魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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水着ジャンヌ――――!! マジで欲しいわ―――!!!

そんなこんなで仕事も盆休みに入ったので、色々とやりたかったことをやるぞ――!! 

具体的にはコミケに行けない分の同人誌をゲット―――ひろやま先生の同人誌はとりあえず買わねば(苦笑)


第6話『NAKED STAR-Ⅰ』

 

 

 

 壁際に押し付けられた刹那は、背丈の都合で見上げられる形になっている―――少女の凛とした視線を外すことは出来ない。

 

 壁際に押し付けた際に手から出た感情の高まりゆえの雷が刹那の背中を焼いた。それは受け入れるべきものだ。

 

 

「――――これはどういうことよ!?」

 

「見ての通りだ」

 

「何も誤魔化さないのね。冗談や誤報、偽報の類だとも言ってくれない……!」

 

 

 床一面に散らばる紙の資料。電子技術万能の世の中にあっても一番に諜報を免れやすい資料というのは、こういった物的なものだろう。

 

 セキュリティの問題が起こりえる電子の情報では―――この問題は、あまりにもデリケートだった。

 

 

「……何で言ってくれなかったの?」

 

「君に言えば、君は君自身を責める。そして『それ』を知らせなかった大人達に激昂する。だが―――俺自身は、こんなことを総隊長がやるべきじゃないと思っていた。だから引き受けたんだ」

 

「責められるべきは、セツナ―――あなただけにしたかったっていうの?」

 

「そうだよ。だから―――俺が君の『鉄の闘争代行人』(エクスキューター)なんだ」

 

 

 その瞬間、頬に平手を見舞われた。力が入っていないものだったが刹那にとっては、本当に痛く感じられた。

 

 

 涙を浮かべながら振るわれたアンジェリーナ・クドウ・シールズの顔の前では―――本当の痛み。

 

 

 走り去っていくリーナ。それを追うべきなのに追えず―――振るわれた手の平の痕を撫でることで、今はどうにかするしかなかった。

 

 

 ……――――そんな風な場面を見ていた。そしてその『顛末』を知っていた女は、一枚の資料であり大統領府からの『指令』を見て、策はこれしかないのだと思った。

 

 彼らの『過去』を回想する。

 

 ホワンホワンホワンバランス~……『年を考えてください』などというツッコミを入れられないことが少しさみしくもあったバランスではあるが、ともあれ過去の回想が始まった。

 

 

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「まさか卑怯とは言うまいな?」

 

「いや卑怯だろ。恒星級の魔法師二人がかりで俺を倒そうだなんて」

 

「ヒャッハ―!! 遂にUSNAが数多の失敗を繰り返して誕生した『超兵士』たるこの俺が――――セツナ君を倒すために全力を尽くすよ」

 

 

 最初がフレディ『中尉』の言葉。逆立てた金髪は炎を想起させるものであり、彼のコードに相応しい。

 

 フォーマルハウトとは『フォーリナー』(異界神話)において、『炎の支配者クトゥグア』の『座』を意味する言葉だからだ。

 

 

 逆にアルフレッド・フォーマルハウトよりも『炎』や『火』を連想させるのは、二重の人格。それらによる演算領域を備えた赤毛の男。

 

 どこか不健康そうな面ながらも、それはこの男の『技量』に端を発する。

 

 加速術式からのリッパ-サイクロン(切り裂き戦術)を主に行うこの男にとっては、体格の頑健さよりも細く尖らせて、尚且つ『キレる』肉体が必要とのこと。

 

 要は必要以上の筋肉で動きを阻害されないために、若干―――不健康そうな感じがするとのことだ。

 

 減量で無理やり階級を落としたボクサーの如き男。『ラルフ・アルゴル』を見た。

 

 

 二重の人格が思考と反射の融合で襲いかかる術を得た男はあの時よりも強い。

 

 

「スターズの中で最強を決めるのだとすれば、まずは君が挙げられるよ。どんな『隠し手』を持っていたとしても変じゃないからな」

 

「そういうことだ! 悪いが今日の俺は元気モリモリの調子が上向き!! これを機に一度は勝ちたいんだよ!!」

 

 

 モリモリって何だよ? と思いつつも、こういった『演習』は頻繁に繰り返してきた。

 

