「――それでなんで俺たちまで新都に連れてこられてるんだ…」
「ついでよ、ついで。どうせ暇でしょ? 私も今日は部活ないわけだし」
綾子と約束していた休日。学校から支給されるもの以外は自分で買いそろえなければならないので、深山町の方にある弓具店についてきてもらうことになったのだが、現在士郎は深山町と反対側の新都を来ていた。否、連れていかれていた。
「午後になったらちゃんと連れていくから、安心しなさいって」
「はぁ…」
とりわけ忙しいわけでも、何か用があるわけでもないので、一緒についてきた花蓮はともかく士郎は構わないのだが、
「ここまで来たんだから観念しなさいよ」
なぜか凜と桜がいる。
「――当然のようにいたから今まで何も言わなかったけど、なんでお前たちいるんだ?」
「なんでって、桜も弓具が必要なんだから当たり前でしょ?」
そんなわけで士郎、花蓮、綾子、凜、桜の五人で今日は行動している。
「あ、ゲーセンとか行ってみない?」
「ゲーセン…。あー、ゲームセンターってやつか?」
「――もしかして言峰兄妹行ったことないの?」
「ない」
即答である。
「まぁでもイタリアにゲーセンがあるなんてイメージないわね」
実際その通りではあるが、ゲームセンターを見たことがないというわけではない。だがゲームセンターには一回も行ったことがない。行く時間がなかったというより、単純に行く必要がなかったので足を運んだことがないのだ。
「私もないわ」
「私もです」
凜と桜もどうやら士郎たちと同じくゲーセンに行ったことがないらしい。
(この二人がゲームセンターに言ってるところは想像できないな)
遠坂姉妹がゲーセンでゲームをしているところは想像できない。辛うじてクレーンゲームくらいならありそうなものだった。
「……あんたらこの歳までどうやって生きてきたの…」
自分以外全員がゲームセンターに行ったことがないことを聞き綾子は困惑を隠せない。
「まさかとは思うけどゲームセンター以前にゲームしたことない感じ?」
四人とも口をそろえて「ない」と言った。
綾子が言っているゲームとは近年進化し続けているコンピュータゲームのこと。士郎と花蓮がやったことがあるゲームといえばカードゲーム、あとはボードゲームぐらいなものだった。
「信じらんない…」
綾子は頭痛でも患っているかのように頭を抱える。
「――よし、それなら今日はあんたたちに娯楽のなんたるかを教えてやる! ついて来い!」
気乗りしない四人を連れて綾子は歩き出す。
士郎たちの休日は始まった。
***
数時間後。ゲームセンターから昼食を食べるために飲食店へ移動中。
「言峰、あんた結構ゲームセンスあるじゃない」
「体感系だけだけどな」
いわゆるガンシューティングゲーム。この辺りのゲームは初めてにしては割と上手くこなせたのだが、格闘ゲームなどのアーケード系は全くもって出来なかった。
「そう? 初めてであれだけ出来れば十分よ。言峰妹も遠坂妹も筋はよかった。問題は…」
綾子がチラッと横を歩く凜を見る。
「なによ」
ふてくされたような返事が返ってくる。
「機械音痴だってことは知ってたけど、あそこまでとは思ってなかった…」
「レバー引きちぎりそうだったもんな」
「クレーンゲームでそもそも商品をアームで掴むことができないなんて思ってもいませんでした」
「あの太鼓をたたくリズムゲームもお金を入れたはいいものの操作がわからなくて始まる前に放棄してましたよね。やっぱり姉さんに機械は…」
各々つい先ほど見た光景を口にする。
「な、なによ。別にゲームができなくたって今後苦労しないじゃない」
「ゲーム以前の問題でしょ、あれは」
「う……」
凜は綾子からとどめの一言をくらった。
「ま、そこの機械音痴のことは置いておいて。昼食ね」
「どこ向かってるんだ?」
昼食を食べに行くと言われて綾子につていっているのだが、どこに向かっているのかはわからない。
「慎二のやつがうまいパスタ屋見つけたって言ってたのを思い出したんだ。せっかくだし行ってみようかなと」
「パスタか…」
「そういえば言峰がいたのはイタリアか。本場で生活してるとやっぱこだわりとかあるの?」
「特にない。そもそも向こうにいた時はイタリアンより和食を食べる方が多かった。あとたまにカレーも」
「へー」
イタリアで育ったからと言って特に料理にこだわりがあるわけでもなかった。士郎の周りに料理にこだわる人物がいなかったのが理由としては大きいかもしれない。
「とりあえず行ってみましょ。慎二の言葉がどこまで信用できるかわからないけど」
「そうだな」
店の場所を把握している綾子に全員ついて行く。
「――――パスタは苦手か?」
パスタの店の話になってから桜の様子が少々おかしかったので、彼女はパスタが苦手なのではと思い気を使って小声で士郎は質問した。
「い、いえ。そんなことはありません」
解答は嫌いではないとのことだった。様子からして嘘はついていないようなので、士郎も「そうか」とだけ短く答える。
(間桐のことか…? いやそれはないか。二人に接点無さそうだし)
パスタの話から様子がおかしかったのは確かだ。しかしそれほど重要なものではないようなので士郎はひとまずそれについて考えるのをやめた。
「――よし、着いたわ」
五人は慎二おすすめのパスタを食べに行った。これが予想以上に美味しく、あまりイタリアンを作らない士郎が料理のレパートリーに加えようかと考えるほどだった。
そんなこんなで休日の午前中は終わり午後に突入する。
ワカメが出てきた時に言いませんでしたが、彼はステイナイトの時のようにひねくれていません。ただのいい奴です。