魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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短いですが、場面転換が多すぎるのでこの辺りでアップ。

それにしても―――眼鏡神の新連載でハルトモ先生の代理ビジュアルがゴッフさんとは、昔のタイころアッパーのレポ同人を思い出すぜ。

皆してタスクオーナ先生をハサンにしていたんだ……(理解)

というわけで新話どうぞ


第92話『九校戦――妖精決闘開幕』

 

 

 深い。深い。闇の中……戻るべきだった場所から弾きだされて、ここにて眠りに就く自分は、外の様子など分からない。

 

 情勢には興味があるが、それでも私の役割は半ば終えてしまった。不安は無い―――何も―――ただあるとすれば、彼らと共に生きていくことがいいとは思えなかった。

 

 そんな自分を求めて泣いているのではないかということだ。

 

 魔女の使い魔がいつか喋らなくなるように、自分が意識を失ってしまうのは当然だったはずなのに……。

 

 宇宙開闢の空間。数多もの星々が輝く―――天然のプラネタリウムの中で丸まっていた存在は、自分しかいない空間に誰かがやってきたのを感じた。

 

 あり得ないことだが、その存在は―――自分を探してきたのだ。

 

 

 

 ―――やぁ。ひさしぶり―――。

 

 ああ、久しぶりだ。しかし、アレだね。キミ、『神殿』で『消去』されてから、てっきり■■■■にでも漂っているもんだと思っていたんだがね。

 

 ―――案外、未練がましいのかもしれない。ボク自身、この世界に流れついてから調整を利かせて生きてきたつもりなんだがね……―――。

 

 ビーストの誕生は、キミにとっても予想外だったんだろう? 全知のキミでも全てに手を打てるわけじゃない。そんなことも分かっていないわけではないだろう?

 

 ―――そうだね。だからこそ、彼が現れた時、ボクは『あの子』と同じものを感じた……。ここでのボクの役割はもうすぐ『完遂』される。その時……―――

 

 ……?

 

 ―――いや、なんでもないな。いずれにせよ今の刹那に必要なのはキミだよ。起き上がる時だ―――。

 

 英霊休暇満喫中の私に労働しろとは、つらいわー。■■■鬼だわ―。プラチナ(?)でも歌いたい気分だわ―。

 

 ―――何の話だい!? と、とにかく、ボクも旦那(?)以上に稼いでいるというか旦那共々稼ぎかねないキミを休ませるのも吝かでは無い―――って何を言わせているんだ!?―――

 

 はいはい。分かっているよ。この万能の天才たる私にかかれば、ジャンヌ・ダルクコードからダ・ヴィンチコードまで実装可能! 起き上がりたくないが、まぁやらねばならないかな。

 

 ―――すまないね―――

 

 なぁに、この『私』は、キミよりも刹那との間が長いのでね。安心したまえ! キミに代って私がヤン提督(?)ばりの奇策を用いて戦い抜いて見せよう!!

 

 ―――そうかい。ならば―――頼むよ。レ■■■ド―――

 

 キミも、『役割』に囚われたくないのならば、自由にやってみなよ。それがキミの望みだろうに―――

 

 その言葉に苦笑の気配だけを残して去っていくもの一人。それを認識してから―――白にも黒にもなれる魂は、道を辿って出る準備をするのだった。

 

 

『外の世界はつまらないなんて結論はまだ早すぎるな。欲しいものがあるならば、出ていくしかないんだよな』

 

 

 自縄自縛ともいえる『牢屋』に己を閉じ込めたもの(コーバック)とは違う結論を出してから―――魔法の杖は、その身を『表層』に表わすべく動き出すのだった……。

 

 

 † † †

 

 

 毎度おなじみとなってしまったホテルでの夕食会。もはや魔法師というよりも料理人なことばかりやっている男の料理の趣向は、今回は違っていた。

 

 だが、違いと言っても、それは誰もが夢中になる料理である……。よって早くも我先にと言わんばかりの様子となっている。

 

