魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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多くの人々は八華のランサーのライバルの中の人は、ゆかりんと思っているが、私のシンフォギア脳では、バーローの人。天道なびきは、私の女性観を変えたキャラである。

実装されるとすれば、これが本当のファイナルとかで『ぐだイベント』で出てくるだろうか、そんな妄想をしながら最新話どうぞ。


第128話『魔宴の双雄曲』

 その時――――、煩わしい攻撃を先程から放っていた人間……恐らくサーヴァント相当の力は蓄えているものから、魔弾と宝具の驟雨が降り注ぐ。

 

 魔力の暴圧は王貴人に降り注ぎながらも、大亜のガンフーの同志たちも狙ったものであり、悪辣なものだ。

 それでいながら、下の仲間たちは既に退避しているとか、腹立たしい限りだ。

 

 だがそれらを、妲己三姉妹の末女は封殺しきった。戦車を召喚した王貴人の『真価』を遠くから見て悟った刹那は、マズイな。と気付く。

 

 

「幹比古、美月を連れて逃げろ。どうやら相当なババを引いちまったぞ俺たちは」

 

「拙いのか?」

 

「説明は省くが、あの戦車の『霊基』もとんでもないんだ。しかも『王貴人』と来たとなれば、性悪キツネの関係者であることは間違いないからな」

 

 魔術師『遠坂刹那』の言葉としては、正しく頭が痛くなるものだ…………。そして汗を流しながらも笑って言う刹那に、『本当にマズイんだな』と気付く幹比古、美月……。

 

 

『マズイな。まさかあれ程の霊基とは―――こいつは想定外だ♪ 私も、そちらに向かおうか?』

 

 魔力計からの通信音声で、あちらも状況を確認したようだが、刹那はそれを否とした。

 

 疑似的なサーヴァント体を取れるオニキスがやって来てくれれば千人力だろうが、今はまだ、こちらの『手札』全てを晒す気にはならない……。

 

 ならば、一つだけだ……前々から考えていたことだが、こちらもちょっとばかり試したいことがあるのだ。

 

 そもそも地脈の関係や『大聖杯』みたいな『大呪体』が無くても、サーヴァント召喚が出来るとか、ちょっとこの世界舐めてる気がしてならなかったのだ。

 

 もしかしたらば、どっかには『何か』あるのかもしれない……。

 全く以て開発されていない『霊墓アルビオン』を抑えている俺が言えた義理じゃないが。

 

 ともあれ―――やることにした。出来うることならば、ヘタイロイの家臣となった英霊『ウェイバー・ベルベット』とか呼びたいのだが、そうなれば……何か違う想いばかりになりそうだ。

 

 自分の『世界』(ココロ)には確実にいない『英霊』を『喚び出す』……南盾島以来考えていたことを実行に移す時だ。

 

 

「やる前から無駄かどうかなんて分からない。やったあと無駄にするかどうかは自分自身―――か」

 

 魔術師としては、実に愚言だ。だが、それでも―――ヒトとして、男として、目指すべきものぐらいあってもいいはずだ。

 俺が見てきた男たち―――追いつきたいと思った背中は、『無謀』な挑戦をしていく人間達だった。

 

 だから……無謀をやって、無駄かどうかは自分で決めればいいだけだ。

 

 

「刹那、何をするつもりなんだ?」

 

「ちょいとばかり、サモーニング(召喚術)コンジュアレーション(招来術)の上位版を、試してくるさ」

 

 そもそも出来るかどうかは分からない。ノーリッジの前学部長ですら、あれこれと画策した上に刹那の『地元』を利用した挙句、先生の宝物を盗み出してやったのだ。

 それならば、自分の『世界』から『引っ張ってきた』方がマシかもしれないが、とにかく同じ土俵に立つことで相手を上回る―――それが重要だ。

 

 今までの狙撃地点。晴海にあるマンションでありビル―――。

 

 そこから向こう岸にある築地市場まで飛んでいく。幹比古の驚いた言葉を聞きながらも、飛行魔術を発動させて二つの刻印を最大展開。

 

 虚空に魔法陣を作りあげて、それを伴いながら飛んでくる姿は正しく魔術師の本懐とも言える。

 

 江戸幕府の開祖にして神君『家康公』が整地した江戸の街の霊脈は、自分もはっきりと認識している。地脈を利用して自分の『世界』を利用して、亜種聖杯を作り上げる。

 同時に星の脈も利用する―――ここまで煩雑な術式を利用して呼び出したサーヴァントが……自分に従ってくれるかは、分かったものではない。

 

 

 だが―――。

 

『負けっぱなしは許さないわ。いつでも一番になれとまではいわない。自分の得意なことでは絶対に相手を上回りなさい―――これからの遠坂家を作り上げるのは、アナタなのだから』

