魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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お盆休みはいいなぁ。仕事があんまりにもあれすぎるが、英気を養いたい。

俺、コミケの本は通販で買うんだ……。

というわけで新話どうぞ。


第134話『女の戦い』

「昨今の東京周辺は、随分と騒がしいのですね……」

 

 都心を騒がす怪異の一端は、隠しきれずに全国を飛び回る巷間の噂の一つとして届いていた。

 

 ネットニュースを見ていた金沢の魔法科大学付属第三高校―――通称『三高』の一色愛梨は、その『共産ゲリラ』による都市型テロという、『隠蔽工作』のほどに嘆息をしていた。

これから残り一週間と一日で、論文コンペは始まる。横浜にて、未来の魔法師界の姿を決めるものが……。

 

 大げさかもしれないが、その方向性次第では、日本の魔法師のこれからが決まるのかもしれないのだ。

 

 

「師族会議にも通達が来ているが、まだ詳細は分からない。ただ、大亜など共産国家の蠢動が目立っているらしいな」

「小規模なゲリラ作戦に、何の意味があるのかしら?」

「さぁな。ともあれ、千葉さんの兄貴とかが出張って、『キツネ』を燻り出しているらしいけどな」

 

 爛熟した情報化社会でも、余所の土地の詳しい事情を知るには、やはり現地に飛ばなければならない。金沢から分かることは、『起こってしまったこと』だけだ。

 

 結果だけを見て類推したとしても、リアルタイムで変化する現在の状況には追いつかないのだ。

 

「セルナは大丈夫でしょうか……?」

 

『オニキスによれば、プラズマリーナと共にピンシャンしているらしいぞ。ついでに言えば、昨日は夫婦共同作業の為に家に籠りっきりだったと』

 

 愛梨の側にいた魔法の杖の基部の言動が原因か、愛梨はその手に持っていた端末を、割り砕かんばかりの勢いで握っていた。

 

「俺が言うのもなんだが、あの2人、同棲しているそうじゃないか? 諦めた方が賢明だと思うけどな」

「余計なお世話―――アナタこそ、『この兄妹』の片割れを追うのは、やめた方が三高女子の為だと思うけど―――『一部』を除いてね」

 

 賢い選択とやらを選べない奴に言われるのは心外だとして、嘲るように言い返す愛梨に強烈に反応するのは、将輝の性であった。

 

「司波さんと司波達也は、兄妹なんだ。遠慮する必要があるかっ!」

 

 本人の気持ちが兄貴に向かっていようと構わないという、腕組みした一条将輝の憤慨した言動。だが、正直言えば、司波深雪からは、異性としての興味を将輝に持っているようには見えなかったのだ。

 同時に端末に表示したいつぞやの映画鑑賞後のスナップ写真。兄妹・恋人で映ったものを見せると、今度は将輝が、ぐぎぎぎぎ! とイケメンにあるまじき歯ぎしりをして羨むのだった。

 

 

(本人が望めば、大抵のどんな異性とでも付き合えるってのに、何で無理めな人間に焦がれちゃうかな?)

 

 そんな一学年でも目立つ二人を横目で見ながら、吉祥寺真紅郎は考える。考えるに、好きになったものはしょうがないのかもしれない。

 身も蓋も無い結論だが、そういうことだ。もっとも一色家では、刹那のことで家中が若干、割れたとも聞く。

 

 割れたというと聞こえは悪いが、要するに―――、愛梨の兄。国防軍に所属している我が校のOBが、『そんなコブ付きで、どこぞの馬の骨とも分からぬ人間に、妹をやれるか』と両親に反旗を翻したとかなんとか。

 それに呼応する形で、何人かが兄貴に同調しているとかなんとか―――現在、国防軍の予定で東京近郊に滞在していることを考えれば、どこかで刹那に接触するのかもしれない。

 

 

 一色家が誇る『魔剣士』と『魔弾の王』とが邂逅する時……何かあれだった。

 

「それでガーネット。現在の刹那近辺というか、一高は何をやっているんだ?」

 

 将輝の何気ない問い。その問いに答えるように――――一高ではちょっとした『イベント』が始まっていたのだった。

 

 

 † † † † †

 

 

 ぶぉおお、ぶぉおお―――! ぶぉおおお!!!! 

