言峰綺礼に拾われた少年   作:クガクガ

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帰り道

 「士郎。お前部活に入らないのか?」

 

 帰り道、同じ教会で暮らしているメンバー六人で帰っていると櫂が士郎に質問してきた。

 

 「もし何も入る予定がないんだったらバスケ部とかどうだ?」

 

 櫂はバスケ部に所属してる。そこで士郎がまだ何も部活に入る気がないのなら入部してみないかと誘ったのだ。

 

 「いや、悪いな。バスケ部には入れない」

 

 「なんで?」

 

 「実は弓道部の美綴に誘われてるんだ」

 

 「……美綴…そうか…なら仕方ないな」

 

 櫂は少し動揺した様子を見せると、すんなりとあきらめた。

 

 「なんだ? 美綴がどうかしたのか」

 

 櫂が諦めた理由が、士郎が弓道部に誘われたからではなく、士郎が弓道部の美綴に誘われたからのように見えた。

 

 「いや…うん。まあ……な」

 

 「――――?」

 

 なぜ櫂が怯えているのかがわからない。

 

 「士郎くんはまだそんなに関わってないから実感ないだろうけど、綾子ちゃんって実は結構怖いんだよ」 

 

 そう元気な声で説明したのは、長い黒髪を後ろで束ねている少女――高梨莉子。士郎と同じく17歳で高校二年生だ。

 ちなみに陸上部に所属する彼女は、凜、綾子と続いて穂群原学園では美人ということで名が通っている。が、二人と比べると大分学力が劣ってしまっている。そこだけが彼女の欠点だ。

 

 「怖い?」

 

 「そうそう」

 

 士郎の視点で言えばフレンドリーで明るい少女なので、彼女が怖いと言われる理由が不明だった。

 

 「いずれわかる…いや、わかれ」

 

 俺は経験者だと言わんばかりの様子で「はぁ…」と深いため息をついた。

 

 「それとね、凜ちゃんにも気を付けた方がいいよ? 怖いから」

 

 莉子から友人二人は危険人物だと教えられたが、今のところ士郎はその片鱗すら見ていないので真偽は不明である。

 

 「誘われているのはわかったが、結局弓道部には入るつもりなのか?」

 

 本来の質問から遠ざかっていたのをオールバックの少年――新城涼介が引き戻した。サッカー部の所属している彼も士郎たちと同じ高校二年生だ。涼介は櫂や莉子と比べるといささかテンションが低かったりする。

 

 「ディーロ神父が許可を出してくれるか次第だけど、多分入ることになると思う」

 

 「あの人はよほどなことがない限り不許可は出さないからな」

 

 「ああ」

 

 ディーロがどのような人物なのか全員把握しているため、彼が許可を出すことはわかりきっていた。

 

 「――鈴奈は部活には入らないんですか?」

 

 花蓮が隣を歩く鈴奈を見る。

 

 「私は運動得意じゃないから入るとしたら文化部かな。花蓮は?」

 

 「私の場合そもそも部活に入ると言う選択肢がないので、士郎が弓を引いているところを眺めることにします」

 

 「そっか」

 

 高校一年生の女子は二人でそんな会話をしている。

 今更ではあるが花蓮は年齢的に言えば中学生。最初はそのことがあり、士郎は彼女に高校生として生活させるのは乗り気ではなかった。しかし彼女に年の近い友人ができたことが喜ばしいので今は正直どうでもいい。

 

 花蓮は孤児院のメンバーとゆっくりではあるがある程度仲良くなりつつあるが、波長が合うためか鈴奈との仲が一番いい。

 

 (鈴奈なら友達として文句なしだな)

 

 孤児院で生活している者としか関わりを持とうとしないことを除けば鈴奈はしっかりとしたいい子だ。そのような子が花蓮の友人になってくれるのなら士郎は大歓迎だった。

 

 他愛ない話をしながらしばらく歩くとバス停についた。このバス停を通るバスに乗れば新都まで行くことが可能だ。

 

 「私は夕食の買い出しがあるから商店街に」

 

 鈴奈は夕食の食材を買いに行かなければならないので、バスには乗らず商店街に向かう。

 

 「俺も行くよ。荷物持ちが必要だ」

 

 食事をする人数が多いので、必然的に必要な食材の量も増える。少女一人だけでは流石に厳しいだろうと、士郎も一緒に行くことにした。

 士郎が行くならと、花蓮もついて行くことになった。

 

 「それなら俺も行くか。人数は多い方がいいだろ」

 

 「だったら私も行こうかな~。ていうか全員で行こうよ。今日みたいにみんながオフなんて珍しいよ?」

 

 「それもそうだな。全員で行こう」

 

 結局誰もバスに乗ることはなかった。血の繋がっていない六人は、まるで家族のように商店街へと歩き出した。

 

 

***

 

 

 「弓道部に入りたい? もちろんいいですよ」

 

 食後、ディーロに相談したところ案の定許可が下りた。

 

 「道具は…」

 

 「こちらでお金を出しますよ。必要なものがあれば買ってきてください」

 

 「いいんですか?」

 

 「問題ないです。教会から渡されたお金ですが、渡され以上はすでに私のものです。誰にどう使っても問題ないでしょう」

 

 あくまで他人に使うであって、ディーロのなかでは自分のために使うなんて選択肢はないのだろうと、彼の言葉から士郎はそれを感じ取った。

 

 「ありがとうございます」

 

 「士郎くんが気にすることではありませんよ。それより明日、どれほどお金が必要なのか教えてください。用意しておきます」

 

 士郎はもう一つ別の質問をした後、再度お礼をして部屋を後にした。

 

 

***

 

 

 「どうだった? …と、聞く必要もないですね」

 

 「やっぱり即答だったよ」

 

 花蓮が部屋の前で士郎を待っていた。別に何をするでもなくただ士郎が出てくるのを待っていた。

 

 「美綴に明日必要な弓具聞かないとな」

 

 弓道がどのようなものなのかは知っているが、何が必要なのかは知らないので士郎は明日綾子に聞いてみることにした。

 

 「さて、花蓮電話しに行くぞ」

 

 部活についての話は終わり、今度はまた別の話だ。

 

 「電話? 誰と? というかあなたに電話するような友人がいたんですね」

 

 「そりゃいるさ。て、そうじゃなくて電話するのは友達じゃない」

 

 「では誰に?」

 

 「シャサ先生」

 

 「国外よ?」

 

 「ああ、だから国際電話。神父から許可はさっき取ってきた」

 

 「そうですか」

 

 「花蓮も話すだろ?」

 

 「別に話すことはないですけど」

 

 そう言いながらも電話へと向かう士郎の後を少女はついて行くのだった。

 




次回は過去編と本編同時投稿です。
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