 

「昨日とは違うんだな」

 

「不評?」

 

「そんな訳ない。旨すぎるし、何より胃に優しいからな」

 

 と言いながら達也が『啜る』豆腐麺は、刹那としても畢生の出来である。

 

「ただ達也の寿司が無いのが残念だ……!」

 

「tamago先生に謝れ」

 

 達也がそう言いながら、刹那も白黒豆腐の麻婆豆腐を食べている。どうやら今日のメインは豆腐のようであり、何故これを作ったのかを問う。

 

「大会も遂に八日目。そろそろ参加選手の身心共に結構、頭打ちになりつつある。まぁ本戦・新人戦・本戦というオーダーだから選手次第だが……」

「コンディションの為か……助かるよ」

「まぁ深雪が「もう食べられないでぶよー」と言わんばかりに食っているわけじゃないから明日のミラージィィィイイイイイ……何してくれやがる!?」

 

 いきなり背後より食らうサイオン波。特に自然現象などが起こったわけではないが、やったのは誰なのか明白であり、振り向くと「やつ」(デーモン)がいた。

 

「余計な気遣いどうもありがとうございます! ついでに言えば、体調管理は完璧ですので!!」

「そうなの? 何だかミユキ、いつも更衣室とかで見ていると少しばかり(ライン)が細すぎるような気がするから、ちゃんとゴハン食べているか心配よ?」

「あなたが出るとこ出て引っ込むところ引っ込んでいるだけです! 私は普通! 2090年代日本の一般的なJKです!!」

 

 JKとかいつの時代の人間だよお前は、という無言でのツッコミを入れつつも、やはりマイハニーは、同性からしても規格外のバディのようである。

 

 まぁ分かっていた事である。だというのにこやつは……。

 

「ワタシの女神(ヴィーナス)すらもひれ伏さんばかりのボディは、セツナの『手』で『造型』された芸術品(アート)よ。

 まぁミユキのナチュラルな身体よりも上を行くのは仕方ないわね」

 

「お兄様! 深雪をミロのヴィーナスよりも洗練されたバディにしてください!! リーナを倒すために」

 

『『黙って今は食え』』

 

『『むぐ―――!?』』

 

 

 食事の場でセクシャルな話題とか勘弁してもらいたい達也と行動が一致。

 食べ物で遊ぶようにも見えてしまうのはダメだが、レンゲに入れた麻婆豆腐の味は正しく最高の心の料理である。

 

 愛妹と彼女を黙らせつつ、耳がでっかくなっちゃっている三高の『一部生徒』からの追及をキャンセルし、明日はミラージ本戦であることを認識。

 同時に、モノリス本戦の予選であることを認識。

 

 ウチからはミラージは深雪と小早川先輩、五十嵐先輩の計三人……前年度の成績で足きりされたわけではないので三人登録出来たが、どの高校も来年のシード権を獲ろうと必至だろう。

 

 年始の大学駅伝の如く……と思いつつ、そっちの方で若干の裏切り―――とまではいかずとも、少しの利敵行為をやってしまうのだ。

 

「俺は気にしていないぞ。お前の『秘密』と引き換えならば安いものだ」

 

「同時に深雪が負けるとは思っていないんだろう?」

 

「ザッツライト」

 

 他のミラージ参加者でめぼしい所では、四高では姉貴が参加するようだ……。

 その事を聞いた時に、何故だか知らないがリズリーリエ・イリヤ・アインツベルン……知るところによれば『第三魔法』の末裔たちが、『第二魔法の産物』を持っているのが自然に見えるビジョンもあるのだ。

 

「にしても、一色さんに何を教えるんですか? それぐらいは許されるのでは?」

 

「知りたいの? なんか相手なんざ知らない。我が道を阻むならば、覇道の限りで推し通ると言わんばかりの君が?」

 

「まぁそれなりには……現代魔法の価値観を崩されっ放しですから、少しは知りたいですね。というか人を項羽のように言わないでほしいですけど」

 

