魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~ 作:無淵玄白
ああ、この声をまたもや聞くことになるとは。
今さらながら眼鏡神の同人誌がようやく届いたが、アンタの身体には復元呪詛でもかかっているのか?(爆)
やはりシエルばかりを描いていたから呪いのビデオよろしく秩序回復の作用が原稿を通して(マテ)
そんなこんなで遅れて申し訳ありませんでした。新話お送りします。
十文字克人のバリトンボイスで唄われるカバーソングが、しとやかにそれでいて耳に残る声が全員に沁み渡る。
というか、達也が評した巌のような様子とかは、自分はこの男の擬態なのではないかと思うほどだ。
よく考えてみれば、この人のフェロメンボイスは、色んな声音を使い分けるのだった。
だが、元・会頭、否……十文字克人よ。なんでその曲なんだ!? なんでそのメドレーなんだい!? いや、観客は大喜びだが、こんな先輩は少しだけ見たくなかったが―――。
「それは勝手なイメージの押し付けなんだろうな……」
「まさか克人さんが、こんな人だとはなぁ……」
刹那の隣りにいた三高の将輝のように巌のような人だ、などと思っていた連中は全員、土下座すべきである。(魔法科生徒の約九割)
「ふたつのむねの〜〜ふくらみは〜〜! なんでもできる しょうこなの〜!」
俺たちの心に忍び込みっぱなしの、『魔法っ子カッちゃん』は、本当にシャランラすぎる(支離滅裂)
そして、そんな克人先輩の歌唱に完全に合わせて弾き語っている二人の女子は、本当に凄すぎた。
ララベルの曲までをメドレーで繋げた十文字克人だが、ここで終わりではない。
拍手喝采ながらも、それだけではない。曲の転調のように舞台演出が変わる。
着ていた服装が、ホログラフで変わっていく。マタドールの衣装に似たきっちりしたものが、克人を闘牛士じみたものに変えた。
ここに来て、どこからか飛んできたマイク型ドローンがリズと真由美の近くに来て、スイッチがオンになる。
『魔法のお兄さんはただ単に魔法少女の曲を歌うだけではない。ここでオレのカッコいいところと後ろのお姉さんたちのボイスを披露しよう―――声優ユニット『フェロ☆メン』の歌から―――曲名『禁忌の薔薇〜Aphorodisiac〜』―――』
先程までの『昔』の曲とは違い、今の世にも通用しそうな転調が特徴的な曲が、観客たちの耳朶を打つ―――。
† † † †
「まさか克人さんが、こんなに歌うたいの素質があったなんてなぁ。ビックリだよ」
「元々、お姉様から様々な場面で披露していたとはお聞きしていました。その美声で同級生たちを魅了していたとはね」
「けれど引っ掛けたい女子がいるわけでもなかった。いやいたんだけど、色々あって深い付き合いが出来なかったのか」
この大歓声の中、観客全員がスタンディングしているというのに双子のJCは、それらをシャットアウトしたように整然と会話を行えている。
ちょっとした『魔法』、双子特有の『交感』を行い脳髄で話し合っているのだ。
発声しているわけではないのだが、それでも口を開く動作をするのは、それが口語を発しているというイメージに重なり確実な会話に繋がる。
元々、双子や三つ子というのは、昔から遠隔地においても一種の『繋がり』を持っているかのように、互いの状況をそれとなく察するという都市伝説はあったのだ。
魔術世界・魔法世界の2つにおいて、それらは一定の解析を行われており、その意味で言えば七草の双子は、かなりの『繋がり』を持っていた。
「イリヤ・リズか、強敵だ……」
「しかしお姉様も気が多いというわけではありませんが、どうやら司波達也先輩とも、それなりに繋がりがあるというか、気にかけているそうですからね」
姉の恋路を邪魔する女を敵視する香澄と違い、冷静な判断を降す泉美。このバランスが双子のノーマルなやり取りなのだ。
「けど克人さんを『お義兄さん』と呼べる未来の方が、ボクはいいと思うけどなぁ」
「克人さんもフラフラしているわけではないんでしょうが、元々のあこがれの人物からアタックを掛けられて満更ではないのが、事態を複雑にしているわけですね」
結論・男も女ももう少ししっかり『立っていろ』。
そういう上から目線の結論を双子は出すのだった。
「泉美、どうやらお姉ちゃんが歌うようだけど……何さそれ?」
「見てわかりませんか香澄ちゃん。これはハッピに団扇にペンライト―――ずばり言えば、アイドルの応援衣装です。
昭和という『遠い時代』のアイドル、『おニャン子クラブ』の時代から受け継がれる応援衣装の中の応援衣装……もはや『ノーブルファンタズム』と言っても過言ではないですね」
香澄としては、鼻を鳴らすように自慢する泉美がそんな格好をするのはいい。
