魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

200 / 414
とりあえず投稿した話数としては記念すべき200話到達。

なのに対して話は進んでいないという、このジレンマを抱えつつ新話お送りします。


第181話『カーニバル・ファンタズムⅡ』

 

久々にやってきたかつての学び舎は、以前と変わらぬ所もあれば、そうでない所もちらほら見つけて少しだけ寂しいところもあった。

 

だが、本当の意味で愛着があったかと言えば微妙なところで、すぐにそんな気持ちも霧散する。

 

魔法に習熟することに楽しさがあれば―――そうだったが、まぁそういうことだ。

 

かつての義父に案内されて、義兄だった人の墓に花を供えておいた。

 

兄の遺骸は一欠片も見つからず、生前に預けられていた遺髪だけを収められた墓。少しの悲しさもあった。

 

世間ではYOKOHAMAマジック・ウォーズと言われた戦いに、兄は敵として、後輩や同級の前に現れたのだろう。

 

「枕元に立たれるとは想わなかったよ。ハジメ義兄さん……」

 

青空を見上げて吐いた言葉で決別を終える。

かつての後輩や同輩たちを見ながら、あれから連絡が取れない目的の人物に会いに行こうとしたのだが―――。

 

「浅野先輩ならば、向こうにいますよ」

 

「まさか君に、『いの一番』に気づかれるとはなぁ……」

 

「『存在認識』を薄くする技能を使っていたんでしょうが、あなたと同じく俺も眼が特殊なもんで」

 

いたずら小僧のイタズラのネタを披露するかのような、遠坂刹那の様子に苦笑してしまう。

 

「お久しぶりです司先輩」「オカエリナサトですね」

 

二人の後輩から握手を求められて素直に応じる。一度だけの『帰郷』。どうせすぐさま帰るつもりだった。真澄の様子を見て安心すれば、日陰の女ならぬ日陰の男として……。

 

などと言うと騎士姿の2人は、少しだけ意見があるようだ。

 

「安心できなかったらどうするんですか?」

 

「中々に鋭いツッコミ……けれど俺たち別れたんだし、未練がましく構っているのも、アレなんだよ?」

 

「そう言われると俺には何も言えない……」

 

「オンナの心残りをカイショウするのも男の務め!!」

 

横浜事変前夜とも言える時に、雫をフッた刹那が言えた道理ではなかったので、結局のところリーナの言葉で叱咤された司先輩は、気付いて少しばかり遠くの木で、日陰の女よろしく見ていた浅野先輩に近づいていく。

 

遠目ではあるが、何だか久しぶりに初々しいカップルを見て、ヘンな気分になる。

 

「ったく男二人してナサケナイ! どう考えてもマスミ先輩は、ツカサ先輩に来てほしかったに決まっているでしょうに!」

 

「サーセン。けどさ、中々にデリケートな問題だよ?

お互いを想い合うからこそ、ヘンに気遣う…『経験』あるだろ?」

 

その言葉を受けて、詰まるリーナ。正式に付き合う前の十日間の『ケンカ』。

未だにその記録が破られていないのは、離れすぎていることがイヤだからだ。

 

ケンカをして取り返しのつかないことになるのが嫌だからだ。それは―――お互いにお互いを必要としている証だったから。

離れすぎてしまえば、またもや……。

 

「窓枠ごと施設の壁をぶっ壊しかねないからな」

「そういえばそうだったわネ―……。あの時からワタシの心はアナタのもの。アナタの心はワタシのものだもの」

 

あからさまに達也と深雪のような抱擁のシーンを見たわけではないが、お互いの服の袖をつまみ合う行為からの『約束繋ぎ』をみた学外の人々は、色々と甘ったるく感じてしまう。

 

しかし、魔法科高校の人間たちと違って砂糖は吐かない。

 

『これぐらいは』という意識なのだろうが、自分たち以上のバカップルがいますよ。という無言での警告が意味を成さないだろう。

今もウルトラマンタイガの仮装をしたレオに寄りつく多くの児童たちを見ながらも、次なる客……『芸人』的な意味合いでは、『ご見物』たちの中でも一番厄介な人間たちを迎え入れる。

 

放出される存在感を隠しも無いバランスの破壊者。正面にいた銀髪が声を掛けてくる。

 

「―――横浜では随分と『ご活躍』だったみたいね。とはいえ、元気そうで何よりだわ」

「―――そちらも『ドイツ』での発表会は盛況だったようで」

 

