魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
など出来ればなぁ。(涙)
まぁ月姫2を生きている内に出来ると信じて、新話どうぞ。
魔眼オークションという、お披露目会であり『競売』に向かうこととなった刹那。一段落というわけではないが、二人の美女の従者の体で向かう刹那は完全にバトラーも同然であり、古びた駅のホームでの待合時間中に、深雪は刹那に問いかけた。
「魔眼蒐集列車ですか…… 前から聞きたかったんですが、刹那君はお兄様の眼は魔眼の類だと感じていますか?」
それは達也も聞きたかったことである。魔眼の定義として、自分が知り得る限りでは、『視ること』で何かしらの干渉を果たすのが魔眼の定義だと思っていた。
それを考えれば、少しセオリー違いではないかと思えるのだが、刹那の見立ては違っているようだ。
「視るだけで、何かしらの『干渉』を及ぼす系統の魔眼ではないが、きっぱりと魔眼の類だと思うよ。
一睨みで心臓を止める魔眼もあれば、儀式などの過程や段階をすっ飛ばして、『強制』『契約』などを対象に押し付けるタイプもある。
ノウブルカラーと呼ばれる魔眼は、『束縛』『強制』『契約』『炎焼』『幻覚』『凶運』などに代表される、他者の運命そのものに介入する特権行為を可能とする。
魔眼のランク次第ではそれ以上のことも出来る。
それこそ現代では失われた大魔術。神霊の権能にすら届くかもしれないものがな」
実を言うと刹那的には、確かに『見えないところ』や『見ようとして見えないところ』はあるだろうが、達也の千里眼じみた眼は、ある種の神々の権能にも近いのではないかと思う。
一定の神霊ならば、北半球と南半球……どちらかを徹底的に『探る』ことで、『対象』を探し出すことも出来るらしい。もちろん明朗な相手……人物の波動や姿かたちが既知であれば速いものだ。
神霊特有のサーチ能力、天罰を落としたい相手を探し出す能力にも似ている。
そんな内心でのみ感想を述べつつ、話を続ける。
「四葉では、お前の魔法の為に必要だった、とか言われているそうだが、その眼を持つ以上は、いずれはある魔眼に変化する可能性はあるだろうな」
「ある魔眼?」
「物体の構成情報から何から何まで読み取って、『分解』という『結果』に『導き出す』。これは、即ち達也の眼は、『未来視の魔眼』に属していると言える。
形あるものは、『いずれ』は壊れる。死ぬ運命にあるんだからな。
万物には全て綻びがある。その
深雪の疑問に対して、刹那が言葉を区切ると……次の瞬間には違う場面になっていた。
達也としては気になるが、今は映像に気をつけたほうがよさそうだ。
古めかしい駅。様子から察するに、既に打ち捨てられた廃駅なのだが、まだまだ『生きている』のか、乗客らしき連中が続々とホームにたどり着く。
それら全員が神秘の界隈における有象無象。一廉の人物だと思うと、とんでもないものだ。
『『村』の準備で忙しい時にも関わらず、この徹底ぶり。流石は死徒の貴族ということか』
『ロズィーアンの死徒は、とっくの昔に、オークションを従者任せにしたと聞いてますけど』
『まぁね。ただそれでも、ちょっとした噂もある……『村』では一大戦争になる。
それは『勝ち負け』ではない勝負なんだけど、それでも『生き残るため』に、今回『支配人』自らオークションを執り行うんじゃないかと、ね』
ライネスの何気ない言葉に、少しだけ緊張する刹那。この中には、一目で分かるわけではないが、代行者もいるかもしれないのだ。
『お貴族吸血鬼サマが、どんな心胆かはわからないけれど、君とオフェリアは十分に狙われる可能性もあるんだ。気をつけたまえよ』
『ライネス先生も魔眼持ちじゃないですか?』
『私の魔眼なんて、大したランクじゃない。せいぜい魔術や魔力をコーヒー液に見立てた場合、それを濾過するコーヒーフィルターの役目ぐらいだよ』
目薬を差しながら語るライネス講師。魔眼持ちも場合によりけりな苦労があるのだろう。
そんな『他愛もない』話をしつつ、廃棄されたはずのガス灯に光が灯っていき、線路の上に霧が発生して、誰もが緊張をする。
明らかに魔的なものが見える霧は、ある種の演出でありながら、止まることのない車輪を迎えるためのレッドカーペットも同然だったのだ。
主役は乗客ではなく、やってきたレトロにして優美な車輪。本当に達也たちからすればレトロすぎる。あまりにも時代錯誤で、あまりにも荒唐無稽な代物がやってきた。