 魔術師も魔法師もこういった所は変わらない。如何に秘匿が主とはいえ自分がいた頃の時計塔においても積極的に魔術師どうしによる『戦闘』『修練』の類は奨励されていた。

 

 他人の術を見て『盗む』なり『発展』に寄与せよ―――ということだが、刹那の見立てでは単純に学者肌の人間では『代行者』なんぞに殺される可能性もある。

 

 そういった神秘を学ぶものを『少なくさせない』ということもあったのだろう。ロードたちの血腥いかつ生臭い思惑が透けて見えると同時に一流どころであれば、『戦闘』に特化していなくても、魔術による『殺戮』ぐらいは容易いものもいる。

 

 

 閑話休題。それはともかくとしてこの世界の魔法師は全員が全員、育ての親たるバゼットやレスリングと宝石魔術を使う『あの人』やら『母親』みたいなのばかりだ。

 

 

 ゆえに―――『不覚は取れない』。

 

 

「では15分間の一本勝負。ジャッジ次第では途中で止める。ちなみにセツナ君の方は『総隊長』の『ブリオネイク』による多段レーザーだ。死なないように」

 

 

 死ぬ可能性があるかもしれないレフェリーストップって何だよ。と思うも、カノープス少佐としても止めきれない可能性があるということだ。

 

 ただ―――もう狙いを着けているとか、『変形』済みの砲身束ねのレーザー銃とか用意しているんじゃないと嘆きたくなる。

 

 笑いながら―――『使わせること無いわよね?』との無言での圧力を感じた。

 

 

(最近、なんだか不機嫌だよな)

 

 

 原因は分かっている。しかし―――明かすわけにはいかない。

 

 

 今度こそ蛇足を終えて―――向き直る。どちらにせよ目の前の二人は強敵だ。気を引き締めながらも魔術回路の回転と解放は忘れずに―――。

 

 

 自然発火(パイロキネシス)で、燃えそうになった髪を鎮火。火種がちりっ、と出るぐらいの『進歩』を見たのか、間髪入れずにフレディは火球を放つ。

 

 

 対象に対する『外的』干渉。こちら側で言えば、本来的な術式ではない。

 

 エイドス―――対象に存在している情報体への干渉を持って『変化』を『強要』する現代魔法においては、一般的ではない方法だ。

 

 放たれた火球は、真っ直ぐに飛んでくる。棒立ちでは流石に喰らう。しかしそこに――――。

 

 

『マナナーン』のルーンを虚空に描き盛大な水を放出させる。足元から上がった波濤が、フレディの火球を消し去る。

 

 

 そして―――背後に迫っていたアルゴルに回し蹴り。

 

 

「なかなかのコンビネーションだったが『キレ』がイマイチだよ!」

 

「くそっ!! だから髪をチリチリのアフロにしろっていったんだ!!」

 

 

 何の話やら、加速術式で己を速めたアルゴルにルーングラップリングを叩き込む。

 

 ナイフによる格闘を許さぬ拳による牽制。小刻みなパンチが接近を拒み、更なる超加速で縦横無尽に動こうとした隙を―――刹那は『神速』のルーンでステップ。

 

 

 アルゴルからすれば瞬間移動したも同然の接近だったろうが、ツルギは拳を固めている。狙うべきは―――ボディ。

 

 ナイフを振るう腕を上にかち上げた上での至近距離での『打』。しかし―――。空を切る拳。

 

 

「ボディブローとは、驚くね」

 

「超加速でのバックステップか、同居人は怒っているんじゃないかな?」

 

「もっとも―――だ」

 

 

 言葉が途切れたのは、波濤の壁を超えて炎のチャージを掛けてきたフレディの姿ゆえ―――。

 

 

 慌てずに躱して『魔弾』を装填。予想通りアルゴルと合流したフレディの頭は……チリチリのアフロ。

 

 思わず笑ってしまいそうになる。集中を途切れそうになるほどに見事なアフロだった。

 

 それが狙いかと察した―――。

 

 

「クソッ!! ラルフの言う通りアフロにしておけば良かった!!」

 

「笑いを堪えているね―――だから言っただろうがぁ!!」

 

 

 二重人格のウザさが見えつつあるラルフ、アルフに対して『魔弾:拡散』を放つ。それはフレディをも巻き込む術式。

 

