魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
まぁそんなわけで、何かあれば更新したい章段ぐらいに考えておいてください。
未来福音(夢)
唐突ではあるが、私の性格は―――まぁ最悪な方だろう。
幼なじみからは、『二代目あかいあくま』などと呼ばれることもある私である。写真でしかお見受けしたことが無い『お婆様』を含めれば三代目だろうが……この世界ではあまり関係ない話である。
今日もお父様からの言いつけを守り、マンドラゴラの生育状況を見つつ、今日こそは―――鳩の首を捌いて見せると意気込むのだが―――うん。無理だった。
「鶏の首を落とせるのに、どうしてなのだわ?」
情が移っちゃっている。そうとしか言えない。結局、今日も己の血と鳩の羽を利用しての術式構築をすることに―――。
お父様は怒ることはないものの、『
などとムキになって反論するも、笑みを零すばかり。そうしてお母様を見ては『そこまでイコジじゃなかったでしょ!?』と言われる顛末。
どうやら
そんな風に『ガーデン』で話し込んでいた所に不意の闖入者が現れる。
「お父様ー、電話が来たのだわ。達也おじ様からです」
「個人端末に回せばいいのに……」
「お父様の機械オンチっぷりを熟知しているのです。
「
「………」
睨みあう『似たような顔』―――違う点で言えば、リンナが漆黒の髪に対してリリンは見事なまでの金髪である。
そして髪型は、完全に同じようなツインテールである。つまりは……『双子』なのである。
「ほら、もう睨みあわないの。二人とも今年中学生になるだけの『半人前』なんだから、どっちもどっちよ」
「「むーーー! お母様のイジワル―――!!! お母様の半人前の料理よりも、お父様の料理の方が美味しいのも世界の真理―――!!!」」
「コラー!! リリン、リンナ待ちなさーい!!!!」
2100年代―――多くの事が起こりながらも、世界はそれなりに平穏を保ち、文明を発展させた時代……。
古めかしい洋館。
東京都内の一等地であり霊場に構えたその家の名前は、現代に生きる異能の人間……『魔法師』にとって様々な意味を持つ……。
あるものは救世主、あるものは悪魔、あるものは変革者、あるものは破壊者……忌み名とも言い切れぬその家に生まれた双子。
世界漂流で流れ着き、『人理』と『神理』を合一させた家系……その名は『遠坂』。
当主『遠坂刹那』とその妻『遠坂リーナ』との間に生まれた後継者――――。名は――――。
姉『遠坂
妹『遠坂
異世界の神秘の担い手として育てられながらも、実に神秘性とはかけ離れた騒がしい双子であった。(幼なじみズ談)
洋館を走り回りながらも結局、母であるリーナに掴まったことで料理の支度を手伝わされることになったが、そういうのが悪くないと思える二人であった。
そんな2人にとって今日は門出の日である。とはいえ……地元の中学に進学するだけなので、そこまで大騒ぎもしていない。
何より東京都内が如何に人口密集地とはいえ、大幅な人口減少が起こってしまった世界なのだ。が―――最近の論調では、出生率などはゆるやかに回復しており、世界規模で言えば凡そ20年もすれば、21世紀前半の人口規模を取り戻せるだろうと目されている。
とはいえ、今を生きる凛那と璃凛にとっては小学校から付属の『中学校』に上がる程度なのだ。正門の位置が若干替わり、制服が支給されて合わせただけなのだ。
そんな訳でいつも通りの食事(父自作の燻製ジャムを乗せたトーストなど)を食べた後には、出る準備となる。
「忘れ物は無い? タイはちゃんと締めている?」
『大丈夫です。可憐に優雅に中学デビューを決めてみせます(るのだわ)』
エスカレーター方式の学校でそいつは無理なんじゃなかろうかと両親そろって思うのだが、ともあれ双子はいつも通りに家を出ていく。
「「行ってきまーす☆」」
「「気を付けて行ってらっしゃい」」
そうして、洋館の門前に止まっているコミューターに入るのを、玄関から出て見届けると一安心をする。
「あの二人が中学生か……速いもんだ」
「それ、この間、タツヤ、レオ、ミキヒコと飲んでいた時にも言っていたわよ?」