巨大にして古めかしい蒸気機関客車―――それこそが、例えようもない魔力の持ち主だったのだ……。
客車の扉が開くと、それに続々と入り込む乗客たち。刹那の記憶だが俯瞰で見ている自分たちは、荷物持ちとして使われている刹那に同情しつつも……。
『っと、失礼。レディお怪我は?』
『小さいジェントルマン、ありがとう。女性に対する礼節は、学んでいるようで好ましいわ』
薔薇をあしらったドレスを纏う女性と、『偶然』にもぶつかってしまった刹那の様子に苦笑してしまう。
『セツナー。速く来て紅茶を淹れてくれ。トリムマウにまかせてもいいんだが、師匠の接待は弟子の勤めだ』
『ひどい義務負担!』
『いってあげなさい。女性を待たせるものではないわよ』
女性に促され、一礼をしてから客車に入っていく刹那。物語は早送りされていく。
どうやら、ここの過程にはあまり意味がないようだ。
「この魔眼オークションにて『色々』あったが、最終的には、先程の女性、ロズィーアンの死徒から予言を貰ったんだ」
再びの場面転換。どことなく疲れた表情の刹那だが、用意された客室―――かなり上等なVIP席だろう場所が映る。
対面で向かい合う刹那と、早送りされる前に見た先程のぶつかった女性―――少しだけ『変化』を果たした姿。
髪型の変化、衣装の変化も相まってか、一輪の薔薇を思わせる姿形の女性が、怪しく微笑みながら語る。
『此度は、かなり助かりました。因果なものですね。かつてフェイカーによって窮地に陥ったこの列車を救ったのが、同じく
『そんなものでしょう。我々の生業なんて、どこで何が繋がるかなんて分かりゃしませんよ』
ノースリーブのドレス。スカートの裾は、前はかなり短いが、後ろには長く広がるフィッシュテールスカート。何かのベルトかショールなのか、多くの布が巻き付いているのが印象的。
胸元には紫色の薔薇のピンが刺さっている。その魔的すぎるオーラが、刹那の視点越しからも理解できる。
妖しすぎる女。そもそも『自然界には存在しない紫の薔薇』を着けている時点で、その出自を簡単に明かしている。
『ご依頼の件だけど、ワタシではムリよ。そして、その魔眼は、アナタの手元にあってこそ輝く至宝。本当であれば、抉り取ってコレクションしたいんだけどね。
芸術品というのは、相応しい人間の手にあってこそよ。価値あるもの、分かるお客様には、二束三文で『真作』を売り出すのもやぶさかではないわ』
『美術家の意識は分かりませんが、まぁ俺の中での魔眼に対する認識はあがりましたよ。感謝します。薔薇の死徒』
刹那が、十師族や魔法師の中での名士……上流階級が集う
まぁ元々、魔術を抜きにしても、200年以上も続く名家のお坊ちゃんなのだから、現代魔法師という新興の貴族では、中々に太刀打ちできないものもあるか。
そんな風に歓談とも言える会話をしていると、不意に本題を切り出すかのように、呪文とも言える言葉を紡ぐ。
『薔薇の女性』は、深紫の唇、妖艶なまでに弧を描く魅惑の唇を開き、対面に座る刹那に対して、こう言い放った。
『―――『村』に来なさい。アナタのその眼は、いずれアナタ自身の運命を食らい尽くす。
これは予言。『未来の滅びを約束する『死』が、汝の運命に良辰を与える。運命を変えたければ、汝―――『死神』と相見えるべし』
……いい
『───……手駒にしたいので?』
『それだったらば、直ぐにでも『食べちゃってるわ』。けれど、定命の中だからこそ輝くものもあるのでしょうね。
白翼公は、オーケストラ・シンフォニーを愛しているのでしょうけど、私はもう少し自由で即興な演奏…『カデンツァ』の方が好きなの。
期待しているわよ。私達の全てを壊すほどの、カデンツァを、ね』
その言葉の意味を、傍から聞いている達也たちも少しだけ怪訝に思ってしまう。
眼を少しだけ伏せて自嘲するようなロズィーアンの上級死徒。
なんかリーナにめちゃくちゃ『声が似ている』ような気がする。
少しだけ年齢が高めなリーナの声とでも言えばいいのか、それを聞いていると変な気分になりつつも、上級死徒の文言は少しだけ変な響きを持っていた。
「死にたがっている……? そう聞こえるんだが?」
「いい感性と読みをしているよ。詳しい話をすれば、面倒くさいんだが、『俺の世界』では圧倒的に強い『人理の脈動』が、死徒たちを圧迫しているんだ。
