魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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コハエースを見て一言。

マシュ高橋さんに法螺貝の声真似(?)させたのは、あんたかー(笑)

そして水着沖田……XDをやっている私でも気付かんかったわい。だって水着ビッキーは持っていないんや。

というわけで、水着第二弾の為に諭吉を使うかどうか迷っていながらも、新話お送りします。

修次さんって、作中では最強系キャラなんだろうけど。Fate勢とやり合うと、途端に火力不足。

やっぱり剣士はビーム出さないと、というのを回避する苦肉の策ゆえです。ご了承ください。(意味不明)


第139話『異空の下での決闘-Ⅱ』

 その戦いは千葉修次の世界を一変させる戦いだった。何気なく父から聞いていた『戦車』を操る大亜の魔法師。

 

 それこそが、兄を引き締めさせて、夜ごと鬼気迫る剣気を迸らせる原因。千葉の剣士として、あまりもの失態を見せたものだと気付けた。

 

 摩利からの短い説明を聞いたが、俄かには信じられなかった。20世紀ごろに流行った伝奇小説『魔界転生』の如く、現代によみがえりし武勇溢れし豪傑たちを使役する術。

 

 戦車を操るのは、封神演義における『悪女』の一人、『玉石琵琶精 王貴人』であり、その能力は……正しく脅威だった。

 

 操る二頭立ての馬車に繋がれた巨大な『キツネ』が炎と氷の蹄跡を残して、同じように車輪を使って巨大な轍を作る様は、人外魔境。

 

 その突撃を前にしてはロクに魔法も使えまい。それどころかキツネが吼え声を上げる度に、こちらのサイオン活動が阻害されるのだ。正しく修次の中身をかき乱される。

 

(古来より犬の吼え声には、『魔』を討ち払う力があると言われていたが、そういうことか……)

 

 現代魔法は、『声』『呪文』というものを全てデータ上の数式に置き換えてきたが、こうしてその『優位性』を覆されると、『間違った進化』だったのではないかと思ってしまう。

 

 だが、この場で考えるべきことではない。そんな王貴人と戦う白装束と鎧の白馬にまたがる女武者の武技に負けじと修次も剣を振るう。

 

 

「余所見をしている暇があるとは、な……この身体では、力に限度がある、か。本来の俺ならば数合の命数だったろうに」

 

「さぞや名のある剣士とお見受けした。しかし、取らせてもらう」

 

「いいや、それはないな。貴様が死ね。いきすぎた『人理版図』の剣士よ。我が身が、傀儡仕立てであろうと、この剣だけは貴様には破れない奇蹟だ」

 

 いっそのこと、首を落とされれば良かったというのに、言葉の割には生き汚い男である。古めかしい大陸風の服。簡素な鎧を着込んだ妖しい魅力を発する剣士との打ちあいは、修次に不利極まる。

 

 あの魔法の杖の言う通り、十師族級の力はある。剣戟一つ一つに現代魔法の殺傷性Aランク相当の力がある……。もはや修次の持ってきた警棒タイプの刃物は、ボロボロになっている。

 如何に斥力場という見えぬ刀身で実体ある『剣』を受け止めているとはいえ、その圧が驚異的であれば、起点たる得物が影響を受けずにはいられないのだ。

 

 

「見えぬ刀身を作りだして軽快且つ、可変的に出し入れ、伸縮させることで、一呼吸の間に幾重もの斬撃の『層』を作り出す、か……面白い『見世物』だったよ」

 

 そのあからさまな挑発に修次は、眼を吊り上げる。ここまでの戦いで、この中国武将のような剣士に一つも、有効打を与えられていない。

 

 だが、それでも戦う自分を、千葉流の剣士として積み上げた全てを否定されて、怒りを覚えないわけがない。

 

 得物の違いは仕方ないが、それでも獲るという覚悟は―――崩れ去ることになる。

 

 

「返礼だ。貴様に『層を成す斬撃』の妙技というものを見せてくれる――――」

 

 その言葉に大陸式の古刀を横に伸ばして構える―――、否、それは、剣道及び剣術においても、『構え』とは到底言えない。

 

 役者が取るポージングにしか見えなかった。肩の高さまで上げた腕、右半身のみが横一文字となる姿……伸ばされた剣が、寒気をするほどにサイオンを吸い上げる。

 

 ゆらゆらと揺らめく蜃気楼のように剣の輪郭が定まらない。だが、そんな隙だらけの構えから放たれる剣など―――。

 

(術理の無い『棒振り芸』だ!!)