「俺も立派なオジサンになっちゃったからな。いい感じに皆して歳食ってしまったわけだしね」
『勘弁してくれ』とぼやくように隣の妻に言っておく。月日が流れるのは速いものだ。
凛那と璃凛を後継者に据えたのは刹那なりの判断であったが、今はこれで良かったと思える。
一人の人間に全てを負わせる魔術師の本道からすれば、間違ってはいるが、この世界で『アカシャ』を目指す意味は若干薄くなったのだ。
「俺の刻印は分割していくよ。遠坂家に課された宿題は俺の代で完結している……この世界で新たな『トーサカ』を作っていくのが、あいつらの使命さ」
「ふーん……だったら、もう一人ぐらい作ったりしない? そろそろあの子たちにも弟か妹がいてもいいと思うのよねー♪」
「ちょっとリーナ。俺も仕事があるんだけど? ウェイバー魔術大学の学長がいないとか、あれすぎるんだが」
「先程のタツヤからの電話―――、遅れて出ても構わないって連絡だったのはミユキ経由で知っているわよ。さぁてと最近、二人にセツナが独占されっぱなしだったから、久々だわー♪」
しなだれかかってくるリーナの攻撃に少し慌てつつも、ブラウス越しの肌の感触が、どうしても刹那を惑わす。昔は双子の如くしていた髪型は、ストレートを基調とするようになって母であることを強調していたのに、こういう時に限って『妻』であることを主張してくる。
「いけないリーナちゃんすぎて、どうしようもないな」
「時にセツナには、こういう風にしなきゃならないのよね。リンナとリリンにも、『好きな男の子』にはこうしなさいって伝えているもの」
「絶対一度は連れてきた男に『娘はやらん』とか言いたい」
「もう! そんなイジワルしないの。それ2人に教えたらば、『グランパ嫌い』とか言われてショック受けてたんだからね」
それは、君のせいじゃないかな? そう思いながらも、結局のところ―――耐え切れずに―――妻の身体に寄り掛るのだった。
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「なんてことになっているのよね。家族が増えるのはいいことだわ」
「カツヤお兄様みたいな家は憧れよね。真由美さんとリズ小母様の争いには介入したくないけど」
コミューターの中で、『未来視の魔眼』を発動させた璃凛の言葉に、凛那は若干ウキウキしてしまう。
出来ることならば、弟がいいなと思いながらも、そこまでは『見えない』妹の言葉に、『確定していない未来』を楽しみにする……そんな気分でいたのだが、楽しさを遮るようにコミューターが最寄りのターミナルに止まったことで、降りる準備をする。
学校指定の鞄ではないが、魔法師ではなく『魔術師遠坂』としての物品が収められたものを手に、二人は正門まで歩いていく。
歩いていると前に見知った顔が一人。無論、顔は見えないのだが、制服でも分かってしまう真っ赤な髪が、相手の素性を理解させた。
「エリオー! おっはよー!」
「おう! お前らも来たか、おはようだぜ。リンナ、リリン」
後ろから声を掛けると振り向く、結構なイケメン顔だが、残念ながら昔から見慣れてしまって恋とか愛とかからほど遠い男の顔があった。
「今日から中学生。私もリンナも制服女子なわけだわ。感想は? 萌える? ちょー萌える? 思わず道場で襲い掛かりたくなっちゃう?」
「最後の状況に関しては制服関係ないだろ。というか『萌え』とかいつの時代の単語だよ」
「「レトロフューチャーというヤツだ」」
「完全にバックトゥザフューチャーだよ。まぁ俺もお前らも先月まではランドセル―――はないが、私服で学校に通っていたからなぁ。新鮮だよ」
「エリオも似合っているわよ。やっぱり背丈高いと学ランタイプの制服は似合うわね」
桜並木を並走しながら歩く『西城エリオ』―――付属時代から色々と目立つタイプだった、竹刀袋を持ちながらの登校をする男の周りに黒と金の美少女が纏わりつくのは、今に始まった話では無かった……。
が―――しかし、何というか妬みの視線は感じるわけで、エリオとしても、頭を掻いてそれらを分散させるしかなかったのだったが――――。
そんな時に救世主が現れる。
「ユキナリ!!」
「よう。朝っぱらからハーレム展開で何ともうらやましい限りだな」
「ゴッドモーニング!
