魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
高評価で星9を二つほどいただいても、星1一つはいるだけでいっきにちゃらになってしまう。
そういうシステムだと分かっていても、なんか色々理不尽を覚える(涙)
新話どうぞ。
そしてアルズベリ村における刹那の戦いが、再生されていく。
遠坂刹那が、遠野志貴……『七夜志貴』という男と駆け巡る戦いは魔法師の常識を覆す。
星……地球が用意した受肉した『精霊種』によって、限定的な不老不死を得た『死徒』という存在は、その長じた年月で得てきた能力を如何なく発揮する。
「一見すれば、死徒になったことで、この能力を得たように思えるが、彼らの力は年月を経たことによる能力獲得。
まぁ一度『死んだことで』、
「長く生きれば、そんなことにもなるのか?」
「そうらしい。死徒の力とはある種、天然自然の一部たる人間の能力萌芽なわけだ」
もっとも、それとて限度はある。人によっては一日にして食屍鬼から死徒……吸血鬼になれる才ある人間から、10年以上も食屍鬼として使役されるような存在まで、ピンキリ。
そう説明を受けて、ふとした符号に少しだけ達也は気づく。
その在り方は魔術師よりも……『魔法師』に近い。特に現代魔法師は、その『開発経緯』から、『どれだけの力を得られるか』が計算されて生み出されてきた。
調整体魔法師など、その極みだが……つまりは、人間のスペックを開放させることで、オーバースペックへと転じさせる。
その一方で失敗作として破棄された調整体魔法師も存在している。
「とはいえ、『仙人』になるような仙道とは違う『左道』。代償も大きすぎる。不老不死と化した『人間の肉体』は、あまりにも過ぎたものでな。彼らの肉体は急速に劣化していく」
「そのために吸血行為を繰り返すのか?」
「ああ、劣化する己の肉体を『現代自制』に置く……現代人の遺伝情報を取り込むことで、肉体を『人理のテクスチャ』に留めているんだ」
過去に死んだ人間が、未だに存在して活動しているという『エラーコード』は、人理という被膜の中では、あまり好ましくない事象だが……それでも、こうして元気に動き回って夜のアルズベリを混沌にしていく存在を見ていると、その言葉の意味も若干は分かる。
鉄骨剥き出しの建物を走りながらガンドを放ち、魔弾を放ち、眼下の遠野志貴の戦いをフォローする刹那。
そして遠野志貴の動きは、こうしてみると九重八雲の動きにも似ている。
というより遠野志貴の方が洗練されている。
九重流における『八天鐘』という連続拳打の源流らしき連斬。
死の線をなぞっているにしても速すぎるもので、食屍鬼がバラバラになる。
物量作戦で殺人貴を疲弊させようとした『白翼』という死徒の『親玉』子飼いの連中は、サポートしている魔術師のせいで、それすら不可能になって最後には、遠野志貴ーーー七夜志貴のナイフで絶対の死を与えられた。
結果としてではあるが、刹那は……十分すぎるほどのサポートをこなしていた。
本人の言う通り
今日も一仕事終えたという風情で帰路に着く二人。
アルズベリ・バレスティンという大儀式の終焉は未だに視えないが……それでも、この二人ならば何かが変わると思えるのだった。
『今日も派手にやりましたよね。あれだけやられたならば、白翼公も怒り心頭ですかね』
『アルクェイドによれば、『お姉さん』と違って大量に部下をこさえているようだからね。
『探り』と『削り』……そろそろ大物が引っ掛かってもいいんだけど』
『上級死徒の一人も出てきませんしね』
『ご尤も、だ……───』
言葉が途切れる。同時に、周囲から気配が全て消え去っていく。
結界に囚われた。正しく青天の霹靂。ここまで見事に仕組まれるといっそ感心したくなる手際。
アルズベリは、不相応な街だ。中世の町とも言える石畳の広場や路地がある一方で、近代的な工場がそこかしこに聳える『モザイク模様』の街並み。
直感しながら気配を探る刹那。志貴もまたそういったことを行う。
七夜にとってそれらの『敵意』『殺意』……東洋武術では、まとめて『意』と呼ばれるそれらを、先鋭された意識の感覚は読み取る……本当かよ。と刹那は半信半疑ながらも、それを教えられていた。
そして敵意に反応して振り向いた先からは何も来ていなかった。
(外された!?)
