ガンヴォルト 憑依もの   作:SUMI

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フェザー潜入から数日後、シャオから頼んでいた戦闘用のプロテクトアーマーが届いていたため試着をしていたのだが。

 

「わあ、新しいお洋服。すっごく似合っていますよ、GV!」

 

いつの間にかオウカも来ていたのか試着したアーマーを見て褒めてくれた。実際にこの戦闘服はカッコイイとは思うのだがオウカのようにお洋服と呼ぶにはずれていると思う。

 

「ありがとう、オウカ。でもこれをお洋服って言うにはちょっと無理があるんじゃないかな」

 

確かに以前までミッションで着用していたフェザーの服よりも軽く、動きやすさも段違いである。少なくとも以前よりも防御力や機動性も上がったのは確かだ。

 

「でも、似合ってますから」

 

「やっぱりいつ見ても、その姿のGVはカッコイイよ」

 

「シャオもありがとう、ところでこのバイザーは?」

 

それは顔の半分を隠すような程に大きめに作られた黒地の青の蝶を模した文様が入ったもはや仮面じゃないかと思うほどに大きさのバイザーでもあった。少なくとも僕は頼んだ覚えのないはずの装備でもあった。

 

「これはそのプロテクトアーマーに合わせて顔を隠すためのバイザーさ。一応はレンズと同じようにバイアスを掛けるように設定してあるから着けても戦闘の邪魔にはならないはずだよ」

 

試しに着けてみると意外と視界は塞がらないどころか最初からないほどに広がっている。どういう技術が使われているのかは分からないけど、悪くない着心地である。ただ、鏡を見てみるとどことなく違和感がある。

 

「でも、今の髪型のままじゃどうにもあっていない感じがする。これは一回変えるべきかもしれないな、でもいつもは三つ編みだから慣れていないと動きに支障があるかもしれないしな……」

 

さっきまでは髪形も含めていい感じのデザインではあったのだがバイザーをつけると髪形が変に見えてしまう。最悪、このままでも構わないがどこか座り心地が悪い感じがするのだ。髪形を変えようと言ったことにオウカが僕の髪へと熱いまなざしを向けている。心なしか期待するような楽しみにしているような視線だ。ついでに何と言うか輝いてるように見えてしまう。

 

「オウカ、もしかして……」

 

「よろしかったら、髪のセットをやらせてもらえないでしょうか? いいですよね?」

 

しかも勢いがいつもよりも強い、確かに僕の髪の毛はかなり長く伸ばしている。能力や装備の関係から髪は重要なのだ。特に敵に打ち込む避雷針(ダート)の弾芯として僕の髪の毛が電気の誘導率の関係で使われているし、現在は髪留めとして使っているテールプラグも髪を通して電力を蓄える非常用の電池でもある。これは髪が長いほど蓄電効率が高まるために僕の髪は長いのだ。

 

「え、別にそれは構わないけど、どうして急に?」

 

「良かった。では、さっそくいろんなセットを試してみましょう! GVの髪はとても綺麗で艶があって素敵な髪ですから沢山試してみたかったのですよ、楽しみです」

 

「え、ちょっと待ってってば、オウカ。ちょっと落ち着こう、僕は逃げないから落ち着こうよ」

 

了承を得た途端に生き生きし始めてたオウカに引っ張られていく。しかも服やバイザーを外さずにそのまま洗面台の方へと引っ張られていくGV。助けを求めるようにシャオに視線を向けるものの当のシャオは笑顔で視線を返してきた。

 

(悲しいけど、こうなったオウカは止められないんだ。だからGVは出荷よー)

 

(ソンナ‐)

 

その後、オウカに滅茶苦茶髪を弄られた。オウカはだいぶ満足したみたいだが僕は相当疲れた。その後もオウカから髪のセットをしたいというお願いをちょくちょくされるのは御愛嬌である。

 

 

 

*

 

 

 

ズルズルと引っ張られていくGVとオウカをシャオは見送っていた。少しばかり恨めしい視線が向けられてはいたが後でフォローすればいいので問題はない。

 

「相変わらずだなぁ、GVもオウカも」

 

その様子を見守るシャオのまなざしは優しいものであった。シャオ自身いろいろと暗躍をしているがこの場所は数少ない日常を実感する癒しである。だからこそ、わざわざ別の拠点を構えつつも大抵はここに来ている理由でもあった。