「お前もゴッドモーニングって何だよ? リンナ。半分アメリカ人みたいなもんだろうに、変な英語を使うな……まぁ昔の親父みたくクールなボーイになりたいというのに……こいつらは……」
赤い悪魔の犠牲者2号がやってきたことで、喜んだエリオの意気を挫くように、凛那の言葉に若干落ち込むスマートな黒髪男子―――彼も先月までは私服だったが、こうして制服だと新鮮味がある。
「親父もお前の父さんには手を焼かされたとか言っていたが、こんな感じだったのかなぁ」
「基本的に熱血漢だろう達也おじさんの本質を理解していたのよ。父さんは―――だから、そういうことでしょ。
立ち止まっている人間には手を貸したいのよ。本質的に教えたがりだから、父さん」
そんなものか。と嘆息する見た目だけはクール系の男をからかうようにいっておく。
そうして四人が揃ったところで、後ろにもう一人の姿を見る。
カラスの濡れ羽色とも言われる黒髪と、品行はよろしい限りの清楚系。ついでに言えば育ちすぎなトランジスターグラマーで、凛那のコンプレックスを刺激すること間違いなしな女である。
吉田水無月―――四人の幼馴染みである。
「みんなー! おっはよー!!!」
言いながら駆けてくる女の胸は、先月まで小学生だったとは思えないふくらみを揺らしてやってくるのだった。
「ミナおはよう。相変わらず今日も胸が揺れてるね」
「所詮は贅肉でしかないわ。東京砂漠のフタコブラクダめ」
「二人でセクハラ禁止! けどしょうがないわよ。今日から私たちも中学生ーーーこの制服に身を通した瞬間から胸がときめいていたのよ」
それで胸が揺れるとか、恐ろしい限りである。(男子は喜び)ただ一つだけ疑問も残る。
「ミナは、神道系の中学行かなくて良かったの? そういう薦めもあったと聞いているけど」
「確かにおじいちゃんや、おじさんなんかは、それもいいんじゃないかって言っていたけど、お父さんとお母さんが「好きにしなさい」って言ってくれたから―――それに最高の教師は、ご近所に一杯いるもの」
『下手くそ』に預けて変なクセが着いてもダメと言えばダメか。
巷では「ご近所さんで世界最強トーナメント開けそうな界隈」などと言われているのだ。
同時に最高位の魔術師、魔法師、魔召師が集中しているということでもある。
そんな連中が時にBBQなんぞやっている光景は色々とあれなのだろう。
「確かにな。越えなきゃなんない壁どころか山が多すぎる。身近にそれがいるってのは、嬉しいことだ」
「同感だな。打倒すべきは親父とお袋―――なんだが、お袋は怖い―――」
「……ウチもだよ」
男子二人が身震いするほどには、母は畏怖すべき対象のようである。
氷雪と剣舞の限りは、恐ろしすぎる―――と女子が実感できないのは、二人していい母親にしか見えないからだ。
そんなこんなしているとーーー更に幼馴染みであり、凛那にとっては弟弟子に当たる少年……本人は認めないだろうが―――。が校門前に陣取っていた……。
「相も変わらず、朝からピーチクパーチクうるさい奴等だ。マイスターマスターたる遠坂先生の娘とは思えんな」
「朝一番に登校とは折り目正しい生活送っているわね。ミカ」
「うざいぐらいに」
「俺の名前は三日月! ミカとか呼ぶな!! まぁいい。遂に中学生となったお前たちと勝負する時が来るとはなーーー嬉しい限り、遠坂先生の弟子は俺一人で十分―――さぁ決着の時だ!!!」
こういったやり取りは、何度かやってきた。何を血迷ったのか、いやそもそも、魔召師として姉に劣っていると思った三日月が行ったのが、父への弟子入りだった。
それゆえか姉弟子である凛那、璃凛にたいして対抗心を燃やすこと燃やすこと―――。
だが、それも今日で終わりである。そう、なぜならば―――。
「言うは易く行うは難し。それは無理ね。諦めなさい三日月」
「ほう……逃げるんですか?」
「そりゃまぁね―――だって私たち、中学生よ。分別つけなきゃ」
「つまり?」
分かっていてやっているのか、それとも天然なのか判断はつかないが、ミカはこう言うときの反応が遅い。
天然であれば、恐ろしい限り……まぁつまりは―――。
