魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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無淵「呼び符は使い切った。もうない!! この先の戦いに奴は置いてきた 後は溜め込んだ無料石を使うのみ!!! さぁ来い! 令和の水着サーヴァント!!!」

……結果……

ムサシ・ミヤモト(2枚)「しっかし 遂に私も水着デビューかぁ……前からやってみたかったんだよね。よろしくマスター!!」(かなり省略)

沖田「何がラッキーですかあああああああ!!! 私なんて数年前から切望しているんですよぉおお!!! それなのに! それなのにぃいいい!!!!」(吐血中)

空前絶後のバサシちゃん2枚召喚でテンションがおかしい無淵が送る新話どうぞ。

追記 スクショを忘れてました。てへぺろ(爆)





第136話『Tears―――乙女の心』

 戦い終わって日が暮れて―――重篤な怪我人こそ出ないが、疲労困憊の中でも寝転がらずに、座り込んでいるのは一種の矜持であった。

 

 それでも駄目なのはプライドを捨てて寝転がるわけだが。

 

 

「とりあえず刹那君がメインを作るまでのツナギに果物をって」

「あったかいものどうぞ♪」

 

 季節は冬も間近な10月下旬……果物といえば柑橘類が主なわけで、お茶と共に嗜めば、美味しかったのである。

 

「あったかいものどうも……刹那の料理は何かのイベント事の風物詩になりつつあるな……」

 

「しっかし、あいつは超人か? 俺たち10人以上と戦ってからも調理場に立つだなんて」

 

「一応、深雪に下処理やらを頼んでいたそうだから、八割方は終わっているそうだけどね」

 

 第二体育館にて、ストレッチを行い身体を解した後の休憩。同時に給仕部隊であった美月とほのかがやってきて、果物と飲み物が振る舞われたわけであった。

 

 疲労困憊の度合いが強いのは、寧ろ二、三年生である。特に十文字克人は、他の面子がプライドを捨てて寝転がる中、座ることすら拒否して立っていたのだが……。

 

「えいっ♪」

 

「ぐふっ……七草……」

 

「たまには隙を見せないと、私が寄り添う間が無くて仕方ないんだから。ほらっダ・ヴィンチちゃんとロマン先生の治療を潔く受けなさい」

 

 秘孔でも押したのか、指二本で首裏を押されたことで、壁に寄り掛っていた十文字が、ようやくのことで座り込んだ。

 

 同時に、七草も座り込む。そんな様子を見ていた人間達が砂糖を吐き出して、果物以上の甘さを口の中に覚えるのだった。

 

 怪我人の治療を医療道具込みで行っていたダ・ヴィンチちゃんと、ロマン先生がようやく我が校の親分の下に到着した。

 

「いやー野戦病院も同然だね。『本番』では、こんなことにならないようにしておきたいところだね」

 

「そうなればいいんだけど、どう考えても何か起こるだろ。起こるからこそ、刹那とリーナの身体の『調子上げ』を黙認したんだから―――、はい。完了だ。

 ランサーのサーヴァントと、この四日間戦ってどう思った? 十文字」

 

「悔しいですが、現代魔法では、追いつき切れないですね……古式の理屈でも無理なのでは?」

 

「それが分かればいいさ―――。それと、浅野の容体も回復したそうだ」

 

「一度、誰かを面会に向かわせます。俺たちの我儘で負担かけて申し訳ありませんでした」

 

「気にするな。親分だ、柱だとはいえ、キミもまだ18歳の少年だ。大人を頼っておけ」

 

 

 そんな言葉を最後に満足したのか、医療魔法師であり、B組の担任教師が十文字の前から去っていく。

 

 その背中を見ていると――――。

 

 

「ああっ。やっぱり『ヒメ』はいいねぇ。2095年のジャパンが生み出した文化の極みだよ」

 

 タブレットタイプの端末を弄って悶える、全員のロマンを『損なう』姿だった。―――だが会話の方向性が、ダ・ヴィンチちゃんが絡むと『少しだけ』違うように聞こえてくる。

 

「キミ、アレだけ『マギマリ』でエライ目にあったってのに、今度はCGドールとか……今度は、ウサギを将軍に献上したことがある家の『脱藩大名』とかだったらどうするんだい?」

 

「違う! 『雪兎ヒメ』だけは絶対に違う! 彼女だけはこのゲヘナの如き世に舞い降りたバニーちゃんなんだ! 君に声が似た『首切りバニー』でも非ず! 

