魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

137 / 420
今回で幕間は終わっているはずだったのですが―――余裕を見て残り一話使おうかと思います。

そうして横浜編になるかと思いますね。長ったらしく書いて申しわけない限りの新話どうぞ。


第120話『中条アズサの驚愕』

 校内は朝から足が地に着いていない空気に覆われていた。しかし、それで授業に集中を欠いてはダメだ。とロマン先生から言われるも、そういうロマン先生が、一番足が着いていない印象だった。

 

 

「それじゃ、午後授業は無いから、昼食が済んだらば校内案内の通りに行動するように」

 

 

 その言葉で授業は終わった。校内案内―――端末に届けられた情報から、それは分かっていた。

 

 今日の生徒総会からの演説会からの投票で、この一高の歴史が変わる……大げさな言い方だが、そういうことだ。

 

 生徒自治制度を大幅に転換する提案が―――まぁどうでもいいことだ。

 

「遂に今日だねー。やっぱり司波君が生徒会入りするのかな?」

「まぁそれが一番だろ。幹比古は一科への転籍を打診されているから、実質二年からの一科生だしな」

 

 エイミィのどこから手に入れたか分からぬ情報に、補足を加えて語りながら、それ以外の『イベント』に関しては耳に入っていないことに安堵する。

 

 うきうきしているエイミィの隣に十三束がやってくる。

 

 

「にしても、反対派か……なんだってそんなものが生まれるんだろう? 刹那君の授業で全ての敷居は取っ払われたのに」

 

「それでもやっぱり一科二科の違い―――純然たる国際規格の魔法力の違いを明確にしておきたい面子はいるんだろうな。

 ただ、それとて盤石な価値観じゃないことは、変遷から分かっているはず―――分かっているはずなんだけどなぁ……」

 

 聞くところによると、達也の親父もその莫大なサイオン量ゆえに『色々』あって母親と結婚させられたらしいが、その時点ですらサイオン量の多寡などあまり意味を成していなかったはずなのに。

 

 どうでもいいことを考えつつ、昼食を食ったらば魔弾の練習だと告げる。

 

「おおっ、流石はせっちゃん。イベント事があっても忘れずに教える態度に、あたしゃ感動しちゃうよ」

「キャラがブレぶれだぞ探偵」

「いいの? 生徒総会で何かやらされるんじゃないのかな?」

「前と同じくUSNA代表での席が用意されているだけだ。風紀委員会はもはや俺の所属じゃない」

 

 十三束の言葉にそう返しながら、彼の部活動の先輩もいたことを思い出す。その関連だろう言葉だな。と考えが至ると―――。

 

「セツナ―! ごはんごはん! ランチタイムの時間だわ―♪」

「はいはい。んじゃ食うとしようか」

 

 リーナの快活すぎて食欲旺盛すぎる言葉。現代のJKとしてどうなんだろうと思いつつも、これがリーナの素の顔だという事はB組一同理解していた。

 

 更に言えば、リーナの言葉を聞いて、どこからともなく五段の重箱を取りだす刹那の姿にB組一同唖然とする。

 

 入学初期から一学期までは3~4段で推移していたのに、最近の刹那は4~5段で推移しているのにとんでもない想いだ。

 

 

「九校戦は、俺の調理スキルをあげるのに絶好のチャンスだった―――俺はあの大会でまた一つ階梯を上げたぜ」

 

「「「「魔法能力じゃねぇのかよ!!!???」」」」

 

 非参加組―――後藤君も加えての言葉だが、参加組は、苦笑いを零すのみである。

 

「明智さん。そんなことがあったの?」

 

 恐る恐る問いかける十三束にエイミィは頬を掻いて答える。

 

「まぁね……。何だか勝利の影に遠坂刹那の料理魔術(クーレ・デ・ラ・マギ)ありなんて言われちゃっていたしね。実際、ものすごく美味しかったのは事実だけど……」

「本当、女としてのプライドがズタズタにされたわよ。しかも作業量がとんでもない……そして太らない!! 恐るべし遠坂刹那!! 一番美味しかったのは真鯛を使った『転生春巻き』!」

