魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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過去最高の短さ。

五千文字以下ですが、どうにも長ったらしくなりそうなので、とりあえずアップロード。

もしかしたらば、書き足すかもしれないですが、とりあえず最新話どうぞ。


第129話『魔宴の終曲』

 そんな英霊たちが二人だけの世界にイっちゃってる間、刹那達が何をやっていたかと言えば、ちゃんと色々とはやっていた。

 

 ズバリ言えば、工作員たちとの戦闘に入っていたのだ。大亜連合『軍』。ないし大亜細亜人民解放軍とも言える連中は、不意の襲撃を受けたことで、増援を求めたようである。

 

 逆探知される可能性も埒外ではなかったにも関わらず、友軍に救出を願ったその心意気に―――どうやら指揮官は答えたようで、盗難車だろう車で築地に駆け付けてきた。

 

 

「無茶苦茶ね。ここまでの大騒ぎになった以上、退きどころ(HURRY BACK)は難しい限りよ」

 

「流石に警察も、大騒ぎで駆けつけてくる頃合いだな……」

 

 追撃せずに黙って退かせるかとも思うのだが、あちらの虎の子であるフェイカーのサーヴァントが、刹那の召喚したランサーのサーヴァントに押されっ放しなのだ。

 

 退くに退けない原因は、こちらにあった。だが、だからと言ってランサーに任せてしまった以上、こちらからストップを掛けるのも悪い。

 

 何より……。

 

 

「ツェルベルス・パンツァー!!!」

 

「ゆあらっしゃあああ!!!」

 

 達也組の切り込み隊長二人がランサーに触発されたのか、増援に駆け付けた連中ごと叩きのめしていくのだ。

 

 こちらを制止することも若干出来ないでいるので、どうしたものかと思っている……と―――。

 

 

「セツナ!」

 

Fixierung(狙え),―――EileSalve(一斉射撃)!」

 

 リーナの警告を受ける前から分かっていたことだが、俊敏な獣―――白虎の姿を模倣して、白虎と化した人喰い虎が迫りくる。

 

 その接近を阻むように全力のガンドの射撃。もはやオーバーキルも同然の呪弾の連射が、ルー・ガンフーに叩き込まれていく。

 

「―――Zerstören(爆ぜろ)!!」

 

 叩き込んだ呪詛を一種の爆弾も同然にして、呪波として叩きつける。動きが鈍った所で魔弾を放つ。

 

 燃費のいいランサーなだけに、宝具を開帳していなくてもこちらに負担はそこまで来ない。

 

 スキルには魔力放出(炎)(雷)とかあるのだが、燃費の良さはやはりランサーゆえか……。魔弾掃射で、ルー・ガンフーを戦闘不能に追い込みつつ大亜の工作部隊を威圧する。

 

 「Foyer: ―――Gewehr Angriff」(Foyer: ―――Gewehr Abfeuern)

 

 左手と右手に魔『砲』陣が幾つも刻まれて、その連射の威力を察した連中が緊張をする。

 

「撤退しようとしていたはずなのに、セツナはセツナで、これだもの……」

 

「やるからには徹底的にやるんだよ! それに――――」

 

 人食い虎の危機となれば、フェイカーも防衛行動に出ざるを得ない。吹き飛ばした衣服。その腕に獣を思わせる刻印……『令呪』を確認。

 

 間違いなくコイツがマスターのようだ。

 

 

(本陣を奇襲することで相手を退かせるとは、正しく戦略の常套。私はヨシテル様以来の最上の主君を得た気分です!!)

 

「畳で殺されてんじゃねーか!!」

 

「な、ナンのハナシ―――!?」

 

 このランサーを『関東管領』に任じたのは、壮絶な最期を遂げた剣豪将軍であったのを思い出して『念話』にツッコミを入れた時、リーナが困惑した時に、1つの変化が起こる。

 

 築地周辺で唯一生き残っていた施設の一つ。大手保険会社の本社―――の社屋跡。今では違う所に移転した所から、強烈な魔力を感知。

 

 即座に視力を強化しつつ『魔眼』で詳細を知ろうとすると、そこには仮面で顔を隠したしっかりとした男の姿。

 

 年齢は分からないが、体つきからは―――壮年の頃合いなのではないかと思った時に……。

 

 男はその手に『あり得ざる武器』を持っていた。一般的な呼称では『硬鞭』。振るうことで素人でも『音速』を超える打擲が出来る軟鞭とは違い、どちらかといえば殴打武器としての特製があるもの。

 

 それは――――概念武装としては、強力すぎるものだ。ルヴァレの鉄槌ほどの『重さ』はあるか……。

 

