ガンヴォルト 憑依もの   作:SUMI

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お待たせ!


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飛天を目指すチームシープスではあったがその途中に飛天より何者かに操られた飛行型自立無人戦車『フェイザント』の妨害にあっていた。

 

「これでジエンドだ!」

 

しかして、シアンを除いた二人はこれまで幾度なく同じような状況に乗り越えた猛者でもある。多少、手こずりはしたもののジーノのアシストにより武装と推進器は破壊され、碌に身動きが取れずにアシモフが放った弾丸がトドメをさす。

 

「すごい……」『ええ、二人とも動きに無駄がないわ』

 

その様子をシアンとモルフォは見守っていた。今の状況ではシアンは未だ新兵で実践を経験していない、まだ未熟であるために出来る限り邪魔しない様に避難していた。けれど、無力であることに足手まといであることに歯噛みしている。その様子をアシモフやジーノは優しく見守っていた。それは自分たちも同じだったから微笑ましいものだ。

 

「なに、気に病む必要ない。人は誰だって最初は新兵だ。私やGVだって最初はシアン君と同じように上手くやれていたわけではない」

 

「GVもそうだったの?」

 

それはシアンにとっては意外だった。彼女にとってGVはいつも敵には毅然として立ち向かう頼もしい姿だった。だから新兵の頃は自分と同じだったと言われてもまったく結びつけることが出来ない。

 

「そうそう、シアンちゃんと出会った頃にゃ一人でこなせるようになったんだが新兵の頃は結構ひいひい言ってたもんなんだぜ」

 

『ええ、懐かしいわね』

 

「ああ、詳しい過去はまた今度に話すとしよう」

 

だが昔のGVを知っている三人には懐かしいものであるのだがそれを知らないシアンには少しだけ疎外感を感じていた。しかし、次のアシモフが下す判断にそれは容易く凍り付いた。

 

「モニカ君。フェイザントによる妨害により、リミットオーバーによってミッションは失敗だ。これよりシープスは撤退する。他のチームについての撤退状況はどうなっている?」

 

『施設については重要な資材は既に搬出済みよ。偵察班も既に撤退準備は出来ているからアシモフの指示ですぐに離脱出来る状態で待機しているわ』

 

それは淡々と失敗する旨を伝え、モニカさんもそれが分かっているのか同じように淡々と状況を通達している。

 

「撤退するんですか!? このままじゃ他の民間人に被害が出るのですか!?」

 

だけどまだ普通の倫理観を持つシアンには見捨てることが出来ずにいた。いや、そうするには余りにも後ろ冷たいと言った方が正しい。アシモフはそれを見抜いていた。

 

「そうだ、もう今から乗り込んでもどうにかできるタイムミリットは過ぎてしまった。確かに被害を出さないことも重要だろう。だがそれ以上にチームメイトの無事の方が重要だ。リーダーとしてもそれは許してはいけないタブーだ」

 

確かに誰かを見捨てるのは心苦しいだろう。だが、そのために無理をして仲間が犠牲になるのはもっと駄目なことだと諭されるならば納得するほかなかった。

 

「っ……分かりました」

 

「仕方ねえか……了解。これより撤退します」

 

 

 

 

 

 

 

「追奔逐北。今、君たちが撤退するのは宜しくないのでね。しばし拘束して貰おうか。凍てつけ『超冷凍(オールフリーズ)』」

 

その時だった、三人以外の第三者の声が響き、彼女たちの手足が凍り付いたのは同時なのは。アシモフもジーノも対応できずに武器毎その四肢を氷によって封じられ身動きが取れなくなる。

 

「誰!?」

 

まるでプログラムされた虚像が現れるように登場したのは変身現象によって自身のセブンスを最も効率よく運用するために最適化された能力者の姿。けど何か、私が知っている変身した能力者とは違う感じがする。

 

「その姿はまさか皇神の能力者か!」

 

「軽慮浅謀。私を皇神の能力者と一緒にしてもらわないでほしいな」

 

だが、彼は皇神であることに対して不機嫌になる。まるで皇神の人間ではないことであるように。

 

「ほう、ならば君は何者なのか教えて欲しいものだ。少なくとも変身できる能力者は皇神以外の心当たりはないのでな。アンサーしてほしいものだ」

 

「道理至極。私の名は「テンジアン、そこから先は私が説明いたしましょう」……分かったよ、パンテーラ。君に任せる」

 

その前にまた新しい声が響く、気が付けばもう一人の新しい人物がこの場に現れていた。まるで光が像を結ぶように現れた少女は私よりも小さいくらいに幼い少女だった。けれどその身に纏う妖艶な何かがただの少女ではないことを知らしめる。

 

「初めまして。そして、一部の人はお久しぶりですね。改めて私の真実の愛の姿を教えましょう。私の名はパンテーラ。能力者が安心して過ごせる世界を作るために結成された『エデン』。私はその巫女にして象徴でもあります」

 