 

 加えて桜小路の何とも言えぬ言葉。九校戦参加組の胃袋と共に体調を考えたその作業……技術面での裏方と、体力面での裏方……噂は本当だったのか……などと考えつつも、恋人二人のランチタイムは邪魔出来ず。

 ランチが終わると、宣言通り魔弾の練習が始まる。……緩み切ったラブい空間からの切り替えの早さに舌を巻きながらも、若干の脱力……。

 

 そんな十三束の『緩み』が功を奏したのか『スナップ』の魔弾がいつになく快活に飛んでくれたことと無関係ではあるまい。

 

 狙っていたのかどうかは不明ではあるが……ともあれ、『ドロウ』の魔弾を放つエイミィと共に練習の成果を実感しつつ、生徒総会の時間になるのだった。

 

 

 今日が最後の風紀委員仕事というわけではないだろうが、達也をはじめいつも以上に気合入っている様子から察するに、何かあるのかと思っておく。

 いざとなれば、青の眼―――略奪の魔眼を発動させるべく眼を切り替えておくことにした。壇上に用意された特別VIP席と言うべき場所に腰かけながら、生徒総会は始まっていった……。

 

 概ね事前説明通りであり、普通に流れていく総会内容。あれこれと粗を探すほど暇なものはない。

 

 そうして、七草会長の二科生への生徒会入りの案件の段になった時点で、遂に動き出す反対派―――その中でも三年生の一科生。浅野という女子が挙手をして質問席に促される。

 

「四月当初にも仰られていた事でしたね。もしも―――IFとして、語るならば、エルメロイレッスンの功績なくば、あなたの言動はただの依怙贔屓、愛人採用を疑うしかなかったでしょうね」

 

「そのことは私も重々承知しております。実際、ここを志半ばで去ることを決めた司 甲くんも私の提案を『毒にも薬にもならない改革』だと称していましたからね。

 情、イデオロギーだけに拘泥しているような私だとすれば、今すぐにでも辞任しますよ」

 

「潔いですね。その潔さが他の人間にも通じればいいのですがね――――ですが、生徒会に実に潔癖とは言い難い人間を入れようという行動は、どうかと思います」

 

 そら来た。実にゲスな勘繰りである。潔癖とは言い難い人間。それが誰だか分からない刹那とリーナでは無い。

 

「私は院政を敷こうとは思いません。更に言えば、次の生徒会長を傀儡にしようという考えもありません。次の役員人事は次の生徒会長の専横特権であり、また教職員の先生方からも突っ込まれない人事をしなければ、承諾はされませんよ」

 

「―――ッ! つまり次の生徒会長になる人物には、エルメロイレッスンの講師役―――1-Bの遠坂君を生徒会に入れようという思惑があるんですね?」

 

「それは今度なるだろう生徒会長に問い質してください。筋違いな質問に答えるつもりはありませんので」

 

 暖簾に腕押し。そう言える七草会長の言動に旗色悪し。そうしてから―――しぶしぶ登壇から下がった浅野。

 

 今日に至る前に、七草会長の私的なボディーガードを達也に依頼しようとした渡辺風紀委員長だが、それを蹴って、というか却下したのは―――部活連会頭たる『十文字克人』であった。

 

『反対派とやらが、どれだけいるか分からんが、いま司波を『矢面』に立たせれば失点となるぞ。二科生への生徒会人事は、なべて潔癖で行うべきだ。

 私心がないことを示す為にも、今のお前は―――司波と余計な接触を避けろ』

 

 2020年代の天皇陛下の退位及び新元号の提案から発表まで、全てを秘密裏に行い情報漏えいを避けて、且つ世論などの動向や野党の言いがかりを避けるために、シークレットオブシークレットとしてきた。

 

 もっとも『方広寺鐘銘事件』のごとく言いがかりはつけるのだ。当たり前だが坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。そんな考えの人間はどこにでもいるのだ。その一人の攻撃が一度は不発となった。

