言峰綺礼に拾われた少年   作:クガクガ

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注意事項はあらすじに大体書いてあるのでご参照ください。


プロローグ
終わりの始まり


 見渡す限りの死。

 響き渡る人々の声。

 まさにその光景は地獄そのもの。

 

 もう命は潰える。

 意識が遠のいていく。

 ここに来るまで多くの人々を見てきた。これから死ぬ者、もう死んでいる者。

自分もそれらの仲間入りだ。そう諦めて瓦礫の下敷きになっている少年は天を仰ぐ。

皮肉だろうか、先ほどまで見ていた地獄のような街の光景と比べて最後に見上げた空だけは美しい。

 

 「――――」

 

 これが自分が最後に見る光景なのだと少年は悟った。いや、せめてこの美しい夜空が最後に見たものであってほしいと思った。

 

 手を伸ばす。

 死ぬとわかっていても死にたくはなかった。

 生存本能からか単に彼が心の底から思ったからか、どちらなのかは少年自身にもわからない。ただ助けを求めるように手を伸ばした。

 

 しかし天にその小さな手が届くことはない。

 力が抜け、伸ばしていた手は地面に落ちようとする。

 

 「――――ぁ」

 

 掴まれた。少年の小さな手が大きな手に包み込まれた。

 

 「――生きている…ようだな。今から助ける。もう少しの辛抱だ」

 

 救いの手は差し伸べられた。

 少年は助けられたのだ。言峰綺礼という名の男に。

 

 

***

 

 

 「あの時と似てるな。被害の広さで言えばこっちの方がひどいか」

 

 似ている。

 街のいたるところで火が上がり、悲鳴がどこに行っても聞こえてくる。さらにこの日も空が美しい夜だった。

 

 「ちょっと士郎。街を眺めてる余裕なんてないんだから。早く行くわよ」

 

 魔術師――遠坂凜が少年の名前を呼ぶ。

 

 「――ごめん。この景色があの時と似ているからついな…」

 

 建物の屋敷の上から見るその景色はあの時と同じようなものだった。

 

 「あの時と…」

 

 士郎がアレに巻き込まれたことは知っている。彼なら大丈夫だとわかっているが、多少の心配はする。

 

 「凜、あなたまで街を眺めてどうするの。余裕がないと言ったのはあなたよ」

 

 凜も地獄のように変わり果てた街を凝視していたので士郎の横にいた少女が指摘する。

 

 「……そうね。じゃあ行きましょうか」

 

 彼らは現在、より多くの人間を助けるために行動している。とりあえず今いる場所での救助活動は終わった。生存者はいないという形で。

 人の集まる場所を転々としてこれでもう六か所目になる。だが落ち込んでいる暇はない。次の場所を目指す。

 

 凜は強化の魔術を使い身体能力を向上させる。危険な道を歩かずに屋根の上を伝って移動するためだ。

 

 「士郎」

 

 「ああ、わかってる。花蓮」

 

 少女――花蓮の呼び掛けに士郎は反応する。彼は花蓮を両腕で抱き上げる。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。

 

 士郎には常人以上の身体能力があり、凜は強化魔術がある為問題はないが花蓮は二人のように激しい運動はできない。そこで移動時は士郎が彼女を抱える。

 

 「ねえ、今更言うのもなんだけどなんであなたは来たの? わざわざそんな服なんて着て」

 

 移動しながら凜が花蓮に質問する。

 

 「――――そうね………ほら、この服を着ていると士郎が喜ぶから」

 

 「喜んでない」

 

 「そう? 私がこんなに近距離にいて喜んでるんじゃないの?」

 

 「あのな…」

 

 士郎が少し顔を赤める。

 花蓮の今着ている服は通気性がいい。というか生地が薄い。士郎は彼女を抱えている為肌の感覚がもろに伝わるのだ。男である以上はどうしてもそれに反応してしまう。むしろ反応するなという方が無理な話だ。

 

 「ほら、顔に出てるわ」

 

 士郎に抱えられている花蓮がクスッと楽しそうに笑った。

 

 「はあ……あんたらにこういう話させたら終わりが見えないわね。その話はまた後でして、今は急ぐわよ」

 

 「あら、残念。もっと弄れるかと思ったのだけれど」

 

 「――口は閉じておけ。舌を噛むぞ」

 

 「ええ、そうします」

 

 

***

 

 

 距離のわりに目的地までの移動にあまり時間はかからず、三分ほどで到着した。

 

 「次はここか」

 

 「ええ」

 

 「…数が多いな」

 

 人型の何かが徘徊している。

 救助対象ではない。なぜなら人間ではないから。

 

 「でもやるわよ」

 

 上から見て確認できたのは二十六体。その全てを今から殲滅する。

 

 「了解。花蓮はここにいてくれ」

 

 花蓮は非戦闘員。なるべく安全な場所にいてもらいたい。

 

 「わかりました」

 

 自分は戦闘に参加できないことなどわかっているので大人しく士郎の言葉に従う。

 

 「気をつけなさい、士郎。私との約束は必ず守ってもらいますから」

 

 花蓮と交わした約束を護る為に彼は死ねない。死ぬことは許されない。

 

 「遠坂、花蓮のことを頼む」

 

 刀身の細い剣を両手に三本ずつ持った士郎は人ならざる者たちが徘徊する場所へ飛び降りた。

 

 

***

 

 

 イギリス、その首都であるロンドンがこの日地獄に変貌した。冬木で起きた大災害など比べ物にならない。

 多くの人間の命が失われた。建造物も破壊された。

 そして、時計塔は崩壊しその三大部門の一角は死を迎えた。

 

 後にこの日は人類にとっての終わりの始まりと呼ばれるようになる。

 

 




序盤からすでに色々Fateと違いますがどうだったでしょうか。まあ今回はすごい短いんでなんとも言えないかもしれませんが…。
この物語の世界はどういうなっているのか。各々のキャラがFate世界とどう違うのか。考察しながらお楽しみください。
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