魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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魔法科、今度の最新刊の表紙を見る限り、うん……石田先生GJである。

というわけで新話どうぞ。


第135話『戦う乙女たち』

「……この模擬戦が行われている理由ってなんだったかな?」

 

「まぁお兄様ったら、物忘れなんてボケをしても、私はツッコミを入れませんよ」

 

 刹那に言われていた食材の下処理を終えてきた深雪が、模擬戦の監視テント内で、そんなことを言ってきた。

 別にツッコミ待ちだったわけではないが、考えるに……刹那とリーナの『サボり』という名の工房敷設こそが、多くの人間の心をざわつかせた。

 

 上役たる『三巨頭』としても、色々とあることは分かっていても、あまりにも公然としたサボりを前に、示しが着かないとして挑戦を起こした。

 そこまでは良かった。三巨頭としてもSAKIMORIこと八華のランサーとの戦いで、『マスター』がいるということが、どれほどの効果を生むのかが知りたかったから。

 

 だが、その裏事情を知っているモノたちが刹那とリーナに食って掛かった。

 

 学生として不健全極まる云々で刹那を模擬戦に召喚したものがいれば、(五十嵐 談)リーナに戦いを挑みたいということで連れ出したもの―――つまりはむかっ腹が立つぐらいリア充なのは、いいとしても、よくないとしても、つまりは―――ケンカをしたかったのだ。

 

「まさか雫が、あそこまで思い詰めていたなんてな……」

 

「それに関しては、私も感じています。ただ、雫にとっては針の筵だったんでしょうね……」

 

「意外と、刹那の異能が雫を遠ざけるかと思っていたんだがな……愛が冷めるとでもいえばいいのか」

 

 北山雫という少女は、『現代魔法師』としてはアベレージにハイクラスの能力を持っている子だ。

 

 シンプルイズベスト、もとが強ければ特殊能力などいらないという典型にして完成系。このままいけば、彼女の母親同様にA級魔法師になれるだろう。

 

 達也と刹那のようにレアリティスキルなど持たなくても、強くなれるはずだ。だが、そうではなかった。

 相手が『自分』と違うからと言って、女としての好意が薄れるとかいうのは、あまりにも人間を軽く視すぎていたようだ。

 

 とはいえ、『住む世界』が違うから身を引くということもあり得る……。

 その可能性を消されたことを思い出した。夏休み―――刹那達が来る前の一幕。『ほのか』とのことで知っていたはずの達也は、自戒をしておいた。

 

「せめてどっちかが、A組か、違うクラスに行っていれば……」

 

「前から疑問だったんだが、A組が、一科の魔法能力上位者のみを集めているってのは本当なのか?」

 

「それに関しては諸説ありますから、ただ百舌谷先生が学年主任も兼ねている以上は、そうなるのでしょう」

 

 深雪の言葉に納得。本当ならば、『序列』など無いはずの一科のクラス分け。学年主任に恣意的なものがあったわけではないだろう。

 

 だが、優秀生は優秀生とつるめばいい。という考えが原則を捻じ曲げてそうなった。

 

 

「いまの三年生は、特にABCDで区切りがあるわけではありませんしね。二年生もまた」

 

「壮大な『社会実験』で、生徒の人間関係が拗れたわけか」

 

 しかし、今の二、三年の様子を見ていれば分かる通り、一科と二科が拗れに拗れた原因には、三巨頭など目立つ連中が結集し、一科も二科も構わず『自分達についてこい』という意識を醸成させなかったことにある。

 

 リーダーシップを取るべき人間に、ちゃんとそう指導していれば違っていたかもしれない。

 要は『上司』からの『訓告』。一種の上役になれという明確なメッセージを出すべきだったのだ。

 

「……積極性と出しゃばり根性は紙一重とはいえ、何も言わずに生徒の自主性ばかりを尊重するのは違うだろうな」

 

「ただ、一つ訂正させてもらうならば、B組に二人―――リーナと刹那君を入れるのを強硬に主張したのが、栗井先生のようです」

 

「つまり、ロマン先生が『二人』を求めたのか………」

 

「最終的には日本語が怪しいから、リーナのチューターとして、刹那君を付ける。それだけは譲らなかったそうです」

 

 栗井健一……顔立ちは明らかに日本人では無い。欧州のどこかから帰化した魔法師らしい。

 

 彼の経歴は、四葉でも完全に追えないでいる。国連医療ボランティアとして、各地の紛争地帯を転戦して、魔法と医術の融合を果たした新たな『医療魔法』を完成させた。

 

