魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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佐々木少年さんの新宿コミカライズ―――はいいんだけど、他の型月系作家の一人。何かしらの形でもう一度『たぽ』さんが型月に関わってほしいと思う今日この頃。

未だにトリビュートファンタズムや、アフレコレポ以外で見ていないんだよなー。

少年フェイトが未だに眠る私の本棚がアレである。


第90話『九校戦―――決着(後)』

 

 

 最初に変化を出したのは―――三高からだ。

 

 既に斬撃のルーンを食らっていた中野新の魔法が、全体を支援していたが、それでもやはり傷は深かったらしく―――。

 

 その攻撃には精彩を欠いていた。無様ながらも仲間を援護する意図を持つ中野の男気を砕くべく、刹那は魔弾を装填。

 

「寝てろっ!!」

 

「がはっ! くっ……だがっ!!」

 

 刹那の魔弾を胸に受けて呼吸を困難にした中野は崩れ落ちる前、最後にローブを脱ぎ捨てて……花の海に沈んだことでTKO判断とした審判団の五人掛けの移動魔法。

 特急でフィールド外へと連れていかれた。千里眼で『ロマン先生』が手当をする様子を見た限りでは、どうやら無事のようだ。

 

「アラタの仇は取らせてもらう!!!」

「死んでないけどね」

 

 中野が脱ぎ捨てたローブを手に取り迫る一条。吉祥寺にツッコみを入れられても花弁を散らしながら来る一条の接近を阻むように―――。

 

 星型の魔力光を放つものが刹那の周囲を飛びまわる。

 有体な表現をすればビームシールドか、スター〇ーか……まぁそういった器物が飛びまわり、回転カッターになったり、中心部の星からビームを出してきたりするのだ。

 移動魔法で弾き飛ばすことが出来ないほどの情報量と改竄を為さない器物―――西城のような特化型CADでないことから分かることは―――。

 

「レリックか!? 確かに違反じゃないが、中々にすごいモノを持ちこんでくれる!!」

「シャルルマーニュの12勇士の一人でありながらも紅一点の女騎士、『ブラダマンテ』の魔盾『ブークリエ・デ・アトラント』……使う気はなかったが使わせてもらう」

 

 多段砲塔。戦列艦の火力で迫る刹那と同時に―――。

 

「司波っ!!」

「何度も言うが馴れ馴れしいんだよ」

 

 刹那という火力に圧倒されている内に、臼砲艦(ボムケッチ)のような『艦体砲』で直接打撃を目論む司波達也が、抜け目なく将輝を狙う。

 魔力の煌めきで、砕け散っていく様子。幻想的な花の海の中で魔光を灯らせながら戦う魔法師達の戦い。

 その真っただ中でも勝者と敗者の境界線は、刻まれていく。

 

「西城! テメェとステゴロでケリを着けられないことは悔しいんだが、この場は取るぜ!!」

「そうはいくかよ……バカの一つ覚えかもしれないが、ダチが預けてくれた得物で勝てないなんて許せるかよ!!」

 

 魔力で編まれた鎖のようなもの……その延長部には炎の球が括りつけられており、魔法で作られたモーニングスターとして火神がレオとやり合う。

 硬化魔法で『延伸』した刀剣を振り回すレオと、戦いながらも地力の差で細かなダメージを与えていく火神。

 

 花弁が舞う戦場に火の粉の落葉が混じり、その落葉がレオに熱のダメージを与えている。

 服の内側ではちょっとした火傷からの水ぶくれも出来ているだろうが、そんなものは今さらだ。

 

 祖父から連綿と続く血筋―――刹那に言わせれば『混血』の血筋である自分の頑丈な体をここまで感謝したことはない。

 身を挺して誰かを守れる。火神が振るう鉄球が他の仲間に振るわれるならば、俺が食らうだけだ。

 

「終わらせてもらうぜ!!」

 

 火神が読み込む魔法。放たれる魔法の威力全てが慮外のものだ。顕現しようとする巨大な炎の柱―――炎剣が、出ようとした瞬間に、レオは小通連を最上段に構えた。

 

「パンツァー・シュバルツシルト!!」

 

 当たり前だが脇も、腹もがら空きの大仰な構え。現代魔法使いにとっては隙だらけで、火神は炎のモーニングスターを振るってレオを打ち倒そうとする。

 

 だが倒れない。倒れるわけにはいかない。イメージするべきは大地に根付く大樹。

 そのイメージが具現化するように、硬化魔法がレオの身体をとことんまで硬くする。

 