それゆえに上級死徒の中には、『やってらんねー』と思っている連中も多いんだ。この上級死徒なんて、酒池肉林の甘美堕落な日々を送っている女だからな」
「英霊とは、人類史を肯定するモノ。人間世界の秩序を守るモノ―――『人類史の影法師』であるのに対して、死徒とは人類史を否定するモノ。人間世界の
人類側に立てば前者の方が当たり前にいいんだが、決して全てにおいて幸せといえる世界とも言い切れない」
不意に、刹那以外の『説明役』が、この精神世界にやってきた。その姿は、最近の力の使いすぎによる『杖』のままの姿ではなかった。
レオナルド・ダ・ヴィンチという英霊の姿でここに割り込んできたようだ。
「遅かったな」
「いやいや、妖精郷に誘った甲斐はあったねぇ。あの子たちの様子を見てきたのさ。『迷宮』とは、一種の変化を果たすための儀式場だからね。
今頃は―――。
『お、お前はイヌシエル!! このガイアがヒエヒエのアイスエイジされちまった世界で、真っ先に食料にされたに違いないのに、どうやって生き延びていたんだニャ!?』
『バスカヴィルッ!! お、おのれネコアルク! 私の存在概念に直接ダメージを与えるとは恐るべきニャーブルファンタズムの使い手!!
このイヌ精霊の怨念で出来た体はそう簡単に砕けないんだワン!
具体的にはサーヴァントユニヴァースから漂う具沢山のカレーの匂いに釣られて、復活を果たしたのだワン!! むしろあれを触媒にしてシエルを召喚しろぐだお(?)!!』
『むむむっ!そのカレーは眷族ではないものの、アチシと同じ『キャット』が待ち望んだもの! 貴様が食すには上等すぎるわ!! メシアンにでも無謀に吶喊しているんだにゃー!!』
『その言葉! 宣戦布告と見なしたワン!! さぁみなさん、あのバケネコを倒すためにがんばりましょう! 特に美月さん、アナタには、この眼鏡を愛するものだけが纏える
と、まぁGCVで、ネコとイヌの大戦争に巻き込まれているよ」
「「「「長いっ!! 会話文の中に会話文を含めるなっ!!!」」」」
「ちなみに言えばエリカ君は、『こんなに苦しいなら辛いなら……ネコミミなどいらぬ!!』とか言ってネコミミを取って、イヌミミとイヌハナを装着したよ」
「「「ぶふっ!!!」」」
「 3人とも、エリカが怒りますよ……」
かつては国営放送で何度か放送された、『ホームズ』と『ジョーンズ』のビジュアルを思い出したのだから仕方ない。
しかし、深雪を除き(堪えている様子)一頻り『笑って』から、話の続きを伺う。
「私にも確証は無いんだが、どうにも死徒というのは、一種の『人類悪』の下っ端な気がするんだよな」
「そうなんですか?」
「人の世界と神の世界とが分かたれたように、星の意識と人類の意識とが別種のものとなった以上、死徒は星のあるべき姿を取り戻すものにも思えるんだ。
本来ならば、私達は、
想像上での『歴史の変遷』はあれども、その世界が『正負』のどちらに傾いているかは、認識出来るものではないからね。
そして『正』と『負』というのをどうやって判別するかは、また色々と面倒だからね。ちなみに刹那と一緒に観測した限りでは、『死徒』が長じた世界というのは、最終的に異星の『種族』によって、『終末』が齎された世界だよ」
あまりにも壮大過ぎる話で、完全に呑み込めないが、達也的には、吸血鬼なんて人食いの連中が跳梁跋扈する世界はゴメンではあった。
それならば、まだ前者の方がいいような気はした。
「まぁ私の世界論は、後々にしておこう。今の主題は、私のマスターが、『村』に行った際のことだ……」
そして場面は移る……その前に、リーナに声が似た女……ロズィーアンの死徒に、ベッドの上に押し倒されている寸前のような場面があったが、気にせずにしておいた。
場面は再び時計塔。ロード・エルメロイ2世の執務室だった。
豪奢なソファー。対面に座る刹那を前にして不機嫌さを隠そうとしない。だが、苦渋を滲ませた顔で腕組みをしている様子に、刹那は苦笑をしていた。
『まず、だ。私のところに来る前に、スヴィン、フラット、カウレス、ヴェルナー、ルヴィア、メアリ、ライネス、サクラ、オフェリア、カドック、グレイ……オルガマリーと、全員から『引き止められた』だろうからな。
再度、私からも言わせてもらおう。しつこいと言われようが、なんだろうが、だ。
―――行くな。刹那―――。お前が行くには、『ステージ』が違いすぎる。いや、今挙げた連中だって、仮に行ったとして、生きて帰れる保証は無いんだぞ?
