魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第153話『各々の戦い』

 

 

雑兵と言っていいのかどうかは分からないが、魔狼や腐落兵の類を倒していた修次―――。望んだ敵との戦いに挑むまでに己を高める作業に没頭する。

 

剣の魔法使いを自認して、他称されることを是とする千葉家に生まれた身だが、家門をそこまで光栄に思ったことはない。

 

己は己。剣の道は人それぞれ。ただ単に近場で学べた流派が、それであったというだけだ。

家が千葉家というだけであり、修次にとって家門についた誇りだのなんだのは、どうでも良かった。

 

家族に情を湧いていないわけではない。だが―――一度ぐらいは……。

 

(シバレン先生の書いた剣豪『眠狂四郎』のように、剣に生きて剣に死ぬ…剣鬼のような生き様をしてみたいもんだ)

 

とはいえ、現代社会でそんなことをしてしまえば―――。

 

巨狼の首を斬り飛ばすと同時に見えた……仇敵……というほど因縁があるわけではないが、それでも自分の剣士としての自信を木っ端にした相手が……―――少しだけ離れた所。道路の真ん中に堂々といた。

 

雑兵共を退かせて一対一で向き合う妖剣士『魔礼青』に向き直る。

 

「得物を強化したか。それでこそ戦う気概が湧くというもの」

 

「そちらもどうやら身を完全にした模様……これで遠慮なく死合えるというものですね」

 

「ああ、全くだ……若き剣士よ。我が短き現世での戦いの華として―――早々に散ってくれるなよ」

 

あのときのような動きにぎこちなさがあるものではない……正真正銘、全力の魔礼青に対して―――。

 

「訂正だ。若き『剣士たちよ』。存分に戦おう」

 

言葉で、中華の刀剣を持ち上げる魔礼青に立ち向かうは、千葉修次と渡辺摩利――――。

 

彼我の距離……10mで、古代の剣士と現代の剣士との戦いが始まる―――。

 

「瘟!!!」

 

横浜のコンクリートの路面全てを引っ剥がすほどの斬撃。

前回とは段違いの斬撃の数と威力に難儀するも―――。

 

裂帛の気合で振るう大太刀が斬撃を弾き、間合いを詰める。

 

「せいっ!!!」

 

そんな修次の接近に対して摩利は―――修次の背中を追うように追走して……その修次の背中を足場にして、宙を舞う渡辺摩利。

 

お互いにアーマーは着込んでいることで、相応の重さは感じていたが、それらの衝撃を吸収するぐらいの力はあったようである。

 

軽い踏み込み。武術家としての摩利の運動能力で絶妙な重さを感じない跳躍。本来ならば、今年のミラージで飛んでいた摩利のポテンシャルを実感させる―――。

 

魔礼青の『上』を取った摩利は、そのままに連結刃を振るって頭上でもなんでも無防備なところを狙う。

 

しかし意図を悟られたことで、魔力を波動として放たれる。波動は圧力となりて、摩利の刃を無為に返す。

 

「ッ!」

 

「中々の連携だ。だが―――空中は無防備だぞ。ぬっ!!」

 

宙を舞う摩利に飛刃でも飛ばそうとしたのか、構えを取る魔礼青を牽制するように、修次は大太刀を前にして突きかかる。

 

あれだけの連刃を踏み越えて、やってきたのか―――瞠目する魔礼青だが、鍔迫り合いになったとしても連刃はあるのだ。

 

「シュウ!!」

 

「合わせてくれ摩利!!ッ!!」

 

「いい腕だ。だが、まだまだ俺の剣術を全て引き出せてはいないぞ!!」

 

魔礼青の後ろに着地した摩利―――丁度、魔礼青を挟み込む。挟撃の形になったが、剣は一刀なれども、その打ち込みは数十にもなる以上、意味を成さない。

 

(だが、これしかない―――遠坂くんの言うとおりならば、最後の『霊剣』で魔礼青の核を貫ければ―――)

 

(それまでは我慢比べだ!!)

