ガンヴォルト 憑依もの   作:SUMI

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その日、日本は、いや皇神は驚愕に震えた。世界ではセブンスによる脅威が襲い掛かる混沌とした状況の中、日本だけはその脅威を退け安穏を享受させていた国全体を護る結界『神代』が崩壊したのだ。その事実に皇神の上層部は大いに恐怖する。日本内ならばほとんどの敵対勢力は唯一の例外を除いて盤石な皇神を揺るがすことはないだろう。

 

それは国内の話なのだ、今まで外国の悪意から守っていたのが『神代』なのである。故に日本は外の脅威から逃れて内の事に専念することが出来たのだ。

 

その要が今、失われた。これより綴るは偽りの楽園を目指す者の悪意によって行われるは能力者たちへの救済(破滅)

 

それを知る者たちはまだ二人しか知らない。

 

 

 

*

 

 

 

大型自立飛空艇(ドローン)『飛天』内部

 

とある一室にて一人の少年が複数の皇神の兵士たちに包囲されていた。その包囲する兵士たちは全員重装備で身を固めているの対し、少年の方は軽装のパワードアーマーであることと所持する武装が拳銃型のブラスターであることを見ればどちらが追い詰められているのかは一目瞭然だ。

 

「…………ちっ、面倒な」

 

そんな訓練された兵士でも絶望的な状況であるはずなのに、少年の表情に追い詰められた悲壮感はない。それどころか煩わしいと言わんばかりにいら立っていた。

 

「追い詰めたぞ! 子ネズミめ! この『飛天』のコントロールを奪い取り、暴走させたのは貴様の仕業か!」

 

だが包囲していることに慢心しているのか、それでも少年へと脅すように問いかけるのが帰ってきた答えは沈黙だった。しかし、悠然と少年の視線が答えていた。

 

『貴様程度に相手にする時間が勿体ない』

 

圧倒的に有利な状況なのにそんな視線を向けられたならいくら大人でも激高する。故に指揮官から放たれた言葉は一つだけだ。

 

「各員、そのふざけた侵入者を撃ち殺せ!」

 

周りの兵士たちは一斉に少年へと向けられた銃が害意を持って銃弾が放たれる。幾多の銃弾は数瞬後には少年を蹂躙するだろう。

 

「なっ!?」

 

しかし、その銃撃は少年に当ることなくすり抜けていく。紅い独特な揺らめきが少年への攻撃を許さない。誰もが声が出せない沈黙の中に一つ排莢された何かの金属音が響く、その尋常なる様子に包囲していた兵士は理解できずに困惑していた。

 

「ざ、残像っ!? 銃撃が効いていない!?」

 

「疑似電磁結界『フェイクカゲロウ』。こいつがある限り貴様たちが俺に触れることなど出来はしない」

 

そう、包囲されていた少年はアキュラであった。今のアキュラは前回の敗北を糧に新たなる力を手に入れていた。今の『フェイクカゲロウ』もその一つである。

 

「『カゲロウ』だと!? で、電子を操る最強のセブンス『蒼き雷霆(アームド・ブルー)』……ま、まさか貴様は!? ガンヴォルトっ!!?? 馬鹿な、死んだはずだ!?」

 

皇神ではガンヴォルトの悪名知れ渡っていた。皇神に所属する中でも最強と名高い、それこそ上層部でも畏れられ他の能力者よりも厳重に能力を封印されていた程の実力を持つ紫電と相打ちになったテロリスト。今、目の前に現れたのならば自分たちでは太刀打ちできない。

 

「嫌だ……死にたくないよぉ!?」「うわぁぁぁぁ!?」「アイェェェ!!?? ガンヴォルト!? ガンヴォルト、ナンデ!?」

 

その事実を前に、包囲していた皇神の兵士たちは恐慌に堕ち、震えるしか出来なかった。

 

「その名を出すな。幾ら模した紛い物とは言え、あいつと間違われるのは不愉快だ」

 

そんな兵士に興味すら持たずアキュラにはガンヴォルトと見られたことの方が不愉快だった。アキュラにとってガンヴォルトとは倒したかった敵であり、同類と見られると言うのは屈辱に等しいものだった。