 そのノウハウは一般公開されており、今でも多くの魔法師の医者たちにとって、『現代のアスクレピオス』と言われている。

 達也のいる独立魔装の山中も、これに関しては当たり前のごとく使っている。ともあれ……栗井健一。ドクターロマンと呼ばれている男が、今さらながら謎に思えてきた。

 

(一番の謎は―――刹那なんだよな……そしてそんな刹那の事情を知っている人間たちは、刹那を守るべく『奔走』している……)

 

 

 単騎駆けで、三年の『陣幕』という名の十文字克人の広範囲ファランクスに突っかかる、八華のランサー。それを見て考える……。

 

 次元論の頂点。即ち『死後の世界』とも言える。もう少し言えば、あるかどうかすらあやふやな、『アーカーシャ』『真理の扉』。八王子クライシスの時に刹那の口から語られた、そこから『召喚』されたサーヴァント。

 

 論理と思考を『飛躍』させれば、一つの『仮説』は生まれる。

 ビースト殺しの手際……あれだけの力を身に着けるのに、どれだけの修練が必要なのか……。

 

(遠坂刹那は、クラスカードを介して『力』を『英霊』自体を、己の身体に呼び寄せられるアンジェリーナ・クドウ・シールズが、『偶然』にも『召喚』に成功した―――、異なる歴史を辿った世界の『英雄』……!)

 

 その可能性に辿り着き、そして恐ろしい想いをしようとしたが――――『何故だか』。そんな風な想像が馬鹿らしくなったのだ。

 

 有り体に言えば―――『そんなわけあるか』。そんな感じなのだった。

 

(フォーチュン・クエストが完結するか、俺妹の『黒猫』ルートが、刊行されるぐらいありえないことだな)

 

「あやせルートこそが、『俺妹』の『編纂事象』! キリノルートは『剪定事象』―――ですよね。お兄様♪」

 

 頭良さげなことを言いながらも、何故か致命的に何かを間違えているかもしれない深雪の笑顔に頭を痛めてから、画面を見ると、闘いは終盤にいたるのだった。

 

 

 † † † †

 

 

 槍は歩兵の武器であると同時に、騎兵の武器としても長い歴史を持つ。

 

 それは、突撃槍(ランス)という武器が広がった西洋だけでなく、東洋―――日本でも当たり前のごとく認知されていた。

 

 戦争で馬が使われるようになると、騎兵が誕生する。同時に騎兵にとって有効な戦術・武器が模索される。

 つまり馬の『突進力』を活かした突撃戦法のために、槍を小脇に抱えることが自然と広まったのだ。

 

 戦争の主兵装が長柄の得物であると同時に、騎兵戦法もまたそう発展していった……ゆえに―――。

 

「駆けるぞ 放生月毛! 常在戦場を駆け抜けた、お前の嘶きを上げるのだ! にゃあああ―――!!!!」 

 

『ブニルルァア―――!!!』

 

(掛け声を合わせようと努力している!!!)

 

 ランサーが跨る一角を『装備』した騎馬の、主人に対する甲斐甲斐しいまでのその忠節の態度に、ちょっとばかり涙が出てしまう二、三年組の生き残り―――。

 

「伝説にある車懸りの陣とは、越軍が『八つの軍団』に『分身』しての連続攻撃だったのか……!!!」

 

「本気で言っているんだとすれば、すごい事なんだけど!? 戦国時代恐るべしよ!」

 

「残念なことに『カゲカツ』も『サブロウ』も、はたまた『カネツグ』も、これを体得出来ませんでしたからねー。どうせならば―――『これが出来たならば上杉当主』と言っておけば良かった……」

 

 彼女の死後に発生した御館(おたて)の乱。それに関してやはり思う所はあるのだろう。

 アレキサンダー大王……刹那は『征服王イスカンダル』と呼んでいる偉人もまた、『後継者争い』(ディアドコイ)で国を割ってしまった。

 

 伏し目を見せたランサーだが―――……。

 

 

「まぁそれはそれ! これはこれ!!! いまの私は一騎のサーヴァント! 主君たるマスターの為に―――御首級(みしるし)、頂戴する―――!!!」

 

『チョブルルル――――!!!』

 

((((((こ、こええええ――――!!!))))))