 

「さてと、ボクもやり残した仕事を片付けないと」

 

毎回繰り返す度にいつもオウカから借りた部屋へと移動して、設備を起動させる。GVがミッションに赴く際にサポートするための情報を解析する設備を起動させる。

 

「フェザー自体は白。少なくともGVが盗ってきてくれた情報では公的な組織立っての取引はなし。もう一つの方が時間が掛かるのが厄介だよ。まったく、もう少しは隙を見せてくれて欲しいよ」

 

問題はアシモフの方であった。万が一自身のデータが抜かれた時の備えとして蒼き雷霆(アームド・ブルー)によるプロテクトを仕掛けていたのだ。こちらにも同じ能力のGVがいるため解除そのものは可能だったがそれでも解析事態に時間がかかっている。

 

「他でもないボクのためにも出来ることはしないと」

 

今回に限っては時間の猶予がある。無限にとは言わないが余裕があるため、直実に進めていく。

今のGVたちがいる屋敷は何度繰り返した中でも一番居心地がいい。少なくともシャオ自身が惜しみたくなるほどに入り浸っている状況を満喫しているのだ。目的はあるが出来れば自分から崩したくはないと思うほどに。

 

「またとない、とびっきりのイレギュラー……チャンスだから、逃がしはしない」

 

だってちゃんとボクの事を理解してくれたのだから。その事を共感してくれた人が今も頑張っているなら応えたかった。もう二度と最初の轍を踏みたくはない。そう心に秘めて。

 

 

 

それはまだシャオ自身が己が身に宿るセブンスが目覚める前、彼自身はちょっと聡明なだけの少年だった。フェザーに居たのは父が関係者であったからシャオもその縁で参加していた。

 

まだ少年でしかないシャオの主な仕事は雑用ばかりでもあった。でもシャオには誇らしく思っていた。少なくとも誰かを助けることに誇りに思っていたのだ。

 

だがそれは唐突に崩れ去り、シャオは日本の皇都の路地裏で彷徨っていた。幸いにも日が浅いために身なりはまだ汚れきってはいないが浮浪児と指摘されてもおかしくはなかった。

 

「父さん……」

 

とある日の事だった。突如エデンと名乗る能力者の楽園を謳う組織が現れて、何もかも滅茶苦茶に壊していった。今まで虐げられてきたお返しだと言わんばかりに何の関係もない無能力者たちを虐殺し、ライフラインを壊していく。強大な能力者を有するフェザーでも抵抗すらできずにされるがままだった。

 

最悪なことにフェザーでも同調してしまう人が出来てしまったことも事態を加速させた。そう、今までフェザーで保護してきた能力者たちであった。今まで積りに積もった恨みが彼らを駆り立ててしまった。

 

無論、それに反対する人だっていた。シャオの父やシャオ自身がそうであったけれど、止めることは出来なかった。ついには過激派は穏健派であった人たちですら虐殺を始めてしまった。シャオの父親だろうと例外ではない。それでも穏健派の彼らは最後の力を振り絞ってシャオが死なないように希望を託して送り出してくれたのだ。

 

「っぅ!?」

 

だけどシャオはまだ子供である。ある程度の情報は教えられても右も左も分からない状況では上手く動けることではない。父さんが教えてくれたアシモフと言う人の居場所どころか顔すらも知らない状況でその日の食事すらまともに取れない極限状況はシャオから体力を奪っていく。

 

「なんだぁ、こんな場所にガキがうろついてんじゃねえよ。っち、汚ぇじゃねえか!」

 

不運にもふら付いた際に屯っていた暴漢へとぶつかってしまう。

 

「あ、あ……」

 

「丁度いい、このクソガキをボコって気晴らしにしようぜ。」

 

そうやって近づいていく人たちがエデンの能力者たちと重なる、怖くて震えることしか出来ない。暴力を振るわれることも怖いけど、それ以上に父さんたちに託されたことを無駄にしてしまう恐怖が心を支配していく。

 

「……あ、蒼い羽根?」

 

その時だった、突如として降ってきた蒼い天使の羽根が目の前の恐怖を切り払う光景に見惚れていた。

 

「迸れ、蒼き雷霆(アームド・ブルー)!」

 

それがボクとGVの初めての出会い。それがボクの戦いの始まりでもあった。

 