何より……お前ほどの才を失わせる可能性を考えたくない……』
一言ごとに区切って言ってくる、眼の前の気苦労屋に対して、刹那は口を開く。
『先々代ロード・エルメロイ……ケイネス・エルメロイ・アーチボルトは、
口幅ったいかもしれませんが、俺は『戦士』としても優秀ですよ』
その言葉を受けて、頭を抱えるロード・エルメロイ2世。
プロフェッサー・カリスマと呼ばれて、多くの人間を正しく教導してきた男なだけに、否定は出来ないのも事実だった。
否定をすれば、彼はいままで自分がやってきたことを否定せざるを得ない。
猟奇殺人犯のような卒業生もいれば、異常なまでに『人間性』を欠いたものもいるし、はたまたコンプレックスの塊のような生徒もいた。
だが、そんな連中全員が飛び立つ様子を視るのを、羨望があれども逸らさずに『見送ってきた』のだ。
しかし、眼の前の生徒は違う。まだまだ伸び切ってはいない。ありあまる伸び代を、多くの異端の魔術師と相対することで磨いてきた天然の宝石。
これほどの才を前にして、我流で奔放に伸びている『枝』も『正解』になってしまうならば、自分の教導が『押し付け』になることを危惧してしまう。
だから―――。
『何も生きて帰ってこれないなんて話じゃありませんよ。それに、何の恩返しも出来ないでいるのは、心苦しいですしね。
今回は―――『執行者』としてではなく『エルメロイ教室の代表』として……『村』……アルズベリに行きますよ。薔薇の予言を信じるならば、突破口はあるんですから』
未熟者のくせに、そんなことを考えるな。そう返してやりたい気持ちを押し殺して、それでもロズィーアンの狂言・虚言という可能性もあるという『仮定』を見せるも、決意は硬かった。
『先生だって未熟者なのに、オレの地元で『戦い』に挑んだじゃないですか。生き残れるかどうかは分かりません……が、行かなきゃ『眼』の問題が解決しない』
最終的に、ウェイバー・ベルベットは、弟子のその無謀な挑戦を認めざるをえなかった。
あの頃の自分は、ただ単に自分を認めない世間を見返したくて、そんな『小さな理由』で戦っていた。
どうせならば、『世界征服』とでも、あの時に語っていれば―――。
そんな夢想をしてから、どうしようもないことだと思う。あの時のウェイバーと違って、この生意気な弟子は、いろんな人間から構われている。
その縁こそが、弟子を守ってきたのだから……。
『いくつか約束しろ。
1つ目は『自分の命を大事に』。当たり前だが、自分が生き残ることを最優先に考えろ。人助けは状況次第だが、自分の安全が確保されないならば、己の優先だ。
2つ目は『逃げ道を確保』。1つ目に掛かることだが、吸血鬼どもの謝肉祭……どれだけ用心したところで、どんな相手に襲われるかは分からない。場合によっては、ミス・フラガよりも頼りになる相手の庇護下に入れ。君ならば聖堂教会も無碍には出来んだろうしな。
3つ目は―――これが最後だ。『目的を達成したならば帰れ』。
お前はただの『闖入者』であることを理解しておけ。何かの物語の重要人物になったわけでもないのだから、己が『超人の責務』を担っているなどと勘違いするな。そういうのを思い違いした奴から盛大に死んでいくんだ……』
その3つの約束事。それを理解していて実行しようとしても、簡単に行かないのも理解しているだろうに……それでも最大限に、魔術師としては無駄事な限りの他人の身を案じる先生の約束事に、応えるぐらいはしたいと思った……だから―――。
