魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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久々のマテリアル本。しかも事件簿の方とは……これは買いだな。


第180話『カーニバル・ファンタズムⅠ』

本来ならば、即時の中止とて考えていた冬晴れの日取り。

 

確かに、横浜事変の影響で発令されていた甲種警戒令。現代の(21世紀の)戒厳令とでも呼ぶべきものが解除されて、二十日あまりが経ったこの日に、まさかまさかの中国での内戦勃発である。

 

対岸の火事。と静観するには、まだまだ情報が足りないが、だからといって、ここで自分たちの努力を全て水の泡にするなど有り得ない。

 

百山校長も―――。

 

『何かあれば、私が全てのことをこなそう。心配いらん。

君たちは、君たちの『時代』を駆け抜けるのだ』

 

どっかの政党の代議士が、ウザい横やりを入れてきたらしいが、色々な手練手管を使って『黙らせたらしい』。

 

そんなこんなの祭の裏側のことなど関係なく――――生徒たちの大半は、ようやくのことでの季節外れのハロウィン・パーティーを開始出来ることに嬉しく思う。

 

『それでは、魔法科大学附属第一高校主催・季節外れの灼熱のハロウィン・パーティー―――開幕でーす♪ 生徒の皆、来場者の皆さん、思いっきり色んなことを楽しんでくださいねー♪』

 

リトルリトルなビッグボスの宣言を以て開場が行われ、生徒たちは何気なく拍手喝采を以て歓迎しつつ、文化祭の開催となるのだった。

 

話は、そんな開場に至る前の数時間前に遡る……。

 

† † † †

 

「グォ―フォッフォッフォ! このサンシャインゴトウ様のロードローラーで砕かれたいのは何処のドイツだ―――!!」

 

ブロッ〇ンJrが犠牲になったなど聞いたことがない。

 

リーナの髪を編み込みながら、刹那は教室の前の方で騒ぐ後藤に言いたい気分だった。

 

何となく、ウェイバー先生の髪を梳いていたグレイ姉さんの気分が分かるものだ。

 

「ウーン、くすぐったいような気持ちいいようなヘンな気分―――♪」

「女優さんはスタイリストの邪魔しないでおきなさい。手元が狂うとマズイだろ?」

「ハーイ、誰よりも可憐(CUTE)に仕上げてネ♪」

 

刹那にそう窘められつつも足をパタパタ動かすリーナの図。そんな様子にB組一同、沈黙。そして―――。

 

『『『『ごぱぁっ!!!』』』』

「久々にここまで公然としたイチャつきを見ると、口の中が砂糖まみれ……」

「何から言ったらいいのか分からないけど、とりあえずA組の司波さんとかを見に来た一団の中にいた五十嵐が吐血したみたいね……」

 

あきらめの悪い男……そう言ってもいいのかもしれない。なんだかその内、もう一人ぐらい出てきそうな気がする。

 

リーナ狙いではないだろうが……。

 

「終わったぞ。鏡で確認してみ?」

「しなくても分かるわよ。サンクス。次はワタシの(ターン)

「ウィッグでいいよ。分かった分かった! 普通にワックス使え!!」

 

金髪のウィッグを出した刹那に対して抗議するように、真正面からわしゃわしゃと刹那の黒髪を乱すリーナ。

 

座っているとは言えタッパに差がある二人。

 

男子一同としては、その際にリーナの胸が刹那の顔面に接近していることに気づき、色々と拳を握りしめてしまう。

 

そして悔し涙の限りである。

 

そんな男子を白眼視しつつも、B組の中心とも言える二人のカップルの準備が済んだらしい。

 

この時代ともなれば、服飾の業界にも一種の変革が起こっていた。いわゆる自動衣服製造機―――『テーラーマシン』という『ロボット』の普及である。

流石にある種の職人技を必要とするものなどは廃れておらず、各々のファッションデザイナーという職種はまだまだ必要とされているが……。

 

