魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
水着の実装だろ!!社長の絵もだ!ママン(?)のクリスマス休暇だって待ってた!あんたはクリスマスプレゼントの代わりに……おや? あれ? なんでせうか? このCM―――――――」
リピートすること10分後……。
沖田「いやーFgo運営は、やはり神でしたねー。沖田さんは信じてましたよー。しかもなんですかこのシンフォ〇アじみた装備は、心臓に『響きますよ』――遂に私も病弱キャラを脱して、虎ッカーにおいて改造手術を受けた改造人間沖田オルタとして――――」
以下、省略。
私の早とちりでCMを見逃したがゆえの、とんでもない誤爆を修正しつつの新話どうぞ。
「若い頃というのは色々あるものだ。かくいう私も、色々な女性から言い寄られて言い寄られて、いやはやいい時代だったな」
「お孫さんの前ですよ? まぁそんな場面を見せてしまった俺が言えた義理ではありませんが」
今日の顛末。いわゆる模擬戦の一幕を聞いた劉師傅は、懐かしむように眼を閉じてから、孫に近づく。
「じいちゃんは、昔すっごい色男だった。誇らしいじゃろリーレイ?」
「けど大事なのは今だと思う。今じゃ爺ちゃん枯れた大木にしかみえない」
枯れた大木。言われると同時に隅っこの方にて落ち込むご老体の姿に、哀愁が漂う。
ともあれ定期報告の時間であった……。
「やはり我が校に対する調略が行われていたようですね。一種の洗脳をされていた浅野先輩の容体が回復したようなので、明日辺り見に行こうと思います」
「助かる。周を直接捕縛するためにも決定的な証拠が欲しいのだが、中々に上手くいかない」
机に戻ってきた劉師傅にこれまでの経過を教えておく。同時に、これまでのことは国防軍で信用ある人間にも教えてあると言うと、相好を崩す。
「構わんよ。私を『ここ』に案内したのも軍人。私の知己のものだ……」
「聞かない方がよろしいんでしょうね」
「隠し事をしてすまないな。ともあれ……私の気持ちは『一つ』だ」
その言葉を最後に、五番町飯店、それに併設されている劉家の私邸から出るリーナと刹那。
私室の窓から手を振ってくれるリーレイが、見えなくなるまで手を振ってから……夜闇の中で言葉を紡ぐ。
「謀略の街だな……ここは―――」
「本当にね……大佐曰く『劉雲徳』は現在でも、大亜国内にて確認出来ているそうだから、劉師傅は確かに、ただの魔法師としては半端な料理人―――なんて
「あの時、フェイカーとの戦いの時に放たれた雷霆。アレはやはり、リーレイの魔力の質に似ていた」
鞭を振るうことで特大の落雷や放電現象を一帯に落とす御業、その際に使われた魔力の質は……リーレイに似ていた。
だが下手人たる、恐らく大亜連合の『援軍』であった『仮面の雷鞭使い』から窮地を救ってくれたのは、リーレイなのだ。
「リーレイを鍛え上げることで、雷鞭使いの正体は分かりつつあるんだが……父親も母親も鬼籍に入っている少女の家族を疑いたくないな」
「私情を交えちゃうのは仕方ないけど、状況は
リーナの言葉に、確かに今は雌伏の時。そういう思惑を感じるのだ。
『こういう戦は、私苦手です。ハルノブも、『五つ』ぐらいの軍団編成で越後の領土を脅かして、どの軍にハルノブがいたのか悟らせなかったのですから』
『もしや、それがキミの宝具の動機になったのか? だとしたらば、余程恐ろしいぞSENGOKU時代!!』
久々のカレイドステッキ状態のダ・ヴィンチが、霊体化した『お虎』に言う。流石にサーヴァントを維持するためには
刹那は優秀な魔術師だ。このマナが薄い世界であっても、
東京都。かつての江戸は多くの土地改良を用いて、生活基盤を整えたが、もともと―――『そういう地脈』は、あったのだ。
「ランサーが生きていた時代の『江戸』ってのは、どういう認識の土地だったんだ?」
『そうですね。かつては私の家の者も治めた土地ですが、交通の要衝として幾らかは発展していましたが、全般的に見れば、中々に扱いづらい土地ではありましたね。
後の世で『松平』が、土地改良を『ありったけ』やって、渚を陸地に変えて、巨大都市にしたのも理解出来ます―――ただ、江戸はもう一つの意味で、重要な土地でした』
何気なく話を振ったが、思いがけぬ言葉の応酬に、深い話を刹那は要求したくなった。
「それは?」
『平安以前より陰陽師や妖術師達は気付いていたのでしょう。江戸という土地に眠る『神代の魔力』。即ち魔術師的に言えば、『霊地』としての格が高かったのです。
むやみやたらに人の手を加えるよりも、むしろ『自然』のままに利用することで、朝廷の『貴き方々』は、護国・鎮護の要としていると聞きましたよ』