 

気合を入れて攻撃してくる二人を相手に、余裕綽々で剣士二人を左右に見据えて、二人の攻めをせき止める妖剣士の切れ間ない打ち込み……。

 

恋人たちが人外魔境の戦いに挑む中、他の面子も違う戦いに赴く。

 

 

魔獣やグールの類を消し飛ばして、侵食結界術式という魔法陣を破魔の武装で砕いていた愚連隊の面子。

 

それを苛立たしく思ったのか、ようやくのことで、将器ともいえるものを引っ張り出すことに成功した。

 

「カカカカッ! 雑兵ごときでは貴様らには何も意味を為さんか。退けッ!! 貴様らの出る幕ではないわ!!」

 

「御老体。彼らをご存知なので?」

 

「奴らはワシの研究を全て無駄にしおった連中の一員じゃよ。こんな所で戦い合えるとは善哉善哉」

 

「あの女の求めることは全て終わったんだ。さっさと殺しに参加させろ!!! この身にある炎が行き場を求めているんだよ!!」

 

魔獣の軍勢を指揮している連中の中に見知った顔がいることに、何人かは瞠目するも……先刻の話から脱獄した囚人どもなのだろう。

 

道路に堂々と立ちふさがる腰を曲げた老人、20代前半ほどの学者風の男、直近で出会った炎を体現したような男……三名ほどの人間たちを侮れない。

 

先程から自分たちの外側で戦闘が激化している様子を考えれば、ここが山場だなと感じる。

 

ここを踏み越えたものにこそ勝利の女神は微笑む……。

 

「お久しぶりですね。司さん……」

 

「ああ、どうも。娑婆に出るために殺し合いをしてきたわけだが……どうやら再び立ちふさがるとはね」

 

「そんな欲があるようには思えませんね。外に出てまでなにかしたいことがあったので?」

 

「無いね。こちらの兼丸氏と火野原氏は違うようだけど……とはいえ、黙って殺されるような心情でもなかった。それだけさ」

 

十文字と司一の会話。元・テロリストに対する態度ではないが、友人の兄貴に対してそれなりの敬意はあるだろう……。だが、それでも戦う時は来る。

 

 

「アンタには九亜ちゃんと四亜ちゃんに対することの恨みがあるから、老人だからって容赦されるとは思わないことね」

 

「あの時は、アルキメデスのあれやこれやで有耶無耶になったが……お前が元凶だったな」

 

「今となっては、それすら遠いことだがな。そして―――こうして力を得た今ならば分かる!! 我が身を以て星々の力を使うことも可能なのだと!!! あの研究自体はもはやいいのだ……だが、あの時の借りは返させてもらうだけだ!!」

 

エリカとレオの言葉を受けても何も怖じけずに、それどころか眼を釣り上がらせて狂気を見せる兼丸孝夫……その人物の素面の状態を知っていた深雪は、少しばかり印象を崩されるも……老人も火野原と同じく改造を受けているのだろうと推測。

 

そして火野原は……。

 

「魔法師を開発した連中はバカばかりだ。強化した改造兵士が欲しいならば、遺伝子や脳を弄るよりも、もっと手軽に兵隊を用立てれば良かったんだよ!! であれば、俺のような人間が生まれることもなかった!!」

 

「それが囚人達の魂の一雫、肉の一欠にいたるまでを食い尽くしての結果ならば……それを許さないでしょう―――。私達(現代魔法師)を作り上げるというために倫理道徳を冒すことはあっても、そこに至ることは人間としてのタブーが許さなかったのでしょうね」

 

やろうと思えば、『そういったこと』も出来たのかもしれない。魂と精神の関係こそ魔術師よりも遅れている魔法師だが……ある種、深雪の実家が隠し持つ『処刑場』が、それにたりるのかもしれない。

 

だが……それでも……。目の前の男のような存在を認めてしまえば、自分たちは本格的に人間兵器として、否……人類ではない……『亜種の霊長』と認識されてしまうかもしれない。

 

 

―――止めなければいけない。―――。

 

「アナタの気持ちは分かります。例え……どれだけ優れていたとしても、アナタを必要としたものがいなかった悲哀も、今ならば分かる―――けれど、アナタの自暴自棄で傷つくもの、世界に対する八つ当たりを見過ごせない!!」