 

「カツト会頭の『エモーション』は少し違ったんでしょうね」

 

「そりゃそうだろ。さてさて、この後はどうやって出てくるだろうかね」

 

 リーナと言いながら、出方を窺いつつ中条先輩の演説を聴く。聴く最中に野次が飛ぶかと思ったが、それは無かった。

 そして演説を終えると同時に再びの浅野の登壇。

 

「前生徒会長の路線を受け継ぐということは、二科生を入れるということは継承するのですね?」

「もちろんです。私は情だけでそう考えているわけではありませんから、真由美さんとは少しばかり違いますね」

「お考えを聞かせていただきたいですね」

 

 しっかりと質問者でありクレーマーとも言える浅野を見ながら、口を開く中条先輩の言葉が聞こえる。

 

「はっきり言えば、この第一高校及び魔法科高校における一科二科制度こそが、組織の硬直化を生んでしまっている原因なんですよ。

 言うなれば、視点が一つしか無いからこそ、偏重が出てくる。

 どんな組織でもイエスマンや同じような視点の人間ばかりでは、いずれは緩やかな消滅が待っているだけです。

 例を上げれば、かつて「愛人」の考えを採用したからこそ、組織に回復が容易ではないダメージを与えた『三越事件』。トップダウン方式で己の考えに拘泥した『織田信長』―――本能寺の変は有名ですからね」

 

「……つまり二科生を入れることは、組織の新陳代謝をするためだと?」

 

「私達がいる東京都の基礎を築いた『神君 徳川家康公』は、忠義者を多く持つ武将でしたが、それ以上に新しい人間や長年の戦い相手であった人間を取り込む考えも持っていた人間でした。

 うち一人は有名な『井伊家』。新参でありながら徳川四天王の一人として扱われるこの人間がいたからこそ、家康公は組織の強固さを担保できた。他の武将もその類です。

 その考えに則って私は二科生を入れたいのです。

 でなければ、いずれは織田・豊臣のような短命政権に終わりますから―――それは歓迎せざる現象ですしね」

 

 理路整然というかツッコミどころを探そうとして、探せない浅野は口ごもるしかない。

 

 先例―――しかも歴史に裏打ちされた事象を例に出されれば、簡単に否定も出来ない。

 何より魔法師の歴史が『短い』からこそ、十師族制度にも似たものしか出来ていないことを考えれば、ここで古臭いと言っても負け惜しみにしか聞こえない。

 

「だとしても、そうじゃないかもしれない! そう考えた事はないんですか!?」

 

「無いですね。私が短命政権に終わると称したのは、何も私の組織する生徒会そのものではありません―――魔法科高校そのものの『消滅』すらもあり得ますから」

 

 その言葉で全員がざわつく。この女は狂っているのか? そういう声も聞こえるが―――その一方で気付いた人間もいる―――。

 

「九大竜王―――その上にいる『神代秘術連盟』……ご存じの方はご存じのはず―――確かに世界的な魔法師ライセンス取得のためならば、この魔法科高校という学校は、とてつもなくいいのでしょう。

 ですが、本質的な、根源的な『力』を求めるならば、そちらの『山』に身を投じる人間もいるはずです。

 何も―――魔法科高校でなくても『力』を着けられるならば―――そういう考えもいずれは出てくるでしょうね」

 

 更にざわつく。思い切ったカードを晒してきたものだと思う。決して妄想の空想というには、想像の外にあるものではない。

 だが突きつけられたものは、一科生の意識の中にもあったものを刺激した。つまり―――下からの突き上げ、追い落とされるのではないかという不安感を―――。

 

「付け足して言えば、刹那君が主導する授業がスタンダードになっていけば、そちらが主流となってしまう可能性もありますよ。

 現代魔法は時代遅れの古物となり、現代魔法と呼べるものがエルメロイの秘術に成り代わる―――そういう懸念です」

 

「そんな……ばかげてるわよ……別に現代魔法……一科生が……劣等生になるなんて―――」

 