月明かりの下、幾多もの食屍鬼を殺し尽くした男。手にはナイフ一本。
服装は……本当に普段着だった。何の魔術的加工もされていない服。黒か蒼のジャケットコートだろうものに、今はマフラーのように聖骸布を首に巻いている男。
衝撃的すぎた。噂には聞いていたが、この手並みは尋常ではない。
「あ、アーユースピークジャパニーズ?」
「………」
などと驚愕と感心と恐怖を感じていたというのに、男は異邦人にあったかのように、少しだけ戸惑っているのだ。
まるで異星人と出会うかのような気分だが、自分は日本人でちゃんと日本語わかりますというと、胸を撫で下ろす『死』の姿。
「よかったぁ。いや土地柄仕方ないとは言え、みんながみんな英語ばっかりしゃべるんだもんなぁ。これだったら、誰かから『ほんやくコンニャク』みたいなものを貰うんだったよ」
「そんな便利グッズありますかねぇ」
「オレの家の和服メイドは、そういうの作れそうかな? メイドロボットも作っていたし……もう寄り付くことはないんだろうけど、ところでキミは―――『どっち』の人間だ?」
その言葉で草原に自生する草花が葉擦れを奏でる。ひんやりとした風と同時に、言われた言葉の不穏さを演出していた……。
正直に魔術協会の人間であることを告げると、『そっか。お互い大変だね』などと平淡に返してくれやがるのだった。
何だか……こんな普通すぎる人が、数多の上級死徒を屠ってきたというのか―――理解に苦しんでいると……。
「そうか。こういう時に使うべきなんだろうなー。よし―――、なんやかんや言ってもキミはオレに『奥の手』を使わせてしまった。これは多大な損失だ」
「助けてもらったことには感謝しますよ」
「ああ、だが感謝は行動で示してもらいたいかな。オレは見ての通り、聞いての通り英語が達者ではない。そして何より余計な体力を使ってしまったからね。
万全とは言い難いんだよ……だから、オレが万全になるまで色々とやってもらいたい。具体的には身の回りの世話とか、ある種の斥候任務とか、後は買い出しとか……まぁオレが休んでいる間の見張り全般だね」
つまりは『使い魔契約』ということである。そして、自分に拒否権など無いのだ。
協力するか、ここで死ぬか―――抜身のナイフと蒼輝の眼が言外に示すのだから。
マジで怖い。そんな頭の悪い言動しか浮かばない。
「オレの名前は、『遠野 志貴』。キミと同じ日本人だが、ゆえあって『ここ』にいる『殺人鬼』だ。よろしくな」
「……遠坂 刹那。あいにく……ただの魔術師です……」
次の瞬間、こちらの出した言動に『笑い』を零す遠野志貴。今まで名称がしれなかった『殺人貴』に、ようやく固有名詞が着いた瞬間だったが、それ以上に笑われていることに納得がいかないのだった。
一頻り笑ってから自分の頭を軽く手のひらで叩いてくる遠野志貴に、むっ、としつつも、彼はこちらに笑いながら口を開く。
「―――オレに『眼』を使わせた責任、ちゃんと取ってもらうよ。まぁ気楽にいこう。こんなの前哨戦なんだからさ」
「あっけらかんとしすぎじゃないでしょうかねー」
人が良すぎる遠野志貴の導きに従って、郊外の草原からアルズベリ村へと向かっていく。
逃げ出そうと思えば逃げれたかもしれないが、不義理を犯すのは気が引けた。
そのぐらいには……先導する御仁の『危なっかしさ』は、理解できたのだから………これこそが『予言』であると理解できても、どうやっても関わったんだろうな。と、諦めの気持ちで、刹那は運命と邂逅するのだった……。