 

 瞳孔が極端に小さくなり、金目の部分が増えたランサー……いわゆる『サイコな眼』としか言えないものを見せながら、笑う槍兵は向かってくる。

 

 馬上で槍を風車のように回すランサーの突撃は苛烈を極める。そんな訳で、我慢できずに、十文字の壁から出て挑むものが出てきた。

 

「剣士杉田! 吶喊させてもらう!!!」

 

「よし! 行け!! 死んで来い!!」

 

「応!! ミッションコード! 『恋の抑止力(よーくしりょーく)』byマザーベース一同!!!」

 

 九校戦前に引退したが、十文字が警備部隊に就くよう要請した剣術部 前・部長『杉田』の掛け声で、剣術部の人間たち(男のみ)が、ランサーに挑みかかる。

 高周波ブレードや、様々な魔法を叩きこもうと動くも『当たり前に弾かれる』。当然の結果を見ながら、地面や木々に干渉を掛けて挑みかかるも―――鎧袖一触。

 

 身体にサイオンウォールなどを施していた連中ですら、倒されてしまう結果である。理不尽極まる結果だが、見るものが見れば、それは『神域に達した剣客の技』でしかなかったのだ。

 そんな中、偶然か執念か、杉田の剣戟が馬上にいるランサーの胴を叩いた。

 

「お見事―――ようやく私の胴鎧に一太刀を入れられましたね。ですが、執念の一太刀は長続きはしませんよ」

 

「肝に銘じておきましょう―――我が生涯に一片の悔いなーなーぁあああああああああ!!!!!」

 

 槍で鎧袖一触されたことで、後ろに吹き飛ばされる杉田の姿に、全員が合掌一礼であった。最後までコメディリリーフを続けてくれたことに感謝してから―――最後まで戦いを諦めないことにするのだった。

 

 

 † † † †

 

 

 雫とリーナの戦いは、一進一退―――。そうとしか言えなかった。この場面でインストールを使えば、リーナは楽に勝てただろう。

 

 その身に、英霊の力なり宝具を持ちだせば雫には勝てただろう。だが、この場面でそれをするのは大人げないように見えた。雫は、刹那への気持ちの区切りを着けるべく挑んでくる。

 それに対して刹那から与えられた『秘蹟』を用いて勝つのは、彼女の感情を逆撫でするものだろう。九校戦で愛梨に対して使った時とは違う。

 

 だからこそ―――せめてカン・バクを扱うことだけは許してほしかった……。

 

 

「入学直後の実習で使った『カンショウ・バクヤ』―――あの頃からリーナは、私に刹那との仲を見せつけて―――苛立たしかった……!」

「別に特定の誰かを狙い撃ったわけではないのだけど!」

 

「けれど意図はあったんでしょっ!!」

「まぁ……入学直後のヨースケの視線はウザかったからねー……同じく視線で、あからさまにセツナをバカにしていたから、そう……二科生だからと侮られるが、タツヤこそが至高の魔法師(マギクス)と讃えるミユキみたいなものよ!!」

 

 その言葉を聞いていた、拘束された五十嵐が盛大な吐血をして血の涙を流す。とんだ追い打ちもあったものである。

 

 ともあれ、リーナの『星型の魔弾』を解き放つごとに大破壊が起こる。刹那が様々な改良を施してくれた結果、『追尾魔弾』は雫の魔法式ごと吹き飛ばして戦場を荒らしていく。

 

 SSボード・バイアスロン部として射撃にも明るい雫でも、銃社会アメリカの出身たるリーナには追いつけないかのように、ジリジリと差は詰められていた。

 

 

「ACTIVATE! DANCING STARS!!」

 

(撃ち落としたと思っていたのは、休眠していただけの『魔弾』!? 刹那が九校戦でもやったものだ―――)

 

 しかし、物理的な距離を飛んでやってくる星型の魔弾であるならば、能動的な『エアーマイン』で砕いていく。確かに硬度ある魔力弾だが、それ以上の圧力を用いれば砕けないわけではない。

 それに奥の手を―――まだ私は晒していない。

 

 そんな雫の気持ちを嘲笑うようにマインの敷設位置を見極めたリーナは、魔弾を飛ばしていく。機雷の干渉(あみめ)引きずられない(絡まれない)ように、飛ばした魔弾。

 

 再設定するとすれば、どうやってもダメージは覚悟しなければならない。

 この辺りが、競技種目としての魔法を扱う雫と、『戦闘技術』として魔法を使うリーナとの差として着いてくる。

 

 アーマーに硬化を掛けてサイオンウォールで耐え凌ぐ。飛んできた魔弾を無力化してから雫は移動を開始した。

 

