皆様おはようございます。
GジェネDSでひたすら敵機を捕獲して分解しているウルトラ長男です。
ヒャッハー! ガンキャノンは分解だー!
ヒャッハー! ガトー専用ゲルググも分解だー!
そんな事ばっかりしてるせいで全然話が進みません。
これも全部マルフォイってやつのせいなんだフォイ。
あ、それとロンがいないから3年目にシリウス来ないんじゃね?という意見がありましたが、その辺は無問題です。
ロンがいようがいまいが旅行のくじを当てたのはアーサーさんですのでとりあえず新聞には載ります。
で、スキャバーズはウィーズリー家のペットなのでこの写真に映ります。
幕間 悪しき誘惑
――もうたくさんだ!
マグノリア・クレセント通りにある低い石垣に座りながら、ハリーは怒りで顔を赤くし、自らの鞄を漁っていた。
彼がこんなところで鞄を漁っているのには勿論理由がある。
ホグワーツが休みになる夏休みの間、彼は親戚であるダーズリー一家の元で暮らしているのだがこの一家は決してハリーにとって心休まる良い親戚とは言い難い存在だった。
彼らはとにかく『普通』を好み、そして魔法というものを毛嫌いしている。ハリーもその例外ではない。
ハリーは彼らから誕生日を祝ってもらった事は一度としてないし、プレゼントらしいプレゼントも受け取った覚えがない。
クリスマスにケーキを食べさせてもらった事もないし、それどころか優しくされた記憶すら皆無だ。
それだけならまだしも、彼らはハリーの両親すら侮辱した。
今回は特に酷く、マージ・ダーズリーというダーズリーおじさんの妹が訪れ、ハリーの両親をごく潰しだの出来損ないだのと、ハリーの目の前で喚き立てたのだ。
これにハリーは遂に我慢の限界を迎えてマージに魔法を使ってしまい、こうして感情に任せて出てきてしまったのである。
だが、出てきたはよかったが、その先に行くべき場所がハリーにはなかった。
マグルの金を一文も持たない状態でどうやってホグワーツが開くまでの数ヶ月を過ごせばいいのだろう。
いや、そもそもマグル相手に魔法を使った自分がホグワーツに行けるのだろうか?
それどころかこのままではマグルの警察に見付かって職質された挙句強引にダーズリー家に戻されるのがオチだ。
それだけは御免だと考えたハリーはこうして透明マントを探しているのである。
……きっと今頃、ウィーズリー家はエジプトで楽しく過ごしている事だろう。
日刊預言者新聞にはウィーズリー家が『日刊預言者新聞・ガリオンくじグランプリ』を当てた事が書かれていた。
アーサー氏は寂しそうな笑みを浮かべながら『この旅行で少しでも息子の心が楽になればいいと思っています』と語っていたのをよく覚えている。
長身で禿げたウィーズリー氏に小柄で丸っこいウィーズリー夫人。
その息子達に、親友であるロナルド・ウィーズリー。その肩にはスキャバーズも乗っていた。
彼等はハリーにとって理想の家族であった。
そこに自分がいれば……と何度妄想した事だろう。
だが実際に自分が置かれた境遇は、そんなものとは程遠い惨めなものだ。
ふと、唐突にハリーは顔をあげ、周囲を見渡した。
何か視線のようなものを感じたからだ。
杖の先に光を灯し、視線の方向を凝視する。
「……!」
そこにいたのは黒い、得体の知れない何かであった。
不気味に眼をギラつかせた、大きな犬のような物体だ。
ハリーはその姿が恐ろしくなり、無意識のうちに後ずさりをする。
だがその瞬間、背後から透き通るような声が聞こえ、ハリーの事を呼びとめた。
「こんな所で何をしている、ハリー・ポッター」
少女の声だ。それも自分の事を知っている。
まさか、と思って後ろを見ればそこには案の定、自分のよく知る魔法界の住人が立っていた。
月の光を反射して淡く輝く黄金の髪に、妖しい魅力を持つ金色の瞳。
染み一つない白い、透き通るような肌。手足はスラリと長く、腰もくびれている。
胸が小さいという唯一の欠点こそあるものの、その姿は紛れも無く、ハリーの知る限り最上の『美』を誇るだろう。
服装はマグル界に合わせているのか、リボンタイ付きの白い2枚袖のブラウスと、これまた穢れのない純白のシフォンロングスカートを着こなしていた。
これならば例えバーノンおじさんが見たとしても魔法使いとは思わないだろう。
「べ、ベレスフォード! 君こそ何でこんな所に!」
「……貴様、自分が座っている場所をよく見ろ」
ハリーの問いに対し、しかしミラベルは呆れたように言い返す。
座っている場所だって? そんなのマグノリア・クレセント通りの石垣に決まっているではないか。
すぐ近くには明らかに不自然なほどに立派な屋敷があり、表札には『ベレスフォード』と書かれているが何もおかしい所はない。
「…………」
そこまで考えて、ハリーはぎょっとした。
