魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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ちなみにいえばあるパートでは、ようつべの弾いてみたアーティストの方の逆光をバイオリンで弾くとこうなるのかとヘビリピ掛けていました。

様々な人がいろんな楽器で『逆光』を弾き語る様子に感動ですね。


第197話『clowick canaan-vail』(下)

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「大丈夫ですか?」

 

「―――は、はい。す、すみません! 体重掛けてしまって!!」

 

「構いませんよ、全然軽いですから。伊達に男で生きてはいません」

 

 それは自分の線の細さとかマッスルではない印象(え)を理解している言動であった。

 

 だが、その片方で芯にある『力強さ』も感じて、そんなことはないと真っ赤な顔で水波は否定する。

 

 終始笑みを絶やさない―――まるで春の漫ろを歩くような人だが、どこかで『危うさ』も感じられる―――。

 

 そんな感想を内心で出していたのだが―――。

 

「水波おねーさん。ナンパされてるです」

「「「「「「ナンパだ―――♪」」」」」」

「水波さんみたいな重い女をナンパするなんて……」

「命知らず♪」

「けどカッコいい人だ……」

「了くんの方がカッコいいよ?」

 

 

 九亜の声を筆頭に、三亜と四亜を除くわたつみ全員が声を出す。

 

 そして四亜の言葉に噛みつきたくなるも、三亜がよそのお子さん(まだ小学生)とイイ感じな会話をしており、タイミングを失ってしまった。

 

「賑やかな子たちですね。親戚か何かで?」

 

「まぁ……そんな所です。それよりも四亜、誰が重い女ですか? 私、軽いです!! 『軽い女』です!!」

 

「えっ……もっと自分の身を大事にしてよ。水波さん……」

 

「私達のお姉さんが『B』に!? 止めなきゃいけないデンジャラスゾーン」

 

 四亜と九亜の連動した言動に思わず頭を抱えて、仰け反りたい気分の水波。

 

 だが、隣に座っている男性にあまり『醜態』をさらすのもあれなので控えるも、内心に潜む『マインド水波』(秩序・善)は、多くのマインド水波との会議の末に仰け反っていた。

 

「にぎやかで楽しそうで何よりです。兄弟、姉妹ってのは―――『違い』があっても、仲良くするべきですよね」

 

 笑みを浮かべていた男性が少しだけシニカルな言動をしたのに気付いて、四亜は片目を鋭くしたが、念話で九亜から『悪い人じゃないけど、決して善人とも言えないかも』と伝えられて……。

 

「それよりオニーサン。名前は何ていうの? アタシは海神四亜」

「名字は同じで九亜。です」

 

 そんな言葉で探りを入れることにした。

 

 すると、『君たちが……』と小さく思い出したかのように呟く『少年』。

 

 眠そうな八亜の言葉まで聴いてからそうなのだから―――何となく程度に『来歴』を察した。

 

 ヒューミント、コミントの類を『家中の人たちから』それとなく伝授させられてきた2人の探りに、他7人が耳をそばたてた。

 

 が、そんなことはともかくとして笑顔を浮かべながら少年は自己紹介をしてきた。

 

「―――僕の名前は『ヒカル』です。名字はちょっとゴメンね。今は―――多分、まだ言えないんだ。本当にごめん」

 

 良くわからない言動であったが、本当に申し訳無さそうに言う『ヒカル』を見て、水波が辛くて、見ていられなくて胸を押さえた瞬間―――。

 

『みなさん!!! グッドイブニング―――!!』

 

 その挨拶は、 CGドール『MAAYA』のものであり、誰もが『グッドイブニング―――!!』と大声で返す。

 

『さてさて、今宵の魔法科大学附属―――めんどうだから略して『魔法科高校第一高のマジックライブ』、長いなそれでも♪ しかし、ここまで楽しんでくれたかな―!!!???』

 

『『『YEAH―――!!!』』』と腕を振り上げて歓喜を示すオーディエンスたち。ついでに言えば『ヒカル』もその一人である。

 

『長い間、活動を停止していて申し訳なく。さらに言えば、このような形での復活、申し訳ない限り。

 来る日も来る日も『ビタミンM』を供給されながら、『今期のアニメは不作だわ―』などと言って惰眠を貪っていた私だが―――』

 

 とんでもないことが暴露されるも、それにツッコミ一つ入れられない。それが真偽どちらであってもCGドール『MAAYA』の中の人であることは間違いない声をしているのだ。

 

 ただ一つの事実があればいい。

 

『MAAYA』が再び、曲を発表してくれるという事実だけあれば―――。

 

『そんな私だが、『ここ』(一高)にいることを察している通りに、まぁ『魔法師』ということになるのかな? まぁ万能の天才は、魔術も出来るということだよ』

 

 MAAYAのパーソナリティは実は、アメリカ翻訳されているからこその意訳であったと思っていたが、どうやらそういうことではないらしい。

 

 それにしても流暢な日本語であり、ここの魔法師となると、生徒か講師か。ホログラフィテクスチャとかウィッグを剥いだ先にある素顔がどのようなものかを……誰もが興味を持ってしまうも、それは無粋であろう。

 

 今日はただ一つ。それだけを彼女に望んでいるのだから―――。

 

『本日の大トリを務めさせてもらう以上は、無様な芸は場を汚すだけだから―――最高の一曲、私の新曲で〆させてもらおう!!