 

『アキュラ君。何も言わずに『カゲロウ』だけ見せたら勘違いされるのも無理はないよ』

 

どこから声が響く、けれどアキュラは知っているのか驚きもせずにいる。

 

「……うるさい。ロロ、もう準備は出来ているな? 汎用戦闘シフト、モード『P(プログレッシブ)-ビット』」

 

『もう、アキュラ君は……了解、バトルポット『RoRo(ロロ)』展開!』

 

現れたるは人の頭ほどの球体が一つ、次いで拳大ほどの球体が八つ、アキュラを護るように周囲に漂う。アキュラによって開発された戦闘補助ポットであり、独自の技術による超AIと半永久機関『ABドライブ』による高出力を持ち合わせたアキュラの戦闘を助ける楯でもあり、矛であり。そして長年の経験蓄積によって人らしさを感じさせるほどに成長した信頼するパートナーである。

 

「いけるな? ロロ」

 

『オッケ―だよ! アキュラ君!』

 

「よし……殲滅せよ! ストライクソウ!」

 

『了解! 行っけー! ビットたち!』

 

アキュラの指示を受け、周囲を漂っていたビット達が皇神の兵士たちへと牙を向く。エネルギーを供給され、活性化したそれらはロロにより統制され、効率的に自身の身を牙をして、瞬く間に敵を斬り裂ていく。その様子は真に獲物を狩る獣のようでもあった。

 

「ふん、雑魚が邪魔をするな……」

 

ビットたちがアキュラの下に戻ってきた後に、立っていたのはアキュラ一人だけだった。皇神の兵士は皆、床に沈んでいた。アキュラは一瞥すらせずに部屋から出ていく。アキュラの思考には倒れ伏した兵士のことなど消え去っていた。

 

「ノワ、聞こえるか? 発信機の信号はどうなっている?」

 

『どうにもミチル様の付近にジャミングが仕掛けられたみたいでして、反応がロストしてしましました。申し訳ありません。アキュラ様』

 

なぜアキュラが『飛天』へと潜入しているのはここにミチルが連れ込まれたからである。ほんの数日前に匿名のタレコミがノワの元へと入っていた。それは病弱なミチルを狙っている外国の能力者による勢力がいると言う情報が流れ込んできたのだ。

 

それに怪しいものを両者とも感じてはいたが大切な妹でもあるミチルを狙うと言うのは見過ごせないものである。ノワもアキュラも対策はしていたのだが相手が上手だったのか、警備をすり抜けて攫われるのを許してしまった。

 

当然のごとくアキュラは憤慨し、ミチルを取り返すために攫った相手を跡形もなく滅殺するために『飛天』へと突入したのである。

 

「分かった、反応が途切れた地点のルートデータを転送してくれ、今から追跡する」

 

『了解しました。御武運を』

 

そのまま送信されて地図によるナビゲートを確認した後に、アキュラは走る――――否、発射した。

 

これこそ足や上背中を覆う様に増設されたスラスターによる加速こそ新たに改修された『ヴァイスティーガー』の最大の機能。

 

かつて、皇神に属する能力者より採取したセブンス、残光(ライトスピード)の光子を操る特性によって生み出される推進力と蒼き雷霆(アームド・ブルー)によるエネルギー供給により大幅な軽量化と機動力を得て実現されたそれはもはや一種の弾丸と称したほうが良いほどだ。この半年間でノワより鍛えられた空間認識能力と姿勢制御により空中では同等の、狭所ならばガンヴォルトを上回るほどの機動力を得ることに成功したのだ。

 

床や壁、果ては天井すらも足場として跳ね回り、駆けていく様はまさに縦横無尽。

 

『飛天』にいる兵士は先ほど倒したのがすべてではないし、まだ大量の防衛兵器も配備されている。だが、今の大幅な改修ををしたアキュラには皇神の兵隊や防衛兵器では追いつけはしない。そんな雑兵には関心すら向けずにひたすらに駆け抜けていく。想うは大切な妹の無事のみ。

 

「どこだ、どこにいるんだ。ミチル……無事でいてくれ!」

 