 

 

 古めかしい法螺貝の音を響かせて、合戦の合図とする。不意の遭遇戦を想定した訓練というわけではない。

むしろ、敗色濃厚な相手に対して立ち向かうには、このぐらいの演出を以て立ち向かった方がいい。

 

 今回の想定は多くの人間に話しているわけではないが、単騎で対軍級の力量を持った相手に対して、組織戦でどれだけ追い縋れるかである。

もっとも言われずとも多くの人間は、既にその想定をしていた。何故ならば、水樹奈々(仮)である遠坂刹那の使い魔が、尋常ならざるものだからだ。

 

 

「あちらは四人、しかし―――その気になれば、野良傀儡ぐらいは簡単に用立てられるだろう」

 

「速度を活かしてやってくる連中相手に、待ち伏せと言うのは如何にもダメな気もしますね」

 

「だな。俺の推測が正しければ、ミス・ミズキの正体は、川中島にて、甲斐・信濃を治めていた戦国最強の『軍団大名』の『好敵手』―――『越後の龍』だろう」

 

 

 相手の奇襲を逆手に取り、逆に奇襲を仕掛ける。戦略の鬼才にして、軍神の異名すらある大名。

 

 そんな軍神の伝説を調べ尽くしたともいえる真由美は語る。

 

「けれど、越後の龍とて敗戦はある。その多くは攻城戦―――城攻めよ」

 

 一説によれば、彼の毘沙門天の化身の『仇敵』たる北条氏の小田原攻め―――その前に北条方の成田氏の忍城にも負けたとか。

 精兵とも言える越後の武者、雪深い大地に根を張りながら生きてきた彼らでも、堅固な城の門扉を砕くほどの力は無かったのだ。

 

 つまりは――――。

 

 

「最大の城壁を用いて、進撃するのみ。人は城、人は石垣、人は堀。五十人以上もの大精鋭を、組織してまで戦うんだ。行くぞ!!」

 

「「「「押忍!!!」」」」

 

 今日の模擬戦は、少しばかりいつもとは違っていた。今日に至るまで、ミス・ミズキことサーヴァント・ランサーを相手に、論文コンペの警備隊総責任者の克人たち一高の警備部たちは、一本取るべく挑んできた。

 

 初日は惨敗。ランサーのクラス通り『槍』が主武装の筈なのに、木刀一本で熨される10人以上もの魔法師。その中に克人も含まれていた。

 二日目。三日目。四日目……例年ならば、一種の喝入れ程度のものだったはずなのに、本気になってかかる様子と、十師族の魔法師ですら敗戦必至なことに、誰もが気合いを入れ直して、作戦を練り上げてきた。

 

 平素ならば二科生を頼らぬはずの一科生の大半ですら、二科の要諦を得ねば、木刀一本で吹き飛ばされるのだと知ったのだ……。

 

 ゆえに――――。

 

 

「マグニ・ゴッズエンチャント!!!」

 

 言葉で巨大なサイオン体。野生の原人にして、『巨人』を思わせる体躯のオーラを纏った西城レオンハルトが、その『城』で全員を守りながら、進撃を開始する。

 獣性魔術の応用にして一つの到達点。『巨人化』(タイタニアライズ)。南盾島で会頭と共に戦うことで、徐々に発現していたものが、完全に開花した。

 

(ブルク・フォルゲの血が、俺をこの力に目覚めさせたんだろうな。皮肉だぜ)

 

 遺伝子改造ゆえに、霊長と霊長を掛けあわせた禁忌。祖父の血をどこかで忌まわしく思い、それでも授かった力の活かし場所を求めて、魔法科高校に来た西城レオンハルトの運命は大きく変わった。

 有り体に言えば、運命の出会いが自分を違わせた。姉貴とケンカしてまで、一高(ここ)に来るのを決めた時のことを考えれば、何とも運命の皮肉だ。

 

 気恥ずかしい想いを打ち消しながら、森林のステージを進んでいく。後ろにいる連中を『巨人』のオーラで守りながらの進撃。

 

 自己加速魔法を使って着いて来たり、それぞれの方法でレオの進撃に追いついてくる。

 軍事的に言えば、機械化歩兵部隊のようなものであり、兵員輸送を行うレオをサポートするべく、巨人の防壁に入っている幹比古が、四方八方に式紙を飛ばして『相手』を探る。

 

 

(あっちこっちで、式紙との接続が断たれた上に焼かれる―――刹那の姿は捕捉できないが、こうなるならば、何処かにはいる!)

