魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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作業用BGMにレアルタヌア(vita版)の『ARCADIA』『HORIZON』を掛けて終盤の展開を何とか書き切りました。

『Another Heaven』は―――うん、またの機会に(爆)


2018年8月13日 指摘を受けて修正・加筆。



第7話『NAKED STAR-Ⅱ』

 リーナにとって、そんな仕事は容易かったはずだ。スターズ総隊長という『最強』を名乗るだけの実力はあった。

 

 魔法力において追随を許さない彼女の実力を参謀本部も認めてくれた。そうして幾らかの研修を経て―――自分は『シリウス』のコードに相応しい軍人になれたはずだった。

 

 

 そう……だった。はずなのに―――、知ってしまった組織の暗部。そして合衆国においてすら、魔法師どうしによる殺し合いが頻発していることが……。リーナの耳には入ってこなかった。

 

 

 現在のところ、総隊長が拝命すべき内部粛正の任務は無い。脱走兵―――というものが合衆国においてあるとすれば、それは魔法師によって『精神を操作』された存在が主だろう。

 

 それとて拘束をして、メンタルケアをしていけば外れるもののはずだが……。それでもシリウスにその権限があったということは―――……合衆国は強力な魔法師が団結して『反乱』を起こした場合の『カウンター』として、シリウス…最強の魔法師にそれをやらせていたのだ。

 

 

『これはどういうことですかシルヴィ!? 私はこんな任務があるなんて知りませんでした!! これが―――総隊長が負う任務ならば……誰が代行しているんですか!?』

 

 

 癇癪じみた言葉に聞こえたかもしれないが、聞こえてきて閲覧したデータを参照するに、血液が逆流する想いであった。

 

 必死の想いと形相。悲しんでいるリーナを見たシルヴィアが、苦渋の顔をしながら口を開く。

 

 

『……全ての恒星級の魔法師が、その『任』を任されている訳ではありません。リーナもご存じの通り、スターズの任務には警察の手に負えない魔法師犯罪に対処することも含まれています。同時に―――新ソ連、大亜連など『敵対国』の間者となっているものを『処罰』する権限もあるのです』

 

『それだけではないのでしょう?』

 

『ええ、場合によってはシリウスは『反乱分子』に対する最後の砦となりましょう―――、ですが……この任を代行すると言ってきた人間がいます。もう察しは着いていましょう?』

 

 

 プリントアウトされた紙をくしゃくしゃに握りしめながらリーナは俯く。自分とて何も『健全な組織』というものが完全に存在しているなどとは思っていない。

 

 想像力逞しい人間ならば、治安維持機構の中でも『特殊なセクション』が、そういった『後ろ暗いこと』に従事しているなど考える。

 

 そしてそれが事実だった場合―――それを知らされていなかった内部の人間は、忸怩たる思いを抱く。

 

 

『セツナなんですね……誰も止めなかったんですか?』

 

『―――何人かは止めたいとは思っていましたよ……ただそれ以上にセツナ・トオサカは上手く『やりすぎました』。だからこそ、誰もがそのままにしていました……。実際、初任務の後の帰還の車を運転していた私は、セツナ君が同じ人間には思えませんでした……』

 

『だとしたらば私も『人間』じゃないはずです!! 戦略級魔法で10万人都市すらも滅ぼせる私とセツナとの間に違いはないじゃないですか!?』

 

『リーナ……』

 

 

 同じ年頃で同じく修羅場を歩く決意をしたのならば、自分とて『人間』ではないはずだ。そんなリーナの言葉には幾ばくかの恋慕ゆえの私情も入っていたが、それを糾弾出来ないシルヴィア。

 

 リーナは同じ『存在』がいることで安堵をして、精神的安定を保っていた。

 

 そんな事は分かっていた。だからこそ、シルヴィアだけでなくスターズの誰もが『リーナには知らせないでください』という刹那の言葉を遵守してきたのだ。

 

 

『―――違法魔法師、外法を使いすぎて裁判で立証すら難しい犯罪魔法師―――アウトサイダーを『処罰』する任務、今度は私がやります』

 

『……セツナくんの想いを踏み躙るんですか? 分かってるはずですよリーナ。あなたに血濡れの惨状を見せたくないからこそ、彼は影の始末屋という任務に従事してきたんですから!!』

 

 

 待遇。特に金銭なども多く融通してもらっている―――などと言えばシルヴィアとてリーナに吹っ飛ばされていたかもしれない。

 

