魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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というわけで後半部分を投稿。

歌詞では、普通に「星天ギャラクシイクロス」なんですが、聞いていると一番目の段では日笠さんと水樹さんが合わせるためなのか「せ」の部分を一度か二度口にしてからなんですよね。

二番目は、普通に合わさる。要は直前の日笠さんパートの最後の母音の問題なんだと解釈。


追記
特殊タグなど追加

本当ならばリーナのパートとカゲトラのパートで色分けしたかったが、目が疲れる可能性も考えて、今はこれにて落ち着けようと思います。

さらに追記

ううむ。いろいろとすまない限りであった。意外と歌詞と連動して聞いていても勘違いしがちなのは―――歌が素晴らしいからだな(苦しい言い訳)


第194話『Carnival Phantasm-Ⅶ』

 身体が高揚する。気持ちが上を向く。

 

 見えぬ魔力の上昇気流に掴まったかのごとく、リーナの全てが高まるのを感じる……。

 

 

『絶望も希望も―――』『抱いて―――』

 

 

『あの頃』のリーナは、正直どうかしていたとも言える。

 祖父『ケン・クドウ』の死去で、ぎくしゃくした両親の姿。同時に、2人から感じた疎外感と隔絶感……敏に気付いてしまったからこそ、リーナは―――歌えなくなってしまっていた。

 

 特別、芸能プロダクションと契約していたわけでもなく、母の付き添いでステージに上っていたリーナは、母が付き添いに来なくなった時から……声を出せなくなっていた。

 

 日常生活に問題は無かったが、ステージで歌うことが出来なくなっていたのだ。

 

 ある種のイップスと診断された時には、何も感じなかった。

 当然だ。

 

 もう―――歌う理由も動機もなくなっていたのだから。

 

 そうなるのは当然だった。

 

 同時に逃げ場を求めた。幸いながらも、それは簡単に見つかった。

 日本の魔法師の名家の血を引き、幼いながらも魔法の才能を見出した軍のスカウトに応じるのだった。

 

 

『『足掻け 命尽きるまで』』

 

 言葉と同時に羽をはためかせる鳥のような動きからランサーとワルツを踊るように、ステージに歩みを刻む。

 

 付かず離れずのダンス―――その時には、観客たちも2人の足元の霧に気付いたが、それがステージ全体を満たす湖水にあると気づくものは少ない。

 

 幻影と思ったか、CGと思ったかは定かではない。

 

 しかし、背後の巨大なスクリーンが二つに割れていること、ちょっとした門扉のように真ん中でわれていることに気づき―――、そちらに注目した観客は、その門扉を両サイドから鏡合わせのようになぞるリーナとランサーを見た。

 

 そして――――『最後のトビラ』が開かれる―――。

 

 その演出は決まり、黄昏に沈む海辺の街が背後に現れた。

 

 見るものが見れば、それは『ボストン』であると気づける。

 

 ステージ上の演出は、先程の比ではないぐらいに目まぐるしい。だが、それを批判する心など誰にもない。

 

 最高の歌い手が、その段取りの中で輝くのは自明の理なのだから。

 

 鏡合わせのように祈りを捧げる乙女2人は水面に佇んでいた。

 

 曲が転調すると同時に2人は再び喉を震わせる。羽を休めることを知らない雲雀のように、二羽の金糸雀は囀りをやめない。

 

 

『『ヒカリと、飛沫のKiss……』』

 

 美少女2人の人差し指を使っての投げキス。決して下品ではないそれが、夕陽をもしたライトの中で映える。

 

 照準をつけるかのような仕草に誰もが息を呑む……。

 

 そして変化は突然現れた。

 

『恋のような―――』『虹のバースディ』

 

 吹き上がる海水のスプラッシュ。リーナとランサーを包み込むような勢いで水の柱がいくつも現れ―――。

 

 ステージに虹の橋が架かる。

 

 同時にリーナの心に虹がかかった日のことを思い出す。

 

 それは唐突にして偶然の出会いだった。偶然は神秘の法則を隠す隠語。

 ならば、その出会いは必然だったのだ。

 

