魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
だというのに、朝っぱらから眼鏡をぶっ壊す失態(涙)。
一応、予備の少し度が弱めのものがあったのですが、なんかダメそうなのですぐさま瞬間接着剤で直しました。(フレーム部分が真ん中から折れただけ)
2019年最後の厄がこれですぐに払ったならば、来年はいい年になると思いたい。今日、このごろ。
本年も、今作を何卒よろしくお願いします。
「何でだろうな。初めて訪れたはずなのに、『二週間』ぐらい通ったような経験があるように感じる……」
「既視感って恐ろしいですね。ちなみにいえば私もです。更に言えばその時に、セルナとアンジェリーナが同棲していることを知った気がします。」
二人して何を言っているのやらと同行者たちは思うも、何故かそれはそれで正しいように思えるのだった。
わざわざ休日に魔法科高校の制服を、しかも遠くの土地で着る必要も無かろうと私服で出てきた金沢の三高の面子は、その容姿の良さから来賓だけでなく一高の面子からも注目を浴びる。
「さてと、司波さんに挨拶して、デートに誘って、よし完璧だな!」
「穴だらけだよ。忍城攻めの石田堤ぐらい」
「ふふふ。ガーネットは『歌劇の匂いがする』と言って先行しちゃいましたが、その分私はセルナを誘ってデートに勤しみますか」
「どうやったらば、そんな計画が立てられるんだよ」
二人の『イチ』にツッコミを入れた吉祥寺としては、それにしてもここまで大規模なものになるとは思っていなかった。
魔法科高校。非魔法師の人々からは魔法大学附属と呼ばれるところは、若干の気取りがあるというのが大まかな評価だ。
それゆえ、こうしたイベントがあっても客入りなど然程ではないと思っていたのだが、ご覧の通りなのだ。
一色たち女子陣は、一高でも目立つグループたる達也組の面子がそういった交流があるという風に言ってきたが、彼らだけだろうと思っていた所にこれだ。
変革を求める心を発信して、魔法師全ての栄達を促し、その上で魔法師・非魔法師に関わらず多くの人を惹き付ける……時代の生んだ快男児。
司馬遼太郎著の『竜馬がゆく』における坂本龍馬像のごとく、彼にはしがらみが無い。精々、USNA所属の魔法師というところだろうか。
別に
立場が自由。己で立脚した男だからこそ、彼に多くの人間は魅せられてしまうのかもしれない。
つくづく―――『危険な男』だ。一条将輝を魔法師界のプリンス、グランドマスターにしようとしている吉祥寺からすれば、目の上のたんこぶなのだ。
「少しだけ時間が遅かったけれども、どうやら刹那くんのピザ焼きには間に合いそうだね」
「TRPGでいえばアヤツの
「ルーンクッキングファイター」
色々混ざり過ぎな刹那の現状。ともあれ既知の人間とか様々な名士からの挨拶を場にそぐわないくらい受けてから―――二人を探そうとした時である。
横合いからハロウィンということを抜いたとしても面白おかしい集団が、三高1年集団の前を横切ろうとしていた。
「この弟子七号こと『せっちゃん』が一高に入学した暁には、このタイガーオブハートの名に懸けて、全てのトラブルシュートを行いますよ!!」
「そこは『なっちゃん』でよくね? 弟子ゼロ号で『ぜっちゃん』と同じベクトルにせんでも……なんでこんなことを知っているんだか……本当に
「私が来年度の総代となれば、つまりお姉さまとは総代姉妹という絆色、ココロとココロ、繋がり合うわけですね。決めました! 新年度の入学総代に 私はなる!!」
「え、ええええー………」
若干だが引き気味の深雪。海賊王におれはなる!! と言わんばかりの宣言を受けてはそうならざるをえまい。
「クエックエッ」
「キューキュー」
「ギエピー!!」
そんな深雪を見て「ぽてぽて」という擬音が似合う歩行をするペンギン軍団が、『姉御がんばって』とでも言わんばかりに嘶きを上げる。
ハロウィンとはいえ色々とイロモノ極まる集団が、三高勢の前に現れた。
仮面の騎士にペンギンパーカーの少女。
そしてその二人に連れそうように、中学生だろう女の子2人が付いて回る。
