古来より戦いにおいて最も重要な要素とは何か? と問われれば多くの人がこう答えるだろう。
それは数であると。要は幾ら質が良かろうとよっぽど突き抜けていなければ大量の数の前には飲み込まれてしまう。
対峙しているG7との戦いはそれを如実に表していた。
「くっ! 厄介な!」
目の前を自在に飛び回るジブリール。滑らかに水晶の柱を滑り跳ね回るガウリ。遠くで自身の髪の操作に専念しているニケーを相手に僕は一方的な防戦を強いられていた。
正直に言ってこの三人のセブンスの連携があまりにも厄介すぎる。一秒たりとも止まっていることすら出来なかった。
「そらそらそらそらぁ!! どうした? 俺様たちをぶっ倒すって大口叩きながら逃げ回っているなんて情けねぇ野郎だな!」
そう言いながらも大量にストックしていた血液から次々と暗器を生成し、様々な機動で飛ばしてくるジブリール。それを此方も水晶の柱を蹴り跳ねる機動で回避し、時に生成される前の血液を雷撃鱗で焼き払う。その隙を狙いダートを打とうするが。
「俺らの理想を否定する。お前の思考・意味不明。さっさと終わるがお前のミッション! Yo!」
同じく水晶の柱を蹴り跳ねながら両ひざに装着された水晶のブレードで狙うガウリ。雷撃麟で滞空することにより移動の速度を緩めることでお互いの交差を透かす。お互い同時に着地するが反撃には移らずにすぐさまその場から退避する。
「ソうはさせません。貫ぬきなさい!」
その直後に僕が着地していた地面から髪で出来た螺旋が突き出た。あの場に留まれば貫かれただろう。自身の身体を髪で支え、高い所から動かずに二人のサポートに専念するニケー。
力量で言うなら今の三人のセブンスはそこまで強くはない。今までに戦った皇神の七宝剣の方が強いだろう。問題はそこではない。こうして連携して襲い掛かられるのがとても厄介である。
「時間がない、このままだとパンテーラが!」
それだけならまだ対処は出来る。しかし、それだと時間がかかり過ぎる。この後にだってまだ敵は残っている。パンテーラだってまだ健在であるため、ある程度の余力は残していなければパンテーラを止めることが出来ない。
「HEH! よそ見は厳禁、俺のダンスを
そのことに気を取られ過ぎていたのか背後へと回り込んできたガウリの蹴撃を許してしまう。カゲロウで回避を、いや周りに浮かぶ血が包囲しようとしているため留まるよりもこの場を離脱するために敢えて防御の姿勢を取る。
「くっ!!」
両手を盾にプロテクトアーマーの硬度を上げ、シールドの出力を上げ。
「悪魔よ、散りなさい!」
「がっ!?」
ニケーの髪により背後から吹き飛ばされてた。ガウリからの攻撃は勢いのまま、咄嗟にカゲロウですり抜けるが正面にある柱へと打ち付けられる。
「ぐっ、しまっ!?」
衝撃でバイザーに罅が入り、呼吸が止まり、意識が一瞬飛ぶ。その隙を彼らが見逃すはずもなく。
「無様だな! そのまま、逝っちまえ!」
床へと倒れる前に全身が入り切るほどの拷問具、アイアンメイデンが僕へと襲い掛かる。
「はぁ!!」
完全に閉じ込められる寸前に周囲に雷撃を巡らしてアイアンメイデンを破壊するが流石に無傷とは行かずに体の各所のアーマーは破損し、そこからいくつもの裂傷がGVへと刻まれていた。三人を正面に集っており、奇しくも最初に対峙した時と同じ状況に戻っていた。
「少しだけ、お前たちに聞きたい事がある。パンテーラがモルフォを、
ただ最初と違うのは僕はふと頭に過ったことをニケーたちに問いかけていた。ただ、ジブリールだけはどうでもいいのか警戒しているのかは分からないが問いかけには答えていなかった。
「はイ、その通りデす。かの力は同士パンテーラが望む楽園への道しるべ。私たちの未来へと導く光なのデす」
「エデンは能力者たちによる楽園だと謳っているはずなのは間違いないな?」
「Yes! エデンは俺たちの
「なら、お前たちはシアンからモルフォを無理矢理奪い取ろうとする? 能力者が全員がそうだとしたら、仲間になる可能性だってあったはずだ。なのにシアンへとお前たちは説得すらしようといない。何故だ!」
正史とは違い、阻止するつもりでいるがシアンにはエデンの接触すらなかった。それは最初から仲間に引き入れるつもりはない。そういう風にしか見えなかった。
「確かにその選択はあっタでしょう。ですが、星が語りかけているのです。あの妖精は同士を狂わせ悪魔を作り出す存在であると。現にアナタのような無軌道で無秩序な、これからパンテーラが作ろうとする秩序を邪魔する悪魔。妖精によって狂わされた存在がアナタです。だからこそ、妖精はただの力として扱わなければならないのです」
ニケーの言葉に心のどこかで何かが切れた音がした気がした。結局の所、理想だとかなんだとか語ってはいるがそれはニケー達を迫害していた一般人と何も変わらない。いや、なまじ力を持っているために余計に性質が悪い。
「んなもんどうでもいいんだよ。今まで俺たちから奪ってきたんだ。逆にゴミどもから奪っても問題ないだろ」
「そうか……」
それ以上にシアンの事を知ろうともせずに、危険であるとか有用であるとかそんな理由で道具のように扱おうするエデンの連中に、怒りが沸き起こる。そして、阻止できずに許そうとしている自分にも。
「腹が立つ! エデンがやろうとしていることも! 手こずっている僕自身にも! すぐに終わらせる!」
もう、出し惜しみはなしだ。今は全力で目の前の三人を倒す事に集中する。体の中の電流を一気に隆起し、イメージを一気に組み上げる。それはもう一人の
「縛り取れ! ヴォルティックチェーン!!」
虚空より現れしは幾条もの電子より構成された鎖。突如現れた鎖は三人へと抵抗する間すら与えずに拘束し、乱立する柱へその身を絡ませていく。これよりはお前たちが整えたこのフィールドこそが必殺の武器へとなる。
「なにぃ!? くそっ! 放せこの変態野郎!」
鎖を掴み、遠慮すらなく思いっきり引きずり込む! 周りには水晶の柱が乱立している中、敢えて複雑に絡ませてある鎖たちをだ。さて、ここで単純な問題だ。いくつもの乱雑に建てられた柱に何本もの糸を絡ませたのを一気に引っ張ればどうなると思う?