 

 そんな風に怒りでサイオンが―――自然と『発雷』としてリーナの全身を輝かせていた。

 

 

 刹那命名の『キーニング』の前兆だなと緊張しながら思ったが、落ち着きを取り戻したらしく光が無くなって、逆立つように浮遊していた金髪のロールがニュートンの法則に従っていく。

 

 

『……すみません感情的になりすぎていました……』

 

『いいえ、お構いなく―――あなたのフォローも私の仕事ですから』

 

 

 仕事とプライベート。刹那が絡む事案にリーナが関わると二つが、まぜこぜになって、どちらかといえば彼氏の愚痴を言う妹の相手をしている気分になる。

 

 そう硬い口調で言っておかなければ、なんかちょっと女として負けた気分になるのだ。

 

 

 シルヴィア・マーキュリー・ファースト 22歳 現在恋人募集中の出来る女である。

 

 

『……一度、セツナと話そうと思います。それで―――『変化』があれば、いいですけど―――なければ、バランス大佐に言って私が拝命します』

 

『それがいいですよリーナ。ただし、話すタイミングと場所は考えてくださいね?』

 

『はい。大丈夫です』

 

 

 何が大丈夫なのだろうか。と思わなくもないが、リーナも考え有るだろうと思って深くはツッコまずにおいた。

 

 その表情が緊張しているのは丸わかりであっても―――。

 

 

 そんなこんなありながら、あの顛末に至ったのであった……、もっと上手く言えていればなぁと思わなくもないぐらいにはリーナも反省していた。

 

 優しく言うことで、こんなことを自分ひとりで抱え込まないでほしいと言えていれば良かったのに―――。

 

 

 

 

『我らが神よ!! 星辰の彼方より降り来る支配者よ!!! あなたが愛すべきか弱き一匹の羊が、あなたの憑代となりましょう!!! 我が身に最大の祝福をををを!!!!』

 

 

 はっきり言えば街中は混乱の一言であった。

 

 

 現在時刻は標準時にして午後1時。24時間表記で言えば13時。

 

 しかも休日であったことが災いして穴倉から出てきたアライグマならぬ熊の如き魔法師は―――街中を闊歩する『化け物』をどこからか呼び出して人々を襲おうとしていた。

 

 

 どこで手順を間違えたのか分からないほどに、状況が上手くいかなかった。

 

 

 最初にリーナがやったのは件のアウトサイダー……ウィルバーの家を探ることからだった。ウィルバーはこの街―――ロズウェル基地があるニューメキシコから近場と言ってもいい場所の中核都市に居を置いていた。

 

 本来の出身はマサチューセッツ州は、ダンウイッチという『街』らしいが、それでもここに移り住んだウィルバーは、何かのカルトの宗教にでもはまったかのように仕事もせずに、儀式めいたことを行っているという情報だった。

 

 

 最初は、迷惑行為の通報として州警察や保安官が対処していたらしいが、ウィルバーに『注意勧告』をした者達が全員、怪死したことを切欠に魔法犯罪だと気付いた時には、もはや犠牲者は30人を超えていた。

 

 そして故郷のダンウィッチを捜索したところ、有り得ぬ死体の山や人間の『臓腑』を使ったらしき『装飾具』が出てきたことで、ウィルバーを処断する命令が出たのだ。

 

 

 お鉢がスターズに回ってきた時、リーナがこうして動いた時、もしかしたらば魔法力が高い人間がやってきたことが切欠かと思うぐらいにリーナがパレード(仮装行列)で近づいた時には、一般的なアメリカの家屋。

 

 いわゆる20世紀後半のホームコメディドラマ……『フルハウス』にでも出てくるような家屋を吹き飛ばして―――巨大な怪物が出てきたのだ。

 

 

 そして―――現在に至る。バックアップ要員も何も連れてこないでやって来たのが、今は悔やまれる。スラストスーツも着込んでこなかったことが、仇となった。

 

 

 CAD―――ブリオネイクは持ってきている。戦略級魔法の為の『弾頭』は持って来ていないが戦術級魔法を発動することも可能だ。

 

 

 やるしかない。だが、今の自分の格好では―――『不味い』。

 

 

 別にスターズには、知られた者は親兄弟といえども殺さねばならぬ、などという『ニンジャ・ムービー』めいた掟があるわけではない。

 