 ボストンのストリートで手助けをしてくれた最初の触れ合い。

 そこから、海が見える場所で何でもない会話をしながら、自分のことを聞いてくれた日々。

 

 軍人としての栄達など、もはやどうでも良くなっていた。本当は―――歌えなくなった自分に対する八つ当たりも同然だったのだから。

 

 それでも軍人としての戦闘訓練で成果を出すことに少しの喜びを感じていた以上に……その虹色のバースディが嬉しかった。

 

(救われたと思っていたのはワタシだけだと思っていたけど、違っていたワネ)

 

 疲れきった求道者。追い求める度に遠ざかる彼の道程は、この世界への逃亡をさせていたのだ。

 

 それを聞いた時から……リーナは刹那という一瞬の輝きを逃さない「星」の傍にいたくなったのだ。

 

 彼に頼りにしてもらいたかった。魔法師としての「本当の目標」が出来た……。

 

『どんな美しき日も…』 『―――何か生まれ』

 

『『何かが死ぬ……』』

 

 刹那の人生は、出会いと別れ。魔導の道だからといって、ここまで過酷になるものかと言わんばかりに、美しき日々に何かを生み出し―――それでも何かを失いながらも突き進んできた。

 

 父を失い、母を失い、多くの人間との別れが刻まれながら、最後には養母との別れが彼をここに導いた。

 

『せめて唄おう―――』

 

『I LOVE YOUー!……』

 

 けれど別れだけを惜しんで自分を、リーナを見てくれない刹那は嫌だった。だから、飛び込んだ。

 

 ―――あなたの人生にワタシを入れてください―――

 

 懐に飛び込んだ時の暖かさと気持ちを思い出す。あの時から、本当の意味での始まりであった。

 

『世界が酷い地獄だとしても……』

 

 その後は苛烈な日々であった。多くの魔道の災害、刹那の世界でなくても目的の為ならば酸鼻極まる外法探求を行う魔法師たちとの戦いの日々。

 時に恐怖を覚えた。どうしようもない絶望を覚えた。

 

 それでも立ち向かうことを止めなかったのは、この世界に縁もゆかりもない刹那が、眼を逸らさずに、逃げ出すことをしなかったからだ。口では逃げたい、ラクしたいと言っても、最後には立ち上がることを選ぶから。

 

 ―――リーナは立ち上がり、マーチを歌い、レクイエムを歌いあげることができたのだ。

 

 水が満たされたステージ上で氷上を滑るようにして舞い踊る一対の翼の女神たちは―――対になる位置で身を反らした。

 

 まるで鳥だ。場違いながらも白鳥を思わせる女神たちは、再びの噴水を演出する。

 

 鏡合わせのダンスをしながら思いを伝えるヴィナスたちは声を張り上げる―――。

 

『せめて――伝えよう―――』

 

『I LOVE YOU―――!!!』

 

 観客(オーディエンス)たちの声も合わさった形でのそれに気分は最高潮。

 

 水上のリンクを滑るリーナとランサーの動きは正しくシンクロしていく。

 

『解放のときは来た―――』

 

 帆を張るように、風を受けたかのように体いっぱいで風を受けるかのような動きが、彼女たちの心も投影する。

 

 そして、風を切って一度だけ飛び立つヴィナスたち。

 

『星降る』『天へと』

 

『『響き飛べ! リバティソング―――』』

 

 水上を回るように移動するリーナとランサー。魔法を使っての移動だろうが、それにしても滑らかに動くそれは、一流のアイススケーターも同然だ。

 

 アクセルを決めながら進んでいく二人の軌跡を追うように水柱が吹き上がる。ステージの演出だ。

 

 水柱の中で何度もターンを決めていく二人は、互いにぶつからずに絶妙な位置取りをしていく

 

 それに誰もが見とれて、そして歓声をあげざるをえない。ここまで見事な観劇に対して、批評を述べることすら忘れてしまうほど。

 

 もはや誰もがステージに注目せざるを得ない。着いては離れるようなコマ回しの終着。

 何度ものターンを決めて静止した二人のヴィナスは、黄昏色に染まる噴水の中―――。

 

 世界を変えた。

 