大切な妹を救うためにアキュラは奔る。新たな雷光の翼を得て、運命の渦中へと突き進んでいく。

 

 

 

*

 

 

 

ほぼ同時刻、アキュラが暴走した『飛天』へと突入する直後、アキュラたちとは別の勢力の三人が近くのビルの屋上で行動していた。

 

フェザーのチームシープスである。シアンもジーノやGVと同じように蒼いフェザーの制服を纏い、アシモフと同行していた。

 

今のシアンではアシモフ達についていくだけでも大変だがそれでもジーノたちの手伝いもあり、頑張って着いてきた

 

「ジーノさん、ありがとうございます」

 

「別に構わねえよ。仲間のフォローも任務の内だからな。特に今回はシアンちゃんは新兵だからな。先輩としてフォローするのが筋ってもんだ。だから気にすんじゃねえ」

 

『こちらモニカ。シープス各員に連絡。解析班から入電、当初の予想通り『飛天』が暴走を止めなかったら皇神や私たちフェザーどころか大勢の一般人にまで被害が出ると予測されたわ』

 

シープスが『飛天』を追っているのはこのまま暴走を続けた先にフェザー自体に被害が及ぶと予測されたためだ。軌道を反らすにしろすぐに撃墜するにしてもまずは情報が足りないためにまずは現地へと偵察に来たのである。

 

「分かった、モニカ君、『飛天』内部のデータのゲットは進行はどうなっている?」

 

『ごめんなさい、解析班が『飛天』にハッキングを仕掛けてはいるけど見たことのない強固なプロテクトが掛けれられていて上手く行ってないみたい』

 

その途中でバックアップから外部から再ハッキングを仕掛けてはいるがその成果は芳しくはない。ただ、アシモフにはその事に何か心当たりがあった。

 

「もしかしたら、此方にも潜入してきた潜入者(イントルーダー)が関係しているかもしれないな」

 

ジーノもシアンもアシモフからの言葉に驚いていた。フェザーにとっても二人にとっても忘れがたいことだ。だがアシモフから関わっているとなるとは思ってはいなかった。

 

「リーダー、それはどういう根拠があるんですか?」

 

「その証拠にあの一件からの皇神の行動が全くナッシングのだよ。余りにもおかし過ぎる。そして、今回の『飛天』のハッキングによる暴走。最後にあの潜入者(イントルーダー)のセブンス。これらの関係から皇神とは一切関係のない潜入者(イントルーダー)が所属する第三勢力の可能性が高いと私は踏んでいる」

 

確かに筋は通っているがどこかおかしいのを感じたのか、シアンはともかくジーノは流石にそれでは断定のしすぎなのではと疑問に感じていた。

 

その直後、彼らの近くに何かが降り立った。それは人二人分の太さを持つ機械が降り立つと同時に変形し、機体下部に人間を両断できるほどの巨大な丸鋸を持った、少なくともこの日本では見たことない機械でもあった。シアンが動く前に既にアシモフ達は行動してた。

 

「そらよっと!」

 

ジーノが先にグレネードを全体を支える支柱の一本へと打ち込んだ。幾ら装甲を纏って居ようと所詮は量産型であるためグレネードの爆発に耐えきれず支柱は壊れ、バランスを崩す。

 

「パニッシュだ!」

 

その隙をアシモフは見逃さずに腰だめに構えた対戦車アンチマテリアルライフル『E.A.T.A』から発射された徹甲弾が敵を中心を余さず貫き、喰い散らす。一瞬後の爆発の後、無残な残骸が散らばった。その鮮やかな手並みにシアンもモルフォも感心するしかなかった。

 

「こいつは見たことねえ兵器だな……」

 

その残骸を調べていたジーノも自分たちを狙う様に展開された初見の兵器を見れば納得するしかない。自分たちの知らない第三勢力がいると言うことが理解できる。流石にいつまでも疑問を抱えておけるほど甘くはない。故に今は疑問を胸の内にしまった。

 

「一刻の猶予もない。これより作戦を説明する。ジーノ、先ほどモニカ君から転送されてルートより『飛天』内部に潜入、そこから動力部の破壊だ。私とシアンはその援護に入る。ここからタイムとの勝負だ。各員、作戦開始!」