GVが元フェザー所属だと後に知ることになるのだが、何の関係ない彼らを巻き込む罪悪感があった。それでも怪しいはずのボクを手伝ってくれた。

 

もちろんボクもつたないながらも持てるものを、当時統率を失いつつもあったフェザーとのコネクションを使って支援をしてはいた。

 

先に結論を言おう、ボク達は敗けた。原因は未だに良くは分からない。でも失敗したのだけは確かだった。その後のことは知識として残してはあるけれどよくは覚えていない。いや、思い出したくないのが正しいだろう、それほどまでに凄惨なものであった。何時目覚めたのかは分からないが、その過程でボクはセブンスを覚醒させたらしい。

 

「ぅ……夢……? そっかいつの間にか眠っちゃったのか、そんな暇ないのに……奴らを打倒しなきゃ」

 

次の目覚めは路地裏だった。当初はそれにしても妙にリアルで嫌な夢を見たとしか思えず、最初と同じようにGVに助けられて、最初と同じように頑張って、そしてまた失敗した。

 

「ぅぁ……ここは……今までのは夢? いや、あれは夢じゃない。そっか、これがボクのセブンスなんだ……」

 

二度目になれば厭が応にも理解できてしまう。ボクはセブンスに目覚めていて、時間逆行の類なんだと。

 

時間逆行を自覚してからは思っていた以上に苦労の連続でもあった。一番最初の恒例としてGVとの接触のイベントとして不良たちに絡まれるのだが偶に助けが来ない時もあって、答えを初めて知った時の絶望感は今でも忘れられない。

 

それはアメノウキハシでGVが死亡していて、その代わりにアシモフが生存していたのだ。そしてオウカもまた暴漢に襲われて無残な死に方をしていたことも絶望を深めていた。

 

その時の場合はフェザーの一員として身を寄せるのだが居心地は良くはない。当然だろう、同じ組織とは言えどよそ者には変わりはないのだから。更にはアシモフだって曲者だ。誰にでも懐が深いように見えてその実、疑り深いのだ、特にエデンと同じように無能力者と偽っていたボクを見る目は侮蔑と憎悪で彩られていたこともある。

 

それでもいないものはいないとしてどうにか割り切って頑張ったとしても、結局はアシモフの裏切りによって失敗に終わってしまう。偶にフェザーとしてエデンに対抗することもあったが、そのときはどん詰まりになって終わった。

 

時には上手く行ってGVがエデン打倒に成功したけどもその先の未来によって台無しにされてしまったこともあった。

 

その時だろう、ボクが明確な目的を持ち始めたのは。そこからはまた試行錯誤の繰り返しだ。

 

ある程度分かったのは思っていた以上に要因が多すぎることだ。余りにも様々な要素が絡みに絡まっているからか偶に予想だにしないことも起こる。

 

その要因の一つとしてボクがその事を自ら話すことも失敗の要因になるかもしれないと思い始めてから話さないようにするようになってしまった。

 

今回はGVが本当に理解してくれている。でも、何も知らなくてもきっとGVたちには正直に話せば信じてくれるのだろう。そんな確信があった。だから何度繰り返すことになっても彼らと居るのは居心地がいい。

 

 

 

「あともうちょっと、必要な要素は揃ってきているんだ。ここで躓くわけにはいかないんだ」

 

その前にGVから夕食の呼ぶ声が聞こえてくる。丁度良く切りのいいところだったから中断して、GVたちが待っている居間へと向かった。

 

いつも違う髪形(女子向け)の珍妙なGVの姿に思わず腹を抱えて大笑いしたのは余談である。

 

 

 

*

 

 

 

「ジーノ、この様子ならばシアンのミッション参加もポッシブルだろう。彼女も次のミッションから加わってもらう」

 

「それは!? 幾らなんでも早すぎます! シアンちゃんはまだ自衛しか出来ません! 俺は反対します!」

 

「ノープロブレムだ。彼女は私と共に観測者(スポッター)として参加だ。いくら何でもデンジャーな最前線には行かせはしないさ。ミッションのアトモスフィアを直に感じさせるための参加だ」

 

「……了解しました」

 

静かにその時は迫る。誰もが知らずに足跡は刻まれていく。

 




今回はちょっとした日常回とシャオについての掘り下げ

簡単に言えば前作での通常エンドか真エンドかで世界線的なものが変わるサムシング。
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