 意地が悪すぎるんじゃないかレオナルド? ……まぁその内―――どっかの誰かと『縁』を結ぶだろうがね」

 

「おや? 『見えたのかい』?」

 

「ああ……まぁ言わずともいいだろう。余計なお世話だろうからね」

 

 そう言った瞬間、レオに視線が注がれているのを幹比古とエリカは分かった。穏やかな笑み。どことなく―――子供を見守る大人のようなそれの意味は―――分からないままに、入れ替わるように刹那はワゴンカートを持ってきた。

 

 ワゴンカートの上にも下にも大きな白磁の器―――蓋で閉められていても、いい匂いがするものが乗せられていたのだ。これが今日のメインディッシュということだ。

 刹那以外の給仕部隊が作ったものにオニギリが多かったところから察するに、和食か中華であろう。

 

 どちらにせよ―――食欲を揺さぶられてしまう。

 

「何も腹に入らないと思うぐらいに疲れていたのに、この食欲を刺激する香りには勝てないな」

 

「本当よね―――刹那くん。今日のメニューは何かしら―――?」

 

 立ち上がり、第二体育館に用意されていた卓に集まる面子。さっきまでの疲れは、どこへやらともいえる。

 

「リーレイの爺ちゃんから珍しい調味料もらったからな。それを使った『ものすごく美味しい料理』さ」

 

 レオとエリカの言葉に応えるように、刹那が大きな器の蓋を取ると、先程の香りの正体が分かる。

 どうやら中国伝統の『五香粉』を使ったようだ。いい匂いだ。

 

 この枯れた草木が生い茂る時期には無い―――春爛漫の『桃華満開』を思わせるものに違わず―――桃色の角切り肉と豆腐が、「寸分たがわず四角形」を保ったままに、器にあるのだった。

 

 色味の美しさに誰もが感嘆の声を上げる。

 

「ちょいと変わった『回鍋肉』といった所だ。名前は無いが、まぁとりあえず食え。動き回って切れた筋肉を治すためには肉を食うべきだ」

 

言いつつ取り皿に一人前を盛り付ける刹那。豆腐が崩れていないところから『しっかり』揚げてあるようだ。そして手渡したのはレオからである。

 

「お、おう! んじゃ遠慮なくいただくぜ」

 

 勢いごんで先陣を切るレオ。如何に美味しそうとは言え、桃色の肉である。不自然な着色料を疑った人間がいたが――――。

 

「――――口に含めば蕩けるバラ肉の角切り。熱が十分にとおっているというのに硬さが無い。されど、そこに同じく四角体の揚げ豆腐が、食感の妙味を与える。

 甘酸っぱく、されどジューシーな肉の旨みとの調和。心まで蕩かすような美味さと慈しみが心身に染み渡る……」

 

 どこのグルメ審査員だと言わんばかりの惚けたレオの評価を聞いた瞬間に、取り皿を手に次から次へと殺到する一高生たち。

 

 九校戦の再現だな。と思いつつ、他の給仕係にも食べるようにいった刹那。でなければ警備部やら違う連中に遠慮していた可能性は大なのだ。

 

「豆腐と肉の炒め物……これどうやって作ったんだ刹那?」

 

「それとこの色鮮やかな桃色の正体も―――? 全てが不思議です」

 

 幹比古と美月の疑問ももっともなので、答えることにする。調理の助手……リーレイもやってきたことで、説明することにした。

 

