魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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遂に現れたフェイカー。

グランドロールで俯瞰とはいえ、出てきた骨ドラゴン―――、動画で見ると凄い―――骨です(え)

磨伸先生も言っていたが、確かに原始電池はイメージと違った。アンソロジーで金ぴかの中に世界最古の電池があるとしていましたからね。驚きでしょう。

そんなこんなで新話どうぞ。


第141話『家族の想い』

 

 

「いやー、それにしても長いねぇ」

「女の買い物が長いなんてのは、太古の昔っから分かっていたことですけどね」

「それに付き合わされる男の気持ちにもなってほしいかなぁ」

「ナベ先輩は、そういうの無いので?」

 

 何気ない刹那の言葉に隣にいた修次氏は苦笑い。どこでも女というものは、そういうものらしい。特に……三人もいれば……。

 

 少し前までは、男三人に女二人、ダ・ヴィンチちゃん、大酒呑みの水樹奈々(?)という構成だったのだ。

 それが、いまや変わってしまっている……あな恐ろしやである。

 

 ちょっとしたショッピングセンター。現代では骨董品のように廃れている大型の施設が存続している理由とは、最終的には、自分の目で見て品物を買いたいという願望を誰もが持っているからだ。

 特にこの立川近辺、俗に国分寺市、立川市、国立市……。この辺りはいまだに21世紀前半の風情が残っていた。

 

 そんなわけで―――。

 

「セツナ―――、お待たせ―――♪」

 

 ショッピングセンターのフードコートに、ようやくやってきた姿。金色の髪をロールのツインにした四六時中見ていても飽きない姿を先導にして、三人の美少女、美女がやって来た。

 手を大げさに振りながらやって来るリーナに軽く手を振ってから、奥にいる二人を見る。

 

 一人は黒髪に麗しい面貌。美少女というよりも美人というべき人間。

 年のほどはリーナと変わらないはずなのだが、大人っぽく見えるそういう顔立ちだったのだろう渡辺摩利の姿を確認して、その後ろに、その摩利よりも年上の美女を確認する。

 

 数時間前までは金髪の美男子として、髪を纏めていたそれは解かれて、ストレートロングとして背中に掛けている。

 格好の程は、完全に男ではなく女性らしいもの……かなりフェミニンなもので仕上げられていた。

 ピンク系統でまとめあげられながらも、リーナが好む「ガーリーファッション」というよりも「フェミニン」な……年相応というと失礼かもしれないが、そういう服装である。白のブラウスに黒いミニスカート。

 その上から羽織っている短めのトレンチコートが、長い脚を強調してくる。

 

 少しだけ恥ずかしいのか、赤くなっている辺り、色々と着せ替えさせられたのだろう。

 それだけお互いの「彼女」の「悋気」が凄かったとも分かるのだが……。

 

 そんな一色楼蘭改め「一色フローラ」氏の姿を見て、男二人は感想を述べる。

 

「「なんで、そんな『女の無駄づかい』していたんだ……」」

 

 男でいる理由が、さっぱりわからない限り。ここまでの美人さんを表に出していれば、人生だってもう少し違ったものだったろうに、という思いばかりが、男子二人から出てくるのだ。

 

「い、色々と家の事情とかあるんだ。特にナオツグだって分かるだろう! 家の長男の姿を見てきたんだったらば!」

「そりゃ、和兄には苦労を掛けているとは思っているからね……」

 

 武門のなかでは優秀で、兄より優れた弟でありながらも、長男に苦労を負わせていることを指摘されて、修次さんは苦笑してしまう。

 

「にしても、同室のルームメイトなんですよね? 気づかなかったんですか?」

「うん。実際、ランならぬフローラは、結構堂々としていたからね……いや、本当だよ。摩利。僕は、なにも知らなかったんだ」

 

 一昔前のライトノベルでは使い古された手。一種の軍事学校に入ったらば、そこにいたルームメイトや転校生は、男のフリをした女。

 とんだ「ワンサマー」な状況だった修次さんに、疑いの目が向くのは仕方ない。そのぐらいナベ先輩の目はすごかった。

 