 硬鞭が振るわれるその時―――大破壊が起きると確信して―――逃げ道を探す。『解析』した限りでは、雷霆系の武具であると確信して―――。

 

 

「刹那哥々(にいさん)! リーナ姐々(ねえさん)! こっちに!!」

 

「シャオちゃん!?」

 

「だ、誰!?」

 

 声に反応したリーナと、少女が何者か誰何するエリカとで別れたが、どこからかド派手すぎる『黄金と銀色』の船……フィッシングボート程度だろうものを岸壁に近づけた劉 麗蕾の姿を見て、助かる想いだ。

 

 射殺すことは―――今は出来そうにない。魔弾程度ならばともかく、投影武器が生み出せないのだ……。サーヴァント召喚のツケだなと思いつつ、撤退を促す。

 

 

「むぅ。もう少しで首と胴を離すことが出来そうなんですけどね」

 

「ほざくなよランサー……! 貴様こそ私の弦で縛り付けた上で、轢殺の刑に処してくれる!!」

 

「伝説や力もあやふやな『偽物』だらけのアナタでは、私には勝てませんよ? だって玉石琵琶精なんて―――妲己三姉妹の中でも格が落ちる『無機物』の妖仙じゃないですか。

 挙句の果てには、太公望という仙人によって呪殺を食らってしまう―――本来ならば、彼の目的は妲己という妖狐だけ、つまりはアナタは三姉妹の中でも『影武者』の類なんじゃ―――」

 

 瞬間、『無邪気な解体術』を披露するランサーの言葉を遮るように、閃雷があちこちに奔っていく。築地全体を電子レンジにして、自分達はダイナマイトみたいなものだろう。

 

 結末など分かりきっている―――。

 

 

「どうやら割かしピンチな状態―――ではマスター、撤退しましょう。走れますか? おんぶしましょうか?」

 

「子ども扱いされるとか、どういうこと!?」

 

「セツナをおんぶするのはワタシの役目! むしろオンブバッタみたいに『合体』したい!!」

 

 岸壁まで走りながらも、後ろの大亜軍は、とことん混乱している状況だ……しかし、リーレイの『ゴーレム船』に乗り込み、走り出した瞬間―――その日、いつになるやらと待ち望んでいた築地の再整備の為の『地均し』が終わり……その一方で一種の歴史遺構にしようという目論見は崩れた。

 

 かつての東京都の台所とも言えた、築地市場の建物や市場施設の八割がたは、この日、消滅したのだった……。

 

 サーヴァント二体の激突と戦術級魔法の乱打が、築地を滅茶苦茶にしたのだ。表の住人は疎か、裏の住人たちは一層の緊張を以て、この事態の原因究明に当たるのだった……。

 

 ・

 ・

 ・

 ・

 

『で、お前たち全員、俺と深雪をハブにして『遠坂邸』にいると、そういうことか?』

 

「怒った?」

 

『怒ってないぞ』

 

「怒った?」

 

『怒ってないって言ってるだろうが』

 

 明らかに怒ってる様子の達也の面相の変化に『あくま』な想いをしながら、事情説明をしておく。

 

 昨夜の大立ち回りの後、リーレイの案内で劉師傅に引き合わされた自分達。晴海にてオタオタしていた美月と幹比古を、あちらの岸壁にて収容させた後の話だった。

 色々と訊きたい事は多いのだが、ともあれリーレイは、劉師傅の頼みで『12歳にして夜遊びデビュー』させられるのだったが―――その理由は切実でもある。

 

 詳しい話は後々、五番町飯店にやってきた時にしたいと言われたが、察するに分裂抗争の類に思えた……。

 

「今回の大亜連合による諸々は我々の本意ではないのです。奴らは私達がようやく得た寝床に入り込んだ無粋な輩だ」

 

 台湾に勝手にやってきた国民党。香港革命の原因となった『本国強制送還条例』。つまりは、今回の事は在日華僑及び横浜中華街の総意ではない。

 

 そして劉 景徳師傅は、今はただの中華料理人だが、元々は『宗教幇』と『黒幇』との半々……要するに足抜けしたマフィアの一員みたいなものだったらしい。

 

 事実かどうか、真偽の程は後々とはいえ、そういった話を聞き、リーレイを優しくあやす爺の姿に、レオは色々思う所はあった様子。

 

 そんなわけでなし崩し的に―――という程ではないが、在日華僑の中での左派、右派の争いに巻き込まれつつあることは理解出来た。

 

 

『詳しい話は、後で聞かせろよ。それにしても……栗井教官も面倒な事を』

 