 

 御三家の一人として、冬木の土地を離れた何処までもダメな(管理者)に出来ることなど、これだけだ―――。

 

 足元の虚空に刻まれた魔法陣に、左手を翳して魔力を循環させていく…………。

 

「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。

 降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)閉じよ(みたせ)

 繰り返すつどに五度。ただ、満たされる刻を破却する

 

「―――――Anfang(セット)

 

 瞬間契約(テンカウント)もの呪文の詠唱となると、流石に刹那も魔力の循環が凄まじく痛みを発する。

 

 内側から肉食獣か何かに食い破られるような感覚。全身の精気が魔力へと変換されているからだが、どこまでも術者を苛むものだ。

 

 だが、この痛みも不快感も全て魔術師ならば、受け入れるべきものなのだ―――。

 

 受け入れた上で高次の世界に自分を繋げる―――。召喚の触媒は無くても構わない―――のだが、何か『異物』が繋がった感覚がある。

 

 しかし、もはや止まらず更に言えば、こちらを最大の脅威と読んだライダー(?)が戦車で吶喊してくるのだ……。

 

「――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

 誰が来るかは分からない―――。それでも、自分のここまで生き残ってきた運命や全てを呑み下して、呼び出す。

 

 一層循環する力を元に最後の精髄を引き絞る。イメージとしては胡麻などの植物から油をギリギリまで抽出するような作業の元、魔術師『遠坂刹那』の大儀式魔術は完成の時を見た……。

 

「誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

 そして―――運命は引き当てられるのだった……。

 

 ・

 ・

 ・

 

 

 襲撃から小百合を守ると同時にキャビネットのプラットホーム……昔風に言えば駅のホームまで送ると、これ以上の襲撃を避けるためか、押し付けるように去り際、瓊勾玉が入った箱を渡される。

 

 内心では達也から離れたいが、二回目の襲撃を恐れて、達也から離れることはマズイ。そういう二律背反の状況で、そういうことになった。

 

 あからさまな渡し方は、どこにいるか分かったものではない襲撃者へのアピール……とまで達也が深く考えるほど小百合の方も考えていたかは分からないが、達也はそれで一段落すると同時に……何気なく箱の中の瓊勾玉を見ると―――光り輝いていたのだ。

 

 同時に感じる―――『戦略級魔法』で感じ取れるような想子波動……それは、約三年前のUSNA方面に感じ取り、最近では南盾島付近で一回。

 

 間違いなく刹那の『魔術』の発動。それも魔術師的な感覚で言えば、大規模な儀式魔術……そういったものを執り行っている。

 

 エレメンタル・サイトで波動の周辺に眼を向けたかったが、あまりにも濃密な魔力の霧が発生していて、達也の眼では詳細が見えない。

 

 だが築地周辺であることは間違いない。築地一帯が『異界』も同然になっていた……。そして―――恐るべきことに、瓊勾玉から『声』が聞こえてきたのだ……。

 

 四月から休日でも聞かぬ日は無かったとも言える男の声……遠坂刹那という魔術師の声だった……。

 

 

『――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ』

 

 刹那の呪文詠唱。現代魔法では既に廃れたそれは、『力ある言葉』として『世界』を変革する。

 

『誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!』

 

 

 そして―――世界はまた一つ違うものになる―――そういう予感がする言霊の羅列を達也は一言一句逃さず聞いたのであった……。

 

 勾玉から光が失われ、そして儀式は成功したのだろう。そんな確信を持てた。

 

 

 † † †

 

 眼下に迫りくる戦車。その勢いは地上から天空に『昇る』彗星の如きものだ。

 

 戦車の馬は―――いつの間にか巨大な狐になっていた……。恐らく護法山神の系譜の術なのだろう。

 

 刹那は詳しくないが、日本の法術系統に類するもの……馬から強制的に狐に『変化』させられたが、神代の馬だけに霊性は高いようだ。

 

 などと分析しつつも、失敗したかと思うぐらいに、サーヴァントが出てこない―――などと思っていたのだが……。

 

 虚空に刻んだ魔法陣からこの世ならざる稀人が遂に現れた―――。

 

 稀人はすぐに敵を認識、その手に携えた槍を眼下の騎兵に向けた―――。

 

 

「いつの時代も世界は戦いに満ちている。そしてそのイクサバを駆け抜けるは、防人の宿命―――要は、全殺し確定ということで! 