「安心してと私が言うのもなんだけど、私はナオツグには全く興味が無いから、だから「メタモルフォーゼ」で隠蔽していたとはいえ、真っ裸に近い姿を見せていたわけだし、ね?」

 

 それはそれで、問題ではなかろうかと思う。第一、男扱いされていなかった修次さんのテンションがマイナス状態に。それを見て彼氏をバカにされた(?)ことに腹をたてればいいのか、安堵していいのか、複雑な表情のナベ先輩の顔。

 はっきり言えば、めんどくさい人間関係が生じているのだった。

 

 ともあれ一種の隠蔽魔術。永続的なそれで、今まで男として暮らしてきた華蘭(フローラ)さんの動機が読めないのである。

 

「それに、男の興味で言えば、どちらかと言えば刹那クンに興味あるかなー♪」

 

 その言葉は爆弾であり、自分たちが占有しているテーブル。そこにいたもう一人の金髪の怒気が上がる。熱っぽい視線で、こっち見ないでほしい限りである。

 

「そもそも、キミとリーナちゃん。最初っから私が「女」であるって確信していたでしょ? 最初の挨拶とか、あからさますぎたし」

「あれは、あの時点では妹君のことで悪罵を吐かれての意趣返しと、さらに言えば、ナベ先輩の恋路を邪魔するじゃなかろうかという懸念ゆえの言葉だったんですよ」

 

 気付けた原因は、秘密―――というわけにはいかず、少しばかり説明をすることにする。

 人間の性質に起因する一種の魔力測定方法。簡単に言えば、女性であれば陰性の魔力が体から迸る。あの里美スバルですら、男らしさを気取っても、刹那の目には女性特有の魔力が見えるのである。

 魔力に色があるかどうかというのは議論の余地があるが、スヴィンのように、脳髄にある魔術回路が一種の「イメージ」として示してくるのだろう。

 

 と言ったことを、秘しながら掻いつまんで言うと、感心したのか意味不明な理屈と思ったのか、様々な顔だった。

 

「もっと言ってしまえば、俺も両性具有みたいなところですからね。お袋は魔女の類で、その陰性の術。「魔女術」を受け継いできた「男魔女」(ウォーロック)ですから、フローラさんの性質が似ていると思えたんです」

『第一、君の目は魔眼の類だからね。触媒として敏感に感じ取っちゃうんだろうね』

「ワタシのパレードによる偽装も意味なかったものね。アナタの前では、全ての魔法はひれ伏すのかしらね?」

「さぁな」

 

 誉めてるんだか貶しているんだか分からぬリーナの言葉に返しておきながら、ネタバレとしてはそんなところだった。

 目がいい達也とて一発で感付く。そういうレベルの話である。

 

「精進しなきゃダメだな。僕にはなにも分からなかったから」

「いやぁ分からなくていいんじゃないですか? ナベ先輩の苦労がマックスになりますし」

 

 ともあれ、諸々の都合はあるとはいえ、ルームメイトであることは解消されて、軍部から一種の経歴詐称による沙汰もありえるかもしれない。

 その辺りは師補十八家に名を連ねている一色家の権勢にかかっており、自分達になにかできる話ではないはずだが……。

 

 一色家のスキャンダラスな事情ではあるが、あえて聞こうとは思っていない。そう思っていたのだが……。

 

『そうですか、お兄様、いいえお姉様の事をセルナが…………』

 

 オニキスを通じて出てくる一色家本邸だろう場所の様子。プロジェクションマップで、テーブルの鏡面に、それを写し出してきたのである。

 

「口をつぐんでおけ。というならばそうしておきますが……」

『千葉道場の麒麟児や、魔宝使い、魔宝使いの嫁など、そんな有名人に知られておいて、それは無理だろう。第一、僕だってフローラちゃんを、娘を、ちゃんと女の子として世間に出したかったんだ……!』

 

 この世界の人間というのは、一々人の異名とか二つ名を再認させるように言わなきゃ、他人を認識できんのかい。とツッコみたいのを抑えておく。

 テーブルに映る顔を見ては―――そんなことは言えなかった。

 