 大樹は、大地は、負けない!! その意志が通ったかのように、レオは倒れないのだ。

 

「ぬっ!!!」

 

 その如何様な打撃も魔法も全て食らっても構えを解かぬ西城レオンハルト―――見える。西城と言う男が見せる大樹にならんとする輝きが……。

 

 こと此処に至りレオは悟りを開いた。硬化魔法の本質とは不動の魔法ということなのだと、しかし変化を許容しないわけではない。

 最上段にある板状のブレードの硬さが『ミスリル』(魔銀)のような輝きを見せた瞬間に、光が輝く。

 

 柄尻にあるサイオンブレードの機構が反応して光剣を生成。もはや火神に大炎剣を放つ気持ちなど無かった。

 放ったところでこの男に痛痒を加えられない。受け太刀をした上で打ち倒す。

 

「レオ、僕の支援だ。受け取ってくれよ!!!」

 

 大樹に落雷が落ちる。だが大樹はその雷をものにした。来る―――。振り下ろされる雷剣が、火神には……インドラ神の一撃に思えた。

 

「エンチャント・プラス―――トールハンマァアアアア!!!!」

 

 光剣と共に振り下ろされる巨大剣に対して、火神大河もまた炎の剣の重ねで対応。花の海に沈み込む火神と一歩を踏み出したレオ。エネルギーの奔流の押し合い。

 接近戦と取られないのはサイオンによる光剣の見事さゆえか、それとも……ともあれ流された巨剣を持つ巨漢同士の戦いを審判団は流した。

 

『レオ―――!!! 最後まで踏ん張りなさいよぉおお!!』

『レオ君!!』

『西城!!!』

 

 一高の声援。届くわけはないが、それでもその声援が届いたかのようにレオは最後まで踏ん張る。

 光の剣と、実体のプレートブレードとの二種の圧力。どちらもとんでもなく、火神の足元を70センチは沈み込ませている。

 油断すれば膝まで押しつぶされそうな押しあいの我慢比べ。最後に決したのは―――。

 

 お互いの身体の頑健さであり―――消え去る炎剣。消え去る雷剣。定義としては同一の現象であって定義破綻ゆえのものではない。

 つまりは―――サイオン切れ。もしくは―――魔法の維持が出来なくなるほどの危険領域に迫ったからだ。

 

 白花の花弁がエネルギーの余波で吹き飛びながらも最初に動き出したのは――――レオからだった。

 

 しかし振り絞って、唇を噛んででも想子を捻りだしたレオの小通連が動き―――、沈み込み動けない状態の火神を一撃。

 その瞬間に判定が下された。意識はあったものの、火神大河の戦闘不能であると言う判定にレオは少しだけ不満を覚える。

 

「魔法戦ではお前が勝っていた……俺が勝てたのは―――」

「ああ、この『フィールド』ゆえか……構わねぇ。お前の勝ちで―――俺の負けだ……」

 

 自ら兜を脱いで自決する武者のように敗北宣言する火神大河。どうやら肩が落ちている所から折れたようである。

 押しあいの圧が生身にも及んでいた影響である。

 

 しかしレオとしても、これ以上は動けない位に身がボロボロだ。打たれ過ぎて焼かれ過ぎた。動くことは先程とは違った意味で無理である。

 小通連を戻し、それを地面に突きたてて、杖としなければ立っている事すら辛い。同時にテクニカルジャッジでレオにも下される戦闘不能の判断。

 

 審判団及び救護班の再びのドクターレスキューで、フィールド外に飛ばされるレオと火神。

 

 両者の戦闘不能を見ながらも戦いはまだまだ続く。他者の魔法式に干渉しあう混沌魔術の打ち合い。

 

 同時に影と風の魔法が―――正統ながらも邪道な戦いが繰り広げられている。

 同じタイプ同じ人間―――そう感じ取れる人間だ。

 

「黒子乃くんだったか……調べた限りでは、あまりこういったことで目立つタイプには見えなかったんだけどな」

「別に目立ちたいわけじゃないですし、本当に刹那君に推薦されるまでは、九校戦出場も無いはずでしたよ」

 

「だろうね。名前から分かるけど―――キミは隠密分野の人間。察するに遠坂君やシールズさんの『監視』に寄越された人間ってところだね」

「ヒトの秘密をばらすってのはいい趣味じゃないですね。無駄な事はキライなんですよ。無駄だから、無駄は無くしたい。そして―――イヌなんかに嗅ぎまわられたくも無い」

 

