魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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城爪草先生のヤマトネタに「しまった! その手があったか!?」と思ってしまう。

どっちも宇宙の果てだもんな。

守兄ちゃんといいぐだおといい、あれだね。命の危険が迫ると種の保存を―――(爆)

という訳で最新話どうぞ。

追記

前回の話のあとの大量のお布施(評価)ありがとうございました。今後とも精進してまいります。


第170話『まほうつかいの過去──DEATHⅣ』

 

 

 

『長い長い旅路だった。けれどまだまだ終わりじゃないんだよな』

 

『終わりたいんですか? アルクェイドさんを置いて死ぬなんて出来そうにないですけど』

 

『けれど、あいつは俺の血を吸おうとしない。いつかは俺のほうが先に逝ってしまうな……』

 

 

草原に座り込み、満月を見上げながら呟く志貴の言葉に、何も言い返せずに、同じく満月を見上げている刹那。

 

 

『好きだから吸わない。なんて―――『殺し文句』言われたらば、俺にはどうしようもない。

俺でも『言葉』だけは『殺せない』からな』

 

『あー。ごちそうさまでーす………』

 

『いやいや! そういう有彦みたいな反応はやめてくれ!! んーーー。とりあえずお疲れ様だ。なんだかとっても危険なことに招いたような気がするが、大丈夫かい?』

 

 

一度だけ伸びをしてから草原に身を倒す遠野志貴は、隣りに座る少年を心配そうに見る。

 

 

『二度と会うことはないとは思いますが、二度とあなたとは一緒に行動したくない』

 

嫌われたもんである。志貴は心配そうな顔と眼をして刹那を視るも、刹那は疲れたような表情と言動を取る志貴に対してしょっぱい態度であった。

 

苦笑をしてから依頼料を払うとして、指2本を刹那の眼に向ける遠野志貴。

 

それを見て、刹那は疑問を向ける。

 

『白翼の時の『処置』で終わっていたのでは?』

 

『あれは応急だよ。アルクェイドに聞いてみたんだが、どうやら君の眼の容量は、まだまだ『上』があるみたいだから、今後のためにも『壁』を壊しておけって言われたんだ』

 

あのお気楽吸血姫に、そんなことが分かるとは……。

ともあれ、今までは大河から水を引き込むための処置が変化を果たして、『大河川』を適切な形で整地して水を氾濫させないためのものになる。

 

遠野志貴が指で『殺した』のは、刹那の魔眼にかけられた妙な『堤』であり、意味のない『封印措置』であった。

 

その理由は分からなかったが、ぱきん! と何か脆いものが崩れるような音がしてから眼を開くと、そこには直視の魔眼の輝きを見せる遠野志貴の姿があった。

 

 

『―――これで、君との同盟関係は終わりだ。終わりの時が来ると、なんだか寂しいもんだな……』

 

 

乾いた笑みを浮かべる殺人貴と、同じく笑みを浮かべる『魔宝使い』

 

 

『ええ、まぁそれはあるかもしれませんね。……多分、もう二度と会うことはないでしょうし』

 

それは予感であり直感であり、本来ならば役立つことはないものだ。

しかし、理解は出来たのだ……。

 

この人は―――。

 

 

『それじゃ、もう行きます。なんやかんや言っても『教会側』に着いて戦ってしまったことは、大目玉もいいところですからね』

 

『ごめん』

 

『謝んなくてもいいです。そういう時があってもいい。そんぐらいには……いい日々だったとは思えますよ―――しばらく寝ていてください。

結界張って誰も寄せ付けませんから―――ほんのひと時の疲れを忘れるための宿り木程度ですけどね』

 

『それは安心できるな……ここ数日の出来事は、俺にとってもかけがえのない日々だった。永かった幾千の夜を超えて手に入れたものは、とてもいいものだった』

 

 

月が仄かに照らす草原。小さな影も見つけるから休んでいろという相手には……正直なれそうにない。

 

 

『思えば、俺は君に、自分を重ねていたのかもしれない。

自分には何もない。いつ死んでもいい。なんて―――世捨て人みたいな考えで動くことを、ね……戒めてやりたかった。俺みたいな不安定(ぼろぼろ)の人間ではない『明日』(みらい)があると、俺の姿を見せてね―――』

 

迂遠なやり方。そして、この人だって帰ろうと思えば帰れないわけではないというのに、彷徨うように生きていくことを良しとする心情が分からなかった。

 