「簡単だよ。肉を三度『熱』に通すことで余分な脂を落として、されど脂身の柔らかさと赤身とを一体化させた『角肉』を作るんだ」

 

「それで回鍋肉(ホイコーロー)って言えるのか?」

 

「回鍋肉の『ホイコー』とは、一度茹でる、煮るなど火を通した食材を、もう一度鍋に戻すことですから。これは肉、豆腐、生姜、ネギを使ってシンプルに仕上げた、軽くとも美味しく食べられるホイコーローです」

 

 幹比古の素朴な疑問に、中国人としての解釈、豆知識を披露するのは、スライムゴーレムに乗っているリーレイであった。

 

 リーレイの言葉に感心したように、口を開ける二人。この調理などが自動化された時代では、こういった料理と言うもののバックボーン、歴史も失われているのかもしれない。

 

「それじゃレイちゃんの御爺さんからもらった五香粉が色味の正体?」

 

「粉の配合ってのは、それぞれで違うんだが、劉師傅の持っていたものは、アントシアニンが含まれたものがあったから、それが酢と反応したんだ。それが、この色味を作りだしている」

 

 恐らくブルーベリー系統の果物を干したものだろうと思っておく。陳皮に代表されるように、あちらの調味料の中にはそういったものもあるのだから。

 

 

「眼が疲れた僕らとしては、中々に嬉しいね」

 

「水を差すようで悪いが、ブルーベリーが眼にいいという実証も眉唾なんだがな」

 

「えっ!? そうなの!?」

 

「あんまりそういう『大人げないこと』は言いたくないが、まぁそういうことだ。とはいえ食わず嫌いも、ある種の変調の原因だ。

 満遍なく食え幹比古。偏食なんか今からしていたら、将来、美月が困りかねない」

 

「どういう意味!?」

 

 真っ赤になって驚愕する幹比古。真っ赤になる美月。しかし、ドリーム・ゲームの『顛末』からして、『そういうこと』はあり得るのだ。

 

 

「そう言えば司波君はどうしたんですか? 刹那君の中華の大ファンたる彼がいないのは――――」

 

 零野の言葉に、即座に全員が指さした先では、ほのかと深雪に交互に『あーん』されている達也の姿があったりした。

 

 ちなみに言えば五十里先輩は、千代田先輩に掴まっていたりする……そして、自分も少しの覚悟を決める必要がありそうなのだった。

 

 予め取り分けておいた二人前の『桃桜回鍋肉』を、お盆の上に置いて『持っていく』ことにする。

 

「……行くのか?」

「まぁ、光井にはカッコつけたこと言ったからな。どうなるか分からんが、俺の心を話してくるよ」

 

 レオの『重い』問いかけは、ここにいる全員の耳目を集めたが、中でも達也への『あーん』を中断するぐらいには、光井も気に掛けていたようだ。

 

 でなければ友情を優先していたのだから……。それでも、自分の気持ちを正直に話しておかなければ、致命的なことになりかねない。

 

 

「んじゃ。ここは任せた。リーレイ。調理手伝ってくれてありがとう」

 

「謝々。私もいい調理方法を教えてもらった。それと、いい術法を教えてもらったから、更に『嬉々感謝』です」

 

 

 そうして―――刹那は第二体育館から出ていくと、半ば内弟子のようなものだったリーレイから保護者がいなくなり、今までリーレイと親しく話すことが出来ずにいた……というよりもシャットアウトされていた面子が殺到するのだった。

 

 それを若干、気の毒に思って達也と深雪がフォローする前に、諸々のことを終えてリーナがやって来たことで終了となる。

 

 

「セツナは? ……なんて聞かなくてもワカルけどね……」

 

「どうなると思います?」

 

「ワタシが言えることじゃないわよ……ただ―――『喪失う(うしなう)』ことを、またコワがるのかも……」

 

 リーナの腰を掴み、後ろに退避したリーレイの頭を撫でるリーナは、刹那のことを『理解』している。

 

