ガンヴォルト 憑依もの   作:SUMI

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お待たせしました。第三話です。

ここではまだ明かされていない設定について独自の設定をしています。


3

結局のところ、僕はオウカに押し切られてズルズルと居候することになってしまった。そこまで行けば僕でも知識から思い出して。そう正史でも流浪のGVを匿ってくれた少女、オウカなのだ。これも因果なのかと思いつつもこのままヒモ扱い一直線コースに入りかけているのは事実である。

 

「オウカ、まだ買う物は残っている?」

 

「いえ、これで買物は全部です。家に帰りましょう」

 

だがいくらオウカがいいと言っても甘えるのは客観的に見てもあまりよろしくはないので一応ではあるがハウスキーパーの真似事位はしている。今はオウカの買い物の荷物持ちである。それでもヒモ扱いされても否定できないのが悲しい所ではある。

 

そんなことにしている内にオウカの家、いや屋敷へと到着する。少女が一人で住むにはあまりにも大きすぎるこの屋敷は郊外に孤立しているように建てられており、まるで隔離しているような印象を持っていた。けど最近はそんな印象は薄くなっている気はする。

 

「「ただいま」」

 

「お帰り、GV、オウカ。お邪魔させてもらっているよ」

 

リビングに入ると一人の少年が迎えてくれてる。僕よりも一つしたの日系と言うよりも中華系でフェザーの制服と似たデザインの服を来た少年シャオウー。僕たちはシャオと呼んでおり、前にちょっとしたことから自分たちと知り合い、ここに入り浸っている。ここに下宿しているわけではない。外国のフェザー所属らしく、協力者を探して時に此方へと渡ってきたのらしい。そして偶然(・・)にも僕たちの処へと転がり込んで来て、今は僕のオペレーターとして協力して貰っている。

 

「あら、シャオさんも来ていらしたんですね。ちょうど買い物をしてきましたからお昼しましょう」

 

「お、いただいていいの! じゃあ遠慮なくいただきます!」

 

「はい、では私は昼食の準備をしてきますね」

 

シャオの期待した姿にオウカは楽しげに台所に向かう。オウカの事情は聞いてはいないけれど知識から事情は知っている。いろいろな財閥やら庶子やらなどでオウカは僕やシアンとは違う形で孤独だったのだ。それ故か居候だろうとなんだろうとオウカは誰かとの繋がりを求めているのだろう。

 

「ああ、今日も楽しみにしているよ」

 

だから僕やシャオがここに居ることで彼女が笑えるならばここに居候するのも、僕個人のことはともかく悪くはない。でも流石にヒモヴォルト扱いは簡便してほしいので僕も昼食の準備の手伝いに取り掛かる。

 

 

 

 

 

 

「「「御馳走さまでした」」」

 

今回の昼食にかなり満足したのか、シャオはソファーに体を任せている。その姿は年相応の少年にしか見えない。

 

「シャオ、すまないが頼んでいた情報はどうだった?」

 

けれどシャオは今もフェザーに所属している人物だ。直接戦う力はないがそれだけが戦いではない。そのツテを辿って僕の装備や情報を仕入れてもらっている。要は物資の横流しではあるけれど、僕にとっては唯一の補給線だから何も言わずにいる。言ったら僕が困るだけだ。

 

「いつも通りバッチリと仕入れてきたよ」

 

「ありがとう。この手のことはすっかりシャオに任せっきりだな」

 

シャオから一通の封筒を受け取り中身を確認する、その書類には現在のシアンの情報が詳細に書かれていた。偽装死のデメリットである今まで構築してきたツテと言う物が全滅しているに等しい、のが痛い。彼女の情報を手に入れることですら一々シャオを通さなければならないくらいなほどに。

 

「いいよ。それに僕も『電子の謡精(サイバーディーヴァ)』のことは気になっているからね」

 

 

 

 

 

*

 

 

 

 

ファザーに所属するチームシープスの施設。

 

少し前まではあった和気藹々とした雰囲気はなくなり、暗い雰囲気が薄らと漂っていた。それはある闘いによってフェザーの敵対する皇神グループのセブンスたちのリーダーを討ち取った。だがその対価は重く、所属はしていないがそれでもチームシープスには頼もしい仲間が一人亡くなった悲しみが少しだけ残っている。

 

「ようモニカ、お疲れさん。コーヒー淹れてきた、飲むか?」

 

「あら、ありがとう。いただくわ」

 

シープスの一人ジーノが訪れていた。いつもは飄々としたお調子者ではだが今は成りをひそめている。同オペレーターであるモニカもそれを受けて取って飲む。二人も表面上は立ち直っているもののまだ少しだけその心に影を残していた。

 