簡易な衣服。もしくは、趣味人のための衣服。ようするに昔ならば『東急ハンズ』などでしか買えなかった『コスプレ衣装』などは、ある程度の大型服飾店にて布地と必要な装飾品などを購入して、データベースにインプットされているデザインから選んでアウトプットしてしまえば……。

 

「特に人気のアニメや漫画のキャラクターなんかは、頻繁に更新されているんだよね」

 

「けれど遠坂とリーナの衣装は、本当に見かけないわよ」

 

もちろんテーラーマシンが自動機械であっても、細かな細部や己の望む『衣装』を作るには、ある種のマニュアル操作で対応する。

 

実際、中学校の家庭科では選択制ではあるが、一からプログラムすることで、衣装を作るという授業があるほどだ。

 

(恐らくだけど、入学直後の八王子クライシスでの時と同じように、何処かの英霊の衣装を模したんだろうな……けれど、それって―――)

 

エイミィと桜小路の会話を聞きながら、十三束は協会関係者の母を持つだけに、少しだけ進んだ推理を展開していた。

 

リーナの衣装。蒼いドレスコードは鎧こそ今はまだ無いが、あの横浜事変の際に刹那の宝剣の解き放ちの際に見えた『影』『イメージ』だ。

 

振るわれた剣の名は『エクスカリバー』……とすると―――。

 

「ヨーシ、これでスッゴクいいヘアスタイルになったわよー。パーフェクト!」

「リーナが満足しているなら、いいけど……みんなが俺だって分かるのかね?」

 

リーナは元から金髪だからいいとして、刹那は紛うことなき日本人だ。母親がフィンランドとのクォーターとのことだから、少しばかり顔立ちも『純正』とは言い難いが……似合わぬものではない。

 

ただ遠坂刹那だとは、既知の人間でも一発ではわからないかもしれない。

 

そんな感想をB組一同から告げられた刹那は、『そっかー』と苦笑しながら、金色の髪を少しだけ掻くのだった。

 

どちらも蒼色の『騎士風衣装』。どことなく幻想の時代を想わせるものは、中世騎士道映画(ローマンスシネマ)よりも時代が旧いものに思えるのだ。

 

「B組の出し物と言っても、英雄史大戦のトーナメントぐらいだからね。筐体は、ここにはないけど―――気が向いたらば、隠しキャラとしてやってきなさいよ」

 

「悪いな。生徒会の方を優先させてしまって」

 

実際、刹那とリーナの予定ではかなりの多忙を極める。もしかしたらば、隠しキャラとしての参加も無理かもしれない。

 

のだが、英国探偵衣装のエイミィがナイムネを張りながら言ってのける。

 

「気にしなくていいよん。我らB組四天王―――」

 

「変幻自在デッキのゴトウ!!」

 

「ワンダーランドデッキのアカハ!!」

 

「合金デッキのハガネ!!」

 

「探偵デッキのエイミィ!! 以上が一高主催ハロウィンカップを彩るよ?」

 

いきなりな名乗り口上。いつぞやの九大龍王襲撃時を思い出すポーズを決めながらのそれを見て……。

 

「……真似したかったのか?」

 

『『『『ザッツライト』』』』

 

イイ笑顔と共に吐かれる言葉で納得せざるを得なかったのだ。

 

 

―――クラスメイトとの一幕を終えて赴いた生徒会室では、様々な確認事項が集められていた。

 

中条会長による開幕宣言まで少々時間はあるものの、入場者・来場者の列は既に出来ているのだった。

 

列整理の為に風紀委員が動員されている以上、即断することは多いのだ―――。

 

「とりあえず、今の入場者の列に『指名手配犯』や『ブラックリスト』的な人間はいないわ。ソーシャルカメラでも全員がシロとしているもの」

 

