ガンヴォルト 憑依もの   作:SUMI

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お待たせしました第二話です。本当に他の作者さんの投稿スピードが羨ましい。


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「うああああぁぁぁぁぁぁぁ!!??……………………い、今の夢は?」

 

いままで最悪の目覚めだった。酷く魘されたのか全身の汗に濡れて気持ちが悪い。所詮夢なのか何を見ていたのかはもう霞のように覚えていないけど感じていたのはあまりにも押しかかるように襲い掛かる無力感と焦燥だった。

 

「僕の家だよな……? 何もおかしくないはずなのに、なんだこの感覚は?」

 

周りを見渡しても確かに自分の寝室だ。『モルフォ』破壊指令からフェザーを抜け出してこの家と言うよりも隠れ家に移り住んで半年しかたってないはずだ。なのにこうも懐かしさと違和感と哀しみが湧くのだろう。もう二度と帰ってこれない処へ帰ってしまったような感覚を。

 

「うわ!? もうこんな時間なのか! 急いで朝食の準備をしないと!?」

 

けどそんな変んな事を考えている内にもう直ぐシアンが起きてくる時間が迫ってきてる。急いでベットから起き上がる頃にはもう違和感を忘れていた。

 

シアンとの生活を始めてから様々な苦労の始まりだった。まずは住処、身寄りがない未成年が二人と状態で家を借りるなんて簡単に出来るわけでもなく、出ていったばかりのフェザーのグループに恥を承知で頼み込んだ結果、かなり手狭ではあるが住むには問題ない住居の手配などを手伝ってくれたのだ。資金に関してもフェザーからの依頼によって確保できている。

 

…………うん、分かっている。ここまで来れば僕もまだ大人の手を借りなきゃ生活を安定することすら出来ないことを。そしてその事が素晴らしい幸運であることも。

 

昨日と今日から続いて依頼も学校もなく。シアンと一緒に家でくつろいでいた。シアンは皇神によって隔離されていこともあり13歳であるが発育が悪く身長も130しかない。けれど今はそんな束縛からも解放され、のびのびと過ごしている。

 

そんなシアンは今テレビを見ている。どうやら音楽番組が流れているようでよほど気に入った歌なのか口ずさんでいる。

 

「~~~~♪」

 

生身での歌唱だからモルフォが歌う時よりも多少ズレがあるけどその小さな体から驚くほどに美しい音色が流れ来る。僕はその声に聴き惚れていた。彼女の歌自体に特殊な効果があって聴いている人物がセブンスだったら心を震わせるものらしいがそれを置いておいても人気が出るのも納得ものだ。

 

「~~~~♪」

 

ついつい僕も釣られて歌いだし、結局一曲丸々口ずさんでしまった。けどシアンは妙に嬉しそうにしてる。

 

「やっぱり、シアンは歌うことが好きなんだね」

 

「うん、だから将来は歌に関係する仕事をしたいなって思っているの。できれば歌手として歌ってみたいな」

 

「なるほど、ならいつかシアンが立派な大人になって歌手になったら僕がファン一号になるのかな。その時はどんなサインをもらえるのだろうか楽しみだね」

 

実は知っているのだ。僕にも隠してこっそりとチラシの裏にサインの練習をしていることも。やっぱりいろいろと厭なことも経験したこともあったけどシアンも歌うことが大好きのだろう。

 

「~~~~~~~~??!! GVったら!? 何時知ったの!? 隠していたのに!?」

 

シアンは顔を真っ赤にしながら僕をポカポカと駄々っ子に軽く叩いてくる。その様子をなんだか可愛らしくてつい微笑んでしまうのが止められなかった。

 

『そろそろ私の恥ずかしさが爆発しそうだからこれくらいにしてあげて』

 

ある程度シアンをからかったところで出てきたのはもう一人の少女。彼女はの名はモルフォ、シアンが持つセブンス『電子の謡精(サイバーディーヴァ)』であり、人格を持つもう一人の同居人だ。

 

『GV、いくら可愛いからといってもあんまりシアンをからかわないで、まだ慣れていないんだから』

 

「はは、ごめんごめん。つい可愛くてちょっとね」

 

『もう、これだからGVは……シアンもそろそろやめてあげて』

 