しかし、問題点としては……言いながら推しメンであろう司波深雪だけを応援しようという姿勢だ。
ペンギンパーカーの姿と九校戦のミラージの衣装を団扇の両面にそれぞれデカデカとプリントしたものが、彼女の気持ちを表していた。
「香澄ちゃん。優れたシンガー、ディーヴァを応援したいという気持ちは万国共通。そして私は深雪お姉様を応援したいのです。もちろん真由美お姉様も『義理』として声を挙げますが」
「ええー……」
なんとも真由美にとっては居た堪れない結論。己の半身が出した結論にげんなりとしてしまう香澄。
双子でもここまで違うとは、実は全然似ていないのではないかと思ってしまう。
香澄にとって九校戦(LIVE映像)で見た司波深雪とは、色んな意味で『人外』の存在に思えたのだ。
あそこまでの魔法力を行使するのに、どれだけの訓練と調整を行ったかを何となく理解して、風聞で聞こえる『十師族の落胤』『隠し子』というのも『虚偽』ではないかと思うほどだ。
(まぁどうでもいいんだけどね)
香澄にとって、憧れの存在なんてものはいない。
己が尋常の世人ではない魔法師であるならば、 独立独歩で生きていくべきなのだ。
そんな風に思いながら―――いい芸をやる人間はちゃんと見ていなければいけないと、ステージに集中するのだった。
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「ふっ……繋げたぜ」
「やり遂げた男の顔をしていますけど、すっごい寒かったんですけど」
舞台袖に戻ってきたK'zの片割れ、どっちが松本で稲葉だかは分からないが、とんだバッドコミュニケーションをやり終えた桐原にツッコミを入れるが、彼は言い返してくる。
「バカ野郎! 俺がキレッキレのいい声で歌ってみろ。そんなのまだ『菅沼久義』が
微妙に反論しづらいことを言う桐原先輩だが、まぁ聖獣4匹(?)は、女子向けのコンテンツとして延命したのだから。
何の話だよと思いながらも、まぁいわゆる『次』を盛り上げるための弁当幕とでも言うべき段が、
「まぁ勘弁してやってくれ遠坂。次が『彼女』だから、桐原としては『盛り上げる』よりも、ローテンションからのハイテンションへと持っていくことを選んだんだよ」
そこまでの男意気を、同じく舞台袖に戻ってきた汗だくの杉田先輩から説明されては、これ以上は野暮だった。
そして―――。
『この少女は、知っているものは多かろう。余もアイリと共に様々な映像で見てきた。
剣を執らせれば武芸百般の古強者。その剣技の冴えと同じぐらいのボイスの冴えが、閃光のごとく輝線を刻む!!!現代のソードダンサー!! 「壬生紗耶香」!!!』
と紹介されると同時に、ステージ最奥の地下……奈落からせり出してきた壬生先輩の衣装は、赤ずきんのように赤いフードを目深にかぶった姿だった。
荒野に、突然一人で放り出された行き先知れない剣士……。
飾り気の無い細剣(マイク)を手に中央に進むその姿が段々と変化していく。
ホログラフスーツの変化よりも鮮明な変化に放浪の女剣士は、歌いながら前に顔を向ける。
フードを被り俯き気味に、世界と相対していたその姿の変化と同時に眩しいぐらいのスポットライトが彼女に当たる。
白い女騎士衣装に赤いラインがところどころに入ったその姿が、彼女の決意を示す。
『もっと先に見える希望だけ残した―――傷跡が癒えることはない。最低ナニカ一つ手に入るものがあったら―――それだけで何もいらない――』
魔法師としての栄達とまではいかなくても、自分が魔法科高校において掴めるものを得たい。
歌い上げながら遠くを見るように両手を伸ばす壬生紗耶香の心が響く。
役に酔わず、完全に演じている壬生先輩の舞台度胸はド級だ。
事実、今日に至るまでスパルタのようなダ・ヴィンチのコーチングを受けてきただけはある。
『剣は本来は祭器だ。荒ぶる魂を鎮めるために、人々は『舞』を捧げることを選んだ。菅原道真という怨霊の御霊が学問の神様となり、雷神として都を守護するようになったのは、即ち『反転』『鎮魂』なのさ』
怨念と悪に満ちたその御霊を慰め、鎮めるために、人々は『祭り』を行うことを選んだ。
『祭り』を行うことで善きものとなれば、悪しきものから人々を守る力となる。
日本に古来から根づく『
どのような悪神であっても、そのように人々は願いを込めて奉ってきたのだ。
『君が過去を悔いる気持ちは分かる。未来が無いと押し付けられてきた過去にも同情しよう。
しかし―――『今』は違うだろう?
ここ、一高は既に『祭り』の中心地だ。ここにいることを幸運に思うべきだ。そして刹那が行う改革はまだ道半ば……私もロマニも、この時代を駆け抜けるよ。
ここでキミも―――、乱痴気騒ぎで
(ダ・ヴィンチ先生―――ありがとう……!!)