 

 内乱で多くの人死にを出さないために一族を弟一人残して皆殺しにする覚悟を持つような『シノビ組織』でもない。

 

 

 とはいえである。隠密で軍人がここまでやってきて魔法を使うというのはどうしても州法や連邦法に抵触するものだ。

 

 魔法師の魔法の使用はどの国でも厳密に法律で細かな規定があるのだから―――。

 

 

 ならば―――どうすれば―――。そう考えている内にも中心街にまで至ろうとしている怪物―――Devil fish(タコ)にも似た生物の快進撃は止まらない。

 

 ここに来るまで人知れず魔法などで怪物の触手―――人間を食らおうとしているだろうものを焼き切りながら、本格的な対処を警察などに任せていたが―――。

 

 

(これ以上は無理だわ)

 

 

 覚悟を決めて、仮装行列の術式を変えて―――絶対に二度と着ないと思っていた格好に変えた。これならば正体不明の魔法師として隠せる。

 

 サイオンの光がリーナの姿を変えて、そこにいたのは―――、とりあえずはあの頃よりは幾分かはティーンが着ていても問題ないかもしれない服装。

 

 

 刹那が命名するならば『美少女魔法戦士プラズマリーナ・ツヴァイ』という英語とドイツ語混合の変なネーミングをしてくるかもしれない。

 

 蛇足を終えて目元だけを隠すマスクを着けて、怪物とウィルバーを見下ろせる位置から名乗りを上げた。

 

 

「そこまでよ!! モンスター使いの悪の魔法師!!!」

 

 

 音声を張り上げての言葉に血走った眼を向けて狂気に陥っていると思えるウィルバーと怪物の視線が向けられた。

 

 

『なにもの―――だ』

 

 

 リーナの名乗りに反応したウィルバーのたどたどしい言葉を聞きながらも、リーナは声を張り上げる。

 

 

「USNAの平穏を乱すものは、どんな理由があろうと許さない! 愛と正義と自由を司る星の下に生まれし 美少女魔法戦士プラズマリーナ!!!」

 

 

 そんな名乗りに警官隊や逃げようと走っていた人々が一瞬だけ立ち止まりリーナに視線を向ける。

 

 恥ずかしさもなんのそので口上を名乗り上げる。

 

 今まで『月』がやってきたことを自分がやる時だ。

 

 

 その間、どっかで見たようなポーズを短いスカートやヘソだしの服もなんのそので、おこなうのも忘れずに―――リーナは最後の口上を言い切る。

 

 

「―――『月』にかわって―――おしおきよ!!!」

 

 

 奇しくもそのセリフは、22世紀を迎えつつある世界においても愛される魔法少女のものであった。

 

 

『……せいえい、たいぷ―――むーんではないのか? ならば―――死ね!!!』

 

 

 その瞬間、ウィルバーの眼に理性が戻ったように見えたリーナであったが、襲いかかる触手にぶれずに術式を放つ。

 

 ムスペルスヘイム―――領域魔法として限定範囲の全てを焼き尽くす魔法。

 

 

 熱力学の第二法則を捻じ曲げて放たれたものは、巨大なタコごとウィルバーを包み込む。

 

 焼灼の空間に閉じ込められたタコの絶叫でも聞こえれば良かったのだが、何も聞こえないことがリーナに冷静な判断をさせる。

 

 

(あれだけの巨体を焼き尽くすには、もう少しかかるか―――拘束系の魔法も使わないとならない)

 

 

 触手で崩れた建物の屋上から飛びながら警官隊の中に降り立つ。ざわめきもなんのそので判断を下す。

 

 

「君は東海岸、ボストンに現れた魔法師の」

 

「詳しい説明は省きますが、政府密命のエージェントとして今は動いていますので、住民の避難を優先してそれと州軍にも出動要請をお願いします」

 

 

 ショットガンを持っていた警官の一人。リーダー格であろう人間の言葉を遮って説明しながらも魔法の制御を緩めない。

 

 

 しかし―――『ハスタァ』という言葉が聞こえた気がした後には、リーナの魔法が弾かれた。完全に起動式全てを砕かれたのだ。

 

 

(セツナのことを知っていた。それだけならばいいけれど『ならば 死ね』? つまり目的は―――)

 

 

 刹那の身柄。もしくは秘術なり何かということか―――余計に相手を取り逃がすこと出来なくなった瞬間だった。

 