む~、とむくれながらも駄々っ子パンチはやめたくらいだけどまだへそを曲げているようなのかな? そうだとしても頬が紅潮しているのも可愛いものだった。その光景がとても平和でいままで不自由だったシアンにもずっと訓練と任務を占めていた僕にも優しいものだった。

 

「ああ、このままもっと長く続いたらいいのに……」

 

知識からもこの生活は酷く短い皇神に見つかるまでの仮初めの暮らしだけど、その1日1日が僕にはとても新鮮で尊いものだ。贅沢な願いなのかもしれないけどこの生活がもう少しだけ長く、優しく続けたかった。

 

でも世界は誰にだろうと容赦などしないなどとうに分かっていたはずだった。

 

「『いやぁぁぁぁ!!??』」

 

突然の悲鳴に振り向くと、モルフォとシアンの顔が恐怖に染まりながらその体がまるで電子映像のように虚像が解けていく様子だった。

 

「G……V……たす……」

 

まるでシアンが存在することを許さないかのように。実体を持つ部分から徐々に電子の虚像へと変わっていく。

 

「シアン!!」

 

僕はすぐに手を伸ばすが蜃気楼のようにシアンの手を掴むどころ触れることすら叶わない。シアンはもう声すら出ないかそれでも手を伸ばそうとしている。

 

「シアン!!!」

 

抱きしめてでも掴もうとするけれど体ごとすり抜けていく。つかめない焦燥が、シアンの涙を拭えない無力感が心を支配しようとしても体が動く。もう届くことなどないと分かっていようとも手を伸ばし……

 

 

 

 

「シアン!!!!!」

 

今度は本当の目覚めだった。伸ばされた手から零れ落ちる天井の光景が見えてようやく夢だと自覚できた。

 

「……夢だった? くそっ! とんだ悪趣味な悪夢だ」

 

軽く見渡せばどうも見覚えがないがよく片づけられた部屋だった。今の現状を把握するために悪夢のことを別に置いといて、はて?と首をかしげてどうしてこうなったかを昨日の記憶から探り、思い出した。

 

「そうだった、つい衝動的に助けに入ったのはいいんだけど体力が限界だったからそのまま倒れたんだっけ。本当に悪運が強いな、僕は」

 

最悪の可能性として皇神の施設の可能性も考えたがそれならばもっと厳重に監視されることになるはずだから除外し、もう一つの可能性、助けた少女の家に招かれたんだと推察をつけた。

 

とてもありがたいことだけどこんな浮浪児を家に連れ込んだなんて噂になってしまったら迷惑が掛かってしまう。更には前科もある。下手にばれたらテロリスト扱いされるかもしない。だからさっさとここを出よう。一晩休める場所で休ましてくれただけでもお礼としては十分だ。それだけでも助けた少女が優しさと言うのが伝わってくる。

 

少女に見つかる前に出る準備をしよう。これ以上迷惑をかけるわけにはいかない。自分の体を見た、最低限の下着を残して纏っていた襤褸は流石に着てはいない。気が引けるけど適当に衣服を拝借しなければいけないのか憂鬱になる。

 

「「あ」」

 

その企みはあっさりと中止になってしまった。いざ行動しようとした途端に件の少女が入ってきたからだ。

おそらくチームメンバーのジーノと同じ16歳ほどでゆったりとした緑黄の髪と優しい瞳を持った大和撫子と言う言葉が似合いそうな少女だった。既に起きている僕を見て嬉しそうに顔を綻ばせる。

 

「起きたのですね! お具合はいかかですか?」

 

「え、えっと。あの……」

 

「あ、まだ自己紹介がまだでしたね。私はオウカと呼ばれています。昨晩は助けていただいてありがとうございました」

 

「……ガンヴォルト、と呼ばれていた。言いづらいならGVって略しても構わない」

 

何と言うかオウカって天然と言うかシアンと比べると人とあまり接した経験が少ないというか箱入りのお嬢様と評すのが近いかもしれない。

 

「成るほど、ではGV。怪我してたみたいですが大丈夫ですか?」

 