もう一度まじまじと、自分が座っている石垣の近くにある屋敷を凝視する。
そこには確かに、見間違いではなく『ベレスフォード』と書かれている。
そう、ハリーはあろう事かベレスフォード家の別荘の前に腰をかけていたのだ。
「理解したか? ここは私の屋敷だ」
ハリーは無言でコクコクと頷く。
まさか適当に腰をかけた場所が彼女の屋敷だとは想像すらしなかった。
ハリーはゆっくりと立ち上がりながら、思い出したように先程の黒い物体があった場所へ目をむける。
しかし、そこにはもう何もいなかった。
「何を見ている?」
「さっきまでそこに、何か黒い物がいたんだ」
ミラベルは一度、ハリーの指差す方向へと目を向けるが、すぐに興味なさそうに視線を外した。
そして横目でハリーの事を見る。
「で、何故貴様がここにいる? 貴様の家は4番地と聞いたが」
「……家出したんだ。もうあそこには戻りたくない」
「ほう?」
こちらには興味を示したようで、ミラベルの口元が笑みの形に吊りあがる。
そして何を思ったか、屋敷の鍵を開けて門を全開にした。
「何やら事情がありそうだな……まあ、こんな所で立ち話も何だ。
入るがいい。茶くらいなら出させるぞ」
一瞬その誘いに迷いを見せたハリーだったが、すぐにミラベルの後に続いて屋敷の中へと足を踏み入れた。
どのみち今は頼れる相手もいないし、行くべき場所もない。
なら言葉に甘えておくのが賢い選択だと判断したのだ。
「うわ……あ」
屋敷の中に入ると、ハリーはその広大さに驚かされた。
外から見ても大きな屋敷だったが、中は更に広い。
かつてウィーズリー家に入った時も思った事だが、魔法使いの家というのは外観と比べて中が広くなっているらしい。
赤い天井に、一面を埋め尽くす白い壁。床はピカピカに磨かれた大理石のような素材で、その上に真紅の絨毯が敷かれている。
柱や窓の近くには剣を携えた白銀の西洋甲冑がいくつも飾られており、今すぐにでも動き出しそうだ。
大広間には赤いテーブルクロスを付けたテーブルが配置されており、その上で蝋燭の灯りがユラユラと揺れている。
ホグワーツ城にこそ及ばないものの、それは紛れも無く屋敷というよりは城に近い外見であった。
だが不思議な事に、こんなに広い屋敷だというのに人っこ一人見当たらない。
「あの……ベレスフォードのお父さんやお母さんは?」
「本邸にいる。ここは父が酔狂で建てた別荘だ」
「これが別荘……」
どう見ても酔狂で建てるサイズの家ではないのだが、これを見るにやはりベレスフォード家というのは相当な上流階級なのだろう。
ミラベルは大広間にある椅子に腰かけると、その向かい側を指差して言う。
「そこに座れ、ポッター」
「は、はい!」
何故か思わず敬語で返事し、慌てたように椅子に座る。
その様子を見届けてからミラベルが指を鳴らす。
すると一体どこから現れたのか、ミラベルのすぐ後ろに仮面を付けた男が現れた。
黒い執事服を着ている事から執事だとわかるが、しかし不気味な男だ。
彼は数秒、ハリーの方を見ていたが仮面の上からではその表情は読み取れない。
「紹介しよう。私専属の執事で、名を……セレヴスという」
「…………」
「貴様の事だぞ、セレヴス」
「! は、はっ! 失礼しました」
セレヴスと呼ばれた執事は最初、まるで自分の名前ではないかのようにキョトンとしていたが、二度目に呼ばれて慌てたように返事をする。
ミラベルはそんな彼の姿に溜息をつき、とりあえず呼び寄せた理由を話す事にした。
といっても、大した用事ではなくただの雑用であるわけだが。
「二人分の紅茶を用意しろ」
「かしこまりました、お嬢様」
うやうやしく一礼をすると、セレヴスはその場から搔き消える。
それは『姿くらまし』という魔法であるわけだが、ハリーはその事を知らない。
ただ不思議そうに彼が消えた所を見ているだけだ。
「『姿くらまし』の魔法だ。離れた場所へと一瞬で移動する事が出来る。……ま、多少の改良は加えているがな」
「改良って?」
「いい質問だポッター。本来の『姿くらまし』は移動の際に音を立てるのだ。
だがそれでは優雅とは言い難い。そこで私は『姿くらまし』をしても音が出ないようにした」
改良した、などと彼女は当たり前のように言っているが、それがとんでも無い事であるのはハリーにもわかる。
しかもハリーの知る限り彼女自身も1年の頃からこの魔法を使用していた。
つまりあの当時ですでに魔法の改良を行っていたという事だ。
驚きを露にするハリーへ、機嫌がよさそうにミラベルが話す。
「で、何故貴様は家出などしたのだ? 夏休みが終わるまでは後2週間あるぞ」
「それは……」
ハリーは言うか言うまいかで悩み、口を噤んだ。
本当に彼女に言ってしまっていいのだろうか?