パンテーラ、確かその名は前にアキュラと言う人物に倒された人物であったはず。だがジーノが知るパンテーラは男性だったはずだ。目の前の少女にまた会ったと言われても記憶の合致しないために困惑していた。

 

「そういえばあなたに見せた姿ではないのでしたね。―――――では、『お見せしよう、我が麗しき性別(ジェンダー)すらも越えた姿を!』」

 

少女が姿が光の鏡に包まれると次の瞬間には先ほどのまでの幼い姿はなく、紫を基調とした変身した男性へと姿を変じていた。口調すらも変化したその写し身は先ほどまでの少女とは同一人物だと言われても分からないだろう。その事に一番反応したのはジーノであった。かつてパンテーラに辛酸をなめられたからこそしっかりと覚えていたのだ。

 

「パンテーラ!? お前はあんとき第三者にやられたんじゃないのかよ!」

 

「それは我の愛の断片。数多ある鏡像の一片。これこそ私のセブンス『夢幻鏡(ミラー)』。君たちが見たのは夢幻(ゆめまぼろし)でもあるのだよ」

 

そうなると納得がいく。ジーノもまるでおかしくなったように感覚が狂わされることもあった。ならばGVが報告したのは幻による偽装なのだろう。それもGV(本当は敢えて嘘の報告である)を騙せるほどにならば皇神だろうと気付けないのも無理はない。

 

「なるほど、つまりは撃破された事はフェイクでもあり、君は皇神を狙ったスパイであることか」

 

「イエス、その通り! 全ては能力者による楽園の創造の為、彼らの持つ技術は無能力者が持つにしては有用だったのでね私自ら潜入して入手させて貰ったよ。その成果としてそこにいるテンジアン。私の側近でもあるG7への恩恵でもあるのさ」

 

そうして後ろに控えている氷の能力者もその成果の一つなのだろう。三人に悟られずに一瞬で拘束できるほどに凍結させるほどに強力なセブンスへと増幅されているのだ。これ一つでも敵対するには脅威と言えよう。

 

「この宝剣による変身もパンテーラが手ずから入手した技術によるもの。模造品と言えど驚嘆するほどに高まりを感じさせるよ。これならばパンテーラが望む楽園へとまた一歩近づくだろう」

 

「ならエデンが目指す楽園は何なんですか!? こうまでして、飛天を使って皆に酷いことまでして目指すものって何ですか!?」

 

シアンには理解できなかった。能力者が安心して暮らせる世界を目指すのは分かる。でも今回のようにわざわざ飛天を暴走させて一般の人々にすら多大な被害を及ぼすことを平然と起こせる彼女たちが口にする楽園。そのエデンが作り上げようとする楽園がどんなものなのかも想像すらシアンには出来なかった。

 

「我らが目指すは能力者のみの世界。故に愚かな無能力者は存在すら消えてなくなるのだよ。」

 

帰ってきた答えはシアンでは理解すら出来ない。もはや、それは差別どころの話じゃない。小競り合いどころでもない。まさに戦争の規模だ。今までとは比較ならないほどの死傷者が出る。

 

「なら、何で俺たちを襲う? フェザーだって能力者の人権保護を訴えている。なら排除なんて乱暴なやり方じゃなくて協力だってできるじゃねえか」

 

「確かにフェザーの理念にはとても共感しよう! しかし、それでは救えるのはたった一部だけ。たったの一握りしか救えないのだよ。今のままでは楽園を想像するのはとても遠い夢物語だ」

 

その一瞬の間の後にシアンとモルフォへと視線を向ける。厭が応にも嫌悪を呼び起こすそれはかつてのモルフォのコアとして囚われていた時に嫌な研究者が向ける、人ではなく道具を見る視線だった。

 

「だからこそ実現させるために君の謡精さんがね、必要なのだよ」「パンテーラの理想の実現の為にも君は必要だ。楽園創造への人柱。人身御供なのだよ」

 

そう言い切る彼女たちの姿はかつての皇神と、平和のためにシアンを道具として扱おうとしていた紫電とダブって見える。いや、彼女たちのそれは狂信者の類だ。それ故に誰かを、自分たちとは違う存在に犠牲を平然と強いるためにより性質が悪い。

 

「それについては今しばらく時間が必要なのでね。それまでの間、我らが上げる反撃の鏑矢を、同朋を虐げた皇神への罰をご覧あれ!」

 

 

 

 

 

 

 

その時だった。私たちの通信に困惑する声が聞こえてきたのは。

 

『センサーに強力なセブンス反応!?』

 

モニカさんの困惑を疑問に思う前に頭上を蒼い流星が駆けた。その様子はまるで夜の暗黒を裂く一条の閃光の様でもあり、暗い檻を断ち切る剣であるように見えた。

 

いや、よく見れば先ほど破壊したフェイザントと同じ同型機だ。なのにどうやってあんな加速を見せたのかは分からない。誰がああしているのかも分からないはず、それなのに……

 