 

 相対する相手の中でも、一番プレデトリーに相手に襲い掛かるのが、刹那である。九校戦の様子からして、後衛戦が彼の本領にも見えるかもしれないが、実際は、あちこちで射線を変えて、容易に位置を悟らせないことが出来る。

 

 手強さで言えば、比較にならない――――だが、強烈なまでのサイオンの猛りを感知。如何に隠れてこちらの監視を切っていようと、それだけは隠せない―――。

 四方八方から式をそちらに向けると―――蒼金の刻印弓を向けながら、木々の幹に『逆さ立ち』―――天地を逆にして、立っている姿だった。

 

 

「レオ! 四時の方向!! 刹那の弓が来る!!!」

 

「応!!」

 

 応答の狭間にて放たれた魔弾は、道中の木々の枝葉をもぎ取り、砕きながら土煙を上げさせていく。

 その上でレオの巨人で言えば、右脇腹に入り込もうとするのを硬化魔法で硬くなった壁が防御する。

 

 この巨人体を発現させた段階で、西城レオンハルトは凡その意味で無敵となるのだ……もっとも相対する相手は、当たり前の如くそれを貫く威力と幻想を持ってくる。

 とりわけ刹那は強力だ。上半身だけの巨人―――仲間内では『スサノオ』などと呼んでいる防壁を砕くべく、魔弾が飛んでくるのだ。

 

「―――『借りるぞ』西城!」

「あいよ!!」

 

 一科の五十嵐鷹輔が、言いながら刹那に弾幕を張るべく、スサノオの内側から―――魔法を放つ。

 放たれるのは『放出系』のエア・ブリット。無論、五十嵐には刹那の姿は見えていないだろうが、射撃された方向に反応射撃を向けるだけでも、効果はある。

 

 刹那自身は、それを幾らでも無力化することが出来るだろうが、蝙蝠のように宙づりになっている木に、土ぼこり。それらが幾らでも弓を遠ざける原因となるのだ。

 だが―――、そんなことに頓着せずに、200m先にいる刹那は弓弦を引き絞り―――黄金の剣弾を放ってきた。

 

「相変わらず手数の多い―――!! そしてこれが最大の脅威ですね!!」

 

 黒子乃の言葉が響く。

一見すれば、一条将輝の『爆裂』や七草真由美の『ドライ・ブリザード』に比べれば、射角に自在度が無いように思うが、放たれた剣弾の数―――進んで踏破する空間が、サイオンの真空状態になったかのようになるのだ。

 

 唯一の防御手段は、己の直近に張った防御壁になるだろうが、それを刺し貫く威力で矢は飛んでくるのだ。第一……。

 

(人間ってのは、来ると分かっているものであっても、その威力や脅威次第では、『躱す』とか『防御する』とか考える前に、身が竦むものね……! ある意味、現代魔法に対するキラーよ!!)

 

 ピッチャーの投げる球種やコースで、バッターが飛ばす大まかな打球の飛ぶ位置が分かっていても、そこに飛んできた打球の『速さ』『強さ』次第では、捕球など出来ずに身体に打球を食らうこともあり得る。

 強いライナーが飛んでくる内野手の恐怖というヤツである。

 

 そして拳闘……ボクシングの世界でも、ブルファイターの果敢な被弾覚悟での接近と、躱したはずの全力のスイングパンチに身体が硬くなっていくことは多い。

 

 並べて、魔法師であっても精神(こころ)まで『硬化』することは出来ない。殺気を以て放たれた攻撃は、それだけで相手を竦ませる『見えぬ魔法』だ。

 

 その理屈を知っていただけに、エリカはレオのスサノオから出て、持っていた大太刀を振るって黄金の矢の幾つかを弾き飛ばす。

 一撃一撃ごとに剣ごと身体が痺れる。纏っていたアーマースーツが、風鋼水盾ごと砕けることもあったが、その迎撃は効果があった―――。

 

 

 † † †

 

 

 遮蔽物が多い空間戦闘というのは、そもそも刹那の独壇場とは言い切れない。確かに彼が相対してきた外法の魔術師・死徒崩れ共の中には、森の枝葉などを利用した迷路を作り上げるものもいた。

 