当時、神仏の加護というテクスチャを無理やり引っぺがして、天下布武で日ノ本の統一を目指した『第六天魔王』
その権勢はすさまじく、同時に人理の限りを以て、ブリテン島と同じく島国という隔絶された日ノ本をヒトの時代に進めていったのだ。
それでも残った霊地の一つは、
江戸は、アルズベリか、噂にだけ聞く姉弟子の生まれ故郷みたいなもののようだ。
『ふむ。もしも日本に『別の特異点』が出来上がるとすれば、そういったものもあり得たのかな? もしくは、濾過異聞史現象にも選定されていた可能性はあるか』
濾過異聞史現象―――かつてダ・ヴィンチの『スペア』が体験したという、汎人類史に対する異星からの『攻撃』。
その顛末は、まだまだ現在のダ・ヴィンチには送られていないが、過酷な世界でも歩みを止めずに、嵐の向こうに挑む人のことを忘れてはいけない。
「ところで、ハナシは変わるけど、セツナはシズクと何を話したのかしら?」
少しだけ口を尖らせるように言うリーナ。やましいことは無いのだが、秘密にしといた方がいいこともあるので、そこは口にせずに言っておく。
「それは言えないな。ただ……「あきらめない」とは言われた。何で俺みたいな、どうしようもない男に焦がれるのかね?」
本当に謎である。自分の能力は確かに何か『惹かれるもの』はあるのだろう。だが、人間、能力の高低で人を好き嫌いするとも言い切れない。
自分に人間的な魅力があるとは強弁出来ない刹那の悩みどころは、そういうものなのだが、永いこと一緒にいた蒼金の少女からすれば、簡単なことなのであった。
「どうしようもない事に対して『あきらめない』からこそ、そうなんでしょ。そりゃ結果はヒサンになるかもしれないと分かっていても、セツナは最後まであきらめない。
本当は立ち止まって、もう嫌だ。って投げ出したいことも―――最後までやり遂げるもの。だから……そんな人には、たまには頼ってほしいし、寄り掛ってほしい。
拗ねた坊やのくせに、世を斜に見ることもせずに、『なんとかしようとする』から、女の子は惹かれちゃう―――そういうことでしょ?」
幾ら長いこと一緒にいたとはいえ、あっさり分析されてしまって、何とも言えぬ気持ちとなる。そんなものかな。と思う。
魔術師のくせに超然と出来ず、立ち止まりそうな人間を進めと後押しする……。そういうものか。
「まぁとにかく今は『マスミン』先輩のお見舞いよ。
「ガードが必要だな」
十師族辺りに話がいってもいいのだが、それだと物々しくなりすぎる。第一、『来てもらって』こそ意味がある話なのだ。
囮にするようで、あんまりいい気分ではない。どうせならば、俺を狙えばいいのに―――という刹那の思考を理解したのか……。
「置いていかないでね?」
「生徒会業務は―――ああ、あずさ会長から「よろしく」と言われたんだったな……」
エルメロイレッスンの末のことであるならば、自分にこそ責任はあるという『理由付け』で、拝命したのだった。
明日は日曜とは言え、登校しなければ、追々のことに間に合わない。そういうことだが……。
「リーナ、腕取りすぎ……」
「だってイッツアコールド! ニホンのウィンターシーズン間際は寒いわ。とはいえ、明日のことを考えると、色々と自愛しなきゃいけないから、コレで妥協しましょう♪」
横浜の街中、行き交う人々はコート姿の高校生カップルに注目している。しかも片方は完璧な白人の超美少女であることで、耳目を集めているというのに……。
リーナがやったことは、ある意味……めっちゃ恥ずかしかった。まさか『コレ』をやるとは―――。額を抑えてからリーナに問いかける。
「22世紀を前に―――『コレ』! 流行ってるのか!?」
「マムもパパと恋人時代に、『コレ』をやっていたって聞いているわ。ワタシのグランパからの伝授らしいけど♪」
喜色満面でリーナがやったこと。それはセツナの真っ赤なコートの中に手を入れて、その中にあった刹那の左手を絡める。
ポケットの中での手つなぎ。それは冬のカップルの定番行為であった―――時代が半世紀も前に流行っていただけに、ブームの巡りがとんでもないと思える。
夏場にタピオカが流行っていたことを考えると、本当にここは2090年の日本なのか怪しい気持ちが出てきた。暖かなリーナの手とは裏腹に、そんな冷めた思考をしていたのだが……。
『いやーあっついねー。局所的な
『全くその通りですね。ダ・ヴィンチ大老。この熱気を越後の寒さ対策に活かせていればなぁ、とか考えてしまいますよ』
『酒を飲んで身体を温めるよりは、いいだろうね。もしくは全領民を魔獣化させて
『それは妙案♪ どこかの並行世界の私よ―――!! 越後の民を寒さに強い身体にするべく、毘沙門天の加護を与えるのだ!
