいには悲惨だった。改めて言おう、GVは、ガンヴォルトは自身を中心とした物語のその主人公だった。
当然当人も錯乱し、幸いにも
それがいづれよって離れ離れになるとしても宝物のように尊いものだった。
「そうだったな。あれが僕にとっての分岐点だったんだ」
それはGVの物語としての序章。フェザーからのミッションとして皇神の国民的ヴァーチャルアイドル『モルフォ』のコアの破壊を。だが真実は違って、モルフォは単なるAIではなく「
「彼女との邂逅こそが僕としての初めてだったんだ。自身の想いで何かをするのは」
彼女を最初に感じたのは共感だった。様々な機械に繋がれ雁字搦めに固められて自由に動けない虫かごに囚われた蝶のような少女『シアン』。それは共感という名の憐憫なのかもしれない。もしくは一面として見せてくれた育ての親のようにシアンを助けたかったんだろう。
「あの頃が懐かしいなぁ。シアンはいろいろと空回ったり、カップ麺ではしゃいだりもしたんだっけ」
結局のところ、GVも正史と同じ選択を選んだのだ。その先の結末が分かったとしてもフェザーを旅立つことを、シアンと一緒に暮らし、シアンと触れ合い、一緒に苦も楽も分かち合った。いつの間にか彼女の存在はとても大事なものへとなったから。その悩みにすえに、GVは決意したのだ。彼女を犠牲にした未来と平和を犠牲にした彼女の幸せ。1か99の選択をGVは1を取ることに決めたのだ。結果がこの混乱である。
「あの結末ではあの子は幸せになったんだろう。でも……でもそれじゃ、シアンはどこにいる?」
もう一度言おう、GVは未来を識っている。シアンと言う少女が残した痕跡のほとんどがミチルと言う少女と合わさりなくなってしまうことを。正史ではそれでもGVは是として闇に関わらないただの少女として彼女の幸せを願い立ち去った。確かにそれは幸せの一つだろう、けどミチルとしての幸せだ。僕が本当に欲しいと願うようになったのはミチルと一緒に登校するシアンの姿だった。
正史の通りに動けばそうなるだろう。だがそれを是とするわけにはいかないからGVは足りないものだらけでも動いたのだ。例え冴えたやり方じゃなくても。
紫電を打倒した後にGVは最初の小細工を弄したのだ。知識ではGVの育ての親と言える人物に二人とも撃たれシアンは死にGVも致死一歩手前の重傷を負う。原因はアシモフの手を振り払い、目的の障害として認識されたことだろう。彼はGVを次代のリーダーとしてセブンスを持たない人間を一掃する計画を実行しようとしたからだ。
ならばそれが無理な状況ならば? 例えば紫電との激戦の末に軍事衛星は修復が難しいほどに破損し、GVは相打ち、その結果としてシアンは生き残ったとすれば? その目論見は上手くいき、シアンはかつてのGVが所属してたフェザーのグループで保護された。その代償として今現在のGVは死者として扱われている。
グループの皆も、そしてシアンも僕が死亡したと認識していると思っている。
「皆、僕が亡くなったと思って悲しんでいるのかな。チームを抜けた後もあんなに親身に接してくれてたから……」
アシモフは残念に思いながらも惜しんでくれるのか。ジーノはカラ元気を見せつつGVに憤ってくれるだろうか。モニカさんは素直に悲しんでくれてるかな。シアンとモルフォは……ああ、そっか何でこんなにも簡単に分かることなのに何で気づかなかったんだろう。
「はは、僕もシアンを泣かしているじゃないか。馬鹿じゃないか……」
そこまでも思いに至ってようやく気付く、僕がいないことで彼女は本当に笑顔になれるのかと。シアンにとっての世界はGVが居たからこそ。だがGVには正史の人としての生を失い自分に寄り添い続けるあの光景は本当に幸せなのだと思えなかった。押し付けでもいい。そうだとしたらかつて皇のセブンスの一人であるデイトラを否定することが出来なかった。彼も倒錯して自身の欲望に呑まれかけていた押し付けではあるがシアンが幸せであることを願っていたから。
「だけど、これでいいんだ。いい……はずなんだ」
もう賽は投げられたのだ。自問自答はもうやめにしよう。ふらつきながらところどころ倒れそうなる体に力を絞って歩き出す。今日の寝床を探すために。大切な少女一人の笑顔すら守れないよわっちい人間じゃないか。ああ、思考が後ろ向きになってくる。
「ああ、くそ。何弱気になっているんだ。選んだんだろ。彼女が幸せになるようにってさ……」
もう足を止めて倒れてしまえば楽になるんじゃないかと思ってしまった時、ふと聞き覚えがあるような少女の声と二人の浮浪者の声がGVの耳へと届いた。
「……あ」
二人の浮浪者が少女を樹、おそらくどちらかのセブンスだろう、で拘束している。少女の一筋の涙が流れそうなる光景を見た瞬間に考えるよりも早く体が動く、何千、何万とも繰り返し起動してきた自らのセブンスを起動させるための型を、体内の電流が隆起する。
これはもしかしたら余計なお世話なのかもしれない、それでも今の光景を見過ごすのは自分には到底無理だった。泣きそうになっている少女を護るために、ずっと見たくないものを作り出さないためにGVは駆ける
「奔れ、
薄暗い闇の中、蒼き閃光が奔る。その一条の一閃こそ新たに結ばれた運命の新たな道なのは未だ誰にも知るものはいない。
再び蒼雷はまた立ち上がるだろう。彼の大事な人が涙を流すならば。
今作は物語の都合上無印終了直後からです。こんな稚作ですが楽しめたのなら幸いです。