 

 勝機を見出した修次が―――二本目の刀剣を出しながら、崩れそうな鉄塊となった一本目を投げつける。それを払えば、次の瞬間には心臓を貫く一撃を放てる。

 

 防御不能の一撃。ガードすらも出来ない。その構えの陥穽を見てとった千葉修次は確かに麒麟児と言えるだけの、天賦の剣士だった。

 

 だが―――それはしょせん、現代社会という枠の中であり、人と人が、原始的な武器で殺し合うという時代に生きた人間たちの『苛烈さ』とは違っていたのだ。

 

 剣が振るわれる。軽い切払い。修次の投げつけつた鉄塊を撃ち落とすことを目論んだ一撃。そしてその先に、狙いすました攻撃が入れられる――――。

 

 そういった思惑は―――切払いの一撃だけで崩れ去った。

 

 

 貴様に『層を成す斬撃』の妙技というものを見せてくれる――――。

 

 

 その言葉の意味をもう少し深く考えるべきだった。そもそも妖の剣士にとって、『間合い』など無いようなものだった。

 

 今までの剣戟はしょせんはフェイク。妖の剣士は、王貴人によって『限定再生』された『サーヴァント』。

 

 ならば、その手にある剣は―――人類の理が及ばぬ奇跡の具現―――ノーブル・ファンタズムなのだと……そういう知識があったならば、洞察出来たはずなのだ。

 

 もっとも、警告したとしても修次は吶喊していた。

 

 だから――――。

 

 

「薙ぎ払え―――『火風青雲剣』!」

 

 真名解放。同時に修次に幾つもの斬撃が走り、ボディアーマーが砕け散り、熱波と真空刃が滅茶苦茶に叩き込まれる。

 

 彼我の距離7m程度。だというのに斬撃は、全てが十分な殺人、否、斬鉄の威力を持っていたのだった。

 

 十の重さある斬撃に熱波の焦熱、風の刃―――気を抜けば、死んでしまいそうになるほどの圧を受けた修次に対して摩利が悲鳴を上げる。

 

 歯を食いしばりながら、摩利を手で制しながら、己の身が危機一髪であることを察して―――飛び退く。

 

 相手の間合いが、どれほどかは分からないが、とりあえず修次にとって『無敵』とも言える三メートルの間合いに踏み込むことは出来ない。

 

 その外側から斬撃を飛ばしてくる相手には手が出せないのだ……。否、剣士としてはあまりにも修次は真っ当すぎるのだった。

 

「ほう。随分と位の高い『仙術』だ。衣類の下に防御を仕込んでいたとは驚きだ。―――が、我が青雲剣の前では、病葉も同然。次で貴様の五体ごと五臓六腑を解体せしめる」

 

『青雲剣……なるほど、封神演義に名高い―――後の『仏教四天王』にも昇華される英雄。金鰲列島の道士『魔家四将』の一人。

 魔礼青か。その一振りで、幾万の矛が乱舞する黒風と空を飛び回る火炎を生み出すという。対軍宝具の所持者……厄介極まる―――刹那!!』

 

 自分に『防御術式』を仕込んでくれた相手の名前を呼ぶ魔法の杖。魔法の杖の主人でもある遠坂刹那は、ルゥ・ガンフー及び再生されたサーヴァント二体と切り結びながらも、呼びかけ一つで、魔法の杖の意図を読み取った。

 

 何かの念話もあったかもしれないが、瞬間―――修次の頭上から勢いよく降りてきて大地に突き刺さる『鞘付きの刀』。それは―――恐ろしく『巨大』だった。

 

 実家に在り、妹によって使われる『大蛇丸』よりも巨大な『刀』。西洋の刀剣が重さで鎧ごとの叩き切りを行うのと対照的な日本の刀剣思想は鋭さで鎧の隙間を切る。

 

 修次には理解出来た。その二つを両立させた『伝説上の刀』がそこにあった……。

 

「使えってことかい? ……」

 

『君の実力じゃあ届かないことは十分に分かったはずだ。だが、せめて武器だけでも対抗できるようにしておきたい。

 それだけだ。このまま逃げ回るというのならば、私のマスターは再び、君に防御術式を敷くだろう』

 

 あまりにも無駄な。という言葉を省いたのだろう魔法の杖に苦笑する。実に主人想いな限り―――様々な疑問は、渦巻くも―――その伝説上の刀剣。

 

 戦国一大合戦『姉川の戦い』において使われた刀剣――――刀匠『千代鶴』作『太郎太刀』を、重々しく手に取ってから抜き放つのだった。

 

 腕に在る汎用型CADを通して『力場の刀身』も形成される。重すぎるほどに魔力の籠った剣と、重心の扱いに難のある剣。その両面が修次に試練を与えるも、それを乗り越えてこそ意味がある。

 

 眼の高さまで大太刀を持ち上げて、あちらの間合いの外から牽制する。一振りで違う角度から振るわれる十の太刀筋に炎撃、風撃、合わせて十二の連続攻撃。

 

 恐ろしい限り。現代魔法や現代技術では追随できぬ神秘の合理。恐らく使われている材質も、鋼や特殊な合金ではあるまい。

 

 だからこそ、滾る……初戦は、自分の負けだ。そこをまずは認める。刹那のくれた防御……無形の魔力に依る見えざる鎧が無ければ死んでいただろう。

 

 ゆえに―――今度は倒すだけでなく殺す―――。

 

 その意志を剣に乗せて、加速魔法で飛び出す千葉修次。迎撃する青雲剣の無造作な一振り。離れた所から修次を切り刻み、骸にして尚飽き足らぬ攻撃は―――。

 