「『―――――――――――』」

 

それなのに涙が溢れそうになる。違う、私は知っている、覚えている。あの時に彼が見せてくれたあの光を覚えている。モルフォと同じように言葉が出てこないのに想いが溢れていく。

 

蒼い流星と化したフェイザントは寸分狂わずに真っ直ぐに堕ちようとしている飛天へと果敢に向かい、その身を散らしながらも今にぶつかりそうな飛天を押し出した。

 

その光景にパンテーラを除いた皆が唖然としている。予想すら出来なかった出来事だろう。

 

震天動地(しんてんどうち)、まさかあんな方法で飛天を押し出すとは予想だにしなかったよ」

 

「流石は、と称す他ないかな。模造宝剣によって強化されたG7の大半ですら足止めにしかならないとは」

 

大驚失色(たいきょうきょしょく)。これほどまでに高まった同志たちの大半ですら足止めにならないとは一体どんな存在なんだ」

 

「直ぐに分かるさ、テンジアン。だが、今回は私たちが一手早かった」

 

その直後に現れたるは繰り手の能力者と巨大な人型の機械人形。それは当に武器を人型にしたと形容したほうがいいほどに凶暴な人形。同じように現れたるはテンジアンと同じように変身した能力者の姿だった。その腕には意識を失っている小さな少女を抱えていた。

 

『何? どうして? ざわざわする?』

 

どうしてかは分からない。あの少女を見ていると私とモルフォの大切な何かが別れていくよう気がする。その感覚が怖い。まるで自分が自分でなくなる感覚。そんな奇妙な感覚がおぼえてしまう。

 

「すまない、思った以上に旧人類(オールドマン)にしつこくてな、計画(ルセット)の行程を狂わされた」

 

「いや、問題ないよ、アスロック。君は間に合ってくれた。これで計画に必要なものは揃い、時は来た!」

 

そう言ってシアンへと近づいていく。まだジーノもアシモフもまだ四肢の氷を砕こうにももがくも未だに枷は外せずにいた。

 

『シアンに近づかないで!』

 

それをそうそう許すモルフォではない、たとえ非力だとしても守ろうとする。だが、パンテーラが最も待ち望んでいた瞬間でもあった。

 

「ふふふ、とても健気な謡精だ。その在り方は真に愛! だが宿主との繋がりが弱まった時、我が愛の檻へと囚われたまえ!」

 

だが悲しいかな、それこそがエデンの目的。その術中に嵌り、まんまとモルフォそのものがパンテーラの鏡へと閉じ込められてしまう。

 

「モルフォ!?」

 

『離して! ここから出して!』

 

まるであの時と同じようだった。かつて皇神に囚われ、そのモルフォを道具のように扱う彼らと少女から大事なものを踏みにじるそれと同じだった。シアンも何とか氷から脱出しようと必死にもがくが大の大人が未だに脱出出来ないほどの氷にはびくともしない。もがいている内に控えていたテンジアンが自身のセブンスによって構成された氷の刃を無造作に振るう。

 

「『―――――――いやっ!?』」

 

その兇刃はモルフォが閉じ込められた鏡ごと……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その直前に少年が舞い降りた。

 

「護れ!スパークカリバー!!」

 

蒼い雷光の大剣を持つ少年が氷の凶刃を阻む。その大剣はシアンやモルフォを護る盾の様に大きく、雷熱が冷たい氷の刃を融かし、テンジアンを押し戻す。

 

「二人から離れろ!! テンジアンッ!!」

 

その後ろ姿を見た時、涙が流れていた。シアンはずっと覚えている。忘れるはずなんてない、それだけで彼だと確信できた。

 

ずっと待ち望んでいた人が、私のとってのヒーローが来てくれた。ずっと我慢してきたのに涙が溢れてくる。ずっと見慣れていたフェザーの制服じゃない黒と紺の新しい装いに身に包んだ姿。あの時よりもボロボロで綺麗なはずの蜂蜜色の三つ編みの髪が血でくすんでいるほどに傷だらけなのに駆けつけてくれた。

 

『GV……生きてくれてた……』「G……V……」

 

言葉が浮かんで沈んで何を言いたいのかすらも分からない。胸の中の想いもぐちゃぐりゃに混ざり合ってて、生きていてくれて駆けつけてくれたことの嬉しさ、こんなにも一人で傷つきながら戦っていることに対しての悲しさ。プラスとマイナス。それらがごちゃ混ぜになりながら言葉にならない感情が溢れてくる。

 

「大丈夫だ。あいつらに、エデンに二人は渡さない」

 

皇神から助けに駆けつけてくれた時と変わらずにいる背中ははとても大きく見えた。




よし! 書きたかった部分1です。やはり、主人公がヒロインの窮地に駆けつけるシーンはいいものです。

捕捉
なんで最初から変身解除? GVの最初の奇襲によるダメージの回復のために変身解除しています。

アスロックはフェイザントぶつける前に飛天から離脱しております。

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