魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
それにしてもスペース・イシュタルにカラミティ・ジェーンだと……!?
やべぇスキヤキウエスタン、マカロニウエスタン臭が、とんでもないぜ。(褒め言葉)
これはつまり―――石を溜めて、どちらも手に入れろと!?(涙)
まったくFGOは地獄だぜ! フゥーハハハ―(泣)
───、おかしい。
何かがおかしい。何かとは言ったが、何がおかしいかは明確ではない。
だが……違和感を感じる。
「何か変な空気を感じるね……」
「アーネンエルベに行こうとしているだけなんですけどね」
霊感強いカップル(予定)が語る通り何かがおかしい。明確ではないが、それでも、何であるかが分からないと思っていると……。
「素は不浄、祖は巫条、礎は巫浄………祝払い、呪払い。言の葉は、言霊へと───」
四十九院沓子が、祝詞らしきものを唱えて『空間』に対して『浄化』を放った。
数秒後には、自分たちに掛けられていた重圧のような倦怠感が消え去った。すると目の前には不可思議な空間が現れた。
完全に東京都内とは思えぬ……というか、日本であるかすら怪しい。なんだかお化け屋敷とハロウィンのテーマパークをごちゃまぜにしたような場所に、自分たちは立っていた。
「ここは?」
空間を、世界を都合のいいように『創造』する。そういった術の殆どは『幻術』の類と見られている。即ち相手の見ているものを『すり替える』ことで、擬似的な『空間創造』に陥らせる。
要するに、VRゲームと同じことを『現代魔法』で行っても非常に無駄なこととなる。だから研究されていない。
擬似的に相手に強烈なイメージを叩きつけることで『精神干渉』とする……そういったこともありえるのだが……。
「相手を惑わすという意図を持っているんならば、そういうことも必要なんだろうけど、そんな『おとぎ話』を再現されてもねぇ」
どっから出したのやらな『刀』を手に持ち、下手人切り裂くべしという女剣士のウォーモンガーな思考を遮るように、幹比古は動いた。
「待ってエリカ、僕たちは同じ『もの』を見ている。これが幻術や一種の精神干渉だとしたならば、高度な……えっ?」
とりあえずこの不思議空間の何処かに行こうとしたエリカの前に立ちふさがって、振り向いた瞬間……幹比古は『恐ろしいもの』を見た。
「は?」「うわっ……」「ぶふっ!!」「に、似合ってるよエリカちゃん!」「ハロウィンは終わりましたわよ千葉さん……」
五者五様(レオ、栞、沓子、美月、愛梨)の反応を返す面々。
何が何だか分からないが、とりあえずバカにされていることを悟ったエリカがレオに食ってかかろうとした時に……何か不思議な違和感を感じる。
「ねぇレオ……アンタの眼にはアタシがどう見えている? 正直に答えて、殴らないから」
「まず殴るという選択肢がある前提をどうにかしろよ。蹴るのも、斬るのも、叩くのも、あとついでに言えば『噛み付く』こともしないならば、答えるぜ」
「い、いいわよ。呑んであげるわよ!! その条件!!」
やるつもりだったのかよ。誰もが呆れるように思うが、この役目はレオにしか出来ない。なんせ後のエリカのリアクションは理解できるのだ。
よって───。
「なんつーか……はっきり言えばケモミミが着いている。多分だけどネコなんじゃないかな?」
「はっ?……いやいや、いくらなんでも───な、なんじゃこりゃぁああ!?」
レオの言を切って捨てようと、旋毛か頭頂部付近に手を当てた後……レオが端末のミラーで丁寧に何があるかを見せると、激昂するエリカ。