 一色家当主、アイリの親父さん。純日本人の顔―――若干、獅子を思わせるその顔が苦渋に歪みながら、手を握りしめて大仰にする様子に白けつつも、本心が無いわけではないだろう。

 だから表情には出さないでおいた。

 

 こんな20世紀終わりごろに出てきた伝説の恋愛シミュレーションゲームの、「レイ様」みたいな事態、俺には荷が重すぎる。とお道化て説明すると、ご当主はそこに食いついてきた。

 

『おや? 刹那君もアレを知っているのか!? いやー何か親近感わいちゃうなー……時を経て不死鳥のごとく蘇った「ときめきカルデアス」―――システムを継承したアレも、いいもんだよ……』

 

『お父様ってばドラク○Ⅴでも、ビア○カしか選びませんものね。なのにお姉さまの名前はフローラとか……まぁお母様が名付け親ですもんね。最終的には金髪の判断に任せるとか……』

 

『もうっ! マッサンのブロンド好き!! アイシテイマスよ―――♪』

 

 余計な一言を申したばかりに、変な共感を得てしまった。

 それはどうでもいいとしても、ここまで『いい家族』を見ていると、少しばかり泣けてくる。というわけで泣けてくる前に、リーナが膝においていた左手を握っている間に、話の先を促しておく。

 

 御当主「一色 真斗」氏によると、こうなってしまった原因は、自分にこそあると悔やむように言ってきた。

 

 そもそも、現在の一色家の本家筋にとって、愛梨の母親は想定外の嫁入りであったそうだ。

 

 真偽不確かな「エステ家」の人間。いわゆるブラダマンテとロジェロの家系に端を発するというフランス人の嫁。

 それなりの魔法能力は存在していたが、それでも元の婚約者……一花家の人間を退けてまで、目の前―――鏡面に映る御当主は、親戚や分家の抵抗を押し退けてでも、結婚にこぎつけたらしい。

 

 一時期は、家を出ることも考えていた二人を押し留めたのは、当時の当主であったそうだ。

 結果的に完全に祝福されていたわけではないが、それでも彼ら二人の結婚は家に認められたものとなった。

 

『若い頃の無茶が祟ったな……兄弟……従兄弟や叔父貴たちに無茶を通したせいか、最近は彼らの要求を呑まされっぱなしだよ』

 

 愛梨、華蘭からすれば、大叔父、叔父からの圧力はやっぱりあったらしい。

 実際、自分が三高をモノリスで倒し、一条を地に伏せさせたときなど、「陰謀の虫」が疼いたほどだ。

 愛梨をミラージで勝利に導くことで、一色家の権勢を誇る……そんな目論見は、義姉の手で灰塵に帰したわけだが……。

 

『時代遅れも甚だしいが、次期当主を男として喧伝することで、一条に対抗しようという腹に乗らざるを得なかった……』

 

 短慮の限りだが、よく今までばれてこなかったものだ。こういった貴種や、庶子が性別を偽って何かを成し遂げようという話は、大体は思春期段階でどうやってもバレそうなものだが。

 

「そこは父を責めないでやってくれ。私が望んで一色家のために受け入れたんだ。愛梨ちゃんがブラダマンテになるというのならば、私がリナルドになることで、家を守りたかったんだ」

 

 別に責めるつもりはないので、嘆息しながら少し拗ねつつ言っておく。

 

「別に俺に御当主を責める権利はありませんよ。つもりもありませんしね。……麗しき家族愛に、俺は何も言えないんで」

「セツナ―――、今日辺り、すっごく『安全日』だから甘々でラブラブしよっか?」

『アンジェリーナァアアア!!! セルナ! 私も今からそちらに向かいます。お姉様と一緒に三人組手をしましょう!』

 

 拗ねた態度を取った自分に、ラブ攻勢をかけるリーナ。それに反応して金色夜叉になる一色愛梨。

 

 しまった。こういうことを言うと、最近のリーナは『未来の母度』を上げてくるのである。

 

 将来の夢は『通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃な母(源頼光)になることです』などと、億面もなく言ってのける感じになっているのだ。