 その上で罠にかかった執行者を退けてきた連中も……所詮は、広範囲を『殲滅』出来る規模の術を用立てられる自分の敵では無かった。

 だが―――この場の戦いで、そんなことはする気は無かった。この衣服―――豪壮な男……トランベリオの盟主『ミスタ・マグダネル』から送られた賄賂も同然だった。

 

 

『おや? 君はその程度の額で買収されるのかい? これは僕のポケットマネーでしかない。

 制服だけでは申し訳ないから、シャツでもベルトでも、何かしらの礼装付与のためのお金にしなさいってだけだよ。ドル札で良ければ換金(シャッフル)するが?』

 

 などと結局、『魔術協会制服』に収められた札束を手にする弱い刹那なのであった。親指立ててサムズアップする男の顔を思い出して、少しは魔術師らしく戦ってみるかと思う。

 

 

「―――Anfang――――」

 

 向かってくるのは、先行するのが―――エリカと森崎、そして十三束の三人。その後ろから『スサノオ』―――変化すれば『タイガ』になれるだろうレオ達が、6人程度を引き連れてやってくる。

 バカ正直にここにいることを期しての突撃。エリカにこちらの剣弾を弾かれたことは、少しばかりプライドに障ったのだ。

 

 お望み通りの戦いに移行させてやる―――そういう挑発だったと分かっていても、刹那はそれに応じた。

 

 最速の一工程(シングルアクション)、視線による術式投射。魅了の魔眼で幹比古の動きに『重圧』を掛ける。

 探査役であり全員の目と耳を担っていた幹比古の不調に―――全員が気付いた。『もう捉えられている』のだと……。

 

 動揺が大きかった森崎に対して牽制の魔弾。――――更に動揺するも、術の発動自体は慌てず、自己加速魔法の術式は緩めずに、こちらに突撃してくる。

 

(成程、少しは―――甘さが抜けたか)

 

 何があったかは知らないが、ともあれ自分の道ぐらいは決まったようだ。上から目線で悪いが、少しは楽しめることを期待しておくのだった。

 遂に目視できる距離に至った三人―――エリカの突進を援護するべく、十三束の魔弾(へっぴり腰)と、森崎のブリットをローブの翻しで消した。

 

 エイドスの改変と虚空を奔る魔弾による挟撃を、埃を払うかのように消し去ったことは驚かれるも、構わない。

 

 指先を虚空に奔らせてルーン文字で形成された『力場』という重みがある槍を持ち、剣弾の余波ゆえか、少しばかりあられもない姿のエリカと斬り合いを行うのだった。

 

「刹那君は陽動なのね!?」

 

「エサクタ!」

 

 剣戟を刻みながらの言葉の後、遠くの方で轟音が響くのだった……。

 

 

 † † †

 

 

「強いね、リーナ。けれど―――私は負けたくない……!」

 

「想定外など想定内の人生とはいえ、こんな荒事(ウォーズ)に参加するなんて、結構ビックリよ! シズク!!」

 

 バイアスロン部で使うよりも、実用的な拳銃型CADと汎用型を扱う北山雫は、全員が『雷獣嵐舞』(ワイルドハント)で行動不能になる中、立ち上がっていた。

 

 主に女子が中核を成している『第二軍』―――吹き飛び戦闘不能判定を受けたものの中に、エリカがいないということは、一年組か三年組のどっちかだな。と思いつつ雫と相対するリーナ。

 

 

「リーナ姐々、大丈夫?」

「ノープロブレムよ。リーレイ。それよりも大術を使ったんだから、防御に銀と金を回していなさい」

謝是(わかった)

 

 言葉でスライムみたいな金と銀のゴーレムに跨るリーレイ。かなり昔に流行った『バランスボール』というものに乗っかるイメージがある。

 

 それを見てから、再び雫と向き合うリーナ。

 

「リーナ……この戦いの原因は、分かっているよね?」

「ソウネ。アナタの不興を買ってしまうのは仕方ないとは思っているけれど……ワタシはセツナのステディなの―――だから積極的な『愛』が欲しいという時だってある―――それを曲げたくない。

 例え―――、ニホンの倫理観が、今の私達を間違っていると断じたとしても、アナタとの友情にヒビが入ったとしても―――」

 