「今すぐではないでしょう。けれど、今からやっておいて遅いということは無いと私は思います。

 魔法師の立場がまだまだ盤石と言えない以上、変化は起こります――――その為の備えは必要です」

 

 十師族制度の創設者が制度の破壊を求めたように、明日には魔法師社会の変化がどうなっているかは不確定なのだ。

 足元がぐらついた想いで後ずさる浅野先輩が気の毒になるほどに、中条先輩は今ここにいる『一科生』たちを『脅している』のだ。

 

『いいのか? このままいけば、明日にでも遠坂刹那は魔法師社会を支配するぞ?』そういうことだ。

 脅し文句としては陳腐だが、こんな感じだろう。

 

 だが、それを明確に否定できる論拠も根拠は無い。論拠も根拠も無ければ―――あとは個人攻撃に切り替わるのみだった。

 

 

「……中条次期生徒会長の考えは分かりました。大変に先を読んだ。未来を考えたいい意見でしたよ―――ですが、二科生の力のもとたる遠坂刹那君まで生徒会入りさせるのは、どうなんですか?

 生徒会入りを理由にエルメロイレッスンを休講多めにして、シールズさんといちゃつくだけじゃないんですか? 忖度したんじゃないですか? どうなんですか!?」

 

「流石に、校内でも有名なカップルですからね。そしてリーナさんは私の下で生徒会業務をやってくれていた後輩です。少しは労わりたい気持ちもありますよ」

 

「ならば、それはアナタの政策の破綻に繋がるのではないですか?」

 

 その言葉を最後に盛大な野次が飛ぶかと思ったが、そんなことは無く――――。シーンと静まり込む会場。

 レッスンを中断してほしくない想い、同時に嫉妬心やら、リーナや刹那への同情心―――綯い交ぜとなって、どう言えばいいのか分からなくなる。

 

 会場の空気を読んで、刹那は進行役である深雪、もしくは服部副会長に発言の交代を要求する。

 

『その質問に対する回答者には中条候補では不適切だと判断します。

 回答者の交代―――エルメロイレッスン主催である遠坂君に答えてもらうのが適任ですので、登壇お願いします』

 

 深雪の言葉を受けて立ち上がり、それを見た服部副会長が無言で首肯してきた。それは寧ろ懇願に近いのかもしれない。

 ―――中条を助けてやってくれ。そんな無言のメッセージに聞こえた。

 

 言われずとも―――そういう想いで、中条先輩からマイクを受け取る。

 

 その際の視線の意味を違えない。

 

「中条あずさ会長候補に代わり回答を承りました。1-Bの遠坂刹那です。最初に言っておきますが、俺とてTPOは弁えてます。千代田・五十里のナンバーワンバカップルに比べれば、普通です」

 

 その言葉に「ええー?ほんとにござるかぁ?」という顔が何名かに見えたが、構わずに言っていく。

 

「流石に生徒会室でいちゃつくことは無いと思いますが、まぁ外国からの一種の交渉事をリーナだけに任せておくのは、もはや心苦しいんですよ」

「それは聞いていますが、だからといってエルメロイレッスンを中断させることは、無責任じゃないですか!?」

「答えてくれ遠坂!」「俺たちも情の無いことはしたくないんだ!!」

 

 それが同情を装った反対派の口撃なのか本心なのかは分からないが、ともあれ考えを数秒で纏めて話す。

 というより最初っから攻撃手段は決まっていたのだ。

 

「無論、俺も責任のこなせる範囲ではこなしていくつもりです。ですが、どうしても物理的限界が定まってしまう……身体が二つか三つあればいいのに―――という想いで、九校戦期間中はアシスタント講師を探すつもりだったんですよ」

「ワタシと婚前旅行しながらね♪」

 

 リーナの茶々入れの言葉に深雪のピコハンが炸裂。ともあれ、そういった事情は既知であった。九校戦に出場できない連中から唾棄されたと言ってもいい事件の顛末を―――。

 