 この曲は歴史に記録されない知られざる戦いを繰り広げた者たちの、『新たな戦い』へ手向けるもの。

 分からずともいい。

 ただ私は―――『彼ら』に届けたいんだ―――。

 ―――曲名は『逆光』(ぎゃっこう)――――』

 

 空の果て、(ソラ)の果て、時空(ソラ)の果てにまで手を伸ばそうとするような仕草の後。

 

 ステージ上に二条の光が差し込む。そこにいたのは仮面を着けたバイオリン奏者とキーボード奏者。

 

 見事な演奏への入り方。おそらくMCの間に入り込んでいたのだろう。

 黒子役というものの面目躍如である。

 

 イントロダクションの演奏にて最初に動いたのはバイオリンの方であった。何か急かすような音のリズム―――。

 

 同時に終末を感じさせる音の連想が―――弾ける。

 

 そこからキーボードの音が追いついてくる。見事な連弾演奏を前にして―――演奏に合わせてMAAYAことダ・ヴィンチが声を上げる。

 

 しっとりとした……どこか労るような声音が全員に伝わる。

 

『憂鬱だった―――いつも目覚めると―――』

 

『現実だって思い知らされる―――ここには出口がない……』

 

 どうしても絶望な歌詞だ。暗い。同時に、戦うことを嫌がるような心地の人間を思わせる……。

 

『もう運命が決まってるなら――――選べなかった未来は―――想像しないと誓ったはずなのに!』

 

 なぜ戦いは終わらない。どうして戦う。あれほどまでに過酷な戦いの果てに取り戻したものを、なぜ『白紙』に出来る? 

 

 そんな慟哭が全員の胸を貫く。

 

 真に迫った慟哭。

 

『まどろみの淵で―――』

 

『あなたに駆け寄って―――そして微笑みながら目覚めるの―――』

 

 慟哭は、そのままに。されど『これはいけないこと』だ。そう感じさせる危機感の元―――『誰か』は動き出したのだ……。

 

 それは『世界を取り戻す』のではなく『世界を滅ぼす』戦い……。

 

 再び……過酷な旅路が、白紙となった地球に刻まれていくのだ。

 

『本当に欲しいものがわからない―――』

『じっとしてたら過去に囚われる―――どうしても行くしかない……』

 

 送り出された。

 未来を託された。

 傲慢に『生き残れ』と言われた。

 後ろを見るな『進め』『征け』と言われた。

 

『ヒト』にとっての幸福な『不足ない世界』を潰してでも進むことを選んだ。

 

『輪廻の環』に捕らわれ、『暴神の裁定』で一人になった少女を残してでも壊れた世界を砕き、神殺しを行った。

 

 可能性を信じて、他の可能性(セカイ)を壊していった……。

 

『人は生まれながら誰もが平等って、簡単に言えるほど無邪気じゃない』

 

『痛むのは一瞬だけ―――そう割り切れたほうがずっとラクだった』

 

 一つの世界を『刈り取るごと』に、心は軋む。

 

 生きることが戦う世界で会った、好奇心旺盛な異端の狼人の声を思い出す。

 

 定められた命数しか生きられない世界で会った、花を編んでくれた少女を思い出す。

 

 恒久和平を達成した世界で今日とは違う日を求め、叛逆者(スパルタクス)となった少年を思い出す。

 

 暴走し、終わりが決められた世界で大事なものを無くしたことに不意の涙を流す少女を思い出す。

 

 鋼の心は持てない。

 

 ヒトとしての痛みが、旅路を刻む全員の総身を苛む……。

 

 だが、それでも――――。

 

『絶望のほとり 懐かしい人の名を叫ぶ――― それは遠雷のように!』

 

『まだ闘ってると 嵐の向こう側にいると あなただけに届けばいい……』

 

 ―――進むことを選んだ。

 

 どうしても、『この未来(さき)』『この世界(れきし)』は来てはいけないのだ。示されてはいけないのだ。

 