 

「ならば、その御大層な『魔法』とやらで止めてみせろ―――『CLOVER』!!!」

 

その火野原の言葉を皮切りに、三人の超常能力者たちは己の身を『変形』させた。

 

刹那やリーナのやる術とは違い、それは完全に『変身』とも違う……異形化であった。

 

完全に『人間をやめた変貌』を遂げる三人の身体が、道路に収まりきらず、脇の建物をなぎ倒しながら顕現を果たす……。

 

その余波から全員を守るために、杖を振り上げた深雪は『タラスクの甲羅』(刃を通さぬ竜の盾よ)で以て、全員を防壁で包み込んだ。

 

粉塵舞い上がり、瓦礫があちこちで崩れ落ちる……巨影が現れた都市の中で、敵の姿を直視する面子。

 

其は―――百眼の狼、尋常の狼を超えた巨大な身体のあちこちに『眼』を宿した巨狼。

 

其は―――白き神像、星々の魔力を吸い込み、地動に頼らず天動の端緒に触れし禁忌の巨像。

 

其は―――炎の霊鳥、蘇生の秘術を体現せし、人々の想像にのみその名を刻む朱き炎を身とする魔性の鳥。

 

遠吠えを上げる狼。その吠え声が、各々の中身(ないぞう)をかき乱し、神像が荘厳極まる音色をどこからか上げて―――甲高い限りの嘶きを上げる巨大な鳥が―――二本足で大地に爪痕を刻みながら炎の落葉を撒き散らす。

 

「これが魔法師の究極系だとでも言いたいのか? 我々は、人の姿を捨ててまで―――『力』を求めなければいけないとでも言いたいのか!?」

 

十文字克人の慟哭の限りの言葉に答えるものはいない。

 

だが、行き着くべき先は……既に示されていたのかもしれない。

 

自分の出自を知っていたレオとエリカは、そう少しだけ悲観を思いながらも……それは『望んではならない未来』だと理解できた。

 

それを望めば、来るべき未来は―――ディストピアでしかないのだと……。

 

「悪趣味な限りの変貌。けれど―――老人の姿でどつき合うのもやりづらかったからね。いいじゃない」

 

「全くもって同感だが、ちったぁ敬老精神持とうぜ」

 

「うっさい。やるわよ!!!」

 

「応!!! マグニ・ゴッズエンチャント!!」

 

勝手に相棒にされても大した文句も言わず、巨人のオーラを纏う西城レオンハルト。その巨人の肩に乗りて刀を構える千葉エリカは、集中の限りを以て大太刀の封印を解放。

 

彼我の戦力差は理解出来ているが、ここで退くわけにはいかないのだ。

 

概念武装として『進化』を果たした千葉家の秘剣を以て、この乱痴気騒ぎを収める。

 

「巨人の魔力義体は、俺の動きと連動しているからな。気を付けろよ!!」

 

「りょーかい!! 遠慮なくどつき回せ!! ウルトラマンタイガ!!」

 

言うやいなや、白き神像―――兼丸孝夫が変貌したものに挑みかかるレオとエリカ。

 

神像もまた魔力の『矢』を全身から打ち出して接近を阻もうとするが、それらを弾きながらも取っ組み合いに到れる距離で―――拳が打ち出される。

 

鈍重極まるかと思われる巨大なものと巨大なものの戦いだが、存外機敏に動き、相手の身体にヒットをさせている。

 

『■■■―――!! メイオール!!』

 

神像は叫びをあげて、何かの名前を叫んだ。それは天文学に詳しいものがいれば気づけた名前だが、あいにくここにはおらず―――されど、その結果は即座に現れた。

 

神像が輝き、その身体から幾条もの光線の束を打ち出してくる。レオの巨人体を明確に敵と認識したのか、攻撃が集中する。

 

光り輝く線が幾重にも巨人の身体を穿とうとしたが、防御のルーンが循環している巨人は崩れてはいない。

 

反撃として拳が打ち出される―――。まだまだ戦う元気はあるが……。

 