「それならもう大じょう…………そうじゃなくて! こんな身元も分からない怪しい人物を家に招き込むなんてその人が昨日みたいな悪人だったらどうするんですか! 昨日みたいにヒドイことされてもおかしくない!」

 

実際あの時の自分は蒼き雷霆(アームド・ブルー)を使ってオウカを助けた。この国に住んでいる一般人なら皇神に所属していないセブンスは恐怖の対象だろう。最悪恐怖を感じて逃げられることも覚悟の上だった。オウカはそんなことは関係ない言わんばかりにと優しく微笑んでいた。

 

「御心配ありがとうございます。でもGV、あなたなら大丈夫だって信じます。だってあの時私を助けてくれたじゃないですか。そんな恩人を置いておくなんて私には出来ません」

 

やりずらいと思うと同時にそのおおらかさに安らぎを感じている自分もいるのがもどかしい。そんな彼女だからこそこんな僕でも介護してくれたんだろう。けれどオウカの姿は余りにも無防備すぎるのだ。

 

「それでもだよ! もし僕が君を襲った暴漢と仲間だったらどうするんですか! ここなら誰も気づかれずにこんなことですら――――」

 

無理矢理でも分からせるために彼女に襲い掛かるフリをして近づき、オウカの両腕を掴んで壁際に出来るだけ怪我しないように押し付ける。偶然にも僕とオウカの身長は同じくらいなのかお互いの顔が近い。

 

「出来るんだよ。今だってこんな風に君に酷いことをね」

 

これならば流石にオウカだってやすやすと他人を招きいれることがどんな事なのかこれである程度は分かってもらえるはずだ。あわよくばこれでオウカが怒って追い出してくれるならばいいんだが予想していたリアクションは起きず沈黙が降りる。

 

「あ……………」

 

頬は紅潮し、その瞳はすこしうるんでいる。その姿はまるで恋する乙女のようだった。その姿はあまりにも魅力的で一瞬本気で演技であることを忘れそうになるほどに。その事にこっちも毒気が抜かれたように脱力してしまった。

 

「「……………………」」

 

その瞬間に僕のおなかから盛大に音がなった。羞恥で顔が真っ赤になるのとオウカが可愛らしく笑うのは同時だった。さっきまでの妙な雰囲気が霧散してしまった。

 

「あのお腹すいていると思ってご飯を用意してあるのですがいかがでしょうか?」

 

「…………お願いします」

 

食欲に勝てなかったよ……

 

 

 

 

 

 

「いただきます」

 

僕に出されたのは雑炊だった。人によっては簡素と思うかもしれないが紫電との闘い以来路地裏生活のため十分にありがたい。感謝を込めて一口目をよく味わって食べる。その瞬間にこの雑炊に込められた優しさが見えた。

 

「…………あ、これは」

 

ありあわせだけども滋養のあるものじっくりと煮込んで食べやすく調理されたとても手の込んだ料理だった。それこそ一晩近く煮込まないと柔らかくならない食材も入ってることから僕をここに寝かせて直ぐに作ってくれたんだと。優しさが心地よい温かさとして体を温めていく。

 

「もしかして何か焦がしちゃいましか?」

 

僕の様子から何か失敗したのかとオウカが心配しているけど、違う。

 

「なんでもないよ。ただちゃんと食事を取ったのは久しぶりだったから言葉に出来なかっただけだよ」

 

その食事はとても温かくておいしくて、手が止まらない。頬を伝う雫も。止めようとすら考えもしなかった。ただただ疲れて冷え切った体に、心に暖かさを染み渡らせるの感覚をどう表現すればいいのかわからない。

 

「少しだけ……少しだけしょっぱいけど、おいしい。こんなに美味しいのは本当にいつ以来だろう……」

 

ただただ久しぶりに触れた優しさを噛みしめていた。そんな僕をオウカはただ穏やかに見守っていた。

 




シアンは焦りを感じた!


ちょろい感がオウカちゃんについてはGVに対して一目惚れに近い状態です。そりゃ天涯孤独に近い状況のなか、ボロボロなのに助けに来てくれた男の子で純粋にオウカのことを見てくれたんなら惚れてもおかしくないよね! そしてオウカの嫁力が半端ないのと自然と壁ドンするGVはジゴロだね(確信)
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