「今日もシアンちゃんたちは訓練か?」

 

「ええ、今日もほとんどトレーニングルームにこもりっぱなしよ」

 

「そうか……」

 

 

すこし画面に視線を移すと、トレーニングルームでシアンが自身を鍛える為に真剣な表情で訓練に打ち込んでいた。その姿は年頃の女の子がするようなことではない。正直に言えばこれでも立て直したほうなのだ。

 

ジーノもモニカも憶えている。紫電から救出した後のシアンとモルフォはもう目を当てられないくらいにふさぎ込んでいた。GVと一緒にいた時に見せた年相応の笑顔はすっかりと消え、ほとんど喋ることすら出来ないほどにだ。食事もろくに喉を通らず、何をする気力を見せなかった中、ジーノもモニカもその悲しみを紛らわす言葉を持ち併せていなかった。

 

そんな中シアンに声を掛けた人がいた。フェザーの創始者の一人でありながらチームシープスのリーダー、そしてGVに今の名を与え、育ての親も同然であったアシモフ。その言葉がシアンを動かした。

 

ジーノもモニカもその一言が何かは聞いてはないがそれがシアンの琴線に触れたのだろう。

 

それ以来、寝食すらも惜しんで一心不乱に訓練に打ち込んでいる。彼女自身の環境からハンデはあるがそれでも鬼気と迫る勢いで取り込む様は以前までの彼女からは考えられないことだった。

 

しかし、暴走しそうなシアンを手伝うことしか二人には出来ることはなかった。

 

 

 

*

 

 

 

走る、走る、走る。私には体力がないからずっと基礎訓練をこなしている。まずは自衛のための最低限の体力をつけるために走り込んでいる。アシモフさん曰く、何をやるにしても最初に体力がなければ意味がないとのことだ。だから私は自由時間をずっと訓練につぎ込んでいる。

 

『シアン、休憩に入ろう。もう昼からずっと訓練しっぱなしよ』

 

訓練の途中でモルフォが勝手に出てきて、休憩することを勧める。確かに昼食を取ってからずっと訓練をしてきたのか体中汗に塗れているし、水分以外何も摂っていない。だから一番私のことを理解している為、これ以上負担を掛けるのは良くない影響が出てしまうことを警告するためだろう。

 

「もうちょっと、もうちょっとだけやってから休憩するからだからもう少しだけお願い。モルフォ」

 

『でももう今日は訓練のしすぎよ。これ以上は影響が出るわ』

 

「分かっている。でもね、私はあの時みたいなことはしたくないの……」

 

私の中にある後悔が休憩することに対して躊躇させる。今でも偶に夢に見るほどにモルフォも憶えている。あの時ほど、もっと私が強くあればと望んだ光景を……

 

 

 

*

 

 

 

それはGVが紫電と壮絶な戦いの末、打ち勝った。恐らく私はとても安堵を覚えていたんだと思う。これであの怖くて狭い場所に閉じ込められなくていいんだと陽気なことすら考えていた。

 

「しまったな……どうやら最後の最後で詰を間違えたみたいか」

 

そんな私の安堵はGVが崩れるように膝を着くのと同時だった。その姿が嘘みたいに思えて……

 

「G……V……?……血が……出て……」

 

GVの足元から滲み出てくる血のように、心に絶望が染み込んでいく。紫電との闘いで負ったものが悪化したのかもしれない。

 

「油断したみたいかな……最後の足掻きか」

 

「直ぐに戻ろう! 早く戻って治療すればきっと!」

 

「いや……駄目だ」

 

けれどGVは今も血を流して苦しいはずなのに私を抱えて、優しく私だけを部屋の外へと連れだした。その後に、GVはどこかにダートを打ち出して……

 

「僕にはまだやることがある。ここを二度と誰にも利用されないため破壊する」

 

蒼き雷霆(アームド・ブルー)のハッキングによって強制的に起動された障壁が閉まろうと動きだす。

 

「GV!」

 

「来るな!!!」

 

駆け寄ろうとする私をGVは今までにないほどの一喝だった。初めてのことに思わず、体が竦んでしまう。

 

「これでやっとシアンを皇神から解放することができる。こんな窮屈な所に閉じ込められなくてもいいんだ。もう、シアンは誰にも邪魔されずに自由でいられるんだ。それこそ誰かのためではない、シアンだけの歌を歌える」

 

部屋の中から語りかけるGVの表情はとても大怪我をしてるとは思えないほどに穏やかな優しい顔だった。

 

「でもGVは!? あんなに頑張ったのに、苦しい思いをしたのに何にも報われないなんて。そんなの……そんなの……おかしいよぉ……」

 

