魔法科高校の魔宝使い ~the kaleidoscope~   作:無淵玄白

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第202話『聖夜異変―――Ⅳ』

ショーウインドーの前で次々とポーズを決める美少女。

 

芸能コースの生徒だというのは馴染みの店員から聞いていたし、本人からも知っていたが―――。

 

イルミネーションの下、『ウサギ』のように飛び跳ねる夕姫の姿に眼を奪われる。

 

そのポージングは全てがプロ級。あのリーナとカゲトラのツヴァイウイングのように激しいものではないが、少女らしい色香を感じるキュートなものだ。

 

そしてそんな夕姫の踊っている向こうに巨大なプロジェクションマッピング…現在はLEDビジョンという新技術を投影する高層ビルがあり、その高層ビルに―――いつぞやロマン先生に教えられたCGドールの姿が映し出される。

 

白い髪と赤い瞳。しなやかな脚線美、もこもこした衣装と―――跳ね回るようなダンスとが重なる。

 

CGドール『雪兎 ヒメ』

 

その動きは『トレース』したかのように、宇佐美夕姫と重なるのだった。

 

「――――」

「――――」

「――――」

 

たっぷり30秒ほどの『リンク』で誰もが眼を奪われてしまうぐらいには、それは確かにヒメの動きだったのだ。

 

30秒ほどのショーダンスの後に少しだけ顔を青褪めた夕姫。そんな夕姫の腕を強引に取って、群衆が『爆発』する前に街中から去っていく。

 

「ご、ごめん。調子ノッていたわ」

 

「いや、いいんじゃないか? 無粋な言葉しかいえないけど、皆が見惚れるぐらいにスゴイものだったぜ」

 

「そういう時は、『キレイだ』『可愛かった』とか言ってよ」

 

ふくれっ面でダメ出しを食らうも、ローマの休日のアン王女と新聞記者のジョーのごとく―――2人は夜の東京を走り抜けていくのだった……。

 

 

一つの筋道は辿ることが出来た。しかし、そこから先が手詰まりだった。

 

(もう一度、考え直せ……何かを見落としている……)

 

魔術回路の演算を使って推理を入れ替える。見落としているものは―――なにかあるはずだ。

 

直感を信じろ。理屈はあとで付いてくる。

 

宇佐美夕姫

西城レオンハルト

黒羽の姉弟

榛有希

司波兄妹

セレスアート

雪兎ヒメ

アーチャーのサーヴァント

弓場大作

月シリーズ

調整体魔法師

 

「トレース、オン」

 

短く唱えて―――思考を没入させていく。『未来予測』の位置にまで『計算』を行っていく。

 

見落としているものが、何かないか―――。一つ一つを精査していく―――――。そして3秒後―――一つのサジェストキーワードが浮かび上がった。

 

「黒羽君、確かアーチャーのサーヴァントは、『アンタ達が、こいつらの『接待相手』? ……じゃあないね。―――目撃者は殺せってお達しなんだ!!』って言ったんだな?」

 

「はい―――一言一句、その通りです。四葉の諜報分野の後継として、我が耳が受け取った言葉は覚えております」

 

胸を張ってきっぱりはっきり答える黒羽文弥の言葉で全てがつながった。

 

「決まりだ。アーチャーないしアーチャーのマスターの目的は『宇佐美』だ。宇佐美の身柄を押さえようとしていたんだ」

 

「―――根拠としては少し弱くないか? 確かにアーチャーのサーヴァントがソウルイーターとして『力』を貯蔵するならば、眼の前の文弥と亜夜子―――おまけで榛でも良さそうだ」

 

アタシはついでか。と呆れるような怒るような口調のユキさんにドントマインドと想いながら、説明という程度ではないが、説明をしておく。

 

「違うんだな。サーヴァントに『厳命』をしてまでも『対象』と『目撃者』を分けた。ということは、やはり狙いは宇佐美だったんだ」

 

「言われてみれば、若干……不可解な言動ではあるな。つまり奥座敷で宇佐美の接待相手を殺したのは、後にやってくる『宇佐美』を『確保』する予定であったということか」

 

「死体に対して降霊術を使えれば良かったんだが、まぁ無理だな。そして―――その原因はコレだろう」

 