巨漢のバトラー……正体はカゲトラと同じくサーヴァントの存在を引き連れて、他にも九人の超絶の術者たちを連れてやってきたのは、九校戦以来……不気味な沈黙を続けていたイリヤ・リズと九大竜王であった……。

 

聖骸布のコートを纏ってエミヤの証を見せつけてくる、異なる可能性の『義姉』(あね)に対して緊張が隠せない。

 

『何か言いたいことがあるならば、言いなさいな。どうせカツトが、すぐ迎えに来るんだから』

 

遮音を張った上で、九校戦の時と同じく『崩壊言語』で受け答えする。

 

ミス・化野と化かし合いをやってきた先生の心を持とうと必死になりつつ……。

 

『アンタだな。浅野先輩に『神霊』の術式のことを教えたのは?』

 

『彼女と面識はないんだけど?』

 

『ああ。それでもアレコレと『誘導』することで、その結論や理論を手に入れさせることは出来るはずだ。

実際、達也が関係者を使って調べさせた限りでは、ホームコンピューター。その中でもあの人の端末にその『痕跡』はあったそうだからな』

 

全ての事が起こる前。浅野がこの広場で捕まったことを契機に、達也は独自に調査をしていた。

実際、司先輩の警告や理解できない単語もあったことで、警戒を最大級に高めた達也の先手打ちで、『魔法師』には意味不明な『魔法陣』や『暗号理論』。『抽象絵画にも似たそれ』の『断片』が、コンピューターから復元できた。

 

『私としては、あんな『小物』が、ハートレスと同じことを出来るなんては思ってはいないわ。

けれどね。何かしらの『足し』になるとは思っていたわ。

第一、彼女が望んでいたのは、自分が好きになった男子との幸せな世界……その為には魔法師―――否、全てのソーサラス・アデプトが平等な『基盤』が必要だっただけ―――まさか大亜のスパイに仕立て上げられるとは思っていなかったけどね』

 

最終的には、そこが仇となり陥穽となり扇動された浅野は、リズの手駒には成り得なかった。

 

いま、司に涙を拭かれている浅野が求めたのは、自分の愛しいヒトが祝福された世界だった。

 

そして、その心を利用したのが目の前で笑みを浮かべる女ということだ……。

 

『十師族が崩される時は近いわ。私の手には『神霊』に近い『英霊』がいる。そして、エミヤの術式も私の手の中にある。

その気になれば、アルビオンを攻略するだけの戦力も揃いつつある………』

 

『ならばさっさとチェック(詰め)を掛ければいい。そこを躊躇する理由がどこにあるんだ?』

 

己の優位を示して『服従』『屈服』を求めるリズに、どうしても語気が強くならざるを得ない。

 

そうなのだ。そもそも浅野がどうだろうが、リズは既に『ハートレス』と同じことが出来る。

 

敵対する人間はいるかもしれないが、それを駆逐することは可能なはずだ。

 

古式魔法師と現代魔法師との間で『戦争』が起こることは間違いない。

 

一番、神秘領域から縁遠いのが後者なのだから―――『神霊』が成立すれば、神の権能から遠い十師族・二十八家・百家は崩れて、挙句の果てには、全ての人間に『魔法使い』としての道ができるかも知れない。

 

勝ちが見えている戦い―――。なのに……。

 

「……私だって少しは考えるわよ。今『これ』をすれば、多くの人死にが出るって。人間が『まとも』でいられる時なんて、問題解決なんかせずに、ぐずぐずと妥協を模索している時だってことぐらいね」

 

結局、そういうことだ。どうやっても多くの人死にが出た上に、それが『体制』の転換を促すならば、あれもこれもと文句や物言いが入り、『勝利』の仕方にすら『ケチ』が入る。

 

時計塔のロードたちとて、本気で『戦争』を起こしてでも意見を通そうとしないのは、その不毛さを理解しているからだ。

 

だが……。

 

「それでも『時』が来ればやるんだろ? 義姉さん」

「当然」

 

傲岸不遜な笑みとでも言うべきものを向けられて、どうしようもなくなる。

 

決定的な何かを突きつけられた気分だ。姉は古式魔法師、エレメンツなど、『今の世界』から排除されたものたちを助けるために、社会的弱者を守る『セーフティネット』のごとく―――神霊を作り上げようとしているのだ。

 