けれど―――傍にいることを決めた白い月の姫のために走り続けることを決めたならば、それを言うのは野暮だった。

 

 

『最後の依頼は、こなしてみせますよ……それじゃ、さよならです志貴さん』

『ああ、さよならだ。刹那君、義理堅い君を利用してすまないね』

 

 

その言葉を最後に今度こそ殺人貴―――遠野志貴という男の前から立ち去る刹那。

 

これ以上一緒にいると、縛り付けてでも、故郷に連れ帰ってやった方がいいと思えてきたのだから……。

 

結界の最終確認を終えて―――深い深い吐息を吐き出す。

 

既に遠野志貴の姿は見えていない。よっぽどの相手でもなければ、この結界は見破れはしまい。

 

そして、そんな相手はそうそういなかった……。横合いに―――気配が生み出されていなければ……。

 

いたのは『魔法使い』であった……赤い髪を長く伸ばした、一番刹那がよく見る魔法使いである。

 

 

『随分とお疲れのようね。お互いに徹夜明けの身とは言え、あなたは結構、楽できたほうよ。

なんせ一番の『ジョーカー』の傍にいたのだから。

まっ、そうはいってもそんなものは主観の問題だしね。あまり恨み言は言わないでおくわ』

 

『―――どうも。あなたがあげた眼鏡。度数が合わなくて困ってたみたいなんで、合わせときましたよ』

 

 

世間話でもするように、『殺し合い』に関しての報告をしあう刹那と魔法使い。

その会話を傍から聞いても、何の話かは分からないだろうが、放たれている言葉は剣呑だ。

 

 

『姉貴の不手際であって私のせいじゃないわ。

と……言いたいところだけど、見込みが甘かったのよ。まさか―――あの子が『ここまで』になるなんてね……』

 

 

それは遠野志貴が、ここまで魔性の災厄に出会って眼を酷使するなどと思っていなかった『魔法使い』の『先見の明』の無さなのか―――ある意味究極の未来視は、魔法使いの先読みすらも殺してしまっているのだろう。

 

 

『これ以上は、中にいる人と話してください。俺に対しては『無駄言』でしょう? 二時間もすれば消え去ります……それまでは休ませておいてくださいよ』

 

『そう。色々と世話をかけさせたわね。……真っ直ぐに帰れば大目玉だと思うけど?』

 

『それが怖くて、魔術師なんてやってられませんね。保護者同伴もそろそろ卒業せにゃならんでしょう。まぁ少し『寄り道』してからにしようと思いますよ』

 

 

バルトメロイとの交渉についていこうかというブルーの気遣いを無視して草原から去っていく。

 

本当にここでの自分の役割は『闖入者』であった。恐らく抑止力というものに突き動かされた闖入者(ストレンジャー)

 

大きなトランクを持つ『右腕』を一度だけ擦ってから、魔法使いに完全に背を向ける。

 

ここから『先』のことは刹那には関係のないことだ。むしろお邪魔虫であるとも言えた。

 

そして―――アルズベリという魔境にて命を拾った魔術師見習いは、誰を伴うわけでもない帰路に着くのだった。

 

 

『さてとバゼットに報告をあげたり、なんだりしなきゃいけないが、先ずは――――――』

 

 

まん丸の月を見上げながら、呟く言葉はただ一つ。その輝きに『眼』をやられながら……刹那は宣言する。

 

 

『こっから一番遠い場所―――日本に帰るとしますか』

『はぐれ旅だねぇ。人生は長い。キミの旅は――――まだまだここからも続くのさ』

 

 

必要な時以外は口を出さない魔法の杖の言葉に返しながら、刹那は歩き出す。その歩みが止まるのはいつになるか分からない。

 

ただ、こうして目の前にいる遠坂刹那の人生の壮絶さは、達也にも理解できた。

 

 

「カッコつけがすぎますね。意外と気取り屋ですよね刹那くんって」

 

「魔術師の基本条件というわけではないが、持っていていい適正にはナルシーな人間の方がいいというものもあるのさ」

 

深雪の言葉に答えながら、場面を進める刹那。

 

曰く『時計塔』からの召喚命令が出ていたにも関わらず、それをブッチして極東―――日本へと帰国するのだった。

 

目的は故郷である『冬木市』ではなく、三咲町……遠野志貴に対する後始末であった。

 

 

 

「にゃふー。どうやらそろそろお暇するべき時間じゃね?」

 

「わんだー。確かにこれ以上のカレーニウムの摂取は身体に毒ですね―。というか私はちゃんと出演できましたから大満足です」

 