 

「「了解!」」

 

彼らもまた夜の街を駆ける。アキュラと同じく運命の渦中へと。

 

 

 

*

 

 

 

最後の主役たるGVは今、皇神が誇っていた国防結界『神代』の中枢が置かれていた場所の近辺にてパンテーラを除いた三人の、疑似宝剣によって強化されたエデンが誇る能力者たちを相手に対峙していた。

 

鉄を自在に操る『メタリカ』ジブリール。

 

変幻自在の髪を繰る『タングルヘア』ニケー。

 

妖艶な水晶を生み出す『プリズム』ガウリ。

 

その三人がエデンの盟主たるパンテーラへの兇刃を許しはせず、パンテーラを護るようにGVの前へ立ちふさがっていた。

 

状況を説明すればGVがパンテーラを討つために『神代』の中枢へと待ち伏せていたのだ。そう、パンテーラが『神代』を解除し、油断したところを強襲するまではよかったのだ。予想外としてパンテーラの側近であるG(グリモワルド)7の大半が護衛していなければあっけなく討ち取れただろう。結果は手傷を負わせることしか出来なかった。

 

「ハハハハ! まさか少年よ! 君が生きていると驚いたよ! だが我が愛するG7がいる限りワタシに少年の刃は届かない!」

 

その護衛の一人として控えている女性、ニケーがいることでGVは理解した。彼女は占い師である。おそらく、事前に占いから不幸であることを示した結果、パンテーラは護衛として彼女たちを連れてきたのだろう。そのことに酷くイラついてた。

 

「パンテーラ! 貴様たちにシアンを好きにさせない!」

 

「ほう? どうやらとても耳がいいみたいだね。ワタシの狙いが何なのかを知っているみたいだ。どうやって知ったのか興味を覚えるよ」

 

「そんな事はどうでもいい! ただシアンを皇神と同じように道具扱いするならば、僕は許しはしない!」

 

雷撃を浴びせようとダートリーダーを構えるがそれを易々と許すほどG7は甘くはなく、彼らによって阻まれる。

 

「はっ、オレ様を無視してんじゃねぇ!」

 

「くっ! 邪魔だ!」

 

「少年よ。一度心ゆくまで語り愛いたくはあるが今は忙しいのでね。これよりあまねく世界に我が愛を広めなければならないのでね。それまでの間、我が同志たちの相手をしてもらおう。では、愛デュー!」

 

そのままGVが追いかけようとするがそれを対峙する三人が許しはしない。灰色に染められた大量の髪がGVの行く手を阻む、カゲロウで無理矢理突破することも考えたが余りにも髪の量が多すぎるために通り抜けることは出来ない。

 

「くそっ!! お前たちに構っている暇はない。そこを退けぇ!」

 

けれど三人とも退く気配はない。状況は悪くなっていく。ここを中心として人ひとり分の太さがある灰色の水晶の柱が乱立し、それを自在に動く髪が絡まっていき補強していく。瞬く間に大量の柱と髪が巡らされたフィールドへと変貌していた。

 

「そうは行きません、アナタは同士パンテーラの未来は阻む悪魔。そんな悪魔に同士パンテーラを傷つけさせはしません」

 

「この世は地獄、時代は戦国。エデンが目指すは俺らの天国。それを邪魔するお前はAIRHEAD(おろかもの)

 

「俺様を見下すような目で見やがって、八つ裂きにしてやる!」

 

フィールドは相手によって整えられたホーム。対峙するは三人の模造宝剣によって強化された能力者。倒すべき者は既に遠く逃げられた。状況は最悪の一言に尽きる。けれどGVは何一つ諦める積りはない。

 

大事な人が笑っていられる場所を掴むために己がセブンスを隆起させる。まずは目の前に立ち塞がる邪魔者を薙ぎ払う!

 

「迸れ、蒼き雷霆よ(アームド・ブルー)!! 如何なる障害を貫き通す、震天の(いかずち)となれ!」

 

 

 




暗殺すべき相手がいつどこで何を目的としてどう油断するなら狙わない訳ないよね。

そして逆に倒しに来ているんだ、全力でカウンターされてもおかしくはないよね。
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