スリザリンの中でも特に危険度の高いこのミラベルに打ち明けてしまってよいのだろうか?
そう悩むも、彼女の金の眼を見ていると警戒心が薄らいでいくのに気が付いた。
この少女に全てを委ね、何もかもをぶちまけてしまいたい衝動に駆られた。
いや、そうでなくてもハリーは誰かに話してしまいたかったのだ。この怒りと、そして不安を。
聞いて欲しいと、そうどこかで願っていたのだ。
――気付けば、全てを語っていた。
まるで早口言葉のように、ミラベルが本当に聞いているのかどうかすら確認せず矢継ぎ早に語る。
ダーズリー家への怒り、両親を侮辱された悔しさ、己の不幸への憤り。
まるで壊れた蛇口のように止め処なく、感情が言葉となって垂れ流されていくのをミラベルは愉快そうに眺める。
その途中、先ほどの執事が紅茶を持ってきたが、味は微妙だった。どうやらこの執事、紅茶を淹れるのはあまり上手くないらしく、ミラベルは「1年経っても下手だな」とぼやいていた。
やがてハリーが全ての感情を吐き出し、ようやく一息ついたところでミラベルが口を開く。
「なるほどな。……ポッター、それは貴様が正しい」
「え? そ、そうかな?」
ミラベルからの肯定に、ハリーの顔が綻ぶ。
こんな時肯定してくれる相手というのは有り難い存在だ。例えばこれがハーマイオニーなら間違いなく「ハリー! 貴方なんてことを! 未成年の魔法使用は固く禁じられているのよ!」などとキーキー喚いた事だろう。
「無能の害虫共が身の丈を弁えず囀る姿ほど目障りな物はない。
そいつらは貴様の両親を出来損ないと言ったらしいが、本当の出来損ないはそいつらの方だよ」
言いながらミラベルは、先ほど「不味い」と評した紅茶をもう一口飲む。
こうして改めて見ると、そうした所作の一つをとっても洗練されており、優雅という言葉が相応しい。
性格こそ最悪だが、その外見はホグワーツで一番見眼麗しい少女である事は周知の事実なのだ。
出会った時こそまだ11歳で異性への関心が薄かったが、もうハリーも13歳。
そろそろ異性への興味が芽生える頃で、ミラベルの動作に不思議と眼を奪われている自分に気付いていた。
「貴様の怒りは自らと両親の誇りを守るという点において正当なものであるし、その俗物達に関しても同情の余地はない。
ただ一つ、貴様の失敗を挙げるならそれは手緩すぎる、という事だけだ」
「て、手緩いだって? 魔法を使うのがかい?」
「ああ、全くもって温い。貴様は連中を徹底的に痛めつけるべきだった」
ティーカップをテーブルに置き、ミラベルは薄く笑う。
上品な笑みであるが、その顔には隠しようの無い……いや、元より隠す気すらない残忍さが浮かんでいた。
「豚は躾けるべきだ、ハリー・ポッター。どちらの力が上か教育し、自分達が家畜に過ぎない事を教え込み、従順にする。貴様にはそれが出来るはずだ」
「い、いくら何でもそんな事は……一応、今まで育ててくれた人達だし……」
しどろもどろに言うハリーへ、しかしミラベルはクスリと嗤う。
「本当にそう思うか?」
「え?」
「本当に貴様はそんな恩義を感じているのかと聞いているのだ」
グサリと、痛い所を突かれてハリーは言葉を詰まらせた。
そう、そうなのだ。ミラベルの言う通りだ。
ハリーはダーズリー家に恩義などまるで感じてはいない。いつだって虐げられてきた彼がそんな感情を持ち得るはずがないのだ。
その沈黙を答えと取ったのか、ミラベルは更に続ける。
「『本当は魔法の力で思う存分叩きのめしたい』」
「!?」