 こりゃマズいなと思いつつも、こんな自分なんでお嬢さんの恋心を断ち切ってくれれば、などと思っていたのに……。

 

『いやはや、ウチの娘二人をもらってくれるならば、こりゃ万々歳! けれど、もう少し待ってくれ!! まだ心の準備が出来ていない……!』

 

 世の父親というのは色々あるものだが、残念ながら「結構です」と言うことで納めておいた。

 

「そんな、私のダイナマイトな胸をすっごく凝視したというのに、責任を取らないなんて刹那クンのスケコマシ!! 姉妹丼のチャンスを逃したことを後悔するわよ!!」

 

 日本語の意味を正しく理解しろ。半分フランス人。姉妹揃っての言動に頭を痛めてしまう。

 

「摩利、刹那君っていつもこんな感じなのかい?」

「大まかに言えば、いつでもこんな感じだ。どうにも女心をくすぐる存在らしいな……私は全然だがな」

 

 カップルの会話を側聞しつつ、話の内容は纏まる。

 数日以内に『一色桜蘭』あらため『一色華蘭』を一色家『長女』として魔法協会を通じて宣言。同時に国防軍にも謝罪しつつ、軍籍剥奪などにならないように尽力する。

 

「自分にとって『ラン』は戦友です。まさか女だとは、ちょっと予想外でしたけど……何も変わりませんよ」

 

 千葉家としてではなく、一人の男として、そんなことを言う修次にナベ先輩は、うっとりとした顔をしている。

 シュウ……などと乙女の顔をしている様子は、みんな(エリカ除き)に見せてやりたいものである。

 

「ありがとう。ナオツグ。感謝するよ」

「なんというか、僕には女の子女の子しないんだな……」

 

 浮気を望むわけではないが、少し寂しげな修次さんに苦笑しながら、話し合いは終わった。

 一色家―――即ち家と家の権謀術数の限りとまではいかずとも、汚点の一つは、こうして暴露されることとなった。

 

 誰かに暴かれるよりも自らバラしてしまった方がいい。

 スラー襲撃……それに起因する冠位決議(グランドロール)の際のことを聞かされたことを思い出した。

 

『そちらは、どうやら『騒がしい』ようですが、無事のようで何よりです……無茶はせずに。お姉様によれば、かなり危険なことをやっているとか』

無問題(モーマンタイ)。横浜で会うまで数日だ。それまでに解決したいというのが、本心なんだが、な」

 

 愛梨に安心してくれと言い切れないのは、あのフェイカーは、存外生きるかもしれないからだ。

 事態は長引く。そんな予感だけが刹那の胸を占めるのだった。

 

 愛梨との会話を終える。それを合図に一色家との会合も終わりを告げる。

 そして話は先程の戦闘のことに移る。知ったからといって、何が出来るわけではないが、それでも知らせておくことに意味はある。

 

「あの男、呂剛虎は、大亜細亜連合の中でも白兵戦魔法師、知られている限りの『世界』の中でも十指に入るマンハントマギクスだ……そんな男が、何もせずにただ棒立ちであった原因というのは、何故だ?」

 

「あの魔家四将という再生人間たちが、呂以上であることは疑いがないんだけどね。刹那クンは何か分かっているの?」

 

 国防軍の若き士官候補生。肌身で感じたサーヴァントの力を前にして、萎縮しなかったのは結構だ。

 しかし、面倒なことに巻き込むのは躊躇してしまう……。

 

 刹那の逡巡を割るかのようにオニキスは説明を続ける。事態の早急な終息を優先したようだ。

 

『端的に言えば蟲毒の壷というヤツだ。あの男、ルゥ・ガンフーの持っていた方天戟という武器の形状は、一体の疑似サーヴァント体を倒すごとに変化していった。

 そして魔家四将の言葉から察するに―――、彼らは、ルゥ・ガンフーを強化するためだけに呼び出されたようだ』

 

 もっと言ってしまえば、超常の魔術師たちがぶつかり合う、本気の戦いで生じる熱量が必要なのだ。

 蟲毒の壷という呪いの性質上、相争うことで最強の『毒』が出来上がるのだから……。

 