 

エスケープ(逃走)はさせない!!」

 

「自分だって刹那と『S〇X』ためにエスケープ(サボり)したくせに」

 

「ソ、ソレはカンケーないでしょ!!」

 

「大ありだよ!」

 

 フォノンメーザーで、朱くなり動揺したリーナを牽制しながらも、負けじとリーナは星型の魔弾を絶え間なく吐き出してくる。

 そして、五十嵐は即身仏になるために悟りを開こうとしていた……悟りを開きたいという『欲求』まみれの矛盾ではあったが……。

 

 

(しかし、さっきから動き回ってるわね……。何か狙いがあるのかしら?)

 

 確かに純粋体術などでもリーナは雫の上をいく。それを考えれば、容易に照準を着けさせないための撹乱行動は分からなくもない。

 

 だが、何かがおかしい……学年でもトップクラスの彼女が、こんな無意味な行動を取るだろうか……。

 試すならば―――いまだろうか? シズクに向けていた魔銃の銃口を―――、一丁。雫が通った道に向ける。

 

 照準装置は間違いなく効いている。同時に―――魔弾では無い『石弾』が飛んでいく。カン・バクに備えられている本当の『銃口』から飛びだした弾は、セツナが使い潰した灰になった宝石を再利用したもの。

 劣化ウラン弾ならぬ『劣化ジュエル弾』ともいえるものであり、魔力を通すことで物理的な破壊力と魔術的な意味合いを持って飛んでいく。

 

 虹のように輝く石弾が刻まれていた轍を消そうとした時に―――シズクは、それを妨害した。もはやこれで正解だ。

 

 だが、シズクもまた『狙い』を悟られたことで、CADに指を滑らせてから虚空に『文字』を描いた―――。

 

 

 その時、荒野に―――膨大なエネルギーが走る。それは、現代魔法においては『二ヴルヘイム』『ムスペルスヘイム』と同じく、最難の一つと言えるも……。

 破壊のエネルギー総量や用意するべきものの煩雑さから、二つに比べれば、劣ることで廃れていったものの1つ。

 

 北欧神話で言う所の地下世界の一つ――――貴金属と職人の世界、大地の妖精『ドヴェルグ』が住むことで知られている場所。

 

 Aランク現代魔法……『ニザヴェーリル』が発動した。

 

 

 

 † † † †

 

 

「北山さんが随分と大規模な術を発動させたが―――いいのかい刹那!? 僕たちに構っていて!? リーナが心配じゃないのか!?」

 

「既に戦闘不能判定を受けて、転がっている幹比古に言われるとなぁ」

 

「魔弾を放ってから、それを『変成』させて小規模な子弾にしてぶつける。クラスター爆弾みたいなのをやられた僕に理不尽!!!」

 

 

 既に残っているのはレオ、エリカ、黒子乃、森崎になった段で、放たれた雫の大術。それを荒野の中心にいたリーナに放たれたものだろう。

 

 だが―――信頼しなければいけないものだ。似たような状況でもリーナは自分を信じてくれた。生きていると、ただ単に息を潜めているだけだと……。

 

 

(とはいえ―――雫が苦心しただけのことはある大規模な術だ……そして――――)

 

 

『この後』が、自分にとって一番苦しいことだ……。

 

 地面が隆起して変形をして、こちらからでも見える一種の巨大なドームになったものを砕いて、五体満足のリーナは飛びだした。

 

 その背中には『12枚の羽』が存在しており、それが防壁となって、圧潰を強要するドームから救ったのだ。

 上空に滞空しているリーナは、羽を介して何かをやろうとしているようだ。

 

 そんなリーナをみた黒子野の言葉が、惚けていた刹那に届く。

 

天使(アンジュルグ)ですか、なんとも美しい姿……分かっていたんですね。ならば―――こちらも決着といきましょう」

 

「お前の隠し持っていた『ブースター』は、結構レアだな。けれど俺が勝つよ」

 

「この後の『北山』さんへの対応で、内心は『右往左往』でしょうが、まぁその動揺につけ込ませてもらいますよ」

 

 お道化て言う黒子乃太助の言葉を受けながらも―――遠くの方で轟音―――リーナの攻撃が響いたことで、最後のバトルとなるのだった……。

 

 

 約10分後には、模擬戦に参加した面子が、死屍累々とでも言うべき惨状を見せながらも、充実した表情で一高校舎方面に帰ってくるのであった……。

 

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