魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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というわけで、上、下で一応のライブシーン的なものは終わりです。

楽屋雑談的な『後始末』を加えて、文化祭編なものは終わり―――レオ短編をどうしようか考え中です。

ちなみに今回のタイトルは重度の型月ユーザーならば、とも思いますが、歌詞引用するとその話はドラッグコピぺ出来ないようなので、カタカナで『クロウィック・カナベール』と言って完全な造語です。

知らぬ人はググってちょーだい♪(爆)

届かぬ思いを届けたいという意味では、これだな。と青本を読みながら思った次第です。


第196話『clowick canaan-vail』(上)

「ネットとかあんまりやらないほうだったけ? ユウキって」

 

「そういうわけじゃないけど、まさかCGドール『MAAYA』が復活するなんてアングラ情報知るわけないじゃない」

 

 観客席にて作り置きでも美味しいピザを頬張りながら、ラ・フォンの面子は大トリで出てくるものを予想していた。実際、それは当たっていた。

 先程までのステラ・アンジェとミズキ・カゲトラのライブはなかなかの芸だったが、CGドールの素材たる宇佐美夕姫の『肥えた眼』からすれば、『再現できないわけではない』と思えた。

 

 一番の難点は、エアキャリアの小型化と『飛行魔法』という魔法師だけが持てる技術をどうやって再現するかである。

 

 サイバースペースならばその制限は無くなるが、現実においては無理だろう。そう考えると少しだけ魔法師はずるく感じられる。

 アイドルとしての『格』というものをどう考えるかにもよるが、芸事に対する競い合いというのは、どうやってもあるものだ。

 

 無論、夕姫も『生身』で歌い踊れる。そういうパフォーマンスが許されるならば、そうでありたい。

 

 しかしながら、『現代』のアイドルの事情というのは、若干昔に比べれば『窮屈』なものだ。

 かつては『握手会』や『総選挙』というファンと間近で会えるアイドルが多かったらしいのだが。

 

 様々な世情や人権団体や―――もっと言ってしまえば世界的な人口の減少を受けて芸能の世界にも『年少者保護』の原則が適用された。

 それまではグレーゾーンだった出演時間超過(オーバーステイ)など、深夜出演などは完全になくなった。

 

 さらに言えば、芸能事務所の契約に関してもコンプライアンスが徹底された。

 ……もっとも、夕姫からすれば、それは完全に『徹底』されていないと思える。

 

 結局の所、芸能の世界というのは観阿弥・世阿弥の前から、権力者と『懇ろ』になることが当たり前に行われているものだった。

 

 だから――――。

 

(私の先駆者。CGドールで一世を風靡したアナタの『芸』を私に見せて!)

 

「ゆ、夕姫ちゃんの眼が真剣だよ。チカちゃんクララちゃん!!」

 

「色々と思うところはあるんだろう。邪魔してやるなよ」

 

「ミドリーなかなかに気遣い出来ているじゃないか」

 

「誰がミドリだ! あのアホの呼び方を真似るな―――」

 

 いつもは見せぬ厭な笑いを浮かべたクララの言葉に返していた千鍵の言葉が途中で途切れる。

 

 先刻までは、快活なMCが演者の紹介をしていたのだが、それが無い入り方。何の前触れも無かった。

 

 いや『わけ』ではない。見えていた雲間から差し込んだ月光と同調するように、スポットライトがステージに一条……差し込んだ。

 

 そこにいたのは、金色の髪とも亜麻色の髪。どちらとも取れる髪に『和服のようなドレス』。決して和服ではない―――しかし十二単衣のように幾枚も重ねられていながらも、決して―――それは和服ではない。

 

『月の娘』。

 

 そこにあるのは決して『姫』ではない。それを思わせる黄色系統のドレスを着ていても、どうしてもそこから姫の印象は無いのだった。

 

 そしてMAAYAの名曲『色彩』が、ステージを震わせる。それは世界全てを震わせる歌である。

 

 ちなみにいえば、『色彩』は英題ではなく邦題であり、USNAで発表された時には、『Kyrielight』というタイトルであった――――。

 

 どこか悲しげな慟哭を伝えるようなオルガンの音が聞こえてくると―――合わせてMAAYAの歌声が聞こえてくる……!!