言ってから達也に示したのは、端末に送信されてくる学内連絡。

その中でも最近にあった『最重要事項』の一つを抜粋。

 

「当校の女生徒に対する声掛け事案……そう言えばエリカがごちゃごちゃ言っていたような気はするな……」

 

「B組ではエイミィがきゃあきゃあ話していたワ」

 

お互いのクラスの賑やかしの顔を思い浮かべた達也とリーナ。A組は――――。

 

「だから、なるたけ集団を作って、更に男子も入れて下校するようにと徹底はさせていましたよ」

「流石は優等生が多いA組、先んじている」

「真なる意味で『優秀なのが多い』B組には負けますけどね」

 

深雪からの半眼でのあからさまな皮肉に、刹那としては舌を出したい気分。

とはいえ、そういったことが周知徹底されていたからこそ、集団下校が多く。

 

それでも「小粒」な面子を狙った結果―――。

 

「エイミィ、十三束、平河、猫津貝、鳥飼―――フルメタルハーレムの面子を狙った結果」

「アベンジされたのよねぇ……」

 

リーナの呟き。限りなくグレーに近いのだが、エイミィ及び猫津貝、鳥飼は、数日前から自分たちを『狙っている』存在に気付いており、こちらを誘拐しようとしていることに気付いていた。

特に獣性魔術に傾倒を示して、その訓練を受けている猫と鳥は、そういった『匂い』を感じてエイミィと示し合わせていたそうだ。

 

「結果としてチアキが、往来にて強引に車中に連れ込まれそうになった瞬間……」

 

人を超え、獣を越え―――アバレ、アバレまくった結果。

五体投地してまで平伏をする、少なくとも20歳を越えている男五人ほど。駆けつけてきた警察官によって、男たちは掴まったそうだ。

アバレた数だけ優しさを知る……なわけもなく、アバレた数だけ強くなったわけである。

 

「まぁ過剰防衛を取られなかったのは、結局の所―――下手人が国のおエライサンの娘っ子にも手を出しているかもしれないからなんだよな」

 

末端の構成員とはいえ、『囮捜査』も同然の行為でとっ捕まえなければいけなかったのだ。

つまりは、警察も『容認』したのだ。エイミィたちのキリングバイツな行いを(間違い)

 

「非指定暴力団出多(デルタ)興業。そこにアーチャーの使役者はいるものと考えられる―――推測に過ぎないけどな」

 

だが、確証に近いものはある。もっとも、何故宇佐美でなければならなかったのか―――というところまでは詰めきれていない。

 

エイミィたちの拉致が失敗したことで、魔法師の少女という『狂犬』を『商品』とすることが不可能になったからこそ、宇佐美のような魔法は使えないが見目麗しい少女を―――という下種極まる思考に至るのは分からなくもないが。

 

「そのことに関してですが、遠坂先輩。その組織に関して僕たちが側聞していることがあります―――ナッツ。教えてあげて」

 

黒羽文弥の誰を指しているのかは良くわからない言葉だったが、その名詞で再び口を開くのは榛女史であった……。

 

((何故にナッツ()?))

 

そんな知らない連中の疑問を置き去りにしながら、話は進む―――聖夜の異変は、表側の人間にも知れ渡る。

 

 

「こ、殺されていた―――? 社長がですか?」

 

「死体の損壊と焼失は激しいですし、この後の科捜研での正確な鑑識を待たなければならないですが、最初に入った人間の見識によれば、火災の前から弓場氏は死んでいたようですな」

 

当然、接待相手であったレコード会社も同様であった。

現場に駆けつけてきた事務所の代表とは言えないマネージャーの男は、如何にもやる気なさげな『千葉』という刑事に説明を受けて、なんとも緊張してしまう。

 

「あんまり言いたくないのですが、あそこの料亭の奥座敷は、色々と『エラい人たち』が『気持ちよく飲み食い』する場所と言われているらしいんですよね―――そこでおたくの社長とレコード会社の専務ですからね……まぁあまり言いたくないですが―――」

 

「いえ―――弓場社長が死んでしまったならば……隠す意味も無いでしょう。お話します……」

 

20歳そこそこの男。見目はイケているほうなのだろうが、どうにもバランス良すぎて、ある種の『個性のない二枚目半』という感じに見える。

 