そのやり方は、その心は……『先生』なのだ。『ウェイバー先生』の心なのだ。グレイ姉さんの言葉を思い出す。

 

『苦悩していました。二重の意味での『正解』『救済』を……『願い』を見せられて、師匠はどうしようもなく懊悩していましたから』

 

だが、それでも―――その『願い』を否定したのは……再臨されようとしている『神』の本当の『願い』を知っていたからだ。

 

「誰もが、つまんない一人の人間として世界に向き合うんだ。

アンタの願いは、止める―――俺が、衛宮士郎の息子である以上、ロード・エルメロイ2世の末弟子だからこそ、決着は着けなきゃならないんだ」

 

偉大なる王の心に、神ではなく、もしかしたらば英雄でもなく、『一個の人間』として『今の時代の世界征服』をしたいとか言う想いを知っていたから、その心を自分も持ちたいのだ。

 

「そう。アナタが止めるならば、止められるならば、それも『運命』なのかもしれないわね」

 

寂しげな言葉と同時に『全ての魔術作用』をお互いに消し去った。

 

その際に、『外』では時間にして十秒程度しか経っていない。こちらの腕を取っていたリーナも『停滞時間』における刹那とリズの会話を聞いていただろうが、全ては聞き取れなかったはずだ。

 

「リズ、遠方からよくやって来てくれたな……」

 

「アナタからの誘いだもの。断るわけにはいかないでしょ?」

 

そんな停滞時間から回復すると、いの一番に駆けつけた十文字先輩に蠱惑的な笑みを浮かべるリズの姿。

 

後ろに垂れている一本のおさげ髪が、意思持つように動く辺り、実際に嬉しくないわけではないのだろう。

 

「あんまり血の繋がりを意識しないんだけど、親族のこういう場面を見ると、ちょっとフクザツ……」

 

「ワタシはキョーコとミスタ・トシカズが一緒にいても、トシカズさんカワイソウだなーって感じたわよ?」

 

「そりゃ響子さんは、紛うことなきサゲ○ン女だからな」

 

正直言えば、かかわり合いになるだけで、男が不運になること確実だ。

 

それと同じ類になるのだろうか、リズは……。

 

今も丸太のような十文字先輩の腕に抱きついた彼女を見たのか、土煙を上げてやってきた真由美を見て、ダメだこりゃと思う。

 

そんな馬鹿話を断ち切るように、リーナは一言だけ問いかけてくる。

 

「いいの?」

 

このまま何もしなくていいのか? そういう問いかけなのは理解していたので、肩を竦めつつ答える。

 

「いま、あの人を攻撃する理由が何一つないんだ。神霊を実在させる『デメリット』が、何処にもないのが悩みどころだ」

 

現代魔法師が必死に開発してきた術式や遺伝子操作してきた成果が『塵芥』になります。なんてのじゃ、何一つ説得力がなさすぎた。

そして各国政府は、いとも簡単に『そちら』に飛びつく。

 

なんせ、今までは血筋や遺伝子操作による演算領域の良し悪しで決まっていた、魔法師としての優劣が覆る。

正しく『世界』がひっくり返るのだ……。

 

だが一つの疑問も残る。それは『礼装』と『神霊』をどう結びつけるかだ。

 

ハートレスこと『化野九郎』は、その為に神への接続機として古銭貨幣を用意していたが、電子マネー払いが常態化した世界で、貨幣経済というものは『無駄』と切り捨てられている。

まぁ貨幣や紙幣を『鋳造印刷』するという手間にも金と労力がかかるならば、それを無駄と言ってのけるのも分かる。

 

省力された『決済単位』の世界で『ヘラクレス』を神霊にする……まだ疑問は多いが……考えても、今は無理そうだ。

 

だが、これだけは言える。

 

ハートレスは最終的には、魔術師社会を『私怨』で『破壊しようとした』が、リズの中にそういったものは無い。

本当に魔法師という人種の万民のために動いているのだから……。

 

止めることが、本当に『いいのか』判断が着かないのだ。

 

「リズお姉さんとの……対決は避けられないのね?」

 

「九校戦の時から分かっていたことだ……火蓋が切られるのが――『キッド―――!!!』――っとっと!」

 

真面目なことを考えて応えていた時に背中に衝撃。飛ぶようにやってきたのは、四葉にて絶賛保護され中(崩し)な美少女。

海神(わたつみ) 四亜が、刹那の背中に乗っていたのだった。

 