 

 それは伝説の再現―――。

 

 人々の真芯に響く呪文(うたごえ)が、観客の『何か』を貫くのだった。

 

 その様子を舞台袖で見ていた全員は、その圧倒的な存在感から発せられるボイスに―――イメージが飛んでくる……。

 

 それは、人の犯した業によって『焼灼』された世界を取り戻す『旅路』。

 

 そして、取り戻すのは人の犯した業によって『創生』された少女と、どうしようもなく力弱い少年。

 

 どこかで頓挫して、折れ果ててもおかしくない過酷な旅路。

 約束の地(カナン)を目指して奴隷となった人々を率いることを宿命づけられた聖人のごとく、彼ら2人は歩みを止めないでいく……。

 

 そこにあったのは、決してあるべき世界を取り戻そうとする意志だけではなかった。

 

 失ったものの意志。踏みつけられても進むことを止めなかった多くの人々の意志。様々なものが彼らを折ることを許さなかった。

 

 旅路は続く。やがて、彼らは七つの『異なる点』を修復し、世界を焼灼した首魁の喉元に食らいついたのだ。

 

 それは決して英雄伝承譚(ヒロイックサーガ)などと勇壮に言えるものではなかった。

 

 しかし、修復する作業をこなす過程で少女は文明の素晴らしさを、それを作り上げてきた人々の熱を、鼓動を、色彩を眼に焼き付けていく……。

 

 以前の南盾島で語っていた作られた少女の物語なのだろう。

 

 その醜くもあがき続ける只人の只者たちの『おとぎ話』が、明確なイメージとして全員に想起させていく。

 

 中でも刹那となにかと関わり多い連中は『シーン』が叩きつけられていくのだ。

 

 第一の■■点

 

『邪竜百年戦争 オル■■ン』

 それは怒りと祈りが向き合った救国の土地。

 ひとりの聖女の在り方を巡る、黒と白の物語。

 竜の魔女となりて、フランスを新たな脅威に陥れた救国の聖処女。

 しかし、邪竜を率いる竜の魔女の前に立ちはだかるは、本来あるべき『救国の聖処女』。

 

 救うという以上に深すぎる慈悲。例え、自分の運命があのルーアンでの火刑に定まっていたとしても、それを悲観せず恨まず―――自分の信じた道を貫く、救い続けたいと願う『彼女』の在り方に、『作られた少女』は尊さを覚える―――。

 

 第四の■■点

 

『死界魔霧都市■■■■』

 

 赤き叛逆の騎士と共に『ありえざる歴史』の霧の街の謎に挑む戦い。今まで見えてこなかった陰謀の正体に気づき、戦う決意を決める『ターニングポイント』

 

 人の歴史を『間違い』だと怒りと憤怒で『断罪』する魔■王の言葉に対して、だがそれでも―――『取り戻す』と叫び返す『只人』の『断言』が、魔■王との戦い―――『人理』を取り戻すという意味を再認させた。

 

 第六の■■点

 

『神聖円卓領域キャ■■ット』

 

 それは――それは、世界の果ての、最後の神話。

 或る人間の騎士の、長い長い旅路の終わり。

 

 女神と化して世界を『固定化』する王の似姿を殺すべく舞い降りた、銀の騎士の贖罪の旅。

 過酷な世界でも生き続ける人々の願いと笑顔に寄り添い、破滅が決まっていても、それでも終末を肯定してでも命を選ぶ、選別するという■■王に対して、それは違う、ヒトを、命を選ぶなという意思を、只人は盾を持つ少女と共に叩きつける。

 

 解放される――――真なる宝具、其の名は『いまは遥か■■の■』

 

 そして……最後の時、銀の騎士の『レ■■カ』により女神はヒトへと戻り、『最果ての来訪』は閉ざされた……。

 

 そして終局■■■―――冠位時間神殿■■■■

 

 明確には、達也たちには見えない。

 

 しかし―――そこにて行われる戦いが、2人の旅の総決算にして総力戦となりえていることだけは理解できる。

 