セレスアートのマネージャーをしている『尾上 旭』という男から事情を聞いておく。

聞き役を稲垣に任せてから緊急設営テントから出る『千葉 寿和』は、焼失して爆砕をした料亭の奥座敷―――ブルーシートなどで覆われた場所を見る。

 

これだけの大破壊を齎すとなると、大口径の火器か魔法でも用いなければならない。

それにしても、念入りな破壊跡だ……。

 

「やれやれ、クリスマスの夜だというのに騒がしいものだ」

「けれども、1人の少女が大人の慰み者にならなくなったことは僥倖では?」

「命に貴賤はつけたくはないですが、魂の潔癖さで言えば当たり前に、少女が助かったことには感謝すべきですかね」

 

いつの間にか隣にやってきた、コートを羽織った姿の響子に言われて、そんなことを言っておく。

 

仮に事件現場にいたのがエリカ()であれば、例えどれほどの上流の人間であっても斬り捨てていただろう。

組織の中にいて権力の浅ましさを知るからこそ、家族にそれとは無縁でいてほしいと思うのは、偽善なのかもしれないが、それぐらいのワガママは許されたいのだ。

 

「……『そちら』が関わる案件ですかね?」

 

「あら? 寿和さんも『縄張り』を気にするタイプですか?」

 

「それなりには。軍と警察が仲良しこよしってのも、あまりいいもんでもないでしょ」

 

それは癒着に繋がり腐敗の温床になる。今更すぎることではある。治安維持という側面で言えば、分別はつけなければいけない。

 

「フィリピン・マフィアの存在がチラつくんですよ。彼らの目的は、あまり看過出来ませんからね」

 

「それと接待相手(予定)だった少女がどう繋がるんですか?」

 

「―――大漢崩壊(ダーハンクライシス)

 

一言で緊張が走る―――。

ちらつく粉雪に鮮血が走ったかのような言葉に寿和も緊張せざるをえなく、長い夜になりそうだと予感するのだった。

 

 

「なんとも迂遠な計画。生み出された赤子が魔法師として使えるまで、大亜がどうなっているかとか考えないのかね」

 

「まぁ、そうなんですよね……ただ彼等からすれば、それが合理的な計画らしくて……」

 

ホムンクルス(自然の触覚)でも作ることに終始した方がいいと想えるな」

 

「魔術師 遠坂刹那」としての感想を述べさせてもらえば、迂遠なのだ。

 

拉致した魔法師の「因子」を持つ少女・少年に子を産ませて、それを育てて自国の魔法戦力に据える。

暗躍しているのは混乱している大亜を出し抜こうと躍起になっている東南アジア諸国の軍閥――の下知を受けたフィリピン・マフィアということだ。

 

そして、そんなフィリピン・マフィアが眼を着けたのが、入国管理・出国管理で「ザル」すぎて、人身売買の天国ともいえる日本であった。

 

「かつて「存在していた」自動車メーカーの雇われ外国社長、C・ゴーンの疑獄からの逃亡。中国で発生したコロナウイルス感染症によるウイルスキャリア入国制限の遅れ……日本が抱える問題だな」

 

しかし、こういった「悪どいこと」をやっていると「天罰」が下るというものだ。

 

壮士は去りて帰らず、江湖に義侠の志は潰え、されど「天意」は示される。

 

魔術師だからこそ、その辺りの均衡は考えねばならないのだ。先程の黒羽文弥の言葉ではないが、そういうことだ。

 

「何にせよ標的は定まった。ついでに言えば、そんなことでシノギを受けているようなヤーさんなんてのは、ご近所さん(藤村組)の名誉を汚すものだからな。潰させてもらうさ」

「外務省から、組長ならぬ「社長」たる三角健三(みすみけんぞう)氏の確保も依頼されていますので、殲滅はご勘弁を」

 

ゴスロリ少女。黒羽亜夜子のそんなさり気ない言葉で釘をさされたが、それはあちらの出方次第だ。

 

「チームを分けよう。宇佐美の安否確認及び安全確保をする組と、カチコミをかける面子とで」

 

「お前らも来るの?」

 

「元々は、ウチ(四葉)が請け負った案件なんだ。お前に任せっきりなのも寝覚めが悪い……何より、文弥と亜夜子、ついでに榛をこんな目に遭わせた連中を放ってはおけない」

 