「アシスタント講師、サブ講師を見つけること出来ず二学期を迎えるはずでしたが……期せず、『有名人』をスカウト出来たので、今後は俺とその有名人との二大講師制でいかせてもらいます」

 

 有名人―――その言葉にざわつきが広がる。果たして誰なのか―――そもそも、そんな人間が、そこら辺に下野していただろうか。

 そんな想いが生まれたのか、じれったく思ったのか、『誰なのよ―――遠坂―――!!』と平河の大きな声が響いた。

 その言葉に、ありがとう。そしてありがとうであった……。

 

「USNAにおいて彗星のように現れて、多くの特級魔法師たちのCADを開発してきた現代魔法と古式魔法のどちらにも明るく、そしてトーラス・シルバーと並ぶ魔法技術者―――ご紹介させていただきましょう。この方です!!!」

 

 ざわつきが最高潮に達した時、講堂の扉を開けて入ってきたその姿―――一番後ろにいた人間は仰天して大声を上げた。

 トーラス・シルバーと違って、その技術者は何度か世間にその姿を晒してきたのだから当然だ。世界的に有名なCAD技術者―――逸品ものを作ることにすぐれた芸術家肌の人間。

 

 ロマン先生に付き添われて真ん中の道を歩いてきたその『女性』は、完璧な美の象徴でもある―――正体を知っていれば萎えること間違いなしだが、万能の天才である彼?彼女?からすれば性差など些末事。

 現代の『リザ・デル・ジョコンド』にして『魔法のジョコンダ夫人』―――そう称される存在だった……。

 

「ここまででいいよロマニ。それとも君も何かあるのかい?」

「いいや、ともあれ君の演説を近くで聞かせてもらうよ。レオナルド」

「かしこまっ☆―――では刹那、マイクを貸したまえ。新任一発目。はりきってイージーリスニング出来るように声を張らせてもらうさ」

 

 その言葉で回答者としての壇をゆずる刹那。

 

 変わって登壇したのは、とてつもない美女だった。

 ウェーブかかった茶黒の髪に、現代的な衣装と神秘的な衣装を『科学的』に融合させたその姿を、真正面に捕えた全員がざわめきを強める。

 

 

「私の事を知っているものもいるだろうが、この国およびこの学校においてお初だろうから、挨拶させてもらおう。

 私の名前は『レオナルド・アーキマン』。

 USNAにおける魔法師にして魔工師でもある―――が、まぁ気軽に私の事は『ダ・ヴィンチちゃん』とでも呼んでくれたまえ。

 レオナルド先生なんてしゃっちょこばった呼び方は好かないからね――――ともあれ、今期から私の友人にして弟子でもあり、師匠でもある刹那の招きに応じて、エルメロイレッスンの片翼を担わせてもらうことになった。

 やりたい事や質問事項があるならば、私にも聞きたまえ。リーナと刹那がいちゃこらしていて聞けない場合も可! むしろそっちの時に来たまえ!!」

 

「「「「「……………」」」」」

 

 ハイテンションすぎる『ダ・ヴィンチちゃん』の言動に誰もが溜め込む。茫然とした後に、呆然を超えて―――言葉が溢れだす――――。

 

『『『『レ、レオナルド・アーキマンンンンン!!!!!!』』』』

 

「ほ、本物なんですね―――!! 刹那君!! 寧ろあなたが会長に――――!!!」

 

「静粛に!! で、ではダ・ヴィンチ女史。一度降壇をしてください。というか私、あなたの声に聞き覚えが……と、とにかく! 先に生徒会長信任の投票を行います!!!」

 

 信任されるべき生徒会長が一番興奮しているという現状にモノ申したい想いとかありながらも、エルメロイレッスンが存続していくことに安堵したのか、それとも有名人の登場に様々な不平不満が消し飛んだのか―――。

 

 深雪の言葉を受けて古式ゆかしい(?)紙による投票が為されて―――その間、誰もがそわそわしながら、ロマン先生と談笑するレオナルド・アーキマンを見ていた。

 まさか偽物? いや本物? そっくりさん? 