 言いあいながらも加速・減速、消滅・精製。様々な形で変質する魔法とがお互いを穿とうと、穿たれる前に違うモノに変質していく。

 そして様々な干渉で相手の魔法式を奪ったり奪い返されたりしながらも打たれる雷電、風の刃、影玉、影の槍。

 

 意表を突いたり突かなかったり。真正面からの打ち合いが側面からの奇襲を許したり―――ある意味、千日手に至りつつある戦場。変化し加速する魔法戦がお互いの手札を晒さないで行く。

 先刻までのレオと火神の戦いが、魔法としては邪道な立ち合いながらも、真正面からの戦いならば正道。

 

 その逆である。魔法としては正道な立ち合いながらも、真正面からの戦いでは邪道。

 このままでは決まり手を欠いたままに終わるだろうが、そうはいかない。

 

「藤宮くんも何か『秘密』がありそうですけど、今の僕には関係ない―――この黒子乃太助には『夢』がある! その為の前進を恐れたことはない!!」

 

 サイオンコードを読み取ることで、相手の魔法を奪って反転させたり無為なものに変えたり、化かし合いの騙し合いを行っていた戦いに変化が起こる。

 今までの黒子乃太助の魔力が黒であったならば、今度の太助の魔力は金色。

 

(二重属性で二つの魔術系統か……流石に、見抜けるものではないな)

 

 一条との戦いを一瞬切ってでも見てしまう術式の見事さに舌を巻いていた刹那であったが、その隙を見逃す一条ではない。

 

「よそ見している暇はないぞ!!!」

 

 投射される空気弾と爆圧の熱波の数々―――しかし、それらをあの殺人貴ならば、軽々と避けるだろう。

 もしくは魔法そのものを『殺す』ぐらいは出来るだろう……改めて思うと実にクレイジーな男であった。

 

 あんなものを狙うのだから院長補佐も、よっぽどである。まぁ……一番安全な人間ではあっただろうか。その反対に危険な男すぎたが―――。

 

 それでも………。

 

(この服を着る以上は、ちっとはアンタの事を思い出して戦うよ。シキさん)

 

 魔法の発動を見ながらも刹那の動きは精彩を極める。花の束を散らしながら戦う刹那の動きが、常に一条の死角に移動する。

 視覚的にはどこにでも魔法を発動できる魔法師であるのだが、それでも『脳情報』の原則だけは崩せない。

 

 魔法師も生物である以上は、生物としての絶対原則に晒される。イデアによる認識はあったとしても、素の『視界』…己の眼に映らない敵には確実に恐怖を覚える。

 その動きに服部副会長は、いつぞやのことを苦々しく思い出しながら応援の声を上げていたのだが……。

 

「ッ!! 将輝をやらせるか!!」

 

「木花之佐久夜毘売・開花!!! 急急如律令!!!」

 

「吉田っ!?」

 

 刹那の動きに応じて達也も動き出したことで、幹比古への牽制が疎かになった。詠唱の遅い古式であるがゆえの対応の甘さに、ここぞとばかりに溜め込んでいた術式を叩き込む幹比古。

 華の姫―――このガーデンファンタズムの魔力を利用した幹比古の術式―――華の精霊を姫のような衣装に変えたもの。有体に言えば情報体・化成体の類が、幹比古の後ろに立つ。

 

 その姿は……ちょっとだけ『柴田美月』に似ていた……。

 

 そんな『コノハナノサクヤヒメ』は、何か大きなものを受け止めるようにして―――花弁の嵐を吉祥寺真紅郎に叩き込む。

 幻体による疑似的な魔術行使であり、ここまで巨大なものを作り出すとは―――。

 

  SB魔法としては最上級だろう……。古式魔法師としての幹比古の意地に感服する。

 

「くっ! 花弁そのものがちょっとした魔力を持っている以上、サイオン弾も同然がっ!!!!」

「ジョージ!!!」

「―――ごっ!!! ま、まだだぁあああ!!!」

 

 心配の声と同時に幹比古に魔法を叩き込んだ一条将輝。

 爆風が正面から幹比古を襲ったが、吹き飛ばされても地面を掴んで立ち上がる幹比古が、花弁の嵐を吉祥寺真紅郎に叩き込む。

 

 消え去ろうとしていた姫君と共に戦う幹比古の意地の攻撃が、吉祥寺を遂に沈黙させて―――。そこで幹比古は崩れ落ちた。

 