 その理解の深さこそが、雫を今回のことに巻き込んだ原因なのだが、言ったところで詮無いことである。

 

 ―――果たして、どうなるやら……。

 

 

 † † † †

 

 

「それじゃ……刹那は、このアントシアニンに反応した『酢』のように、これからもやっていくんだ?」

 

「肉を煮て、揚げて、炒めて―――そうしてようやく味付けしたものなんだ……魔法魔術に関わらず―――良きにせよ悪しきにせよ、変化は必定だ」

 

 一人、バイアスロン部の演習場。物悲しすぎる木陰、夕暮れの中に佇んでいた雫は、ここで食べたいと言ってきた。

 

 別にかまわないが、この場所では回鍋肉の色味が分かりづらいという事で、真上にちょっとした光源を作って灯りとしておく。雫に掛ける言葉としては、適当なものはいくつもあった。だが、それは最終的には、雫を傷つけるだけだった。

 

 だから雫からの言葉を待つことにした。8割がた回鍋肉が無くなると、お腹がいっぱいになったのか、雫はようやく口を開く。

 

「……私の周りは、私では勝てない相手が一杯。九校戦では深雪に準決で負けて、今回の模擬戦ではリーナに負けた……負けることはいいんだ。

 私がもっと強くなればいいだけだから……」

 

「雫……」

 

「けれど―――重ねた年月だけは、取り戻せないことが悔しい―――あの時、USNAに渡米した際、私と私の家族を助けてくれたプリズマキッドを、もっと知ろうとしていれば……そこに留まっていれば」

 

 俯いて語る雫。泣いている様子はないが、それでも泣かせてしまうことになるかもしれない。

 うかつに―――彼女の心には触れられない。

 

「刹那は――――リーナのことが好きなの?」

 

 

 不意の問いかけ。だが―――予想は出来ていた。沈黙で返すことは出来ない。真摯なる想いで、腹の底からの言葉で……想いを語る。

 

 

「うん。俺はアンジェリーナ・クドウ・シールズという女の子を男として好きなんだ。愛している……この世界で絶対に失いたくないモノなんだ」

 

「――――――」

 

 沈黙する雫。分かっていた。分かっていた。その表情はうかがい知れないが、それでも突きつけなければいけない。

 

「だから……雫の好意には応えられない……」

 

「…………リーナを好きになった理由は、傍にいたから? それだけなの?」

 

「それだけならば、俺は最終的には、リーナを遠ざけていた。達也の『事情』をそれとなく光井も知ったそうだから、俺も言うけど―――俺もまた『そういう人間』だ。

 良かれ悪しかれ、俺の人生は『戦い』に満ちている。修羅道を歩くことでしか進めない人間だ……俺には、もう両親がいない。養母であった女性も死んでしまった。

 だから―――両親がいて、家を、家族を大事にしている。大事にされている人間を―――俺の歩く道の傍に置くことは、必ず不幸を招くから、ご家族に迷惑は掛けたくない」

 

 一条将輝にも語ったことだ。自分のような異端が、孤児の魔術師(オーフェン)が、そんな幸せな家庭で生きていた人間を巻き込んでいいわけがないのだ。

 

 もちろん、世の中の家族の中には関係が冷え切っているものもいれば、毛嫌いしているものもいるだろう。

 

 けれど―――『帰るべき家』は失われてはいない。それが、どうしても刹那には『妬ましい』のだ。こればかりは直しようがない癖だ。

 

 

「リーナは違うの? だって、ご両親だっているし、九島の家だって、そのつもりならば」

 

「そうだね。けれど―――『それでも』……『俺の傍にいる』なんて言われたならば、どうしようもなかった……。

 それは多分、雫からすれば『ズルい』ことなんだと思う。けれど――――言われたから、リーナの中にある寂しさも俺は理解してしまったから、だから、そこは譲れない」

 

 

 恋愛は早い者勝ち。そういう側面はどうやってもあるのだ。確かに愛が冷める時もあるかもしれないし、もしかしたらば何かの切欠で、別れざるを得なくなるのかもしれない。

 