オブザーバーとして存在しているエルフかフェアリーの類。魔術師的に言えば『ノルン』か『エルフィン』のような七草先輩の言葉に少しだけホッとしつつ、飛ばしていた翡翠の文鳥……傀儡の類が見た視界の中に、顔見知りの姿を何人か発見する。

 

「日比乃さんと桂木さん達を呼んだのは刹那くん? 達也くん?」

 

なんでその二人しか選択肢が無いのか。と思いつつも、素直に白兜の面頬を上げて自分ですと言っておくのだった。

 

「ひびちかにはいつもお世話になってますからね。こういう時ぐらいは入場者チケットをサービスしたい」

 

「手広いですね」

 

ぼそっ、と的確ではないが、そう見られても仕方ないことを、地黒な肌を活かしてダークエルフ……恐らくピロ○ースを意識した衣装の市原鈴音から言われる。

 

レーベル(電撃文庫)的にはクリスタニアの『シェール』と呼ぶのが正しいですね」

 

心の声にツッコミを入れられつつも、スズ先輩も似合ってますよ。と言っておくのだった。

 

「確認すべきことは色々あるけれども、とりあえず補充人員には期待しているわよ!」

 

「微力ながらやらせてもらいます」

 

「知り合いのウェイトレスがいる以上は、不埒者は取り締まります」

 

この場にいるには、本来ならば似つかわしくないが、それでも、その能力と事に当たる『率先性』が、レオとエリカをこの場に招いていた。

 

風紀委員として、人でごった返す学内の治安維持を行うために、この2人はここにいるのだ。

 

レオの姉貴とやらが、夜なべして作ってくれたというウルトラマンスーツに身を包んだレオ―――。

ウルトラマンレオのはずなのに、ウルトラマンタイガにしか思えないのだ。(必死)

 

「この地球に宇宙人が密かに住んでいることは、あまり知られていない……。

それと同じく不埒者もいるかもしれない。ナンパ目的の男に、あからさまなクレーマー、幼児を目的とした人攫い……」

 

「ウルトラマンタイガとしてトレギア(霧崎)の魔手から皆を守ってくれ。レオ!!」

 

「どんな激励の仕方だよ達也!? そして誰の声帯模写だよ刹那!?」

 

両肩を叩いてレオの緊張を取っておく。今は仮面を着けていないが、仮面を付ければ『兜』の関係上、本当に『タイガ』になるのだ。

 

ちなみに言えば先程の声は、クチの悪い封印礼装を模したものである。

 

怒涛の二連続ツッコミを受けてから、一通りに眼を通すと、とりあえずは事前の予定通りだった。

だが何事にも不測の事態はあるものと思っていると、エリカとリーナが話す声を耳ざとく聞いてしまった。

 

「エリカはプレッシャーとかないのね?」

「まぁ、長いこと達也君という先例を見てきたもの、ここで無駄に緊張したり気負ったらば、合わせる顔がない」

 

ピーターパンみたいな仮装をしたエリカがそう返した以上は、これ以上は余計だ。

 

あまり心配すると『グズる』のが彼女なのだから……。

 

「では中条会長(ビッグボス)。開幕の宣言を―――」

 

部活連会頭たる服部が、ずいっとライターの火でも出すかのように拡声マイクを会長の前に出したことで、全ての準備は整った。

 

音声をオンにする前に咳払いをしてから、声の調子を確かめた。昔ながらの『テステス』という様式美の後に―――。

 

「それでは、魔法科大学附属第一高校主催・季節外れの『灼熱のハロウィン・パーティー』―――開幕でーす♪ 生徒の皆、来場者の皆さん、思いっきり色んなことを楽しんでくださいねー♪」

 

思いっきり『媚び媚び』な声のあーちゃん会長に、人柄を知る者達は『汚れちまった……』と思い、服部会頭など天を仰いで『ジーザス』と言うほどである。

 

そんな自分たちに構わず、パンプキンウイッチを想わせる衣装の会長は、佇まいを正して指示を出してきた。

 