「シア!? それに―――」

「私もいるですよ。リーナ」

 

言葉で見ると、海神姉妹たち九人が勢揃いであった。

四亜と九亜以外の人間たちは、あの実験室で見ただけが殆どだったが、所変われば何とやら。皆して見違えた姿になっていた。

 

具体的に言えば―――垢抜けた。『色々な意味』で。

ただし眠そうに細目をしているのが、八亜こと亜八(あや)であることは分かった。そんな彼女もオシャンティーな格好が非常に似合っている。

 

「本当に久しぶりだな。元気なようで何よりだ」

 

「可愛くなったでしょ? キッドの、刹那お兄さんの好みの女の子になるんだから」

 

「期待して待っているよ―――いててて!! ちょっとした冗談だよリーナ」

 

恋人に少しの抗議をしてから、わたつみ達全員に挨拶をしながら頭を撫でておくと、元気そうで何より。交信で探っても大丈夫なようだ。

四葉を全面的に信じきれない己の弱さを恥じながらも、少しだけ嬉しく思う。

 

健康体になり、色々と見違えてきた九人の美少女たちを引き連れているのは、四葉真夜……なわけもなく、恐らく四葉の関係者らしき紫色……深い紫陽花色とでも言うべき髪色をした少女。自分と一つか二つ違いだろう子がいた。

 

冬の装いのままに一礼をしてきた少女は―――。

 

「はじめまして。遠坂様、クドウ様―――私は、『桜井 水波』と言います。以後お見知りおきを」

 

同時に簡素な自己紹介をされるのだった。来歴は薄々は感づいている。第一、この子らの引率をしている時点で四葉の関係者なのは明白だ。

 

「ご丁寧にどうも桜井さん。遠坂刹那です」

「アンジェリーナ・クドウ・シールズよ。よろしくミナミ」

 

海神たちと同じく年齢が正確にはわからないので、そんな当たり障りの無い返答で返しておく。のだが……

 

(なんかこの子、俺を睨んでいないか?)

 

あからさまな敵意というわけではないが、何とも居心地悪い視線を浴びる刹那に対して、背中に引っ付いたまま首に手を回してきた四亜が告げてくる。

 

「水波姉さんは、こわいお兄さん、じゃなくて達也お兄さんの代わりに、深雪お姉さんのガーディアンになる予定だったから」

「それで俺を睨む理由になるのか?」

 

三編みおさげ二つが少しだけ首筋にくすぐったい四亜の言葉にさらなる宣言。桜井水波からである。

 

「多くの方から『色々』と聞いております。達也様の胃袋を掌握して、その全てを牛耳ろうとしている超料理人。

しかしながら、作る料理は常に最高の最頂点―――悪魔の料理人、ドラゴンも股から捌くという『ドラまたのセツナ』と」

 

「ダウト!!!」

 

「というかダレよ!? そんなフェイクニュース(風評被害)流しているのは!?」

 

「『色々な方』です。ともあれ、奥様曰く、私に『こちら』を受験する可能性も示されたので、まぁ学校見学でもありますので、宜しくおねがいします」

 

よろしくお願いされたくない限り。にっこりと笑顔で言うも、刹那として警戒心はマックスである。

 

だが、これには水波なりのプライドの問題もあった。

 

完璧・完全に身の回りの世話をこなすために、『時代錯誤』なハウスキーパーとしての教育を施されてきた水波は、桜シリーズの魔法師としての意識より、己はメイド。という意識が強い。

 

『クックック、ご奉仕の道は―――キビシーのだ!!』

 

そんな言葉を胸に育てられてきた水波にとって、つい先日、四葉の本家に帰ってきた達也に振る舞った料理。

 

渾身の出来、奥様もあれこれと食材を取り寄せた結果、作り上げたものを前に―――達也の言葉とは裏腹の満足していない様子を見て、確信。

四葉直系の深雪、黒羽の若君、姫君の言葉で脅威度を上げた。

 

達也様の胃袋の領土は既に遠坂色(赤色)に染め上げられており、赤色帝国も同然なのだと(間違い)

 

「そういうわけで、今日振る舞われるという中華ピザを楽しみn「あら? 随分と可愛らしい子が一杯ね。どうしたのこの子たち?」―――」

 

そんな水波の意気込みを挫くように、再びの闖入者。

 