 だが、今の刹那にとっての一番は、リーナなのだ。それだけは譲れないのだ……。

 

「――――これで『答え』になったか?」

 

「…………納得出来ないことはない。けれど全てが明らかになっていない気がする……それが、リーナに対してズルいと思える点だよ……刹那とリーナは『秘密』を共有している。

 深雪と達也さんみたいに……それは、きっと私のような『資格』無い者が、知ることが出来ないものだって理解出来ている―――」

 

 そこまで求めるものではない。魔性の理屈に近づけるには、あまりにも……雫は、尋常の世の人間なのだ。

 

 北山潮 氏の顔を思い出して、あんないい父親がいる家庭に俺が関わる理屈はないのだ。有体に言えば怖いのだ。

 

 そんな苦衷を察したのか顔を上げて、雫は言葉を紡いできた。

 

「―――ほのかにも内緒にしているんだけど、私……年明けすぐに留学する予定なの」

 

「いきなりだな……期間は?」

 

「三か月間。そしてUSNAとの交換留学―――」

 

「なんで? そもそも雫が、向かう理由なんて―――」

 

「刹那は関係ないよ。別に―――ただ少しだけ、あちらの魔法技術がどんなものなのか知りたかっただけ」

 

 それを素直に信じろというのか、顔を上げた雫の眼と頬に少しの水の乾いた跡を見ながら……苦衷を覚える。

 

 だが、明後日の方向を見ながら雫は、風に棚引く髪を抑えながら言葉を紡ぐ。

 

「バークレーの魔法科高校には、きっと私のロリなボディを好いてくれるロリコンがいるに違いない。刹那とは真逆の趣味の人間が」

 

「関係ないんじゃなかったのかよ? というか自分を卑下しつつ当てこするな」

 

「帰って来たらば、いの一番で刹那に私の彼氏、紹介してあげる――――」

 

 その言葉が一種の断絶のつもりなのだろう。

 ここで『雫! お願いボクをすてないで』などと情けなくもカッコいい事が言えればいいのだが……。

 

「……期待せずに待ってるよ。潮さんよりも先なのは申し訳ないけどな」

 

 そんなお道化た言葉に対して、いつもの無表情を作ったままに―――言葉が掛けられる。

 

「私が、リーナを越えるナイスバディになって帰って来ても遅いから」

 

「…………」

 

「…………言いたい事は分かるよね?」

 

 刹那の沈黙に対して顔を、ずずいっ、と近づけてきた雫。あれだけ言ったのに、あれだけ言ったというのに……。

 

 結論は、『あきらめない』。そういうことだった。

 

 

「好意を持たれて、いやでは無いんでしょ? ならば―――私はあきらめないよ」

 

「なんでさ! いや、振った張本人たる俺が言うのも何だけど、新たな恋に生きた方が建設的だよ!」

 

「それを決めるのは私であって、刹那じゃないよね。まぁとにかく区切りはつけた。そしてこの酢と反応してピンク色に『変わった』回鍋肉のごとく、私も一皮剥ければいいだけだよ。

 リーレイちゃんみたいな子が、頑張っているのを見れば―――そんな弱音は言えない」

 

 愛梨といい、USNAではアマリアちゃん然り―――何で俺の周りの女の子―――特に好意を抱く子は、あきらめが悪いのだろうか。

 

 きっと親父が刹那の身体に残した遺伝子の一割か二割。お袋の凶悪な遺伝子でも食いきれなかった残り滓のようなそれが、この状況を作り出しているのだ。

 

 恨むぞ。親父―――衛宮士郎!!!! 

 

 そう無言で叫びながら…………。二ザヴェ-リルの精度上げの為にも、少しのアドバイスをしながら校舎の方に戻るのだった。

 

 笑顔を見せてくれる雫に、苦笑しながら……その笑顔に何も言えなくなる。

 

 結局、俺も親父の息子であることを深く痛感するのだった。

 


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