何かに当たりたいのに、主にレオを小突きたいのに、先程の誓約でどうしようもないエリカは、地団駄を踏んで苛立ちを殺すも、原因は何なのか分からずに、色々とレッドゾーンに至ろうとした瞬間に……。
「なうー。久々の登場でなんだが、この赤毛、はっきり言ってネコミミが似合わね―……アチシのような、プリティキュートでラブリーチャーミングなネコミミが似合う娘はおらんもんかにゃー」
「だ、誰!?」
「な、なんだこのナマモノ!?」
声のする方向を見ると、そこにはネコ? いやいや、ネコと呼ぶのもおこがましい奇妙な
金色の髪(?)はショートカットで揃えられており、つぶらな瞳(?)は猫のように細い瞳孔をしていた。
白いセーターに、恐らく深紫色のロングスカートだろう……全てがデフォルメされたありえざる生物がいた。
尻からは尾、そして頭には1対のケモミミが。手は某青狸のごとく丸っこい。
ずばり言えば……映画のキャラに『非常によく似ていた』。若干パチもんくさいところはご愛嬌と言えるか。
「ネコアルク?」
「おおっ! そこなメガネ巨乳! アチシの名前を知っているとは、なかなか見どころあるにゃ。
ネコミミにならん? すっごいネコミミにならん? 今ならなんとネコミミにお得な機能をつけて、そこのムッツリスケベなDTボーイ(退魔系)も誘惑可じゃぜ。
いちごのショートケーキを食う黒猫のごとく、お主のえっろえっろなユメを見せられるんじゃよ?」
「な、何の話ですか―――!? そんないかがわしいものいりません!!!」
言いながら真っ赤な顔をして、自分の隠しきれぬ胸を隠そうと腕を当てる美月。
むしろ、そういうことを自然としてしまうから、歩くセクハラも同然なのである。
『『残念だったな
「四十九院さんもレオも、僕がそれを望んでいるという前提でモノを語らない!! というか、この空間の主は、あの猫又だ!!」
「にゃっにゃっにゃ。中々にカンを働かせるボーイだぜ。やはり退魔神道系の相手は、何かと相性が悪いにゃ―」
その時、脚を収納し、ジェットを噴射させて躱すナマモノ。何を躱したのかは……眼がマジになっているエリカで分かる。
というかジャット噴射が出来る生物とか、どうなっているんだ。
「こぉぉおおらぁあああ!!! このナマモノが! アタシにつけたこの奇怪な耳を何とかしなさいよ! アタシは座敷芸者じゃなくて剣士なのよ!!」
「犬歯? そういうのは犬シエルにたのめー。アチシじゃ肉球をあたえることしかできねーのよ。
最近どこぞのトラのようなジャガーのような、新たなようで古馴染みのけものフレンズが、肉球を武器に活躍するような絵面もあるから、紹介するのはやぶさかではないにょ?
ただし犬だけは許さん。犬には猫缶の一つもくれてやらん」
犬と猫の戦いは、このナマモノでもやっていることなのかと、
などと幹比古が思っていると……。
「面白キモかわいいバケネコ! 欲しい!! 我が家で飼ってくれるぞ!!」
何が彼女の琴線に触れたのか分からないが、三高の四十九院沓子は、目を輝かせてネコアルク(もどき)みたいなナマモノを捕らえんと動き出す。
「にゃっふふふ! アチシを捕まえてごらん―――ナイムネロリっ子よ!!
このネコ二十七キャットの第一席 『はじまりのネコアルク』は簡単には捕まらない。
何故ならば、あの白くてモフモフの画面端で延々と走るニクいあんちくしょうに勝つために、パケシ(生存中)と同盟を結んだんだからにゃー!!」
非常識極まりないバケネコは、エリカと沓子にけしかけられたレオを筆頭に捕物となる。
「厳ついボーイ。おヌシ、最弱系サーヴァントになってアチシを追いかけた方がいいんじゃないかにゃー?