『違う!! 殺意による
自分の内心を読み取った上での警告を受けて刹那は───ソラを仰ぎ見る。
月夜の光を受けて黒い影を残すもの一つ。ソラから降り注ぐ『黒鍵』の群れ。
敵は死徒ではない。結界の手際も見事なまでの魔術式。組み立て方はかなりの精度であるが、力任せの印象もある。
そんなふうに考えながら、石畳に柄近くまで突き刺さる黒鍵を躱し躱して、敵を捉えんとする。
何だか刹那ばかりを狙うような手際に遠野志貴は気付いたらしく、『まさか!?』 と同じくソラを仰ぎ見た瞬間、刹那は反撃を開始。
弓を出して、剣を番えてソラを走る『代行者』に解き放つ一撃。
絶大な魔力の噴射ごと夜空を切り裂く流星を前にして、遂に地上に降り立つ代行者。遠野志貴と刹那を裂くように、境界に立つ『青髪のシスター』……。
『先輩……!!』
『埋葬機関第七位 弓のシエル!!!』
二者二様の言われ方をされたシエルなる女は、頑丈そうなブーツでステップを踏むようにして遠野志貴の眼前に防御式を張った。
『遠野君の眼ならば簡単に切り裂けるでしょうから、申し訳ありませんが『影』を縛らせてもらいました』
『悪いけど大人しくしないよ。俺は───刹那君と同盟を結んだんだ。こんな不義理許されないんだ』
遠野志貴のその真剣な言葉を受けても、代行者は取り合わなかった。
『そんなもの破棄しちゃってください。
執行者セツナ・トオサカ。あなたの目的は分かっています。
暴走状態のその『眼』を抑えるために、遠野君の眼を奪い取ろうと画策したこと、私が理解していないと思っているんですか?』
『レール・ツエッペリンの時にはお世話になったが、こうも簡単に敵に回るとは因業だな……』
『えっ!? 刹那君、先輩のことを知っているのか!?』
何とも場違い極まる志貴の疑問を置き去りにして、代行者と魔術師は闘争を開始する。
どちらも武器の投擲を主とした戦闘スタイル。現代魔法師的な視点で言えば無駄な限りとも言えるが、肉体という『殺人機械』を用いて放たれる武器の多くは、三次元的な物体の『移動』を可能とする現代魔法よりも脅威になってしまう。
その理屈が分からない……。
と思っていると、刹那が平淡な顔で説明をしてくる。己の窮地だというのに、まるで他人事のような心地でいるように口を開いてきた。
「要はボクシングやケンカと同じだ。来ると分かっている、軌道を読み取って最小限の回避をしたとしても、それが突き刺さってしまったらば、という恐怖が簡単に肉体を縛る。
先程の理屈『意』……剣道や古武術で言えば、『心の一方』というものだな」
しかも、それが相手を簡単に穿つ武器であれば、次第に追い詰められていく。
そして、この段階においては……刹那は、まだまだシエルに及ばなかった。
黒鍵の投擲が肉体を貫く。魔剣による防御を掻い潜るシエルなる女の技の前に、倒れ伏した。
『先輩!!! くそっ!!』
何とか脱出を試みる志貴だが、あいにく今日に限って『鉄槌』を持ってこなかったことが仇となり、絶体絶命の刹那に代行者がゆっくりと近づく。
最後の一刺しを確実に与えようという心地か。三つ挟みの黒鍵を手に近づいてきたのを察して、刹那は起き上がろうとするも、刻印による回復が遅すぎた。
そして、石畳をカツカツと踏み鳴らして進んでくるシエルに対してーーー、横合いから影が迫った。今までどこにいたんだ。そうとしか言えない、絶妙の奇襲のタイミング。