「『今まで虐げられた分、殴り返してやりたい』、『自分がやられたように、連中に粗末な食事を与え、その目の前で豪勢な食事を楽しみたい』、『気に入らない事がある度に、豚をその怒りの捌け口にしてしまいたい』……フフ、どれも正しい感情だぞ、ハリー・ポッター。貴様にはそれを成す権利と力がある」
ミラベルの言葉の一つ一つがハリーの心を突き刺し、危険な甘さを心に染み込ませて行く。
彼女の言葉を違う、と否定する事は出来なかった。
一度も想像しなかった、と言えば嘘になってしまうし、少しその光景を頭に浮かべれば優越感と不思議な満足感が頭を侵食していった。
「で、でも魔法はそんな事に使う力じゃ……」
「何故だ? それは貴様が努力して身に付けた貴様の力だ。自分の物を振るって一体何が悪い?」
「でも、でも、それは悪い事だって……」
「フフ、気取るなポッター。貴様は私と同じだ。
他者より優れた力で、他者より高みに立ちたいと考えている。
皆の羨望の眼差しを受けて、優越感に溺れたいと望んでいる。……そうだろう?」
ミラベルの言葉は一つ一つが媚薬のような、危険な甘さを孕んでいた。
これが悪しき誘いである事はわかっている。道徳に反する事だと理解は出来る。
だが頭が理解しても心が動かない。
まるで温かい風呂に長時間入ってのぼせてしまったように、ハリーの思考は徐々に狂わされていた。
「気持ちいいぞポッター、苦労して身に付けた力で他者を思うように踏み躙るのはな。
無知な偽善者共には決して理解出来ない真の快楽がそこにはある。
どんな極上の美酒を飲もうと決して味わえない格別の陶酔感だ」
「で、でも……僕は……」
「頭ではなく心に問いかけろ、ポッター。下らん倫理や道徳を捨てた純粋な心こそが本当の望みを教えてくれる」
ミラベルが身を乗り出し、ハリーの緑の眼と彼女の金の眼が互いを映す。
もうハリーは眼を外す事も出来ない。
ミラベルの桜色の唇が動く度、彼女の匂いが鼻腔をくすぐる度にハリーの理性が奪われ、フワフワとした気持ちになっていく。
これは逆らえない、とハリーは思った。抗いたいという欲求すら沸きあがらなかった。
「さあ、言うがいい、貴様の望みを。
なあに、魔法界の法律の事は気にするな。私がどうにかしてやる」
「きみ、が……?」
「ああ、そうだ。他の誰が理解せずとも私が貴様を理解してやろう。支えてやろう。
貴様は何も心配する必要などないのだ。ただ、心の赴くままに、私に全てを委ねるといい」
ミラベルは包むようにハリーの頬に触れ、まるで慈しむような笑みを浮かべる。
その際、身を乗り出した事で、決して大きいとは言えない胸のわずかな谷間が服の隙間から見えてしまい、それがまたハリーの理性を焼いた。
この少女の誘いはただ唯、甘美だ。
何も心配する必要などない。考える事すらしなくていい。
ただ己に身を委ねろと、そう誘う少女の手をハリーは払いのける事が出来ない。
ハリーは彼女の言うままに、決して口にしてはいけない望みを思い浮かべていく。
「僕は……僕は、ダーズリー、を…………」
言ってしまえば、楽になれる。
心の奥底にある黒い欲求に身を任せてしまえば、もう苦しむ事もない。
まさにハリーが墜ちる、その刹那。
ドンドンと、ドアが激しくノックされる音でハリーは正気に戻った。
「チイッ……!」
後一歩というところで邪魔が入った事にミラベルが舌打ちをし、不機嫌を隠しもしない眼でドアを睨む。
一体どこの馬鹿だ? この狙ったようなタイミングでドアを叩いた阿呆は!