もはや青苧の税金だけを徴収して、他の産品などの
昔の越後は、大変だったんだなー。同時にランサーは政治家としては、あんまりよろしくなかったことが発覚。
そして―――。この手の暖かささえあれば、極寒の地でも生きていけることは間違いなさそうだ。お互いの隙間を無くすように、密着しながら歩く高校生カップルは帰路に着くのだった……。
……余談ではあるが、この際に刹那とリーナがやった2010年代流行りの『恋人つなぎ』は、横浜の目敏いブームの火付け役。
言うなれば、若者文化の『オーソリティー』たちに見られており、一か月もせずに都心から全国に広まり、更に言えば……。
「西城さん……ううん、レオ! 手をつなごう!!!」
「ユキ!? ちょっ、それはあまりにも恥ずかしいんだけど! 俺の知り合いのカップルだけが出来る、
「もうレオと私は友人以上恋人未満―――あの絆を深めることで高まるのよ!! 恋人つなぎでGOだよ!!」
「ちょっと待ってくれぇええ――――!!!」
などと、一人の友人の騒動を、かなり面白おかしくしてしまうのであるが―――、本当に余談でしかないわけだった……。
† † †
「それじゃいいのかいエリカ、訓練は?」
「私の身勝手な事情で、申し訳ありません。兄上―――ですが、今のエリカは―――悟りを開くことに修身しているので……」
そういって、道着姿のまま道場の中央にて、正座しながら瞑想をするエリカ……メディテーションという一種の集中方法で、エルメロイレッスンの基礎項目である。
気付いた修次は、エリカの眼の前に佇むものが、強大な『魔人』の類であることを知り……集中の邪魔をしないことにした。
内心でのみ、頑張れと言っておく。と家人―――特に姉と会うこともなく、『無事』に自宅から出られた。
邸宅を出ると門前には金色の髪……長いものをまとめ上げた美男子がいた。年の頃は当たり前だが、修次と同じくらい。
国防軍の士官候補生の一人。有体に言えば、修次の国防軍の寮におけるルームメイトだった。
「妹さんはいいのかい?」
「ああ、練習の邪魔だって追い返されちゃったよ。兄離れかな」
「さぁ、私のところは既に終わって、愛しの『ロジェロ』を見つけちゃったからね。実によろしくないロジェロを見つけたわけだから、喜ばしくないが……。彼女さんの事情に付き合うのかい?」
「まぁ……そうなるかな……ああ、邪魔だとか考えないでくれ。『一色』の事情にも絡むことがあるんだからな。一緒に行こう」
その言葉を受けて、盛大な溜息を突く一色家の長子。一般的に人好きされる修次の笑顔を受けても、この対応。
原因はなんとなく分かる。一色の家は、家族全員が仲が良いのだ。親族の中にはよろしくないパワーゲームに興じるものもいるが、直近の家族は、本当に仲が良かったのだ。
それを乱した『原因』が、この上なく嫌なのだろう。その原因と対面するとなると、嫌な予感がビンビンするのだった。具体的には、胸騒ぎがすると言えばいいのか。
「いきなり斬りかかるとか、止してくれよ」
「それは相手の対応次第だ」
「とりあえず向かう所は病院だよ」
「状況への対処は臨機応変にだな」
そんな言葉を掛け合いながら、国防軍の若き士官候補生二人は、国立魔法大学付属立川病院へと赴くのだった……。