「やり過ぎたのは、俺たちの方なんだ。ロマン先生を責める謂われはないさ」

 

 

 ただ、築地の一件は報道管制出来る類ではなく、先程からキャビネットにわんさと情報が入って来て、特別番組すら組まれている始末だ。

 

 かつての冬木での第四次初戦も、こんな感じだったのかもしれない。

 余人の与り知らぬ怪異による乱戦の跡……魔法師などであっても『ぞっ』とする破壊の跡の大半が、よもや過去の『英雄』二騎のぶつかり合いなど、簡単に想像出来るものではないのだろう。

 

 

「まだ何か言いたそうな顔だな?」

 

『……面と向かって言わないと、色々と怖いからな―――今はいいさ』

 

 未練たらたらな達也との会話―――現在時間は夜の0時30分。如何に睡眠時間が少なくても済みそうな、超人魔法師タッツンでも、事態次第では疲労は多いのかもしれない。

 

 実際、論文コンペの為の執筆作業が立て込んでいたのだろうし―――仕方なくではない。申し訳ないという謝罪の念で、饅頭を作ってあげることにしたのだった。

 

 そんなこんなで達也との会話を終えて、他にもこちらと通話したい相手の一覧を見て、面倒だから着信拒否にしておいた。

 

 どうせ学校に行けば、それぞれの家の関係者と話し合い、その旨はあちこちに飛び火するかのごとく知れ渡るのだから……。

 

 

 そうして通信モニターから辞して家の居間に行くと―――。

 

 

「いやー現世で飲む酒は格別格別♪ 南蛮に先駆けて火入れした酒を手に入れていたことは、日ノ本が誇る文化の極みですよ♪」

 

「ミス・カゲトラ! それセツナが隠れてチビチビ飲んでいた銘酒『熊殺し』(ベアーキラー)!!」

 

「いいじゃないですかー。私のマスターは、そこまでけち臭い人ではないと信じていますよー。はぁああ。おいしい♪」

 

 完全に酔っ払った体で、朱い顔をしているランサーのサーヴァントに、誰もが注目している。

 

 何かレオと幹比古は、前が開かれた着物からスラリと伸びた足に注目しているぐらい、今のランサーは結構あられもない姿である。

 

「本当に『史実』通り、お酒好きなんだなー……」

 

「しかもあれって『馬上杯』ですよ!! 馬の上にいないのに使っている!!」

 

『『『そこは驚愕するところなのか!?』』』

 

 

 幹比古の言葉を受けての美月の言葉に総ツッコミ(レオ、エリカ、刹那)が入るも、しかし―――こんな酒ばかり飲んでいる輩を見ると―――。

 

 

「ちょっと待ってろ! 今、酒の肴を作ってやる!! 腹に何もいれないで飲むとか、早死にするぞ!!」

 

 キッチンに素早く入らざるを得なくなるのだった。ちなみに言えば、全員分の『夜食』を作らざるを得ないのだった。

 

 うん、お腹空いているし是非もないよネ!(ノッブ風) 女子陣は、体型を気にするならば喰わなければいいのだ。無理だろうけど。

 

 

「私は塩や梅干しだけでも構わないんですけど……」

 

「トイレを『宝具』としてきた相手が出てきた時に、お前の二度目の死に場所も『厠』とか最悪だぞ」

 

「戦国時代のアイドル、カゲトラちゃんはトイレとか行かないんですよ! その話は、金輪際禁止です!!」

 

 流石に死亡の場所がアレ過ぎたのか、ぷんすか怒りながら小刀を振り回さんばかりのランサー。

 

 それに対して言っておく。

 

「というわけでだ。俺を無能なマスターにしたくなければ、お前には、ちゃんとした食生活を歩んでもらう! 

 具体的には故郷の喫茶店兼酒場兼酒屋―――コペンハーゲンの女店主(ネコさん)の如く!!」

 

「めんどくさそうな店だなオイ」

 

「親父のアルバイト先だったらしい。まぁ学生が盛り場で働くのはマズイだろうけど、酒屋ならばセーフとか、そんな感じに」

 

 レオの言葉に返しながらも調理は進み、とりあえず戦闘で失われた塩分とか、消化の良さも考えて、柔らかめの野菜たっぷり焼うどんを作り上げると、10分もしない内に大皿三枚が空になるのだった。

 

「馳走になりました―――むぅ。お酒がここまで進むとは、マスターの料理は妖術ですか?」

 

(((((まだ飲んでいたし)))))

 

 とはいえ、それでランサーも満足したようで、馬上杯も机に置かれていた。その夜食の終了を合図として、友人どうしの会話にしては剣呑な質疑応答が始まる……。

 

 

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