刹那がその言葉に気付いて、見るとそこには、いつもならばインモラル極まる格好をしている養護教諭の姿ではなく……大人しい格好をして『旦那さん』と連れ添っている安宿(あすか)先生の姿が。そして足を遮蔽にして隠れている男子の姿を確認。

 

「どうも、とりあえず定形に則り、『トリック・オア・トリート』」

 

「ほら『リョウ』。ちゃんと答えないとお菓子もらえないわよ?」

 

「う、うん。トリート、お菓子ほしいです。せつなお兄さん」

 

「なんか今日は元気ないな? 大丈夫?」

 

いつもならば、まだ小学生男子という年齢らしく、刹那にも元気よく『魔法を教えて下さい!! マギレンジャーみたいなものを!!』と言ってきているのに。

 

「ゲンキが無い―――というよりも『照れちゃってる』んじゃないかしら?」

 

安宿先生の足元に隠れている安宿 了……『呼び名』だけならば『デビルマン』の重要キャラ(親友)と同じ彼は、多くの女の子。同年代の子とは違うものを見て照れていたようだ。

 

リーナの核心を突いた言葉に、更に隠れてしまう了くんに苦笑。

 

だが、今まではリーナや深雪を見ていても何も感じなかったというのに、本命は……。

 

目線を追うと海神三亜(みあ)にたどり着く。ミアはそんな視線を理解してか、リョウくんに目線を合わせて、ニコニコといくらか話してから、手を差し出して安宿先生の足から出すのだった。

 

「良かったわねーリョウ。キレイなお姉ちゃんと手をつないでもらって」

 

「お、お母さん……」

 

「お姉ちゃん。一高初めてだから、了くんに案内してもらいたいかな? いっしょにいこっ?」

 

安宿 怜美のからかいの言葉に、不貞腐れたリョウをフォローする三亜。男を立てつつも自分無しではダメにしようとするとんでもない手管。

 

はっきり言おう。三亜の『めちゃモテ委員長』っぷりがスゴすぎる。

正直言えば一高女子の女子力を越えていた。年下とは言え男子を立てる辺り、こやつ只者ではない。

 

「私達の『まとめ役』をやっていたから。ってわけではないけどミアは、中学の男子相手でも『あんな感じ』なのよ」

「ミアは魔性の女に「進化」する可能性大なのですっ」

 

シアとココアの辛辣な評価に、リョウに見えぬところで夜叉の形相で睨みつけるミア。

 

震えて刹那とリーナに抱きつくシアとココアに苦笑。

 

「深いところは言わないでおくが、今は息子の男気と、ミアちゃんの女気に期待しておいたほうが無難かな?」

 

安宿先生の年齢にしては少し歳が上かな? と想われる男性。

 

何でも寿和さんのかつての上司で、警察庁のキャリアの安宿 白玖太郎(ハクタロウ)氏は眼を細めながら息子の成長を嬉しく思っているようだ。

 

「まぁ俺にも似た経験はありますからね……何とも言えません」

 

「そっか。何かあれば『分かる』からね。サトミ、僕たちも少し出店とか見に行こっか?」

 

「ハクタロウさん……はい。着いていきます♪」

 

噂に聞く『眠りのハクタロウ』なる男と、その妻たるサトミ先生は夫婦そろってどっかに行くのだった。

 

「ミア一人では心配!」「私達もいこうっか〜」「GOなのだー!!」

 

九人それぞれで個性あふれすぎな『わたつみちゃん』たち、大人になれば『わたつみさん』としてブレイク(?)しちゃうんだろうな。

 

「で、キミはどうするんだ?」

 

そんな九人を見送ってから一人残された引率役の桜井水波は……。

 

「みんなして私を置いていって寂しい限りですね。達也様と深雪様に挨拶してから適当に見て回ろうかと思います」

 

一度だけ『妹分』が離れていったことに寂しそうな顔をしたが、持ち直してそんなことを言うが、リーナはそれに意見する。

 

「声掛けられると思うわよ? というかカクジツよね?」

 

見目麗しい美少女。どうにも四葉の魔法師というのは『隠す』ということをしない。

 

せめて隠れるというならば、野暮な格好をして偽装をすることも必要なのだ。

 

生物にとって擬態というのは生き残るための手段―――ということを……桜井に気付いたのか駆け寄ってきた『魔王』と『女神』姿の兄妹ともども少し説教してやりたい気分ながらも―――祭はまだまだ始まったばかりなのだ。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。