アタシはどこまでいっても「ついでか」とやさぐれる榛氏を慰めるリーナと深雪。憧れの人物からの言葉で惚けるように達也を見る黒羽の姉弟。

 

騒がしい面子が揃うこのクリスマスは、さしずめ「Witch on the Holy night」―――「魔法使いの夜」は始まるのだった。

 

そして―――。

 

 

「す、杉屋!! お前、「親」を刺そうってのか!?」

 

「―――ああ、そうだ。アンタには分からないだろうな……四角四角に生きているわけでもない変節漢な三角野郎である―――アンタにはな」

 

「そんなわけでだオッサン。運がなかったなぁ。まぁ「下剋上」は世の常さ。見限られないだけの「義理人情」を通しとかなきゃ、あっちゅうまに死んじまう」

 

電子の要塞と化して、容易く侵入者を寄せ付けないでいた己の城が、こうも簡単に落ちるとは―――さもありなん。

内部から崩されれば、一巻の終わりだ。既に出多興業という社屋に「生きている人間」は、三角と眼の前にいる「杉屋」だけだ。

 

傍に控えながら時代錯誤な「短筒」をくるくる回す「女」は―――「生きては居ない」。そう説明は受けていた。だが、その実力は凄まじかった。

 

根来衆の末裔―――なんて看板は、「本物」を前にしては、穴だらけになる脆い張子の虎だった……。

 

暗い室内、全ての電気が落とされた世界で三角健三は己の死を自覚した……。

 

「やれアーチャー。社長との縁を切って―――俺は、この肥溜めのような世界から足を洗うんだ」

 

「承知。では「南無阿弥陀仏」―――」

 

「くたばれ―――!!!」

 

それでも最後の奇跡を願うべく、マホガニー製の机から飛び出すように拳銃を取り出した三角健三。

 

だが、連発した自動式拳銃(オートマチック)が、乾いた音で弾かれる。

 

「時代錯誤」な硝煙が棚引く短筒を握る「鉄砲傭兵」が―――全ての弾丸、33発を撃ち落としたのだ……。

 

「次弾はないようだな。南無―――阿弥陀仏」

 

驚愕する芸当の後に、34発目を放つ女の弾丸は過たず驚きを貼り付けた三角健三の眉間を貫いた。

その衝撃でもんどり打って、何度かキャスター椅子の上で無様なダンスを興じた男は―――それっきり動かなくなった……。

 

全てが終わると呆気ないものだ。だが、杉屋―――、否、杉谷にとっては、これが始まりなのだ。

 

「へへっ。マスター、これからどうすんだよ? 雇い主がいなくなればおまんまの食い上げだぜ?」

 

「仕事なんて幾らでもある。とりあえずフィリピン・マフィアは全て殺してしまおうと思う。

ドン・カスティーヨは商品を欲しているようだから、とりあえず「あること」だけでも見せなければ、乗船も出来やしないだろうな」

 

「んじゃ予定通りってことか?」

 

「そういうことだ。その後は―――まぁ考えがないわけじゃないな。どちらにせよ―――こんなヤクザな商売、胸を張って出来るもんかよ」

 

壮年の男は、若年の頃から20年以上も浸かってきた世界にうんざりしていた。だからこそ、自分の生まれにも多少は繋がりがある「英霊」を召喚出来た時から、これを考えていたのだ。

 

「ここの始末は任せる。仕立ててトラップタワーにするのは簡単だろう?」

 

「まぁな。台密の坊主から教わった俄仕立てだが、やらないでおく手はないか」

 

「頼んだ。俺は資金を出しておく」

 

その言葉で4階建てのビルを降りていく杉屋善人(よしと)を見送ってから―――アーチャーは苦笑する。

 

(下剋上か、馬鹿め。そんなことをしても何が変わるものか……)

 

遠い目をして過去のことを思い出す……結局、アーチャーにとって「最大の敵」は、一度も取れなかった。腹心たるものに託した銃弾が、敵の眉間ではなく「腿」を撃ち抜いた時に悟ったのだ……。

 

 

―――この戦いは負ける―――。と

 

天下布武の名の下、神秘のテクスチャ(領域)を剥がしていく「魔王」。その魔王の手下たちには敵わないのだと。

 