 死ねぇ!!! フェイカー(贋作屋)!!!! 私の槍は、痛いですよー!!!」

 

「――――!!!」

 

 後ろ姿しか認識出来ないのだが、こちらから見えているフェイカーと呼ばれた女の表情が恐怖と驚きに歪んでいるのを見て、どんな顔をしているんだよと疑問に思いつつも、言葉からロクなサーヴァントじゃないかと内心で感想を出したのだが……。

 

 

「失礼ですね! 後ろのマスター(ツルギ)!! 私を引き当てた幸運を後で知っても知りませんよ! 知ったならば、美味しいお酒と梅干を献上してもらいます!!」

 

 もはや接触まで数秒しかない中でも、軽口を叩くサーヴァントは―――その瞬間、落下していた己が身を緩から急へと変じて戦車の動きを牽制した。

 

 その時には既に方向転換が不可能なベクトルに至っており、槍兵の攻撃は止められず戦車ごとサーヴァントを狙う。

 袖の長い服から鍔の無い白木の柄の剣を出して、それを握りながらも長槍も持つという奇態な戦闘スタイルを取って、空中と言う姿勢制御が難しい中でも、繚乱に得物を振るってフェイカーに迫る。

 

 ある程度の防御力場があっただろう御者台だが、それでも肉薄されれば、乗り込まん勢いで掛かられては、制動が効かなくなる。

 

 彗星の勢いを減じて、明後日の方向に逃げていく大狐馬の戦車……。

 

 滅茶苦茶すぎる戦い方で騎兵を壊乱させたのだろう……そして『ランサー』は、霊体となって一時的に消え去り、後は落下制御の術式で築地の荷揚げ場に降り立つ刹那。

 

 優美な落下と着陸というほどではなかったが、何とか波止場に降り立つと同時に、霊体化を解いて現身を晒すサーヴァント。

 

 今さらながら『右手』の甲に紋様が刻まれていた……。まさか『このシステム』まで再現されているとは思っていなかった。

 

 だが、そんなことは……どうでも良かった……。

 

 現れたのは、自分達と同じか少し年上―――少女―――というほどではないが、見ようによっては少女にも見える―――そんな人間である。

 

「サーヴァント。ランサー、ここに参上仕りました。

 ―――問いましょう。あなたが私のツルギですか? ―――ならば、良し―――さてさてこれでも、軍神、龍とも呼ばれた身。

 たかが空飛ぶ狐2匹、地に落とせずして虎を(あざな)には持てませんよぉお!! さぁ! マスター(ツルギ)、ご命令を下さい!!」

 

 銀髪ながらも真ん中は黒髪で分けられて、出自をはっきりとさせない英霊。その身に纏う鎧とか得物と白の長衣を合わせた衣装が……外連味たっぷりながらも、全てが、どこまでも似合うサーヴァントだった。

 

 

 だが、それ以上に感じるものは―――言葉こそ丁寧で自分をマスターと言ってくれているのだが、何か命令しなくても戦いに赴きそうな勢いを感じる。

 

 むしろ「命令をくれなければ斬り捨てます」と言われている気分だ……。うん、実はバーサーカーなんじゃないかとか思うも……戦おうとしている戦士を止めることは出来ないものだ。

 

 

「いいだろう。ランサー、手助けはしない―――ここで、お前の力を見せてくれ」

 

「委細承知!」

 

 片手に長柄の槍を持ち、片手に鍔無しの直刀を持つ……それがランサーのスタイルだ。

 

 そうしていると、空中から狐馬が大地に帰還を果たした……フェイカーのサーヴァントが戦車と共に降り立つ。

 

 

「まさか英霊召喚の御業を、ガンフー以外にこなせるものがいたとは―――」

 

「俺がアナタを呼びだせたのは、ほんの偶然だ……あの男のように、狙ってやったものではない」

 

「だとしても―――ガンフーが私の主人様(マスター)だ。命令してくれ。撤退でも戦闘でも何でもこなそう」

 

「やられっ放しは癪だ―――が、今の俺では勝てそうにないな……部下を救出する時間が欲しい。槍兵と他の連中を足止めしてくれ、王貴人」

 

是了承(りょうかいした)

 

 その言葉を受けて、治癒術式を受けていたルー・ガンフーが、御者台から降りる。降りたと同時に手綱を振るって前進―――いや、突進を仕掛けるフェイカーの姿。

 

 彼我の距離20m程度。停止していた乗用車がエンジンを入れて、アクセルを踏んで最高速に乗るまでに、まだまだ時間があり距離があるはずだ。

 

 だが、フェイカーの乗る戦車はそういった常識などから理外のものだ。騎馬とて最高速になるまで時間がかかるはずの物理法則を越えて、一気に距離を詰める。

 

 迎え撃つランサーは不動だ。その突進を食らえばものの見事に吹き飛ばされる。ウエイトの差は歴然―――だというのに……。

 

 

「おおおっ!!!」

 

 裂ぱくの気合いと同時に振るわれる槍。前から掛かる重量物の突進を諌めるように、打ち砕くように打突が振るわれる。

 