自分の懺悔を聞いた上で、自分をこのステージにあげてくれた笑顔で語る先生の心が、この上なく紗耶香の心を上昇させる。
そしてその心に応じて衣装に変化してくれていた千鳥という生きる刀は、更に衣装を変化させて―――女騎士から姫騎士へと変化させるかのようだ。
多くのフリルとレースを多く混ぜたその衣装は、神がかったものを見せる。
そういう変化は『予想外』だったが―――それでもその衣装と共に震わせる喉が、呪文のごとく歌声を波及させる。
正しくここから『世界を作る』。創世という大業を為さんとする神の如く世界を作り変えていく……。
『本当の自分を受け入れてくれたあのヒカリを……ah on give for my way……―――』
色眼鏡では見えなかった価値観。間違いだらけの景色のあり方―――あの日々にあったそれらを消さず、それでも前を向いて歩いて行こうという一人の乙女の祈りが、何人かに涙を流させる。
詳しい事情こそ見えない。それでも壬生紗耶香という少女の心に宿ったものをイメージさせるには、十分に『威力ある』ものだったからだ。
壬生紗耶香の両親。特に親父さんも忙しい仕事の合間を縫ってやって来て、娘の晴れ舞台と同時に、彼女の悩みを聞いてやれなかったことに、少しの悲しみと悔いを持ちながら泣いてしまう。
それでも―――娘の晴れ舞台は全て見なければと、涙で歪んだ視界でも見て、そして耳に残していく。
最後のメロディが刻まれる。姫騎士の神姫にも上り詰めかねない魔力の高ぶりが、美として人々の意識を『高次』の世界に持っていく―――。
『―――on give for my way……』
最後の結びのフレーズ……余韻を残すように未来への祈りが刻まれていく。
手を上に差し出す……訴えかけるような仕草のままにスポットライトを浴びる壬生紗耶香の段は―――最高の盛り上がりを見せていた。
止む無く後事を全て託してしまった甲もその歌唱に込められた想いを感じ入り、惜しみない拍手を隣の元カノと共に降り注がせるのだった。
大丈夫です。私達は――――。
その甲に向けられた壬生からの言葉に、『ありがとう』と素直に心の中で感謝を述べた。
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余韻と感謝を伝えたいのか、鳴り止まぬ拍手を見て情熱の皇帝は、更に場を盛り上げていく。
『惜しみない拍手を演者に!! これぞ観劇の妙味!! いい芸には、さらなる賛辞を、手を上げながらも去っていく彼女に大きな拍手を!! アリガトオオッ!! アリガトォ〜〜〜ッ!!』
『サイコーだ~~~~!!!』
『アリガトオオッ!!』
『アリガトォ〜〜〜ッ!!』
盛り上げが巧すぎて完全にネロ様にMCを持っていかれた刹那だが、仕事が無いわけではない。
戻ってきた壬生紗耶香の体調。ランナーズハイという状況から開放された彼女を緩やかに復調させつつ、タイムスケジュールを調整していく。
「んじゃ三高。エレガント・ファイブ頼んだぞ」
無理やりねじ込んだわけではないが、それでも紅白的な感覚で言えば、ここでアイドルユニットでも導入したかった刹那の要望に応えた存在である。
「任せろ。伊達や酔狂でエレガント・ファイブなんて呼ばれている俺達じゃないぜ!!」
親指を立てて自信たっぷりの将輝が意気揚々だが、他は違うようだ。
「僕がそこに入っているのが一番疑問だよ……」
「吉祥寺。そりゃ俺のセリフだぜ」
吉祥寺と中野の少しだけ落ち込んだ言葉に対して、他二人は違う。
「女子も出るんだ。何より西城には負けられないな」
「いい舞台演出。頼みましたよ皆さん」
九校戦での新人戦モノリスチーム。俗な言葉で尚武の三高一年のイケメン五人衆。
エレガント・ファイブの面子が、勢いよく出る準備をしている。
最後の藤宮なんて、平河先輩と和泉先輩を赤面させる魅惑のキラースマイル(死語)なんてやってきていたし。
ともあれ、捩じ込んだ以上は相応の芸を見せてもらう。というかリハで見たものが事実ならば、こいつら普段から何をやっているんだと言いたくなる。
黒赤の衣装。スーツの下に赤シャツだったり黒の上下に赤いネクタイだったり、コンセプトとしては随分とカッコつけたものだ。
心理学で黒は『罪』『恐怖』などをイメージさせ、赤は『情熱』『正義』などをイメージさせる。
その意味で言えば赤がフォーマルカラーの三高は少しばかり変化させてきたということだ。
「スタンバイ大丈夫だね?」
『オッケーです!!』
声を掛けたのは、平河小春であり、どうにもいい男に声を掛けたいだけにしか見えなかったが、ともあれ――――三高エレガント・ファイブ改め……。
『ここで! 第一高校ではなく余も関わりが深い魔法科高校の一つ、金沢の第三高校よりゲストを召喚しよう!!!
いでよ!! イケてるメンズの星に生まれし五人の若人よ!!!
汝らが名は―――
何で『ビートルズ』に対して『ずうとるび』みたいなユニット名にしちゃうかなぁ、と思いながらも本家本元の曲である退廃感とどことなく無常感があるものと共に―――『砂嵐』たちのダンスが、始まる……。
歌詞引用
アニメ『魔女っ子メグちゃん』主題歌『魔女っ子メグちゃん』
アニメ『ソードアート・オンラインII』後期OP『courage』