 たとえ『本来の歴史』が過酷で、そして平等でなく、競争の原理が時に多くを脅かしても、幾多もの苦しみがあっても、神が嘆きを聴いてくれなくても――――。

 

 それでも……ここまで走り抜けてきた『結果』(いま)を無にすることだけは出来ないんだ。

 

 ここにはいない『誰かの叫び』が―――観客席にいる全員を貫く。

 

 涙が溢れる。

 どうしても、知らないはずの世界を想像して、その渦中にいた人々の『心』に滂沱の涙が止まらないのだ……。

 

『沈黙を破り 障壁を越えて 眩しすぎる向こう側へ 走れ!』

 

『雨の洗礼と ぬかるんだ道 『逆光』浴びて―――泥だらけになれ!! 『私』はここにいる!!』

 

 ダ・ヴィンチの激しいシャウトと同時にバイオリンとキーボード。増えた楽器の音源とがその叫びを彩る……。色彩を加える。

 

 バイオリンを操る遠坂刹那が、その『過酷な戦い』を幻視する。

 

 幻視したイメージの元、作曲された音程を変えずに弦の震わせを調整して投影する。

 

 そして―――キーボードを操る達也は『必死』であった。

 

 何故ならば、何故かは分からないが、本当に何故かは分からない。

 

 なのに―――彼の行動原理たるものに『何か』があったわけではないのに、どうしても『涙」が止まらないのだ。

 

 涙で滲む視界を元に戻すべく、涙を『分解』せねば、もはやキーの一つも見えなくなるのだ……。

 

 誰かに共感することも出来ない。どうしても妹への愛情しか持てない自分が『幻視』したもの……。見えてきたものに、どうしても自分の中の何かが揺さぶられる……。

 

 そして弾き語る演奏が、誰の心にも、魂にも響き渡るのだ。

 

 歌は―――世界を震わせる。遠くの何処か。何処ともしれぬところでの戦いに『負けるな』と拳を握りしめてしまう……。

 

『あなたに駆け寄って もうすぐ指が触れる……そして選びたかった未来を―――』

 

『絶望のほとり 懐かしい人の名を叫ぶ それは遠雷のように―――』

 

 ダ・ヴィンチの腕が、眼が、天を、虚空に伸ばされる―――その先に戦っている『誰か』を求めて、それに届けたい想いが―――天へと上りつめる……。

 

 地上から『天空』……宇宙(そら)に届ける遠雷のごとく―――。

 

『―――まだ闘ってると―――』

 

『―――嵐の向こう側に、いると―――』

 

『アナタだけに届けばいい―――』

 

 歌唱が終わった後は楽器による演奏エンディングである。

 

 それはイントロにおいて弾き語られた『終末録音』とは違い、先を取り戻すために、誰かを癒やし、それでも進みつづけることを後押しする旋律……。

 

 終劇。終奏が刻まれる。

 

 いっそう激しく身を動かし弦を引く刹那と、身体を上下に動かして情熱ごと鍵盤を叩く達也の『未来福音』が刻まれた……。

 

 余韻で沈黙。ざわつき―――溢れ出す声と鳴り止まぬ拍手の元―――。

 

『それでは今宵の音楽劇はこれにて終幕―――またのご来客をお待ちしております』

 

 丁寧な一礼をするダ・ヴィンチに合わせて従者の様相でステージに上がった刹那と達也も姿勢を正して一礼をする―――そうして今までのことは夢だったかのように黄金の劇場ときらびやかな『ステージ』はなくなり、されど演者が消え去った舞台に未だに鳴り止まぬ拍手と歓声が響き、ほどなくしてスタンディングオベーションでの『アンコール』の大合唱が響く。

 

 戻ってきた早々にコレかい。と三人ほどはズッコケたくなったが、まぁ予想されていたので、今宵のステージを彩った演者全員で再びステージに上がることに――――大歓喜と大号泣したくなるほどに様々なものを感じるいい演目であった。

 

 決して現代にある『魔法』ではなく、されど古式魔法とも言えぬ――――歌は、言葉は……全てのヒトが持ち得る『奇跡』(まほう)なのだから……これは当然であったのだ。

 

 

『本当のアンコールは湿っぽくはいかない!! 誰もが歌えるだろうポップでカーニバル! ゴキゲンなナンバーで〆るぞ!!! 

 曲は―――『すーぱー☆あふぇくしょん』だ!!!』

 

 

 先程までは、どこかへと消えて黒子役に徹していた情熱の皇帝の声で、舞台は終幕に至る……。

 

 多くの人に様々なものを感じさせ、熱を残す『祭り』は、これにて本当の終わり(フィナーレ)を告げるのだった……。

 




歌詞引用
スマートフォンゲーム『Fate/Grand Order』第二部主題歌『逆光』  歌手 坂本真綾
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