「けれどワタシタチと、アイツらとの戦闘は偶発的なものだったはずよ。確かに『瘟』の一言で異空間を敷設出来るならば、どんなタイミングでも構わないのだろうけど」

 

 リーナの言葉は確かにその通りだ。フェイカー勢にとって、こちらが浅野先輩の見舞いに来るなど予想外だったはず。

 

『その疑問はもっともだ……だが、やはり最初の言葉通り『手勢』を欲している。

 日本警察の手際でそこまで貧しているならば、分からなくもないが……手勢を欲するということは―――何か『大きな作戦』を狙っている。そう考えるのが筋だろう』

 

 ゲリラ作戦を展開するならば、手持ちの戦力人員は、少勢の方がいいに決まっている。

 多くの人間を抱え込めば、その分動きは鈍重になる。仮に、人員がすべて魔法師だとしてもだ。

 

「大きな作戦か……やはり考えるに、八王子クライシスの再現かな」

「あり得ますね。まぁサーヴァントなんて規格外の使い魔を手にしているんだ。余程の相手でない限り、神代の魔術師……仙術道士に勝てはしないからな」

 

 フェイカーのサーヴァントは『英雄の影武者』という性質上、呪詛を弾き、呪詛を跳ね返す。魔術師としての適性が求められる。その要件で言えば、王貴人は最適だ。

 

「……グアムに行く予定は、キャンセルになりそうだな。摩利、急遽の話で悪いけれど、『横浜』当日までこちらにいることになりそうだ」

 

「シュウ……分かってる。別に構ってくれないことには何もないさ。一敗地に塗れたのは私も同様だ。ルゥ・ガンフーに食い殺されないならば、魔礼青と戦う機会はいずれ来る―――悟りを開こう」

 

 恋人の仕事の予定がキャンセルされて、それでも自分を構ってくれないことを悟ったナベ先輩の言葉は出来た嫁のそれだった。

 しかし、その顔に少しの寂しさも滲んでいたのを理解した修次氏は、破顔一笑してから―――。

 

「それじゃランも着飾っていることだし、刹那君。ちょっとお兄さんに付き合ってダブルデートと洒落込まないかい?」

 

「俺を巻き込んで恋人の機嫌を直さないでくださいよ。まぁ、フローラさんは、明日には『市ヶ谷』に出頭―――というと語弊はありますが、まぁその前に少し遊ぶぐらいは、礼代わりにさせてもらいますよぶっ!!」

 

Montjoie(モンジョワ)! ありがとう刹那クーン。そんな風に言ってくれるなんて、お姉ちゃんは感謝感謝だよ―――♪」

 

 むにゅむにゅと胸を刹那の顔面に押し付けてくるフローラさんの行動で、刹那の言葉は遮られた。それを見たリーナの怒りが有頂天。

 姉的属性の女は、今まで刹那の周りにいなかっただけに危機感を覚える。

 

 そもそもこやつは、そういった年上の女を忌避していただけに油断していた。積極的な『姉ビーム』の連射に、『嫁ビーム』と『母レーザー(未来基準)』で対抗する。

 そんな馬鹿騒ぎを終えて、二組の男女のカップルは、東京都内に遊びに繰り出して……その様子を数人の知り合いに見られ、翌日の騒動になるのだった……。

 

 舞台の第一幕は終わりを告げつつある―――舞台は海辺の街。多くの騒動に愛された横浜に移りつつあるのだった……。

 

 

「いよいよ、か」

『そのようだな。君の願いは分かっている。だが……魔宝使いと関わりすぎたな』

「リーレイの保護者として、彼ほどいい人間はいない……が、それを許す人間ばかりではないのだろうな」

『朋友。君の願いは―――叶えたくないのだよ……』

「先に地獄で席を取っているだけだ。最後の最後まで、こちらには来るなよ」

 

 そんな不穏当な会話を終えた老魔法師は、朝焼けに染まる横浜を見て、小学校に通うべく登校を開始する孫に手を振って―――、苦しくなった顔を隠して、そして決断の日を待つのだった……。

 


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