「中々に強え!! 硬化の術式が崩れそうになったぞ!!!」

 

打たれっぱなしは不味いか。そう悟ったエリカは、拳の打ち終わりと同時に飛び立って、神像の頭上から剣撃を放つ。

 

真っ向唐竹割り―――そんな言葉が似合う斬撃で神像を袈裟に切り裂いていく―――が、流石に硬すぎるのか、神像のサイズ20m程度に対して、一メートル程度しか刃が入らなかった。

 

無論、小賢しいハエを追っ払うかのように、神像は先程の光の矢を打ち出してくる。

 

マシンガンも同然の範囲攻撃にハイパワーライフル以上の速度。難儀するが猫のように跳ね回り、それを避けて安全圏たる巨人の元にたどり着く。

 

(俺も剣術でも学んでおくべきだったかな)

(アタシにレオ並の巨体構成の適正があればよかったのに)

 

現代魔法ではとうに廃れてしまった化成体による身体強化。獣性魔術として刹那が紹介したものとも違う、レオだけのレアスキルの一つ。

 

己の身体を伸長させる『巨人魔術』。その真髄や極まるには、少しばかりレオは熟練不足であった。

 

通常の相手ならば圧倒できる巨体も、同じく巨体を持つ相手との戦いでは、技量が不足してしまう。

 

 

そして十文字克人も百眼の狼。ヘシアン・ロボかジェヴォーダンの獣のように俊敏な動きを見せる『司一』の攻勢にさらされる。

 

八王子クライシスの時と同じく、人外の存在と化した友人の兄貴に対して、槍と棍の二刀流で突き込むも、完全な獣化とでも言うべきものを果たした相手に対して分が悪く、更に言えば、後輩を守らなければいけないという気持ちが急いてしまうのだった。

 

悪循環を認識した克人は、百眼―――恐らく魔眼だろうものに対して、視覚を誤魔化す多層の壁を展開。

 

その上で、『肉体強化』で『破魔の紅薔薇』を投げつける。投擲せざるを得ないのは、移動や加速魔法では破魔の紅薔薇……ゲイ・ジャルグは、その魔法をキャンセルしてしまうのだった。

 

現代魔法になれきって、己の移動にすら時には魔法を使う克人にとって、強化魔法は若干の苦手であった。

 

ある種、肉体的な頑健さとその体躯の使い方を分かってる割には、骨の髄まで現代魔法師―――そういう自己評価を下していた。

 

即ち……身体強化で事足りる場面ですら、克人は移動魔法に頼る男ということだ。

 

もちろん互いに一長一短な場面もあるが、こういった場面では、己の不甲斐なさを痛感する。

 

狼の巨大さとそれに従わぬ俊敏さ、速さは克人に苦戦を齎したが……。

 

(別に俺一人だけで戦うこともあるまいな)

 

―――最後には肩肘張るのをやめて、無事な周辺では比較的無事な建物から、古式魔法曰くの『水晶眼』……魔術師曰くの『淨霊眼』『淨眼』の類で、柴田美月が『視抜いた狼』に対して、吉田幹比古の放つ『矢』が『射抜いていく』。

 

狼の魔眼がなんであるかは分からないが、かのブランシュリーダーは邪眼の使い手であったところから其れ系統だろうが、天然物の魔眼とでは格が違うのだろう。

 

矢の一本一本。弓で打ち出されたものが幽幻な音を響かせながら眼を貫いていく。

 

その痛痒がいかほどかは分からないが、貫かれた時を狙って克人は槍と棍でダメージを与えていく。

 

深々と突き刺さる槍の片方で棍で身体を叩く克人。絶叫を上げる狼の魔眼が身体の至る所から移動していき、浮かび上がり……巨大な眼を作り上げていき、狼の目前に移動していく。

 

何かの大魔術の発動の様子。毛を逆立てて、飛びかかる前段階のごとく身体を撓ませる巨狼。

 

何かが来ると分かっていながら、何も出来ないとは恐ろしい限り。

 

その術式の投射から逃れるというのならば、逃げるのが先決のはずなのだが……。

 