「アタシは時流を読んで、なんとか生きながらえたけどよ。……悔しかったなぁ……結局、『魔王』を倒すことは出来なかった」

 

誰もが熱狂していた時代。もちろん、いくつもの民草の躯が転がる屍山血河だ。

 

けれど―――誰もが天下を目指した。日ノ本の統一を祈願したのだ……。自分のやり方ならば天下万民を安堵させられると、『欲』を抱いて何が悪いというのだ。

 

「―――今はいいか」

 

生きてこその物種。全てはそこからだ。例え負け戦が常とは言え、銭をくれる相手はいい主なのだから。

 

ただ……今のアーチャーにとっての願いとは、あの頃「戦えなかった戦国武将」との再戦。

 

特に『第六天魔王』が出てくれば、ヨシマサでは届かなかった弾丸を眉間に届かせてやりたいのだ。

 




□久々のNG■

達也はそんなこと言わない
そういうNGです。





「ところで榛さんは、何で「ナッツ」なんだ?」

「特に名前(ネーム)にそれらしきものはナイのだけど、ワタシ気になります!」

「あー……まぁ隠すことでもないんだけど、実はな―――」

「榛 有希。彼女がナッツと呼ばれている所以は、こんな寒い日のことだった。街中で1人、「ナッツ、ナッツはいりませんか?」と道端でポン引きよろしく「ナッツ売りの少女(?)」としていたことに端を発する」

「オイマテ」

「『ハワイで栽培されたマカダミアナッツ、中華料理で有名なカシューナッツ、千葉のぼっち君も納得の味ラッカセイから、一粒食べれば超回復間違いなしカリン様(?)栽培のセンズまでなんでもありますよ――』という謳い文句でも誰一人として、彼女のナッツを買う人はいなかった………」

「まるで事実かのように項垂れるな!! 遠坂クンもシールズちゃんも真に受けてるだろうが!!」

「『ああ、ついに誰一人としてナッツを買ってくれる人はいなかったわ……そうだわ! ナッツを食べて飢えと寒さをしのぐことにしましょう』そういって彼女は一番最初に、禁断の豆実―――仙豆(センズ)に手を出して……」

「まだ続くのかよ!?」

「仙豆を食べたことでZ戦士クラスの戦闘力を得たナッツ売りの少女、榛有希は己の出生の秘密を知りながらも正義のために戦うワンマンアーミー・ニンジャとして、悪の組織『四つ葉のクローバー』に様々な手段を以て立ち向かうのだった……」

「微妙に当たってるようで外れてるようで当たってる解説!!」

「死闘の末、一度は四つ葉のクローバーに負けるも、組織の縁者でありながらも、それに対抗するトランクs……ならぬフミヤンクスと共に、悪の首魁『マヤブラック』を倒すべく抵抗軍のリーダーとして未来世界を彼らは駆け抜けるのだった……続きは―――」

「「続きは!?」」

「ホラ話に食いつくなアメリカ人!!」

「続きは――――劇場版「銀河ギリギリ!! ぶっちぎりの凄い奴』で公開予定だ」

何で劇場版だとしても、そのチョイスなんだろうと、四葉の縁者の誰もが表情をそれぞれで思ってしまう。

「安心してください。達也さん―――アナタの子供、『達飯』『達天』はちゃんと育ててみせます……!!」

「なんでアナタが『チチ』のポジションに収まるんですか亜夜子さん? この場合、フミヤンクスの関係であなたは『ブルマ』のポジションでしょうが!?」

「深雪お姉様ってば、畏れ多くも名優『鶴ひろみ』さんのポジションはそうそう襲名出来ません。深雪お姉様は諦めて、『ラディッツ』のポジションにいませんと」

睨み合う実姉と従姉とは対称的に―――黒羽の後継は、顔を真赤にせざるをえなかった。

なんでドラ○ンボールのキャラで、関係性を説明されるんだろう? しかも、自分がナッツこと榛 有希と『そういう関係』(トランクス×未来マイ)になるかのような言い方もされてしまった文弥としてはいたたまれない。

今更ながら榛 有希『さん』は年上の女性なのだと少し意識してしまう……黒羽文弥 15歳の冬の夜なのだった。


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