「だって―――あんた「私服登校」じゃない」
「―――え?」
吉田三日月11歳―――まだまだランドセル背負って登校を果たして、カプサバゲットだぜ! とかやっている少年である。(予想)
「なんじゃとて―――!!!」
「今さら気づくとか、ミナ。アンタの弟だいじょうぶ?」
「ちょっとダメかもしれない―――頭が」
「ねえちゃーーーん!?」
辛辣な一言にショックを受ける黒髪の少年小学生。
せいぜい妖怪スマホでも操りながら、少年探偵団でも結成しているがいい。
そんな感じでいると、ユキナリとエリオの妹―――これまた三日月と同じ11歳の女の子たちが、三日月にくっつく。
子供の名前は暁で決定であるなどと思えるぐらいには、こやつもハーレム野郎なのだった。
「にいちゃん! 何かあったら私にも一言! というか混ぜてよね」
「お兄様。中学生になったからと雪穂をおいてけぼりにしないでくださいね」
「というわけで、しばらくはランドセル背負う小学生でいるのがいいのだわ。父さんが言っていたのだけど、三日月はあまり他人を意識せずに己を伸ばしていけば、もっと上に行けると語っていたのだから」
「璃凛姉弟子がそういうならば……」
あれ? なんだか
別に三日月なんてどうでもいいのだけど、ちょっと複雑よ。
「そりゃ凛那ちゃんは、あくまっこだもの。ミカも若干、苦手に思うわよ」
「「今さら気づいたのか?」」
「男子二人と巨乳がアタシをいじめる!? おのれ、この巨乳好きのエロ学派め!! アンタたちの性癖―――学校中に言いふらして―――」
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「といった風な、かなりカオスな夢をみたんだが、どう思うよ? 達也」
「会長選挙前のレリックが起こした惨劇に、お前とリーナが出てこなかったことは話したし、お前たちも夢見になんの影響もなかったが、ここに来てそんなことになるとはな……」
屋上にて、昨夜から今日の朝にかけて、リーナ共々見てきた夢に対する顛末に対して、そんなことを言われてしまう。
確かにあの時、達也と関わりが深いにも関わらず、自分とリーナは達也命名の聖遺物「ドリーム・キャスター」が演じる『ドリーム・ゲーム』に出なかった。
代わりに出てきたのが、先程の夢のなかでの主役とも言えるお袋似の双子(幼年期)であった。
『『達也おじさまを倒すのだわ―――!!!』』などと結構カオスなことをやらかしていたそうな。いや、見ていないからどんなものなのかは分からないのだが―――何にせよ。
そんな風な未来が確定しているわけではあるまい。そもそも全員が、近所にいることもあり得ない。
現在ですら八王子に集合することで、なんとか会えているのだ。会いに行こうと思えば会えないわけではないが………。
「まぁ普通に考えれば、お前と深雪は、代替わりすれば長野の方に引っ越すんだろうしな」
「その可能性が一番高いからな…ただ―――」
「ただ?」
珍しく口に笑みを浮かべて空をあおぐ達也―――。どこまでも広がる青空と白雲をつられて刹那もみて―――口が開かれた。
「そういった―――「未来」は、楽しそうだ。何かと退屈しなくて済みそうだしな」
「……それに関しては同感だな」
しかし、ここで少しの疑問も発生する。
如何に深雪の倫理観が危ういものだとして、兄妹で子供を作るだろうか……魔術師的な考えでも、危険すぎる等親での近親婚ぐらいは認識されている。
もしも夢見が見せた未来が、真実―――、一種の未来視ならば、それは―――、少しだけ大変な結果をもたらすのではないかと思うのだった。
(まぁ―――どうでもいいことではあるか、光井はがん泣きの上での滑り台行きになっても、俺にはどうしようもないことだ)
「お前、すごく悪いこと考えていただろ?」
「いいや、まったく―――忙しい時期に変な話をして悪かった。
論文コンペ期待しているぞ。俺は護衛だから裏方でみさせてもらうさ」
月日は既に10月下旬にいたろうとしていたころの、とんだエイプリルフールパニックであった……。