 珍しくも深雪が刹那に突っかかる様子に達也も見守る様子。しかし三高のイケメンから親の仇でも見るかのように見られて針の筵である。

 

 奴一人の不興を買うのもあれなので手短に応えておく。

 

「頭が硬い魔法師を代表する一人でもある君に言えることは、『人が空想できること全ては起こりえる魔法事象』……

『月の王様』を根性で地球から追い返した、俺の祖とも言える『魔法使い』(クソジジイ)の言葉さ」

 

 ワケワカメな言葉だが、それでも理解した数人が苦笑している。

 

「まぁ何事も有名な歌にあるように、『あーたーまかーらっぽーのほーーぉがーーー!! ゆーーめーーつめこめるぅうううう!!』ということであるよ司波深雪さん」

 

「何故にフルネーム……」

 

 そんなこんなで、煙に巻きながらも、分からぬものには正鵠を射ぬけない言葉の羅列で終わらせておき、夕餉の後のことを考えて気鬱を覚えるのだった。

 

(こういう時に、オニキスが居てくれたならば『ここは万能の天才たる私が奇跡の御業を証明してあげよう!!』とか言ってくれただろうかな)

 

 居ない人間を求めてもどうしようもない話だが、ともあれ夕餉の後の為に『ライダー』のクラスカードは持ってきているのだった。

 

 

 上手い事……彼女―――潤んだ眼でこちらを見てくる一色愛梨に教えられればいいのだが、と思いつつも、夕餉の席に出した胃に優しく吸収される豆腐麺や豚の血で作り上げた刀削麺は好評のままに、再び追加を願い出られるのだった。

 

 

 † † †

 

 

 翌日。新人戦ミラージとは違い曇天の空の元……本戦ミラージは開幕しつつあった。

 

 

「なんだかこうして観客席で観戦するってのも久々な気がするな」

「そうよねー。セツナは、ピラーズからずっと出ずっぱりだったもの、そう思うのはしょうがないわ」

「友人として言わせてもらいたいけど、お前たちが有名人になりすぎたせいで、ここの注目度がとんでもないんだけどな」

「有名税ってやつだなレオ。それに関しては申し訳ない限り」

 

 これならば関係者席……一高のテントで見れば良かったかな。と思いつつも、ミラージ本戦は始まり、同時に『シルヴィア及び独立魔装の作戦』も始まりつつある。

 

「4人一組の予選を六試合。各予選優勝者六人で決勝戦を行うか。今さらながら光井も里美もタフにやったもんだな」

 

「そこは司波君の手際が良かったからね。というか昨日、一色さんとの特訓で『悠々』とやっていたキミに言われるとすごく嫌味なんだが」

 

 光井の少し睨むような眼と里美の苦笑するような顔に、こちらとしても嘆息するしかない。

 

 案外、ギャラリー多すぎた。流石に明日のミラージの為だと言ってミラージ参加選手は拒否したが、箝口令まで敷くことはしなかった。

 ともあれ……『形』にはなった。あれならば、深雪に対抗することも可能だろう。

 

『見ていてください。私の『ロジェロ』―――アナタの為に私は、『幻馬』に跨って多くの艱難辛苦に立ち向かいます』

 

 そんなメールが端末に届いて、拙いタッチタイプながらも達也に教えられたものを活かして返信を送っておく。

 

 かつてお袋がやった『呟き』の失敗のようなことをしないように、やけに慎重になりながら……。

 返信が完了した。一息ついた刹那に対して誰もが『アナクロすぎる22世紀人』と誰もが苦笑気味に思いながらも、端末画面を覗きこんでいたリーナは、若干違う感想を抱いていたようだ。

 

「―――リーナ。そういう検閲官みたいなことしないでくれよ」

 

「だってー……むぅ……」

 

「お前にとっても愛梨はもう友人だろ。俺にとってもそうだよ。深雪と当たることあれば、俺だって弁えるさ」

 