 手を天空にかざす。振り上げた腕がクロスする。

 ヴィナスたちの指が黄金の劇場の真上を指差した。

 

 瞬間―――。見上げた観客たちの眼が奪われる。

 

『『―――STARDUST―――』』

 満点の銀河(ほしぞら)が創生されていた。

 

 ―――そこから星屑のステラ(流星)が会場全体に降り注ぐ。その演出の美が観客を幻想の世界にいざなう……。

 

 その『異常性』に気づいた人間が数人いた。その数人は―――『恋人の為ならば銀河を作り出すか』と苦笑気味の嘆息をせざるを得なかった。

 

 ステージを満たしていた水面(みなも)にまで『天の川銀河』が投影されていたのだから。

 その海辺から銀河へと変わった水面を、ヴィナスたちは滑走する……。

 

『そして―――奇跡は待つモノじゃなくて―――』

『その手で創るものと―――吼えろ!』

 

 フィッシュテールスカートに赤と青の輝きを映えさせながら、足先でステージに∞の軌跡を刻んでいく。

 

 銀河の全てが彼女たちのステージ。

 

 原始の女神に善悪があるように、彼女たちも両極へとなりて世界に己を刻んでいく。

 

 奇跡の世界に軌跡を刻みながらも、観客たちとの一体感を求めて、リーナは拳を振り上げてヒートアップさせる。いい盛り上げ方だ。

 

 シェイクさせられた観客もヴィナスと同じく声をあげていく。波のようにそれは寄せては返す潮騒の調(しらべ)にも似ている。

 

 ステラ降り注ぐ世界。眩いばかりの光の世界、星雲すら表現された世界。

 

 その世界でヴィナスは遂に見えぬ翼を手に入れた。

 

『涙した過去の苦味を―――』『レクイエムにして―――』

 

 歌いながらヴィナスたちは銀河を駆け回る。跳躍からの飛翔。

 

 昨今、実用化された2つの飛行術式を使って軽妙に、されど鋭く翔び立っていく。

 

 その軌跡を追ってヴィナスを彩るように、銀河の噴水が幾重にも上っていく。

 

 一瞬の交差。同時に前転するようにアクロバットな着地をする。

 

 静と動。緩と急。善と悪。光と闇。

 

 相対するものが斑模様に掛け合わさり、クロスを刻んでいく。

 

 着地を果たした女神は。

 世界に訴えかけるように腕を広げていく。

 祈りを捧げるように手を合わせる。

 

 それは全てを包み込むような大地母神をイメージさせる。

 

『『生ある全のチカラで―――』』

 

 終わりは近い。それを惜しむ気持ちと瞬きすら惜しい気持ちとで、混ざり合いながら、女神は相似のポーズを取る。

 

『輝けFuture World―――』

『信じ照らせ―――』

 

『『ギャラクシィクロォス―――』』

 

 女神の呪文が重なる。振り上げた腕がクロスを刻み、天空を指差した。

 

 そこには2つの銀河、赤輝と蒼輝の渦巻き銀河が隣接をして、そして完全に重なる寸前の場面。

 

 幻想の御業に誰もが見惚れる。それが、どういう理屈なのかは分からない。

 

 だが女神が腕を振り上げたと同時に、銀河が重なる。

 

 一層眩い光。宇宙創生の様子『ビッグバン』を感じさせる。

 

 そして言葉通りのギャラクシィクロスが出来上がり、誰かが―――。いや多くの人間が―――。

 

『『『『ユニヴァァァァァス!!』』』』

 

 と叫ぶぐらいに……凄まじいライブシーンであった。割れんばかりの歓声があちこちで響く。

 

 全ての人間を感動の渦へと巻き込みながら、ヴィナスの演目は二曲目へと入ろうとしている。

 

 その際に……ストロベリーブロンドのヴィナスが、舞台袖の方に秋波を寄せたと感じる視線があったが―――『誰』に向けられたかなど、今更すぎるのだった。

 

 

 




歌詞引用
戦姫絶唱シンフォギアGXキャラクターソング「星天ギャラクシイクロス」マリア×風鳴 翼(CV:日笠陽子×水樹奈々)
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