 魔法の解除もなんのそので次手を撃ちだすことに考えを持っていく。

 

 

 同時にタコの肉に埋まることで被害を免れたらしきウィルバーの姿を確認。焼けた皮膚を脱皮するかのように脱ぎ捨てながらタコは進軍する。

 

 

「急いで!!!」

 

「……すまないプラズマリーナ!!……」

 

 

 モンスターパニックムービーの様になりつつある街中、一人立ち向かうリーナ。

 

『スパーク』の術式を強大化―――刹那との協力で出来た魔法『ミョルニル』で地面から雷網を発生させる。

 

 壁になればいいけど。いいながら、あのウィルバーを『殺せば』、巨大タコは消え去るのではないかと考えるが―――。

 

 

(―――出来るの?) 

 

 

 誰とも知れない人間の声がリーナを押しとどめる。しかしやらなければ誰かが死ぬ。既に家屋や商店に被害が出ている。

 

 共産国家ならばともかく、土地も家も個人の財産である。それが一切合財失われるということは恐ろしいことだ。

 

 

(やらなきゃいけない!!)

 

 

 覚悟と決意と共にブリオネイクを変化。『星』晶石というとてつもない鉱石を用いたCADはリーナの意思を汲んで様々な形になってくれる。

 

 もっとも、流石に剣や槍にしたからと言ってヘビメタが出来るわけではないが、そうしてリーナは、二つの槍と化したブリオネイクを手にタコに乗っているウィルバーを狙う。

 

 襲いかかる触手もなんのそので、タコというちょっとした山を登っていき、汚い青色の血かタコ墨から身体を保護しながら、2つの槍を振りかざしながら、向かう。

 

 

「ウィルバー・ドミトリィ!! 覚悟!!」

 

「アトラクゥ・ナクァ――――」

 

 

 手傷を加えればいいだけ。相手は正式な魔法師ではない。重傷でない程度に傷を与えればいいだけだ。

 

 出来たとしても現代魔法に『速度』で劣る古式魔法の類だろうと思っていただけに―――言葉で、リーナの動きが拘束された時には驚いた。

 

 

「な、なに!?」

 

「黄金色の蜘蛛―――その身から出る糸は、全てを捕える」

 

 

 リーナの眼にも見えた。自分を拘束する黄金の糸が―――まるで蜘蛛の巣のようなものが確かにリーナの動きを捕えていた。

 

 踏みしめたタコの身の感触が、この上なくおぞましく感じながらも、次に聞こえてきた言葉で総身が凍りつく思いとなる。

 

 

『―――我が神に汝が身を贄として捧げるとしよう』

 

 

 その言葉の意味は、タコの身から湧き上がる数えるのも馬鹿らしくなる触手の数で知れる。

 

 軍人とか魔法師であるとか―――そんなことに何の意味も無くなるぐらいに―――女として、人間として、生物としての本能的な恐怖が喚起される光景とリーナの身体を遠慮も無く撫でまわそうとする蠢きを前に―――。

 

「いやぁ……」

 

 上下の下着の間に入り込もうとする触手を前に最大級の嫌悪感が、身を貫く。

 

 そしてリーナは叫んだ。眼を瞑って大粒の涙がこぼれ落ちるほどに叫んだ言葉は―――。

 

 

「助けてよぉ!!! セツナァアアアア!!!!」

 

 

 言葉は叫び。言葉は想い。言葉は呪文であったかのように―――――。『魔宝使い』は秘奥を解き放った。

 

 

『投影、重()―――全投影連弾創射(ソードバレルマキシストライク)―――!!』

 

 

 天空より降り注ぐ光。光。光。数多の光弾、流星にも似たものが来たりて、猛烈な勢いで『大海魔』の肉体を貫いていく。

 

 まるで空軍部隊の一つ爆撃機(ボマー)の対地攻撃。戦略爆撃の如く大海魔を討ち抜いていく様子。

 

 肉塊が一回ごとに40キログラム単位で次々と抉られていき、その数は100は超えていた。

 

 

 それでも大海魔は生き残っていた。

 

 

 しかし、その勢いを借りて、光弾に紛れて一人の男がリーナの身を己の右(かいな)に収めた。その姿はプラズマリーナのライバルだか運命の相手だかと世間ではあれこれ言われていた魔法の怪盗。

 

 