 上役からの諦めがちな追及よりも、こうして『情』に訴えたような言い方の方が、来るものはある。

 雫の気持ちを分かっていたとしても、アンジェリーナ・クドウ・シールズにとって最優先すべきものは、遠坂刹那との愛なのだから……。

 

 だから一抹の罪悪感を覚えていたとしても、真っ直ぐに雫を見て、そう答える。伏し目では、彼女に何も通じないから……。

 

 

「きっといつか、私は『誰か』が隠していた『秘密』を知って―――それで、私の親しい人間が、泣いてしまう。そんな予感がある―――『それ』に比べれば、もしかしたらリーナは優しいのかも……。

 明け透けに、『女』として、『他人』として刹那の側にいるんだから」

 

「シズク……」

 

 その『予感』は、致命的な何かを崩す。リーナと刹那にとって直接の関係は無いが……それでも『隠し立て』されたことが、何かを砕く。

 

 そして『隠す』ことが魔術師以上に、徹底的すぎるのをリーナと刹那も知っているのだ。自分達の傍にいるクローバーの存在が……。

 

「けれど、諦めきれない。私だってキッド(刹那)を―――あの時、家族を守ってくれたプリズマキッドを想ってきた日々をムダにしたくないっ」

 

「なら―――どうするの?」

 

「リーナに挑戦する。魔法でも体術でも何でも使って構わない―――私の全力を出させてもらう! それで何が変わるかは分からないけれど―――、私に区切りを着けさせて!!」

 

 言いながら、雫の足元にはボードを改良したものが、いつの間にかあった。それを見て、リーナも干将・莫耶―――銃形態を握りしめる。

 遮蔽物多すぎる空間ながらも、先程のリーレイのワイルドハントで、ちょっとした荒野になっているのだ。戦うに当たって申し分はない……唯一の懸念事項は―――。

 

 

「オ、オトナな会話!? やっぱり高校生ともなると、男の取り合いで取っ組み合いになっちゃうんですね!!」

 

 顔を真っ赤っかにして腕を振り回しながら、興奮しているリーレイの姿に、遠くの『メイド』が、声を掛ける。

 

『せつなお兄さんはモテモテで、いつか、にん傷ざたを起こしかねないってマヤ先生が言っていたから、間違いないです』

 

『というか、私だってキッドが大好きなんだから、その戦いに参加したい!!!』

 

『四亜、そういう時は共倒れを狙ったうえで、漁夫の利を―――』

 

『『三亜がとてつもなく怖い(です)!!!』』

 

 などと、リーレイが端末を使って遠距離会話をしていることであろうか、年齢が近いからか、四葉に引き取られてメイド服姿の彼女たちとウマは合っているようだ。

 

 ともあれ―――雫とリーナの戦い。オープニングブローは……『共振破壊』で荒野を揺らすことに成功した雫からであり、行動不能になる前に、フェザー(Type Venus)を発動。

 地面を揺らして荒野を砕こうとする意図から逃げようとしたが―――そうは問屋が卸さないとばかりに、雫は発動中の腕輪型CADのある手を大地に衝いた。

 

 

「――――!!!」

 

「!?」

 

 それは呪文でも何でもない『叫び』だった。だが、その叫びの効果は絶大であり、荒野に亀裂を走らせる術が変化を果たして、大地が隆起する。

 否、もっともな表現をすれば、大地が意思を持ったかのように、いくつもの石柱を立ち上がらせたのだ。

 

 石柱の効果は絶大であり、その切っ先は槍のように尖っているので、リーナの軌道は制限された。その制限された軌道の中でも雫に魔法を通そうとするも、加速に入った彼女は容易にリーナに捕捉できない。

 闘いはまだ序盤戦―――しかし、いつもの授業での相対とも、南盾島の時とも違う雫の気合いの入った戦いに、リーナは気圧されるのだった……。

 

 

 ――――そんな戦いの様子を、戦闘中ながらも幹比古の使い魔などを通じて見ていた一年組の面子は――――。

 

 

「やはり諸悪の根源は、遠坂刹那、ただ一人! 二人の少女の乙女心を、揺さぶるお前に一言もうさせて―――」

 

「うるせぇ。脱落者は、土の硬さを味わいながら転がってろ」

 

「理不尽!!」

 

 戦闘不能判定を受けて、封印符とバインドを受けた五十嵐の言葉に、誰もが納得しつつも蹴られたことで黙らされるのだった。

 

 

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