「受け取れぇ! お前たちが積み上げたからこそ出来たこの技を! 跳ね踊れ!!」
答えは単純だ。お互いがお互いに弾き合うピンボール。いくら耐久力があろうとも立て直しすら許さないほどに強烈なほどに不規則にかき回す。そしてこの鎖は電子で組み上げられ、イメージによって創造された鎖。鎖同士が絡むことはない。三人が協力して造り上げたが故にお互いは強く早く跳ね回っていく。
「ぐわああああああああ!?」「きゃああああああああ!?」「OOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOh!?」
三人とも脱出しようとしても、予想すらつかない不規則な動きと鎖自身に伝わる雷撃が抵抗すら赦さない。その身で造り上げた柱たちを打つたびに粉砕する。全ての柱が壊れ、もうぶつかるものがなく程に跳ね回った後、役目を終え、電子へと還っていく。最後に此方へと向かっていく三人に対して両手を腰だめに構え、トドメの一撃を放つ。
ただ、その直前にバイザー越しなのにジブリールと目が合った気がした。
「薙ぎ払え! スパークカリバァァァァ!」
電子によって形成させた雷撃の剣が纏めて彼らを一文字へと切り裂く。引き込んだ勢いは止まらず、三人とも後方へと散らばっていく。ただ、劣化故にフィードバックの影響は少ないのか知識にあるテンジアンの初戦と同じように劣化宝剣が崩壊するだけで三人は意識を失っているだけで済んでしまっている。
『GV! 聞こえている? このままじゃ、パンテーラがシアンと接触しちゃう! 急いで!』
「分かった。すぐに行く」
トドメを刺す時間すらも惜しい。意識を失ったからか檻のように立ちふさがっていた髪は消え失せている。彼らには振り返らずに駆けだした。
そして、この時に一人だけトドメを刺しておかなかったことを後悔するのは後の事になるだろう。
駆けだした直後にに思わぬところから現れる。それは猛禽類を模したようなフォルムを持ったそれは皇神が極秘裏に開発していていた飛行型自立無人戦車。
「フェイザント……確かに複数機あったはずだが何故?」
どうしてかは分からない。ジブリールたちへの迎えなのか、それとも急遽援護に来たのかは知らないが僕には都合がいい
「だが丁度いい! このまま足として使わせてもらう!」
フェイザントのAIが僕を認識する前にすぐに機体上部に乗り込み、
直ぐに機体を掌握したフェイザントを繰り、未だ混乱の中にある中を飛ぶ。ただ、ひたすらに真っ直ぐに。
『GV! 大変だ! アキュラが飛天のハッキングの解除に成功したけどこのままじゃ、皇神の超高層ビルに衝突する! 近くにいるシアンにだって被害が及びかねない!』
「了解、これから飛天を外から押し返す」
『っ、駄目だよGV! あれは
シャオが脳裏に過ったのは飛天を浮かすためにGVが飛天そのものを雷撃で包みこむことによる超電導磁気浮上によって直撃コースからずらす光景。今のGVにはG7との消耗も相まって到底出来ることではない。出来たとしてもそれは確実に命を縮める代償を払わなければならない。それはシャオには許容できることではない。
「大丈夫だ、今からやるのはそうじゃない。横から押すだけだ。今乗っているフェイザントを直接飛天にぶつければ横にずらせるはずだ」
『それなら……いや、駄目だ! フェイザントをそのままをぶつけても飛天の機動が変わるほど押し出せない!』
それでもまだ足りない。確かにフェイザントの推力を最大にしてぶつけても質量があまりにも違い過ぎる。ある程度は押し出すことは出来ても直撃は免れない。
「出来るさ。威力が足りなければ継ぎ足せばいい! 迸れ!
それはフェイザントだけの話だ。GVが、無限の可能性を持つ
弾丸に電磁場を纏わせることにより弾道を制御する。それは武器として使用しているダートリーダーにも使われている技術である。負担はあるが全てを自力で操作するならばフェイザントほどの巨大なものであろうとも弾丸として扱える。
その意志に応えるのかフェイザント自身も静かにエンジンが唸る。まるで皇神を護るために製造されたことに対する誇りのように。
『データ算出完了、送信するよ!』
「天駆ける鋼の猛禽よ! 地に落ちる厄災を押し返せ!」
シャオからのデータの補正を受け、フェイザントが射出される。蒼い雷を纏い真夜中を飛ぶ姿は真に流星そのもの。
自身の持つ質量、
その身を散らした威力を持って、巨大な質量を持った飛天を動かした。
これにより飛天に関する事件は大方片付いただろう。しかし、未だ侵略者は健在。夜はまだ明けてはいない。
三人やったことの捕捉、ようはハンマー投げのようにぶん回すのとチェーンデスマッチのように相手を無理やり引き寄せてから一刀両断みたいな感じです。
ここまでやったらもう宝剣は再利用できないほどに粉砕されていると思う。