絶対相性いいぜ。ウルトラマンタイガよりも入れ墨入れた方がいいぜ。バディーゴー!!」
「何の話だよ!? げふっ!!」
「西城!! よくもワシの未来の夫を!!! 許さん!!」
「幕之内一歩はよみがえる! そしてネコアルクもよみがえる!! にゃんぷしーろーるは永久に不滅だにゃーーー!!」
「うぉおお!! なんなのよ!!この非常識の塊は――――!?」
「赤くなくても三倍以上のスピードを体現したアチシは、オリオンをなぞりかねないPhantom Jokeすぎて、諦めるがいいのにゃー」
色々と今までの現実を全て覆されるようなネコアルクもどきの動きに、『速さ』においては一高でも中々の人材のはずのエリカが翻弄されて、レオの拳が空を切り、沓子の水は眼から放たれるビームで無為に消えていく。
「現実的なことを考えれば、四十九院さんの飼い猫宣言は、かなり無理なはずだけど……」
「実家は大きい神社。しかし、流石に北山さんとかの富裕層でないと、ペットを飼うなんて無理だからね」
寒冷化と戦争の影響は、世界全体のペット事情にも及んでいる。世界群発戦争から30年が経過しても、ペットは一部の富裕層にしか許されない『高度な情操教育』で『カネがかかる趣味』であった。
既存の食物連鎖や生態系は、完全にこの島国でも狂ったのだ。
ニホンオオカミを駆除しすぎた結果、鹿や猿が繁殖しすぎたことが問題となったように、この『生態系が狂った世界』では犬はおろか、小鳥を飼うことですら、富裕層にしか許されないものなのだ。
「まぁ、あのバケネコに高い疫病のワクチン接種や、専用のキャットフードが必要なのかは非常に疑問ですけどね……」
「刹那だったらば、『ココロの贅肉―――♪』とか言って飼うかもしれないけれど」
あんなバケネコすらも守備範囲なのか? そういう疑問を持ちつつも、猫耳菌なる怪しげなものは、エリカにしか定着しないものなのか?
そういう疑問を持ち、愛梨としてはちょっとした妄想をする。
ホワンホワンホワンアイアイ〜〜〜。
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「セルナー♪ アナタの大好きなネコミミが私に付きましたわ。これで私はアナタの心の税金ですよ―――♪」
「ネコミミの魔法師なんて、最高の美女じゃないか、惚れてしまうよ」
「ウフフ、ちょっと違いますね。私は美女じゃなくて、美少女ですよ。モチロン、大人になったら美女になりますけど♪」
「そっか、愛梨は2度お得だね」
「そうよ。私は2度お得なオンナなのです。ネコミミモードになれないアンジェリーナとは違いますわ」
腰を引き寄せられ、首に手を回して密着寸前で見つめ合う二人の様子を幻視して……(リーナ滑り台行き)
「セルナは私にトキメキング☆ こ、これですわ!! これが勝利の鍵です!!」
どんな妄想をしたんだ!? そうツッコミを入れたいのに入れられない幹比古と美月
「付き合うよ愛梨。私も───クール系美少女からクラスチェンジする時が来たんだよ。クールそうに見えて、実は可愛い格好もしたいかまってほしい系美少女に」
「栞……!! 心強い味方を得ましたよ……。では―――いざ、あのナマモノを捕らえるべく、行きましょう!!」
「ええ」
その言葉で、どこに着込んでいたのかフェンシングスーツを晒す二人。
別に裸身を見せたわけではないが、身体にピッタリ張り付く衣装を見せまいと、幹比古の視界を防ぐべく美月は手を幹比古の眼に当てた。
「今更ながら、このパーティの面子の圧倒的な弱点に気付いてしまったよ……」
「そうですね。なんでこういう時に限っていないんでしょうね……」
圧倒的な
いつもならば、理路整然とした説明をしつつ「バカなことはやめて、落ち着け」(超意訳)と言うのがいないのが、この状況の混乱を収拾付かないものにしている。
そして、密着した状況での目隠しなので、豊満なムネが幹比古の背中に当たっていたが、それを黙っている幹比古に言えた道理ではなかったのだ。
……そんな中でも美月は、空中に浮かび、コウノトリのような朱い眼を片方だけ見せている、鳥を思わせる少女の「霊体」がいることに気付く。
その微笑みの意味は分からないが……。この状況に手入れをした面子の一人だろうとは察しが着いたうえで……。
「体はネコで出来ている。下段攻撃が主になってしまうストレスをかんじれー。
カオスの具合は、加速度的に上がるのだった……。
「ヘルプミーヘルプミーヘルプミー。達也さんでも刹那くんでもいいから、この安宿先生に声が似た
一種の妖精郷とも言える場所に「連れてこられた」美月たちの受難は、まだまだ続く……。