 

 色々な疑念や疑惑もあったりしたはずなのだが、即日開票―――無記名投票とはいえ、生徒会及び有志でもある部活連などの手を借りて、目の前で公開開票した結果―――450票以上もの得票を受けて、中条あずさ新生徒会長が誕生したのだ。

 

 

「では、新生徒会長には少し気が早いですが、新任の挨拶をいただきましょう。中条会長よろしくお願いします」

 

「は、はい!―――えーと色々な反対意見とかもあると思います。無論、決して実力や私の言葉が皆さんの心に届いた結果だとは思っていません。

 けれど、私が述べた決意表明は変わりません。そして、負担が大きすぎる遠坂君を救おうとして逆に違う負担を押し付けるも、リーナさんと仲を引き裂きたくありませんでしたから―――

 だから……これから魔法師としてそして人間としてステップアップするためにも、もう少し他者を分かりあいましょう」

 

 でなければ、本格的に人類社会から『敵視』された時に、妙な分断を生むかもしれないのだ……。

 

 そんな不安げな中条新生徒会長に対して、誰に言われることもなく登壇する『魔法の杖』に新生徒会長は緊張しつつも前を向く。

 

 

「いやいやアズサ君。キミの言葉は舞台裏で聞いていたが、なかなかにいい演説だった。でなければ、この結果は無かったよ。

 キミの言葉が、少なくとも450人もの生徒に共感してもらえた証左だ。誇りに思いたまえ―――キミは『偽らざる言葉』という魔法で、みんなの気持ちを動かしたんだからね」

 

「レオナルドさん…」

 

「気軽にダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれよ~。生徒会長であるキミが親しげに呼んでくれないと、他の面子も真似できないだろう?」

 

 わざとらしく大げさに落ち込むダ・ヴィンチに対して、刹那としては苦笑いするしかない。同時に『正体』に気付いた面子も苦笑いするのみ。

 

「ええっ!? 私にとってシルバー様と同格以上のCAD技術者をそんな風に呼べませんよ!!」

 

「ふむ。どうやら私の言葉ではアズサ君の気持ちは変えられないようだ。刹那ーどうすればいい?」

 

 

 そんなことは既に決まっている。中条先輩に対して有効なのは―――袖の下として渡すブツ―――即ち……。

 

 

「ダ・ヴィンチちゃんが作った作品をあげればいいと思う」

 

「ではお近づきの印として、このCADを上げよう。キミの『弓』を参考にして刹那と共に作り上げたものだ」

 

 ざわつく一同。そしてそのブツが『本当』にレオナルド・アーキマンの作品かどうかで変わるわけであり……梓弓のように展開された魔法弓の威容。

 

 CAD技術に明るい連中による真贋のほど……果たして鑑定結果は――――。誰もが息をのんだ。

 

 

「ほ、本物だぁ……うへへへ! レオナルド・アーキマンの逸品もの『ダ・ヴィンチコード』の一つが私の手の中に!! 感動でもはや一週間は眠れそうにありませんよぉ」

 

「――――確かに展開された弓の意匠及び、使われている素材、魔力の循環効率……『起動式』(なかみ)は見えないが間違いない」

 

「驚いたね。本当にレオナルド女史だったなんて、北米で刹那君と知り合ったんだろうけど、今まで『どこ』にいたんだろう?」

 

 渡された中条あずさと、驚愕した目で見る司波達也、そして純粋な疑問をぶつける五十里啓と―――九校戦メインエンジニア三人の太鼓判で伝説のマイスターであると信じられた。

 

 しかし―――その声が、どことなく『魔法の杖』と似ていることに気付いた面子が、何となく『正体』を察したが、この場では余計なことを言わないでおいた。

 刹那のウルトラCで後顧の憂いを断ったことが、一高改革を加速化していく。

 

 情ではなく力―――無論、その背景には今まで補欠とされてきた人種を引き上げるというものがあったが……中条あずさが、予言した内容は若干ばかり未来の姿を言い当ててもいたのだった……。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。