 教えた以上は激励を送りたい。

 先生も溺愛していた教え子が階位を上げるたびに、『ああ、また一人……あなたの元に私の生徒が―――』とか酔っ払いながら譫言言っていたし。

 

 色々推測出来ることあるが、結局のところ……誰かが誰かを教える以上……そこには繋がりが生まれる。

 

 嫌がっていても先生は、ロード・エルメロイⅡ世という役どころの『ウェイバー先生』は、生徒の事を気にしているんだろう。

 でなければ……『今すぐ逃げろ―――お前ほどの才、失わせたくはない』などと言わなかっただろう。そもそもそれを言った時点で時計塔への反逆なのだから。

 

 そして一時間後には、己の工房の結界を破らんと殺到する秘儀裁示局(ミリョネカリオン)の連中から逃げられなかっただろう。

 

 

「教える以上は俺は半端はしないよ。アイツが得た『幻馬』は、恐らく―――アイツだけの翼だ」

 

 そうして第一試合。小早川景子の試合が始まり、殆ど優勝が決まっているからなのか、それとも自分の手で総合優勝を決めたかったのか、若干意気込み過ぎている。

 

「前のめりすぎだ」

 

「うん。けれど有力選手も三高の長谷川さんだけだし、勝ちは五分五分じゃないかな?」

 

 光井の解説を聞きながらも試合は続き、静かな中に妖精たちの踊る姿。林立する円柱を足場にしてから跳躍の限り……平河先輩の仕立ては良かったのだが……。

 

「――――」

 

「ダメか……」

 

 気合いが入り過ぎていた。結果として長谷川選手の跳躍に当初は着いていけたのだが……。結果として接戦であり、そこで追い縋られたことで、精神的バランスを欠いて失速。

 渡辺委員長曰く『気分屋』という言葉通り。若干、乗り切れなかったようだ。

 

「達也さんが調整していたらば、どうにかなったかもしれないのに……」

 

「平河先輩にも、小早川先輩にも意地があったんだろう。実際、司波君が私達の原動力だったからね」

 

「だったらば刹那君が……」

 

「俺のは古式の極みだぞ。同じく意地があったよ。エリカのミスティック・コードみたいな如何わしいものとは違うからな」

 

 一科の中でも異質。二科においても異質。二つの両極が、先輩方を意固地にさせたのは間違いない。

 

 要は―――先輩としての意地である。そこを和らげるには刹那も達也も、若干―――『外れすぎていた』。

 

 第二試合は、深雪の出番だが―――そんな時に限って、いや―――そんな時だからこそ動いたのだろう。

 端末に届いたメールで刹那とリーナの『出番』となったようである。

 

「少し外す。シルヴィアが、留学関連の事で急用らしいからな」

「あの美人のお姉さん。USNAの軍人らしいけど、随分と空気が読めないわね……」

「修次さんと親しげに話していたからって、邪険にするなよ。お前―――渡辺委員長みたいだぞ」

「なっ!? そ、そんなんじゃないわよ!?」

 

 どういう繋がりかは詳しく聞いていないが、シルヴィアと旧知だったエリカの兄貴。千葉修次氏だが……。

 

 そんな現場……親しげに話していた現場を見てしまった渡辺摩利は。

 

『シュウの浮気者―――!!!』

 

『マ、マリ! 完全に誤解だ!!』

 

 などと昭和時代のトレンディドラマの如きチェイスをやって会場を変な空気にした一件。

 

 ともあれ、後で聞いておけば、もしくはナオツグ氏に聞いておけば、問題あるまい。としてリーナを伴い応援席から立ち上がり、衆目の眼が深雪だけに向いている隙を見てから隠形のルーンを発動。

 

 紛れ込んでいる『モンスター』を手短に始末していく。封印指定執行者としての顔を見せないように、刹那とリーナは、妖精たちの戦いを横目で見ながらも始末すべきものを見据えるのだった。

 

 

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