いきなりな集団だが、しかしその集団に何故か見覚えがあるような気がした。仮面の騎士は素顔を見せず面頬を下げている。
ペンギンパーカーの少女は詳細には見えないが、大きめのサングラスを掛けて、青みかかった紫色の髪をしている。
仮装と言えば仮装だが……少ししか見えない顔立ちに、将輝は『ドクン』と心臓が高鳴るのを隠せなかった。
気づいた二人。素性を明らかにすれば面倒な上に、更に言えば
こんな時に限って面倒な連中に会ってしまった。と深雪とシンクロした結論を出していたのだが―――。
「セルナァアアアア!!! 会いたかったですわ―!!」
「なんか既視感ありすぎる! というか何で分かった!?」
コスプレ衣装ではあるが、アーサー・ペンドラゴンのブレストプレートに飛び込んできた一色愛梨を受け止めざるを得なかった。
「アナタの前では一色家の令嬢でも、ブラダマンテの騎士でもなく、ただ一人の乙女になれるこの瞬間が……大好き♪」
「分かった。分かったから離れてくれ。人の目もあるところで、これはちょっと……」
「リーナに言いつけましょうか?」
「おっまえね……」
ニッコリ笑顔でいいもん見たわ―。と画像つきのメールを送信しようとした深雪。だが、そのげんなりした顔の
「もしかして司波さんなんですか!?」
「―――」
しまった。と言わんばかりに将輝からの指摘に動揺する深雪。別に拙い
ただ、声帯の変化はある種の変声機のように複雑にならざるを得ないので、そこだけは本人に任せた。
だが、そこに気づいて声音を変えても変わらぬ『音程』やイントネーション、地域による訛り、親の出身地による方言の一般言語化……そういったものに気付いたのが将輝ということだ。
そもそも、声というものは声帯だけでなく『頭蓋骨』の形でも震える声が違ってくるのだ。他人・他国人に成りすますには、声というものは優秀な諜報員でもなければ、そうそう変えられないものと言える。
「お久しぶりですね。一条さん。息災のようで何よりです」
すぐさま取り繕って、そんな挨拶をするも……着ているものがペンギンパーカーでは締まらない限りである。
「司波さんも、変わらず美しくて、俺は心の底から嬉しいです。それにしても―――なんで刹那なんかと一緒で?」
なんかってどういう意味だ。と憤慨して言ってやりたくはあったのだが、将輝君の恋心を分かっているだけに、そいつは野暮だった。
「まぁ色々ありまして、このペンギンパーカーのことを分かっている人間に相談していたんですよ。先程までは『こんな衣装』で通していたんですけどね」
「是非、こちらに着替え直してほしいぐらいですが、司波さんがそのペンギンパーカーを気に入っている以上は、俺がそんなことを言うのは野暮でしょうね」
意外なことに、将輝はその衣装の真意を理解していたようだ。こういったマメな点が深雪の中でポイントとして積み重なれば、恋も上手くいくと思うのだが……。
ともあれ何かで撮ったらしき深雪の『ああっ女神さまっ』な衣装を見た『将輝くんに女神の祝福を』と願うも、少しばかり深雪は苦笑い。
(どうにも深雪と将輝は噛み合わないわけではないのだが……こういった歯の浮くようなセリフとまではいかずとも、褒め称えた言葉を苦手にしているよな)
下心があるのは分かりきっているがゆえとも言い切れないが、何というか―――合わない二人である。
後で易でも立ててみるかと思うも、そもそも深雪が『水気』で将輝が『火気』であることは明らかであり、魔法の相性の悪さがそのまま性格の不一致とまではいかずとも、合わせられない様子だ。
「それにしても、これが魔術衣になるとはな。刹那作か?」
「深雪曰く、かなり怪しい縫製データをインストールしたらば、こんな風になったらしいぞ。第一、これは俺の美意識に反する」
作るんだとしたらばリヴァイアサンよりも、女神イシュタルやアシュタレトをイメージした衣装を作りたいものだ。
そんな刹那の内心はともかくとして、三高の面子と出会った以上は、係員として色々と案内せねばならないなと思うのだが……。