 紅い狐と蒼い狐との眉間から眼などを狙った攻撃に、突進の勢いは崩れる。その打突の数は常人に見切れるようなものではなく、殆ど戻りの隙も無く、連突が決まったようにしか見えなかった。

 

「将を射んとすれば、まずは馬から―――犀川にて武田の騎馬兵を打ち取ってきた、我が武技を舐めないでもらいましょう!!」

 

 槍兵と言えども歩兵の部類だ。集団を使っての槍衾(ファランクス)でも形成して、騎兵を止めるならばともかく、一騎どころか一人でこんなことをするなど。

 轟音と豪圧で以て騎兵を寄せ付けない槍兵。ありえざる現実ではあるが、サーヴァントが相手ならば、別にあり得ない事象ではない。

 

 先程まで自分の『偽臓』を貫いていた槍の持ち主とて、神代の時代の戦車を叩き壊して、『騎士になる』と王に認めさせたのだ。

 

 英雄であるならば、常人の理などあってないようなものだ……。

 

「踏みつけろ! (イェン)! (スウイ)!」

 

 だが、フェイカー……本来ならば、ライダーに遇されるには騎兵としての伝説に欠き、どちらかと言えばキャスターに位置していていいはずの王貴人だが、それでも知られざる伝承……変化をする馬―――霊獣を妲己から与えられていたのだ。

 

 伝説は多少の変化を果たしていたが、それでも周軍との決戦において、甲冑を身に纏い巨馬に跨って戦いに臨んだことが、彼女をライダー寄りのクラスに位置付けていたのだ。

 

 狐馬は、その一踏み一踏みで大地に炎の呪詛を、氷の呪詛を与えていく。そしてその蹴撃を躱そうと思えば横っ腹に逃れるしかない。

 

 

「成程、納得しました。あなたは確かに武術の心得。恐らく仙人の域に達しているようですが―――」

 

 盛大な踏みつけ(スタンプ)。元は馬、現在は巨大な狐―――幻獣クラスの幻想種の一撃が、更に朽ち果てた築地市場を破壊していく。

 

 そして必殺のタイミングで放たれたそれに対して、躱しは―――横に来るはず―――そう、前回のヨコハマという土地の港で剣士とやり合った経験が、王貴人を慢心させた……。

 

「ですが、搦め手には弱いようですね。策略に長けた存在が、いれば違ったのでしょうが!!」

 

「ランサー!?」

 

 ネコのように軽々と飛んで、槍と刀を振るってくる槍兵の姿に驚愕する。如何に敏捷のステータスでは最速を誇るランサーとはいえ、こんなことが出来るのか。

 

 スタンプを直前で躱して何の助走も無く上に飛んだのだ。脚力の異常さは、完全に戦闘道士級。

 

 

「その首、貰ったぞ!! 玉石琵琶精!!! 我が一太刀を快く受けろ!!!」

 

「冗談!!!」

 

 決して広くはないが、それでも乗り込まれては困りもの。時々狐馬を踏み台にして、御者台に飛び移ろうとする槍兵を落とすべく、銅剣を振るって同時に弩弓―――『万里起雲煙』を用いて矢を放つ。

 

「光陰矢の如しとは言いますが、私にはそういうの効かないんですよ!! 軍神の加護を受けた我が身は、魂なき飛び道具を受けない!!!」

 

 隙間なく撃ちだされた炎の矢の全てが、槍兵に当たるを良しとせず、虚空に消え去る姿は何の冗談かと思う。

 

 そして軍神の加護―――そう言った槍兵に対して戦慄をする……この女は―――ステータスには見えないが『神性』を得ているのだと……。

 

「にゃ―――!!!」

 

「ナメてるの!? というかアンタ眼が怖すぎるわよ!?」

 

 言いながら、狐馬に容赦なく槍と剣をぶっ刺してから、大きく飛び退く槍兵を追う気にはなれなかった。既に築地市場は廃墟からあちこちが更地になっていた……。

 

 狐馬の背中から地肌を見せた路面に降り立った槍兵は、得物を構え直して、こちらを見据えて言ってくる。

 

「では仕切り直しですね。きっといつかこの『戦争』には、『ハルノブ』が来るはずです。その時の為にも―――私は、アレ以外の騎兵には負けませんよ!」

 

 黄金の眼を爛々と輝かせる戦姫に頭を痛めながら、怒りを覚える。

 自分はただの『前座』か、舐められたものだ。本当に舐められたものだ……! もはや容赦はしない―――完全なる疾走形態で、この生意気かつ恐ろしい『サイコ女』を殺すのみ。

 

 魔力を溜め込み―――『姉様』の力を解放しようとした時に……轟雷の限り―――申公豹の雷公鞭の如き一撃が築地全体を襲う…………。

 

 英霊同士の超常の戦いに水を差すならぬ……雷を落とされたのだった……。

 

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