 現代のアルセーヌ・ルパン、怪盗キッド――――総称して『魔法怪盗プリズマキッド』がプラズマリーナを助けたのだ。

 

 

「―――大丈夫か?」

 

 

 その言葉にリーナは、泣きだしたいぐらい嬉しくて、見えた顔の心配そうな表情に、10日前のケンカなど忘れてしまって抱きつきたくなる。

 

 

 けれど出来なかった。ここまで刹那に心配させていたのは、自分なのだ。予定外が無ければロズウェルの本部基地にいたはずの刹那がここまで飛んできてくれたその労力を考えれば、そんな軽率なこと出来なくて。

ただただ、抱きつくことでしか表現できなかった。

 

「ごめん。もう少し早く着くべきだった……怖かったろ?」

 

「なん、で……そんなに、わ、たしが、かってに……やっただけなのに」

 

 

 嗚咽を堪えたくて言葉が途切れ途切れになる。支離滅裂な言葉を吐きながら、刹那の服に必死で掴みながらこらえようとしても無理だった。

 

 嬉しさと悲しさとの間で涙が止まらない……。

 

 

「それならば気にするなよ。俺も勝手にやっただけだよ。総隊長殿を助けたい。『リーナを守りたい』そういう気持ちで動いたって構わないだろ? 軍人だからといって『心』がないわけじゃないんだ」

 

「――――うん。うぁっ……」

 

「だから、ここから先は俺が請け負う……とカッコよく言いたい所だが……」

 

「うん。うえっ―――えっ?」

 

 

 瞬間、リーナの眼にもはっきり分かるぐらいに刹那の魔力の回転が無くなった。驚きと共にどういうことだろうと思っていたが―――説明はオニキスがしてくれた。

 

 涙を拭った後に見た刹那はどこか失敗したような顔をしていたりした。

 

 

『連続空間転移にも似た『飛行飛翔』で、ユタ州までやってきたもんだから如何に平行世界の魔力を引っ張って来たとしても、今の刹那は―――完全にエンプティ(ガス欠)なのさ』

 

「つまり?」

 

「先程の『魔術』は最後の残りっ屁だったんだよ。というわけで暫くはお前の『魔力』を使わせてもらうよリーナ」

 

「ただの魔力タンク扱い!? その為に私を助けたの!?」

 

 

 気楽な様子で借金を願い出るような刹那。それに対して先程までの泣き顔など何処に行ったのか、崩れた顔をするリーナ。

 

 もう何か先程までのロマンティックあげるよ。と言わんばかりの瞬間など吹き飛んだ。

 

 

「ザッツライト!って! 痛い痛い!! 胸を叩くな!!」

 

「うるさい! 私のロマンティック返せ!! セツナの2枚目半!!」

 

『ラブラブでひなひなってるところ悪いが、海魔も動きつつある。三分もあれば私の機能も回復する!! さぁ愛の逃避行(エスケープ)の始まりだ!! 行きたまえ!!』

 

 

 まるで人類最後の希望を『潜水可能戦車』で送り出すかのようなオニキスの言葉に従い刹那はリーナを離さずに、強化した身体で動き出す。

 

 もう離さないと言わんばかりの抱擁できつく抱きしめる刹那。

 

 リーナもまたそんな密着状態の刹那に強く抱きしめ返すと共に、魔力を送ることで、二人は海魔の触手から逃れた。

 

 

 その動きは緩慢―――そしてその海魔の身体には魔を絶殺するが使命と言わんばかりに多くの『宝剣、宝槍、宝刀』が突き刺さっており、その貴い輝きが、二人を逃したも同然だった。

 

 

 その際に―――遠巻きに安全圏でその様子を見ていた群衆の一人は、『白髪に色黒の筋肉質の男』が、二人と海魔を分けるように立ちはだかる風に見えたと語る。

 

 

 事実、何かに恐怖したのかその一撃の後に海魔は、己の身体の再生に尽力して宝剣を抜くことに終始して、その時間が二人に反撃を許すだけにあまるものであることなど知らず……決着の時は近づいていた。

 

 

 




なんだか終盤の展開がミスト2世さんの復讐の劣等生の最新話に似てしまったが―――あそこまで徹底したピカレスクロマンあふれる達也とは違い、ウチのオリ主では最後はあんな感じに―――まぁ今作ではこのぐらいがいいんですよ。

島本先生の魂が私をこんな風にした。反省はしない。(え)

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