「刹那先輩! あれって先輩が九校戦で『2タテ』したクリムゾン・プリンスの一条将輝さんだよね? 何か……強そうに見えないな―」
「まさかお姉さまの貞操を狙っているのが、ロードではなく一条の方だとは―――不潔ですね」
グサッグサッ! と心無い二言で一条くんを串刺しの刑に処する双子に苦笑してしまう。
決してプリンス=一条将輝は弱いわけではないのだが、考えてみるに、刹那との魔術の競い合いでは、どうやっても相性の悪さが目立った。
そして、達也との相性は―――最悪だった。
呼吸・間合い・『気』の使い様……全てが将輝にとっての退気となりえるのだった。
そんなことはともかくとして、双子のあんまりな言葉に彼の名誉回復を行うことにする。
「確かに俺は将輝相手に
「「―――おっぱいお預けはイヤだった?」」
「思い出させんなっ!!!」
赤くなりながら聞くぐらいならば言わないようにと双子を窘めつつ、そんな思い出もあったのだと、刹那も赤くなっていたのだが……。
「私はいつでもいいですよ。セルナ、戦いに疲れた殿方を癒やすものは、女の柔らかな身体と声だと分かっておりますから」
「ちょいちょい! アイリ、近い近い!! 吐息を耳に当てない!!」
そんな刹那のセクシャルな状態を加速するエクレールの電撃的なスキンシップに、双子の生ゴミを見るような視線が突き刺さる。
「お姉ちゃんから聞いていたとはいえ……」
「女性にだらしないですね。刹那先輩」
その言葉を同じく自分の父親に言ってみろと言いたいのだが、言えば本格的に七草家の家庭崩壊とかありえるので―――言わないでおく。
その辺りは弁えている男なのだ。
「それよりも遠坂! レオンハルトはどこじゃ!? 愛梨ほどではないが、わしとて一日千秋の思いで焦がれていたのだから……」
「レオならば―――あそこに」
衣装合わせが終わったらしく風紀委員としての活動に戻った顔見知りの姿を確認。
その隣には……深雪に勝るとも劣らぬ美少女の姿が―――。
「いや、アレはウルトラマンタイガじゃろ。ウルトラマンレオをやるのが名前的に筋ではないかの?」
「そういう判断!? レオ! 宇佐美さん!! 悪いがCome on!!」
魔力のパルスを伴う声でレオと宇佐美さんに気付いてもらった。仮面を上げて素顔を晒したゲルマン民族の特徴を持った顔が出て。
「三高の皆さんじゃないか。ようこそ一高主催灼熱のハロ『西城――――!! この浮気者―――!!』どういうこと!?」
気楽に手を上げて快活な笑みを浮かべての挨拶。
好漢としての好感を持たせるそれを中断させられたのは、胸に飛び込んできたというよりもタックルを仕掛けた沓子を受け止めざるを得なかったからだ。
「まぁ場面的にはそうとしか見えないよね……西城君の彼女?」
「今日が初対面のはずなんだが、どうにも相手の方が結構熱烈にアタックを掛けているんだ。女子は分かっていると思うけど、ひびちかの学校の同級生だ」
その言葉で、愛梨と栞は納得したようだ。問を発した吉祥寺は『顔が広いなぁ』と、呆れているんだか感心しているんだか分からぬ感想を述べてきた。
そうしていると、どこからか聞きつけてきたのだろうリーナが、怒号の勢いでやって来た。こちらも衣装合わせは終わったのだろう。
「こんの泥棒猫―――!! Don't touch Steady!!」
私の恋人に触れるなと強い英語で言いながら、刹那の首に巻き付く愛梨を引き剥がそうとする。
「フフフ、鬼女のいないうちにセルナの身も心も奪い尽くすこの計画を―――止めることは出来ないのですよ!! エクレール・アイリの冒険Ⅰは始まったばかり!!」
「そんなイカガワシイ冒険の書は
「ちなみにアンジェリーナ、『おにおんな』とは
「ダレがそんなカンチガイするもんですか!! バカにしてぇ!!」
左腕と右腕とを取り合って刹那を境に睨み合う金髪美女二人に、衆目の注目が集まる。
痴情の縺れだと想われている。(事実)これは正直言ってマズイとは思うのだが、こんな時に限って助け船は入るものだ。
ああ、待ち望んでいた。この時を―――。このカオス極まり収拾がつかない場面を整える最強のトラブルシューターが!