「く、黒子乃くんも勝ったけど―――ちくしょう。最後まで『ここ』にいたかったなぁ……」

「ここでの戦いは黄金の体験(ゴールドエクスペリエンス)。いいもんですね僕は―――成長できた。また……このメンバーで何かしたいくらいです……」

 

 緑色の魔力の附帯で貫かれ、それでも黄金の拳のようなもので昏倒する藤宮介の姿を見るに―――どうやら奥の手を晒しあったようである。

 即座に四名の要救護者をロマン先生はカドゥケウスで『持ち上げて』―――戦場から即座に脱させる。

 

 戦いの場に残るのは、三名。数の上では無論……一高側が有利だが、三高側に残る一条は火を噴くように攻めてくるだろう。

 

「俺一人か……窮地だな」

「分かってるんならば降伏したらどうだ?」

「冗談じゃないな。十師族の誇りも大事だが、それ以上に男としてお前たちに勝つ!!」

 

 中野が残したコートを纏い……「えんづく」はないのだろうけれども、それでも着膨れな感じになる一条将輝。

 重ね着したことで術式が二重にかかり防御が増した。破るのは中々に困難だろう―――。

 

 小康状態になったものの、戦いは短期で終わる。その予感―――お互いに、長期戦はムリだろう。

 達也もまたEMPTY(ガス欠)が近いことを知らせるように指でゼロを思わせる『印相』を作ってきた。その意味を違えない。

 

「お互い……持久戦に勝機は無いだろう。この空間がお前たちに若干の味方をしていたとしても、な」

「どうするよ達也? 向こうは短期戦を望んでいるが?」

「乗ってやるぐらいの男気はあるさ。決めるぞ」

「こっちがな!!!」

 

 飛びだす一条を迎え撃つように二人も野花を散らしながら接近。近接戦は当たり前だが不可能。

 

 魔盾による防御。質量体による打撃で一条の接近を阻もうとするが、それを分かっていたように―――否。

 中央突破することで魔盾の辺―――鋭く尖った切っ先が、一条に血を流させる。

 

「おおおっ!!!」

「たわけが!! 魔盾による傷はお前を―――」

「刹那!?」

 

 重篤ではないが、それでも傷を流した一条に警告を出す前に一条将輝は、特化型CADを向けて―――高周波の圧力を打ち出した。

 

「―――ッ!! ―――Die Glocken läuten―――」

 

 耳鳴りが響くそれを打ち消す術。同時に一条が爆圧を放ってくるが、避ける。

 生兵法というわけではないが、殺人貴仕込みの体術は一条にとって慮外。死角に出ると同時にスナップカラーズで撃つ。

 

「ふっ!!!」

 

 ばしゅっ!! という音でスナップの魔弾が消え去る。コートの裾地を振り回すことで消したようだ。上手い手段だが、その時には……。

 

 達也の加重系統の魔法―――威力を底上げする為に、『呪刻』を刻んでおいたものが一条に叩き付けられる。

 それを更にコートを翻すように、さながら闘牛士のムレータの如く動かして達也の魔法をガード。

 

 瞠目した達也。それを見ながらも一条は、その手を弓矢でも引き絞るかのようにして動かす。

 特化型CADではなく汎用型CAD―――リング型が腕にあり、引き絞られた矢が―――三高の初戦。五高との戦いで放たれたものが、達也に向けられていた。

 

「――――」

 

「――――」

 

 放たれる高熱の飛翔体。現代魔法の範囲で見える限りでは、一条家の秘伝『爆裂』を押し固める作業ゆえのものだと思える。

 

 爆裂の作用からすれば無駄なことにも思えるが、それでも空気圧縮弾に比べれば殺傷性は高い。

 今までのが、砲弾と言う質量弾を高速で撃ち込むもの……『カルバリン砲』ならば、こちらは砲弾そのものに『炸薬』と『信管』を加えたアームストロング砲や四斤山砲といったところだろうか。

 

 ともあれ、ヤバいと思った刹那が、盾を動かして達也の前に配置。現代魔法とは違ってエイドス改変でなかったのが幸いしたが、炸裂した威力。

 灼熱の矢が放たれてバックドラフトが白花を焼き尽くす。そして衝撃そのものもすさまじく、達也は足を残そうとして5mは後退する結果。

 

「対人用に威力は落としたつもりなんだが、強すぎるというのも考え物だ」

「威力の大小で勝敗は決まらんが、―――ここで決める!!」

 