 太郎太刀に上乗せした斥力場で『上段』から振り下ろされた剣戟を八割防ぐことが出来た……。

 

(成程、完全に『縦横無刃』な太刀筋というわけではないか……)

 

 上段から振り下ろされた剣戟ならば、その太刀筋に沿った剣の軌跡が刻まれる。縦に割った攻撃ならば、太刀筋は全て『縦筋』に―――間隔を空けて刻まれる。

 

『横筋』ならば―――そういうことだ。もっともそれが隙間なく、同時に穿たれるので必定、防御が至難となる。

 

 しかし太郎太刀を介して形成される斥力場は、巨大な『盾』も同然になる。今の攻撃は太刀を胸の方に引き寄せたことで凌げた。

 

 

「剣の動作の中には―――突きもあることを忘れたか?」

 

 言うや否や、一歩進んできて、真の剣術による『突き』を幾つも放つ『魔礼青』という魔剣士の攻撃を弾く、弾きながらも、ようやく間合いを詰めたことで、颶風を生み出す一撃を叩きこむ。

 

 まだまだ重心に難があるも、距離を詰めたことで、修次の距離での戦いに持ってこれた。幾らかの出血を堪えながらも、千葉修次の挑戦が始まる。

 

 見えぬ刃と見えぬ斬撃。一刀の重さと、層ある斬の応酬が、繰り広げられる。

 

 

 † † †

 

 

 千葉修次に、回復術を隙を見て掛けながらも刹那は、白虎と化した呂及び―――、封神演義に代表される武将にして真人たる魔家四将の内の二体。

 

『魔礼紅』、『魔礼寿』だろう相手と切り結ぶ。

 

(サーヴァントがサーヴァントを使役している―――わけではないな。恐らく何かの『傀儡』(くぐつ)に、王貴人が『似姿』を投影している。

 

 フラッシュ・エアとも言えるが、それよりは若干、高度(Higher)だ。自分の魔眼……灰の魔眼のようなもので複製しているといったところだろう。

 

 それにしても随分な『切り札』の打ち手だ。霊基が変化しているのは分かっているが、強すぎる……。

 

 フェイカーに何があったかは分からないが、今は目の前の戦いに注目するしかない。獣の俊敏さでハンターよろしく狙ってくる呂の攻撃は、かなりのものだ。

 

 その白虎と化した呂の背中に乗りながら、こちらの攻撃を無に帰す魔礼青と同じく中国武将の姿を取る真人の姿に忌々しく思う。

 

 想いながらも、戦略及び戦術に変更はない―――干将莫耶と切り結んでから、飛び退く巨大な白虎に追撃を掛ける。詠唱無しで取り出せる弓を手に『剣矢』を番える。

 

 

「投影、現創―――悪竜蒐集血盟剣(レール・ダインスレフ)!!」

 

 真名解放と同時の弓射、番えられた魔剣の威力と魔力は相当なものと知った呂が避けようとするも、何かを言われたのかすぐさまの防御行動。

 

『混元傘』を前に出して、『瘟』という言葉で跳ね返せ―――るわけもなく、その巨大ジェットのごとき魔力の圧を前に防御するだけに止まった。

 

 十メートルは後ずさりする白虎だが、耐え切ったようである。

 

 ここまでの戦いで分かったことを一つ一つ組み立てていくと一つの『結論』が出る。

 

 こんな戦いにいつまでも付き合ってられない。どういったところで、この空間は『迷宮』なのだ。

 

 ならば、さっさと打ち砕くために―――宝具の乱舞で空間を砕いてしまう。もしくはオニキスの走査に任せて『裂け目』を見出すか、だ。

 

「投影、重創―――全投影連弾創射(ソードバレルマキシストライク)!!!」

 

 待機させておいた武具の全てを解き放ち、空間を『発破』しようと目論む乱打戦。魔礼紅が持っていた傘が最大展開。

 

 熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)のように光の防御壁が地層のように展開して、上方・前方から撃ち出された宝具を受け止めていくのだった……。

 

 

 

「ちぃっ……重すぎる……ヤツの放つ幻創宝具の一つ一つが、傘を消耗させる……!」

 

「しかも、この空間の陥穽を見破りつつあるかな。厄介だよ礼紅」

 

「礼寿。使い魔を放って牽制しろ。奴に好き勝手動かれては、俺の防御は持たない」

 

 一時だけの『主人』として女狐の妹に使役されいる『魔家四将』ではあるが、本来の力、正しい召喚であれば、もう少し戦えたはずなのだが……、どうやら自分達は『生贄』になるだけのようだ。

 

 かといって、跨っている白虎の妖術師を殺すことも出来ない。

 

 傘を持って防御反射(ディフレクト)を担当する魔礼紅が、覚悟を決めることにする。このままいけば、この空間はあの男……『魔宝使い』の手によって砕ける。

 

 ならば―――、と思っていた所、少しばかり敵方に思惑違いが出てきたようだ。そもそも礼紅・礼寿にとっては、王貴人ですら敵なのだが……。

 

 

 ともあれ、この好機を利用させてもらう―――。

 

 


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