「ううむ。本当だったらば噛みつきたいところにゃんだけど、アチシもそれなりに出たしな―。直接の出演じゃなくても、これでいいのにゃ」

 

ボロボロになった一行を前にして気楽な会話をする、自称・ネコ精霊とイヌ精霊の化身達。

 

さんざっぱら協力したり敵対したり、それに巻き込まれて戦いの限りを尽くしたというのに、こいつらだけは『普通』『平然』としているのだ。

 

解せぬ―――。レオ達一行を前にして、そのネコ精霊とイヌ精霊たちは天へと昇っていく……黄金の身体と―――なんか金色の煙(七輪使用)を纏いながら……。

 

ネコの天使とイヌの天使がハイロウを持ち、ラッパを吹きながら導いていく様子。

 

なんでこいつらだけこんな豪華な昇天シーンなのか。更に解せぬ。

 

 

「今回の仕儀は、まぁ悪くなかったにゃ。久々に暴れに暴れられたし」

 

「野蛮な限りですねぇバカネコ。そして私達の目的はまだまだこれからですよ」

 

そうねー(・・・)。そろそろコラボしてもいい頃なんだもの。いい加減、『月世界』の戦争以外にも参加してみたい気持ちね」

 

その時、全員が気付いた。ネコ精霊の姿が、白いセーターに紫色のロングスカートを履いた……金髪の美女になったことを。

 

あまりにも人としての規格を逸脱した美しさに、全員が息を呑んでしまう。

 

そして、イヌ精霊の方も青髪のカソックを着たシスターの姿に変化を果たしていく。

 

振り返った姿はどちらも美女であった―――。そして彼女たちは……こう呟く……。

 

「ワタシ達はようやくのぼりはじめたばかりだからね―――この果てしなく遠いFGO実装坂(困難坂)をよ……」

 

「たまにはいいこと言いますね真祖。ワタシ達の戦いはここからです。明日実装されるために―――――」

 

一拍置いて―――。

 

 

「志貴のところにGO!!」

「遠野君と寝るぞ―!!」

 

恐らく同一人物だろう相手の名前を言ったのだろう二人が天に昇り、坂を上がりながら拳を突き出し合う。

 

「オラオラオラオラオラオラ!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!」

 

ラッシュの速さ比べの果てに―――

 

ごぎゃ、という激しい打撃音が響く。

 

お互いの頬に突き刺さった拳の威力は、そのステレオサウンド(おと)からお察しである。

 

クロスカウンターによる相打ちの姿を晒したまま、はた迷惑な二人の美女は霞のごとく天上の世界(?)に消え去るのだった。

 

同時に結界が解除されて、東京の路面に出る。なんとなく全員が一心地着いた気分ではある。

 

よって深い深い溜め息が、吐かれるのだった。

 

「結局……な、なにが起こっていたんでしょうか?」

 

「夢か現か幻か……まぁ何にせよ―――、一色さんと十七夜さんは、服を着たほうがいいよね」

 

フェンシングスーツのままというのは色々とアレであるわけだが、幹比古の言に愛梨は返す。

 

「いや、一番深刻なのは、あのバケネコの手で全身に妙なタトゥーを描かれた(サインペン)西城くんなんだから、気遣って上げましょうよ」

 

「沓子、水で洗ってあげて」

 

 

人の往来はそれほど無い。というか人通りがないことは今の所幸いであり、魔法の使用はそこまで咎められない。

 

アーネンエルベ周辺は『なぜか』ソーシャルカメラの設置がない空間であり、まぁそんな安心感を覚えていると、大量の荷物を『手』で持ち上げているオレンジ髪の女の子と、知り合いの使い魔が連れ立って歩いてきた。

 

 

「おや? 久しぶりの面子に知らない人だねー。チカちゃんがいない時に限ってタイミング悪いよー。けれど追い返せるわけでもないしね」

 

「どうしたんですか皆さん。疲れ切った表情をして」

 

「いやカゲトラさんこそ何をしているんですか? ああ、もう分かったわ。アーネンエルベに刹那君と達也君がいるわけね……」

 

このドローンによる食品輸送がデフォルトの時代に、このアナログさ。

 

ともあれ目的地に目標がいることが分かったことで、全員はカゲトラとひびきの荷物を持って一路―――アーネンエルベへと、再度歩を向けることになる。

 

まほうつかいの過去の再演は―――終わりを迎えつつあった……。

 

 

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