影が放つ拳の一撃が、シエルを盛大に吹き飛ばす。
周囲に滞空する鉄球・鋼球を引き連れながらやってきたのは刹那の師匠であった。
『バゼット……』
『流石に、この相手との戦いは『ステージ』が早すぎます。ですが、よくぞここまで頑張りました。
ここから先は───私が引き受けます!』
そうしてからグローブを嵌め直す小豆色の美女の姿を見たシエルは、その身に宿した回復の奇跡を以て、立ち上がる。
『数多の外法・封印指定・死徒を屠ってきた天文台ミリョネカリオンのエース『バゼット・フラガ・マクレミッツ』。一度は手合わせをしたかった』
『そういうあなたも、話に聞いていたよりも鋭く高潔な戦士のようですね、代行者シエル。
小麦を捏ねていた手が『奇跡を織る』として教会にスカウトされた一介の町娘のあなたが、ここまで鍛え上げられるとは……』
『あなた方魔術師の理論によれば、
例え、それが憑坐としてのものでも、主の威光を遍く照らすこの身を以て、あなた方とも私は戦うのみです』
ぶつかり合う視線と殺意。闘気と闘気との狭間でーーー、最高峰の戦いは続く……。
そこから先は『早送り』されたわけではないのだが、あまりにも達也と深雪にとっては受け止めるには重すぎて大きすぎるものだった………。
刹那にとっての師匠であるバゼットと志貴の知り合いたるシエルの戦いの一時中断。そして再びの同盟関係。
迫る刻限を待ちきれないとばかりにぶつかり合う死徒たち。そして動き出した死徒たちを刈り取る連中……死徒殺しの死徒、『エンハウンス』との共闘。
『機巧令嬢』とでも言うべきものと相対しあって、剣製の秘奥を会得するように、『ピーターパン』の右腕を『はっ倒す』刹那。
刻限に至ると同時に始まる吸血鬼たちの謝肉祭。
そして現れる黒の月蝕姫と白の満月姫―――。
人知を超えた次元でぶつかり合う『力自慢たち』の戦いの最中、死徒の王に挑まざるを得なくなった刹那。
人類史を否定する影法師に対して、人類史を■■する影法師たちの一斉集結。
英雄たちの『UNION』が刹那を動かして、そして玉座に辛うじて座る『王』は、玉座の下にて反抗を示した少年に脅威を感じて、それでも……動くことは出来なかった。
体中を刺し貫かれてすぐにでも回復が必要なはずの『王』。ボロボロで倒れ伏していた少年を食うことは出来ず……。
『やり方なんてどうでもいい。最終的に『六つ』を欠けさせれば良かったんだ……。
しかし、お前がここまでやれるとは、場末の宿屋で一杯奢ってやった甲斐はあったな』
その手に持つ長銃をカシャンと動かして装填をする『復讐騎』は、死徒の王……貴族顔の男に狙いを着けた……。
『セツナに削られすぎたな。小兵にやられるなんて、思わぬ末路だろうが、オレも気に入りの
だから―――お前にお別れだ』
魔弾……聖なる葬列を約束する砲弾が、貴族顔を貫いた。
そして、終わる時が始まる……あまりにも壮絶な戦い。戦略級魔法師同士がぶつかりあったとしても、こうはなるまい。
闇が広がる。黒が広がる。全てを呑み込む影が広がる……。
黒い海に似ていた世界の中で、刹那は……最後まで見届けた。
誰かに言われた言葉に突き動かされるままに、足を止めずに、前を向き続けたが末の結末を達也たちは見届けた。
場面は草原。
アルズベリの一連のことが終わると、映像の場所は、刹那が遠野志貴と出会った最初の場所に似たところになっていた……。
終わりが……始まる――――。