(吉田と柴田の干渉すら受け付けぬ状況に至った巨狼の状態……中々に見ものだな)

 

吹き上がる間欠泉のごときサイオンの奔流が、全ての魔的な干渉を無効化している。

 

力の無駄遣いをするな。建物の屋上にいる吉田たちにサインを送る。

 

伝わったかどうかは分からないが、とりあえず援護攻撃は止まり、そして巨狼の眼前にあった魔眼が―――『見開かれた』。

 

『魔眼大投射―――!!!』

 

魔的な引力を発して、克人の意識を『持っていこうとする』眼に対抗しきれない。

 

推測ではあるが、邪眼(イビル・アイ)の効果を延伸させて、効果を最大限まで上げることで、この術式は成立している。

 

如何に精神干渉の魔法に対するノウハウが十文字に薄いとは言え、俄仕立ての邪眼の干渉に屈するほどではない。ましてや克人とてレジスト出来るはずなのだが……強化された魔眼は、こちらの自由を奪う。

 

「ぐぅうう!!!」

 

呻くことで『呪い』を打ち消そうとするも、魅入られるままに、身体(そとがわ)の自由すら効かなくなる。

 

精神(なかみ)を乗っ取られ、魂魄(かたち)すら変えられそうな圧力を前に、巨狼は進み出てくる。こちらを眼で射抜きながら、その爪で切り裂こうという腹づもり。

 

察していても克人は『詰み』を理解しつつあった―――危機を悟った吉田たちの援護以上の横槍でもなければ―――。

 

状況は好転しない。だから、それが来ることは分かっていたのだ。

 

「ローズアイを用いない魔眼大投射とは、レアなものを扱うけどな!!」

 

『それはロズィーアンの秘奥さ!! アウローラ(七色輝煌)を扱うウチの坊やに比べれば手妻使いだな!!』

 

―――七つ色に輝く(まなこ)で、巨狼を真正面から見据える魔宝使いは、その魔眼の打ち合いで巨狼に勝った。

 

巨狼の巨大な眼が、砕け散って元の場所に戻るも、その大半は瞼を閉じられたままだった。

 

克人の背後から飛んでくるように、否、ほとんど飛びながらやってきた……魔術や魔法のことでは口が減らない後輩を皮切りに―――。

 

「―――遅くなったわね。騎兵隊の到着よっ(Cavalry’s Here)!!!」

 

「まだやれますわね。十文字さん!?」

 

「当然だ。しかし、助かった!!」

 

年下の少女二人に虚勢を張って、ゲイ・ジャルグを思いっきり投げ込む克人。

 

巨狼は、魔眼を砕かれた勢いで消沈していたものの、その一撃を躱して、距離を取っている。

 

最初に飛来した刹那は、魔眼を輝かせていたが、一度の瞬きでそれを封じた。

 

「こちらの状況も、あんまり良くないようで、ですが……ここに現れるはずだ!! 出てこい!! フェイカー!! ルゥ・ガンフー!!

お前たちの最後の贄は『俺』だろうが!!!―――これ以上、余計な連中に血を流させるようならば!! 貴様らの作った八卦炉を叩き壊す!!!」

 

その意味不明な宣言を周囲に喚き散らす遠坂刹那。そして、その時には―――、クドウと一色が、二人して『無事なビル』に陣取っていた二人を地上に連れ出していた。

 

そして数秒後には、怪獣大決戦の場にて奇跡的に無事だった建物の外壁が崩れ去り、そこには、8つの柱。雷紋のような幾何学模様で段状に飾り立てられたものが煌々と輝き、魔力を放っていた。

 

屋上の床は、その柱を真上から押さえつける『蓋』の役割を担っており、確かにそれは……炉というのが適切なぐらいに、絶え間なく魔力を循環させる装置だ。

 

一度でも火入れしたならば、止まらぬ反射炉のように……その中に、魔力を一身に吸い込める場所に、サーヴァントの姿。

 

 

眼を閉じて瞑想していたフェイカー……王貴人は遂に眼を開けて、闘争の時を、理解するのだった……。

 

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