まだ半分近く残っていた紅茶をグイ、と飲み干してから指を鳴らして執事を呼び出す。
「出迎えろ、セレヴス」
「はっ」
指示された通りにセレヴスが玄関まで赴き、不躾な真夜中の来訪者を出迎える。
一体どこの誰なのだろうか。こんな夜中に、マグルの町に建てられた別荘を訪れるのは。
そう思い玄関を開けてみれば、そこにいたのは背の低い小太りの男であった。
黄緑色の山高帽を被った髪は白く、顔にはいくつもの皺が刻まれている。
服装は無理にマグル界に合わせようとしたのか、おかしな事になっており、細縞のスーツと真っ赤なネクタイ、先の尖った紫色のブーツと、実にアンバランスな組み合わせであった。
セレヴスに案内されて広間まで来たその男に、ミラベルは見覚えがあった。
父の仕事の関係上、何度か顔を合わせているその男こそは魔法界の最重要人物であり、ミラベルの野望を達成する為にはいずれ消さねばならない存在。
……魔法省大臣、コーネリウス・ファッジその人であった。
「久しぶりだね、ベレスフォード嬢。また一段と美しくなった」
「魔法省大臣がこんな夜中に来訪とは……付近にシリウス・ブラックでも出ましたか?」
ミラベルの口から出た名前にファッジは顔をひきつらせる。
シリウス・ブラックとは12人のマグルを殺した罪でアズカバンに収容されていた罪人であり、ここ最近脱走してしまった、というのは魔法界では知らない者がいないほどのビッグニュースだ。
その名は魔法界のみならず、マグルの世界でも犯罪者として伝えられており、マグルのニュースですらその名前を確認する事が出来る。
そして彼はヴォルデモート1の配下であり、今もハリーを狙っていると、そう思われていた。
「あー、うん、まあ、その何だ。まだシリウスは見付かっていない。だが、もしかしたら……ここに現れるかもしれない」
チラチラとハリーの方を見ながら、ファッジは言葉を選ぶ。
シリウスの事はハリーに秘密にしておきたい、といったところだろう。だからこんなにハッキリしない物言いをしているのだ。
その事を察し、ミラベルもそれ以上追求する事をやめた。
「さてハリー。私はコーネリウス・ファッジ。魔法大臣だ」
軽く自己紹介をし、セレヴスが勧めた椅子に腰掛ける。
そして前に出された紅茶に口をつけたが、すぐに顔をしかめてテーブルに戻してしまった。
どうやら魔法大臣にもこの紅茶は不評だったらしい。
「遠慮なく言うがね、君のおかげで大変な事になった。
あんなふうにおじさん、おばさんの下から逃げ出すなんて!
まったく、何かあったらどうしようかと……いや、しかし君が無事で何よりだ。
ベレスフォード嬢が保護してくれてよかった」
ファッジはにこやかな笑みを見せながら、なるべくハリーを威圧しないように話す。
だがハリーとしては気が気ではない。何せ彼は魔法界の法律を犯してしまったのだ。
しかしファッジはそんな事を気に留める様子も無く、言う。
「ところでハリー、夏休みの残り2週間をどこで過ごすかね?
私としてはダイアゴン横丁にある漏れ鍋に部屋を取るのがいいと思うわけだが……どうだろうか?」
予想だにしなかった提案。それにハリーは、数秒逡巡し、そして大きく頷いた。
このままミラベルの近くに留まるのは何か不味い。
今だってファッジが現れなければきっと、彼女に唆されるままに危険な欲望を口走っていた事だろう。
恐ろしい……改めて恐ろしい少女だとハリーは思った。
彼女はまさに魔性だ。人を踏み込んではいけない禁断の領域に、容易く引きずり込んで堕落させる。
それはあたかも、楽園に住んでいたアダムに知恵のリンゴを授けた蛇のように。
一方のミラベルは、そのハリーの姿を見て己が絶好の好機を逃した事を悟り、そして山高帽の小柄な男への憎悪を静かに募らせた。
┌┤´д`├┐<シュウネンガタリン!
というわけで今回はハリー誘惑回でした。
まあ成功すると物語が終わってしまいますので、勿論失敗です。
ファッジさえ来なければ成功していたでしょうが、ここで邪魔が入るからこその主人公補正。
そしてこの恨みは全てマルフォイへと向けられるのですフォイ。