 それぞれの時代で『味方』をしてくれた『英雄』だけでなく、『敵』であり、時には裏切ることもあった綺羅星のごとき『英雄』たちが、主義も主張も、隣り合う相手の好き嫌いもかなぐり捨てて……微妙に捨てきれていない面子もいるが、それでもそこに集った。

 

 2人が歩んできた旅路の中の繋がりは、多かった……『多すぎて』、だからこそ歩みは止まらなかった。

 

『私が欲しい未来はここにある―――』

 

『はじめて寂しさをくれた人……』

 

『ただの孤独に、価値を与えてくれたの―――』

 

『私が視てる未来は一つだけ』

 

『永遠など少しも欲しくはない』

 

『一秒 一瞬が愛おしい―――――』

 

『あなたがいる世界に私も生きてる……』

 

 その言葉は、祈りと願いに満ちている。

 

 ―――かつて、試験管ベビーとして生み出され、されども一人の『少年』と共に破局を防ぐべく戦った『少女』がいた―――

 

 ―――少女の余命は18年……その破局が生み出された年には燃え尽きるはずの儚い命のはずだった―――けれども彼女は、それを悲観しなかった。

 

 破局を防ぐべく、多くの時代の事象に赴き、そこに生きる人々の鼓動が、厳しすぎる世界でも生き続けている人々の全てが、色褪せぬ『色彩』が―――彼女を生かした。一つの知性として、生命(いのち)として―――まごうこと無き『人間』としたのだよ―――

 

 

 ―――作られたものだからと、それを『当然』と考えるな。

 ―――作られたものには自由意志が無いわけではない。感情が無いわけではない。

 

 ―――熱を失うな。生きようとする意思。何かを成し遂げたいと考えた時に、紛い物は、ただ一つの知性となる。

 

 ―――知性は生きたいと思う。

 

 一秒一瞬が愛おしく思えるようになった時、この世界に生きている。自分も生きている―――そう叫ぶ権利があるんだ。

 

 ダ・ヴィンチが言っていたのは、達也と深雪の脳裏に明確な映像として入り込んできた大盾を持った少女のことだと思えた。

 

 紫色のスーツアーマー(完全鎧)

 

 しかし、兜はなく、それどころか、ところどころ太ももや腕が露出をしているものを着込んだ少女の容貌は、調整体魔法師以上に『作られた命』という念を抱かせた。

 

 その鎧と同じく少女は『不完全』な存在だった。

 

 だが、その不完全さを嘆かず、精一杯生きていこうとする姿は、正しく人間が持つべき情熱の在り方……それが非常に好ましいと思う一方で、止めたかった人にも『この運命』が訪れてほしかったという羨望が湧き起こる……。

 

 そんな感受性豊かな司波兄妹と同じく……その『メッセージ』を受け取ったものがいた。

 

 観客席にて染み入るように、妹分たちとその歌唱を視ていたのだが、先程のツヴァイウイングの歌とは違い、その歌は―――『作られたものたち』に響く。

 

 不意に―――受け取ったもの。桜井水波はよろめくとまでは、いかずとも少しの酔いを感じたところに受け止めるもの一人。

 

 受け止めたのは、一人の少年。水波が関わりある『男性』の中でも、あまり見ない……儚げな少年の姿。けれど黒羽の長男よりは幼くはない。どちらかといえば、達也、刹那よりの少年なのだが―――。

 

 人間離れした美形。達也や刹那のように『骨っぽい』ところがない。長身でありながらも必要ない筋肉はつけない。

 

 だが決して『優男』という印象は受けない。あえて言えば……先ほどまで水波の脳裏に明確なイメージとして焼き付いていた少女。

 

 盾持ちの少女の反転したような印象。とでもいえばいいのか。ともかく、その姿は一種の神秘性を醸し出す美にあふれていた。

 

 そんな少年に背中越しに身体を支えられた水波はどうしても緊張してしまう。

 

 それは―――もう一つの悲しい運命の出会い。

 

 作られし『被造の人工生命2つ』(レプリカント)の早すぎる邂逅であった……。

 ・

 ・

 ・

 ・

(下)に続く……。

 

 




歌詞引用
スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』第一部主題歌『色彩』  歌手 坂本真綾
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