魔法科高校の若き王者が帰ってきたッ!
どこへ行っていたンだッ チャンピオンッッ!
「「「シバ・タツヤの登場だ――――ッッ!!」」」
「俺にマッスルポーズを強要するようなナレーションと掛け声を出すな。ほれ、ペンイチ、ペンジロウ、ペンゾウ。ご所望の生魚だ。イワシですまないが」
『『『キューキュー』』』
何かのアイスショーよろしくバケツ一杯の生魚を放り投げる度に、飛び立ち空中で丸呑みするペンギンたち。
角度を着けた飛び立ちを見せたり、深雪の周囲で歩きまわりながらのアイスダンス。更に言えばどうやって飛んでいるのか―――どうやら虚空に『水場』を作って、そこを泳ぐことで飛んでいるように見せていた。
人間様方の醜い争いを浄化してくれるリヴァイアサンの眷族たちに申し訳ない思いだ。
周囲にいる人々が、拍手喝采を上げる。
少しの収拾は着いたのだが、どうにも落ち着く時間が必要だ。
何より―――。
「刹那、そろそろ時間じゃないかな? 三高のみんなも旧知の人間と会えて嬉しいのは分かるが、色々と刹那が立て込んでいるんだ。分別着けて落ち着いてくれ」
「むっ。お前からそんな風に言われると、何か裏を感じるぞ」
「一条さん」
顔を膨れさせて一条に抗議する深雪。万に一つでも上手く行けば義兄になるだろう相手に、辛辣すぎた。
少し違うが、タッチの新田明夫も上杉達也に恋慕を抱く妹がいたとしても、バッターボックスでは容赦無しのライバルだったのだ。
(美月の絵画に影響され過ぎだな……)
そんなことを考えてしまうぐらいに、妙な関係性が見えてくるのだった。
どうでもいいけど。
「十文字先輩も銀と黒に引っ付かれながらも、竈に火を入れている頃合いだろう。
行かなきゃマズイんじゃないか?」
「ん。そうだな……と言いながらお前が食いたいだけか」
「俺を理解してくれて何よりだ。流石は俺の亭主役。いい
無理矢理過ぎるルビ振りではあるが、どうやら達也も美月の絵画を見ていたようで、肩を組みながら言われて気持ちを切り替える。
「それじゃお集まりの皆さん!! まもなく特設ステージ一番の方で、第一高校有志一同による竈を使ったピザの実食会を行いますので、お腹に余裕がある方。そうでなくても興味ある方は、じゃんじゃんやって来てくださいね―――!!」
『『『私達が会場で待ってまーす♪♪♪』』』
『『『
キャンギャルよろしく横ピースとかでアピってくれた三高勢含めてのガールズのナイスなPR。
そして、一瞬にしてウルトラマンをやっていたレオはともかくとして、
そして達也に急かされる形で大調理場に急ぐ刹那の姿を見た全ての人間たちは、こう思った……。
まるで、『ハーメルンの笛吹き男』のようだと……刹那を先頭に多くの人間がぞろぞろと着いていくさまを、そう評するのだった。