 

 五指から放たれる土砂降りの雨も同然の魔力レーザーの圧に、二人もどよめく――――。

 

 

 戦いは―――結局それから8分間続き、刹那の勝利で終わった。というよりも―――フレディが用意しておいた『戦術級魔法スピキュール』―――。

 

 

 天空に炎のドームを作り上げてそれを拳に纏ってのダイブ―――熔岩の火口も同然となってしまう演習場。

 

 その威力を受けて、一番に倒れるはラルフ・アルゴルだった。

 

 

 刹那は耐火の魔術を発動させて耐え抜いた。そして―――冷えて固まった熔岩土も同然の所に佇むアルフレッド・フォーマルハウトは――――。

 

「あっちぃぜ……」

 

 と一言だけで倒れた。何かのコメディかのように自滅したスターズ隊員。

 

 

 熱が籠り過ぎたのだろう。髪のせいで――――。最後までアフロにこだわる男が倒れた瞬間だった。

 

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 ・

 

「棚ボタの勝ちで喜べるほど、ガキじゃないんだがな」

 

「の割には―――嬉しそうな顔もしていたけど?」

 

「フォーマルハウト中尉のスピキュールは中々にいい魔法だよ。風はノーブル、火はノーマル。その中でも最大の火術といっても差し支えないね」

 

 

 演習場の『修復』をしてからロズウェルの本部基地の廊下を歩く刹那とリーナが言い合う。

 

 いつぞや―――初めて、自分の素性を明かして更に言えばスターズという星の軍隊に入った時も、こんな感じだったなと思う。

 

 

 だが、いまリーナから漂うものは緊張の一言。安堵させたいと思っても無理だろうと思えた。

 

 

 理由は分かっていたからだ――――。最初に切り出したのはリーナから。

 

 

「セツナ、何か……隠していない? 私にすごく重大なことを」

 

「そりゃ色々あるよ。君がオレのアパートに来るたびに、どこかにポルノ雑誌や電子書籍のデータやら無いかと探してるのを黙って見ていて、その度に短いスカートからチラチラ除くパンツを黙って見ていたり」

 

「スケベ!!」

 

「痛い、痛い。総隊長からの懲罰なんて勘弁願う」

 

 

 刹那の口撃に対してバシバシと持っていたファイルケースで叩いてくるリーナ。こうして、おどけられる内はまだいいだろう。

 

 

 問題はここからだ。金髪があでやかに輝き、その魂の色も相応に輝いていたリーナが少しだけ澱んでいる。

 

 そうしなかった。だが、同じ組織に所属していて、しかも総隊長という地位にいる以上、そうした『噂』がリーナの耳に入るのは当然だった。

 

 

『すまんな』

 

 

 そのことをバランス大佐から聞いた後に、謝罪されたが―――箝口令を敷くわけにはいかず、結局……いつかは漏れ出る話だった。

 

 

そうしてから―――リーナは居佇まいを正して刹那に向き直りながら口を開く。

 

 

「……疑念は、セツナがここ(スターズ)に着いた頃からあった……。実戦部隊として様々な任務をこなしていく以上に、セツナの出動回数が多すぎたことが、あれは薬草園に行っていただけじゃないんでしょ?」

 

「―――そうだ」

 

 

 もはや観念をして、それでも理解してほしい思いで肯定をした刹那に対して、リーナは少しだけ驚いた顔をしている。

 

 

「!……そうよね。カンの鈍いアンジェリーナ。どこまでも誰かの気持ちを察することも出来ない愚かなシリウス。

 あなたの変装を見抜くのにも時間がかかって、それで余計な手間を掛けた。セツナが―――いつか私に全てを教えてくれるんじゃないかと思って、甘い理想に浸って―――その結果として! 私はセツナに取り返しのつかないことを押しつけていた!!」

 

「待てリーナ。それは違う―――俺もベンも! 君にそんなことを―――――」

 

 

 その時には、リーナは、ファイルを証文でも投げつけるようにして中の何枚もの紙資料を散らしてきた。

 

 内容は分かり切っていたが、それでも足元に散らばった資料を見て―――本当に観念する。そこまで知られた以上、『今後』ありえるかもしれないことを想定してしまったリーナは怒っている。

 