でも私は納得が出来なかった。ずっとGVは頑張ってきたのにその果てがこんな仕打ちなんて、余りにも悲しくて納得出来ない事だった。だけど、GVは穏やかに語りかけてくる。

 

「いいんだ。シアンと出会って様々なものを沢山貰ったんだ。僕にはもったいないくらいに素晴らしくて大切なものだ。それを護るために僕はこの選択をする。シアン、僕は君と出会えて幸せだった。だから……生きて、幸せになってくれ」

 

閉じていく障壁の中、最後に見えたのは血を流しながらも私に優しく、愛おしく笑いかけるGVの姿だった。

 

「いやだよ…………嘘だよね、嘘だと言ってよぉ」

 

いくら声を掛けても何も返ってこない。拒絶するよう完全に閉じられた障壁の冷たさが現実を思い知らされてくる。開けようとしても私の力では何一つ動くはない。くぐもった破壊音が漏れ聞こえてくる。

 

 

「GVーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

あの後のことはよく覚えていない。ジーノさん曰く、GVとは別口で潜入していたアシモフさんによって救出されたらしく。それまで障壁が閉じられた部屋の前で放心していたらしい。私が帰ってきたことを喜んでくれる人もいた。けれどそれ以来、私の見える世界は色褪せたものしか見えない。今も私の隣にいてほしかった人はもう、いない。

 

 

 

*

 

 

 

「モルフォ、私は強くなりたい。今度は私が誰かを護れるように、GVみたいになりたいの」

 

モルフォには分かってる。シアンは弱いままでいることに後悔しているのを、だってモルフォも同じだから。紫電に操られた時もっと抵抗できていたならきっと無事でいられたかもしれないのだから。

 

「だからもう少しだけ、もう少しだけやろう。モルフォ」

 

そんなシアンの頑固な姿はモルフォ自身でもどうしようもないと理解して、仕方ないと諦める。

 

『…………分かったわ。でもこの一回だけよ。これ以上やったのならジーノやモニカに心配かけるわ』

 

止めていた足を再び動かす、あの時みたいに立ち止まらないように。今度こそ大事な人へと駆けつけるために少女は走り出した。

 

 

 

*

 

 

 

その様子を見守っている二人。彼らはシアンたちの訓練を悲しげに見守っていた。その健気な姿には痛々しさしか感じられない。ただ、悲しみの方向を変えただけで何一つ解決したわけではないのだから。

 

「モニカ、そろそろ休憩にさせよう。最近のシアンちゃんは見てらんねぇ。俺は食事の準備をするから迎えに行ってくれないか」

 

「分かったわ、ジーノ。本当にどうしてこうなったのかしら」

 

「さあな。ただ、あいつがいなくなってからこうなっちまった…………ゲームのキャラじゃねえんだよ。ったく、格好つけてじゃねえよ」

 

ジーノはゲームや漫画が大好きだ。もちろん、お約束な展開なども大好きである。だが、それは現実じゃないお話だからこその話だ。それをジーノの目の前でやられたらたまったものではない。こんな武装組織にいて戦いに投じているからこその持論でもある。そんな格好いい退場をするより格好悪い、無様な生存の方が何倍もいい。少なくともジーノはそう考えている。

 

「本当にGVのやつ、なんでいなくなりやがったんだよ!! 二人の事残して逝きやがったんだよ!! あんの馬鹿野郎!! シアンちゃんにはまだお前が必要なんだよ!!」

 

もういない、ジーノにとって弟分だった少年のことを想い、行き場のない憤りを持て余していた。お前がいなくなったから彼女たちに癒しようのない心の傷を負わせたことを。本当に要ることはお前が無事に戻ってくることだと。

 

 

 

*

 

 

 

そんなシアンやシープスのことを詳細に記されていた。いくらシアンを生かすための偽装、予め用意してきた自分の血を使った血糊と言えどもあの姿は壮絶なほどにトラウマとして傷つけたのだ。歯噛みして感情を抑えきれず、書類に皺を作るほどに無力感が身を焦がす。

 

「GV」

 

「分かっている。シアンをここまで追い詰めてたのも僕にも責任があるけど、やらなければならないことを疎かにするつもりはない」

 

「ならいいさ。その子が大切のはいいけど分かっているよね? GVと僕は共犯者(・・・)ってこと」

 

「ああ、そう遠くない内に襲来する多国籍能力者連合エデンの打倒。その為に未来(・・)から来た、なんて眉唾物にもほどがあるけどさ」

 

 




青写真の歌詞からシアンたちの世界はGVがいるからこそであって。そんな彼女たちの表情を曇らせた中、GVは別の女のこと和気藹々と……ジーノにマウント取られてぼこぼこに殴られても仕方ないね!

シャオについてはまた次回です。
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