 しかし一条に生半可な攻撃は決まらない。そして、こちらはガス欠が近いのだ。

 

 ここで決める! 言葉と心で言いながら決意する。 

 

「Anfang――――」

 

 その意志で魔術回路の再起動。魔弾の叩き込みをすると――――思った一条が達也を視界に収めながらも、刹那に矢を向けてくる。

 投射する魔法陣―――。どういうものなのか知らずともそれでもその魔法式の巨大さに、一条が驚きながらも刹那に矢を放った時。

 それよりも先んじて達也が『刹那』に対して『魔弾』を放っていた。

 

「―――」

 

 行動の意図を測りかねる一条将輝であったが、矢が届く前に魔弾が―――、刹那の『加速魔法陣』に吸い込まれた。

 

打ち砕く雷神の指(トールハンマー)!!!」

 

 八王子クライシスにても使われた魔力の『高速回転増幅炉』―――まさしくビーム砲台も同然に溜め込まれるエネルギー。

 それが解放されて―――一条の『フレアアロー』が呑み込まれる……なんてほどの威力はないものの減衰していき、そして……小規模の爆発。

 

 その爆発の中に刹那が取り込まれて―――それで終わり…だったらば、あの射台崩しの時に終わっていたはずだ。

 奴は立ち上がる。爆炎の中に入り込もうとも―――ヤツ(刹那)は生きている。その一抹の疑念。

 

 もうもうと立ち上る火煙と土煙。下されない戦闘不能のジャッジ……全てが一条を縛り上げていく。

 

 慎重なスローイングでランナーのアウトを取ろうとするピッチャー、キャッチャーの如き……緩慢な動作にも見える起動式の読み込みが、達也にとっての隙になる。

 魔力は突きつつあるものの、それでも体の駆動だけは十全に回せる。そも達也の動きは魔力由来のものではないのだ。

 

「司波達也!?」

 

 刹那に放とうとしていた矢、もしくは空気圧縮弾を急遽、飛びこむようにやってきた達也に向けようとするも―――。

 

「――――世界蛇の口(ヨルムンガンド)!!!」

 

 その時、捕縛型の魔法陣……吸引型のそれが一条の身体を縛り上げた。煙の向こうからの刹那のフォローだ。

 

「捕縛陣!? こんな大規模なものを!!」

 

 驚愕する一条であったが、その時には、達也が至近距離までやってきていた。最大の攻撃を『囮』にしてまでもチャンスを作ってくれた刹那。

 

 ここで決める。自ら泥を被り囮もやってくれた刹那に報いるためにも―――。

 外側からのダメージはコートのルーンで弾かれるだろう。ならば、有効なのは内側への衝撃。

 

 掌底による圧など無理だ。どこもかしこも防御されている……しかし、それでも防御できずに尚且つ内部に攻撃を通す場所はあった。

 再びの音響爆弾。今度は両側の内耳へと貫き通すために両手で放った。その衝撃で達也もまた鼓膜が破れて、倒れ込みそうになるが―――。

 

「こんどは、かえってこられない」

 

 最後には立ちながら宣言した。聞こえている訳がない。

 

 同時に達也も声を出しながらも己の声など聞こえてはいなかった。それでも回復していたはずの耳を再びやられた上での二度目の音圧。

 今度は両耳。平衡感覚を失うと同時の意識失神、耳から少しの出血を終わりに、華の海に倒れ込む一条将輝。その事実を遂に受け入れる。

 

 同時にジャッジが下される。

 電子掲示板にWINNERとして挙げられたのは……予想通りに第一高校であった。その時……「けほっ」と砂を吐きながら起き上った遠坂刹那が呟く。

 

「今度からは『素晴らしきシバタツヤ』と呼ぼうかね?」

 

 鼓膜が破れていても、口の動きと『あくまな笑み』から察した達也が、ニンジャスレイヤーな動きで、刹那の頭を後ろからぐりぐりする。

 

 締まらない勝利というわけではないが、最終的に勝ちを得たことで大歓声が響く。その中に一条ファンの悲しみの声もあった。

 正しく怪我人続出の最後まで気が抜けない勝利に一高の全員が両手を上げてガッツポーズをするほどには、実に苦しい戦いの連続ではあった。

 

 こうしてモノリス・コード新人戦は幕を下ろした。

 第一高校の勝利。そして新人戦優勝と言う結果付きでの勝利。全ては大歓声の中に集約されていくのだった……。

 

 

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