 

『逃げ出したいのに、逃げられない』それでも『逃げ出さないよう』にリーナは刹那を壁際に追い詰めた。

 

 本当に今にも泣きそうなリーナを抱き締めて慰めて理解してほしい思いがあるのに、それを出来ないのは―――刹那にとっても、こんな自分の姿は知ってほしくなかった思いがあったからだろう。

 

 

 そして……冒頭に至るわけであった……。

 

 

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 一息着く。一服など―――流石にあり得ないので好みのアロマスティックで口寂しさを紛らわす。

 

 いつもならば、こんなところには来ない。喫煙所(スモーキングエリア)。故郷の呉服屋の跡取りであれば『横綱の取組か!?』などと言いかねない場所で、セツナは頭を悩ませていた。

 

 

「浮かない顔をしているな」

 

「ああ、すみません。先に一服させてもらってました」

 

 

 自動式ながらも電子ロックがかかる喫煙所のドアを開けて入ってきたのは、ベンジャミン・カノープス少佐だった。

 

 火かな。と思って指先に着けたが、手で制されて―――カノープス少佐が出したのもアロマスティックであった。

 

 

「昔は吸い過ぎるぐらい吸っていた……身体を壊すんじゃないかと同僚からも言われていたんだがな……」

 

「そこまで自分を『罰』しなくてもいいでしょうに―――」

 

 

「ごもっとも。だが禁煙の切欠になったのは娘が嫌がるんじゃないかと思ってな……」

 

 

 少佐には娘がいる。刹那も会ったことがあるが、すごく可愛い子でティーンエイジャーになる前から、学校では人気だろうなと思う子だった。

 

 そんな子が自分のようなあからさまにアジア人な人間に眼を輝かせていたのを見たリーナが不機嫌になったのを思い出す……そんな風な想い出もあるぐらいに、本当に離れられない女の子だった。

 

 

「シリウス少佐とケンカして、もう十日間か―――随分と長いな……」

 

「なんて言えばいいのか分からないんですよ……君じゃ無理だった。とか言っても聴かないだろうことは分かる―――かといって、今後、彼女に任せるなんてのも論外だ……」

 

「魔法師としての才能と殺人者としての才能はイコールじゃないからな」

 

 

 その事は誰もが懸念していた。やはり殺人に対する忌避感というのは誰もが持っているものだ。そして、現在14歳の年齢で、それを行わせることは無理だった。

 

 しかし彼女の魔法師としての才能を惜しんだ。更に言えば『エリオット・ミラー』、『ローラン・バルト』に次ぐ戦略級魔法師『十三使徒』の一人である。

 

 軍の上層部の意向と、『政府』側の意向とのせめぎ合いで―――そうなったのだ。年齢に似合わぬ『最強の魔法師』の称号を彼女に与えることに……。

 

 

「代わりに君が―――総隊長が持つべき『粛正権限』を代行することでバランスを取った……だが、あの娘にはそれが、どうしても許せなかったんだろうな」

 

「……」

 

「セツナ君は、あの娘の心を想って行動した。傷つけたくなかった。同時に、シリウス―――リーナ嬢も、これ以上セツナ君に血に塗れてほしくなかった。どちらもが相手を想うからこそ整合が取れない。すれ違う―――こんなにもお互いのことを想っているのに、『何で分かってくれないんだ?』とね」

 

「―――……」

 

 

 少佐の言葉に刹那も俯くしかない。外部からの意見で分かることもあった。だが、そんなことはお互いに分かり切っていた。

 

 

「私も……時々、考えるよ。娘に自分の仕事を上手く伝えられるんだろうか、とね……未だにステイツの軍人さん(アンクル・サム)で通していけるのかどうか―――もしも、娘が……自分を軽蔑したりしたらと思うとね」

 

「無いでしょ。少佐は軍人であっても人間として最低じゃない。とはいえ―――娘さんが理解を示すかは分かりません」

 

「言ってくれるね」

 

「俺も―――死んだ親父が、今の自分の姿を見てどう思うか分かりませんし、そして死んだ親父がやって来たことを本当の意味で『理解』出来ている自信がありませんから……ただあなたみたいに家族を大事にする親父は欲しかった」

 

 

 その時、右腕が疼いたような気がした。本当に一瞬ではあったが、そんな風な感覚を覚えた。

 