「では皆さん、所定の位置に就いてください。刹那君とリーナさんは、『ゲスト』の方をお願いしますね」

 

言われていた通りだが、改めて言われて責任は重大であることを再認識する。

 

とはいえ……殆どが顔見知りってのは、自分の顔が広いのか、それとも魔法師のコミュニティが狭いのか、少しだけ考えてしまうのだった。

 

「とりあえず―――探れる人間から当たっていきますか」

 

道案内(ガイド)が必要なヒトもいるかしら?」

 

「九亜たちも『連れられて来ている』そうだからな。会いに行かなきゃ、薄情だろ?」

 

「ソレもソウね」

 

まるで長年連れ添った夫婦のように、阿吽のやり取りをする『姫騎士』と『仮面の騎士』。

 

それに続く形で、御使いのような羽とか付いて白い衣装(防寒対策済み)の『天使』と『悪魔』か『魔人』のような存在を想わせる黒のボディスーツ姿が出て、最後に女体化ピーターパン(ティンカー・ベル涙目)と『光の巨人(新世代)』が出ていこうとしたのに待ったをかける、風紀委員長『千代田 花音』の声が響く。

 

「とりあえず待て(ステイ)。男子、あんたらは面を隠さずに歩け。絶対に苦情が来る」

 

海賊姿の風紀委員長の、未来を見据えた言葉に素直に従う。

 

まぁ確かに横にいるのが美少女で、隣りにいるのが面相が定かではない存在では、そうなるだろう。

 

「ああ、そうだ。多分、この中では面が知れているのは刹那君だけだろうけど、頼みたいことがあるの」

 

『『『?』』』

 

出ていこうとする寸前に、七草先輩が頼み事をしてきた。

 

その言葉の意味を正確に知るには、来年度にならなければいけないのだが、少しだけ早い出会いが一つの運命(Fate)を変えることになるとは、知るわけがなかった。

 

リボンを着けた少女と短髪の少女。双子の少女を見つけたらば一報よろしく。そういうことだった。

 

生徒会室から出て達也から一言。

 

「例の『双子』か?」

 

「なんじゃないの? 別に来たいならば、勝手にさせりゃいいんだろうに」

 

だが、分からなくもない。特に短髪の方は喧嘩っ早い『小エリカ』とでも言うべき人間で、『制御』に難ありだからだ。

 

「七草先輩の妹ってどんな子?」

 

「良くも悪くも、双子の典型だ。一方は大人しいというか、楚々としているんだが、一方は活発というか喧嘩っ早いかぎりだ」

 

「お前にとっての双子の典型(テンプレート)って……」

 

エリカの質問に答えると、レオは少しばかり引いた様子である。

 

だが、そういう双子しか見てきていないのだ。双子というのは魔術世界では『鏡合わせの同一存在』と言える。

 

ゆえに片方がそういうパーソナリティだとしても、もう片方の形質を持っていないわけではないのだ。

 

つまりは、『共鳴』し合うものだ。都市伝説ですら、双子はどれだけ離れた遠き地にいても、互いの近況を認識出来るとすら言われてきた。

 

それは、同時に魔力の質や深度にも影響を及ぼす。

 

「まぁともあれ、お互いに頑張ろうぜ。特にレオと達也には八面六臂に動いてもらったからな。俺の方で出来ることはやってやるさ」

 

「ピザ窯を作らされるとは思っていなかったが、まぁ左官仕事のことが役に立ったかな」

 

「旨い中華ピザを頼むぞ」

 

念押しするように言う達也に対して、安心させるように準備は九割済んでいると言っておく。

 

そんな他愛ない会話を繰り返しているうちに、校舎から出て『CARNIVAL』の会場に繰り出す。

 

仕事も重要だが、自分たちも楽しまなければ損というものだ。カーニバル・ファンタズムの大地が、そこに出来上がっていた。

 

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