『親父』が俺を殴ったのかな? そんな風に考えるぐらいには、少しだけ心の余裕が出来ていた。どうにかこうにか捕まえて話を聞いてもらうしかない。

 

 結果として関係が崩れるならば―――まぁそれはそういう星のめぐりだったのだろう。

 

 

「そう言えば今日は、リーナの姿見ていませんね。副官である少佐は何か聞いているので?」

 

「いや、ここ十日間は私もシリウス総隊長から外されていてね。代わりにスケジュールや任務のミーティングの際にはシルヴィアが就いていたからな」

 

 

 恐らく、こうして私的な話もするだろう刹那とカノープスを避けてのことだろうか。徹底してやがる。絶対捕まえてやる。

 

 苦笑いをしている少佐も同じ結論だったのだろう―――そんな風に歳の離れた兄弟か、親子のように会話をしていた時だった。

 

 

 事態の急変が伝わる―――喫煙所をどうにかこうにか見つけたらしき汗をかいて、息を切らしたシルヴィア・マーキュリー・ファーストの姿が見えた。

 

 只事ではない。そう感じた後には端末に緊急案件が入る。コールされた案件を一読して全身の血液が逆流した想いだ。

 

 

「セツナ君、大変です!! リーナが、『違法魔法師』(アウトサイダー)の案件に手を出してスターダストのバックアップやサポートメンバーも着けずに―――」

 

 

 ドアを開けたシルヴィアの言葉を途中に置き去りにしながら、飛び出る。職員数名が驚くほどのスピードで走り抜けながら、外に出れる位置を見つける。

 

 大窓を開け放ち、眼を鋭くする。過去・現在・未来―――様々な『時』を見通す千里眼とは違う意味で眼を鋭くして全てを見通す気分だ。

 

 

『見えたな!? ならば行くぞ!!』

 

「転身―――プリズマキッド!!」

 

 

 事態の緊急を同じく知ったのか、入り浸っていただろうアビーの部屋からやってきた魔法の杖を掴んで、『魔法の衣』を纏う。

 

 己の力が充足するのを感じながら、鋭く行先を睨みつけてから大窓の枠に足を掛けてブースターとなる準備。準備が整った。

 

 

「セツナ!! この中ではお前が最速だ!! 我が隊のアイドル プラズマリーナを頼むぞ!!」

 

 

 スターライトの指導教官としても見ていただろうユーマ・ポラリスが廊下の角から奔りながらやってきて頼み込んできた。

 

 言われるまでも無く承知済みであるとして親指を立ててから飛び出した。勢いで壁がぶっ壊れたかもしれないが構わず最速で蒼穹を飛び立ち、目的地へと向かう。

 

 

 ……そんな風な様子を見ていたバランスは、崩れた壁の大穴を見ながら、呟く。

 

 

「まったく―――ここまで必死になるぐらいに守りたいならば、離さなければ良かっただろうに」

 

 

 男女の仲の複雑さを既知であるだけに、それはズルい考えであることは理解していても、どうしても呟かずにはいられないのは、彼の少年少女がこのともすれば殺伐とした軍隊の癒しにもなっていたからだ。

 

 子供を大人達の愚劇に投入している。その無慈悲さは理解している。だが、それでも―――その非人間性を理解していても、それを行う子達に対する慈愛の心があれば、人は幸せになれるはずなのだ。

 

 

 矛盾と非難するものはいるだろう。だが、それでもそれに対して『不感』となることは許されない。

 

 

「あの子たちの帰る家をちゃんと、暖かいものにしておく。それが私の役目なんだろうな」

 

 

 不意にそれでも自分を罰する為に身体に悪いと分かっている煙草を吸いたい気分になったバランスは、それでもあれこれの処理のために奔走する。

 

 大穴の横に――――。

 

 

『嵐の如き愛の疾走の始まり―――』

 

 

 などと『芸術作品』のように、題材を掲げていたが―――後に―――。

 

『こどものおもちゃ』

『半人前の愛』

『神風怪盗キッド・愛慕戦乱編』

 

 

 などなど、様々なテーマが候補に上がりながらも、帰ってきた刹那によって簡単に修復されてしまうのだった……。解せぬ。

 

 

 

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